あつい の
夏が外にいるから
わたしは
檸檬をかじった顔に
オリーブのぬめる粒を
散らかして
開け放した窓から
勝手に
訪れる 熱の風鈴 の
音に 心底 くさるのです
宅配便は
鍛えられたメラニン色素を
まとい
チシャ猫の真白な歯を
まぶしい背景に残して
次なる迷い子の
もとを 求めて
この 砂のない
黒く溶ける砂漠を
ダカールラリーするのです
夏が家に入るので
レバーがきらいな
わたしは
茄子の衣を着て
熟れたてのトマトを怖れます
風の通らない 通り道は
やがて 敷かれた 戒厳令の下
人口の氷水 の 冷ややかな
息吹に 解放されます
ひととき の さようなら
あつい の