めがでて

茶色の懐中時計が
水と光を吸って
わたしたちには
見えない秒針を回します
やがて
翡翠をまとったカタツムリが
目をさまし
暖かい暗やみから
はい出すのです

外は宝石のすむ ところ
ルビーの切片に
アメジストの球に
オパールの軸に
ダイヤの滴が つややかです
そして
サファイアから
したした 降りそそぐ
ムーンストーンは
輝石たちの
歓びを こだまします

翡翠のカタツムリも
ツノをのばし
ヤリをまっすぐに
アタマをあげ
殻は 化学式を
とり込んで
その柔らかい身を ささえます
わたしたちの
知らない 時の そんなお話

めがでて

めがでて

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-14

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