こんな私の話をしよう。
ⅰ
こんな私の話をしよう。
私は今年で二十歳になる。
周りの女の子達より少しだけ発育の早かった私は、周りの女の子達より少しだけ初体験も早かった。
二十歳を目前とした今、周りの女の子達に遅れをとっている。
そんな私の話をしよう。
ⅱ
こんな私の話をしよう。
物心ついた頃から自分の家族にいいイメージを持っていなかった。
父親はお酒を飲むと人が変わり、私の目の前でも母親の体を殴り、首を絞めた。
泣きながら止めに入る私に、母親はこう言っていた。
「お父さんに謝りなさい。」
まだ自分の中で「大人」の理想像が出来上がっていないときだった。
私は家族が好きだ。
小さい頃から今の今まで、家族が好きだ。
お酒を飲んで私を殴った父親も、殴られた私を庇うことなく父親の味方をした母親も、私はちゃんと好きだ。
ⅲ
こんな私の話をしよう。
初めての月経は小学校五年生の時だった。
下着についた赤茶色の血液と、こびりついた茶色のシミが何故か今も忘れられない。
私が大人の女になった証拠であった。
母親の耳元で「生理なったかもしれない。」と伝えた。
母親は「ナプキンつけなさい。」とだけ答えた。
生理用品をもらって次の日も学校へ行った。
周りの女の子達はまだ初潮が来ておらず、ナプキンを入れているポーチを持ってトイレに向かうのが恥ずかしかった。
水色で水玉模様のポーチの中には、女を象徴する二枚の羽根のついた綿が2つ入っていた。
ⅳ
こんな私の話をしよう。
初めて自傷行為をした。
小学校四年生の時だった。
先の尖った鉛筆で、何度も何度も腕を引っ掻いた。
皮がめくれる度にビリッと音がなる。
ビリッ、ビリッ、ビリッ。
小さく響くビリッ、の音に私は涙を堪えられなかった。
傷痕はミミズ腫れのように赤く腫れ上がり、左腕には黒く滲んだ線がたくさん出来た。
長袖の季節、家族にバレることなくいつも通りの日常を謳歌した。
人に発せるはずのSOSは誰に見つかることもないまま中学校に入る少し前、私の自傷行為は加速した。
鉛筆からカッターへと進化した。
黒く滲んだ線を消すように、肉を切り、血を排出した。
痛みに耐える私が、当時誰よりも強いのだと思っていた。
ⅴ
こんな私の話をしよう。
中学生になった私は少女漫画のような毎日に憧れて男の子と仲良くなる努力をした。
年上の先輩に目をつけられて言われる言葉。
「調子に乗るな。」
一人だけではなく、数人の先輩達に目をつけられていた。
ブレザーを着ずにパーカーを着て、白色規則の靴下を黒色に変えて、スカートを切って短くしていた。
そんな見た目でも演劇部に入部した。
女優になりたかった。
自分とはかけ離れた人間になりたかった。
演劇部の先輩達はみんな女で、三年生にもなればみんな大人の体になっていた。
私もいつかこうなるんだと思っていた。
こんな私の話をしよう。