ふへん

その人は三人称の転換を
はじめて迎えた新しい朝に告げる
国営放送から知識を得ていた
知識のみ得ていた
その人を産んだ人と育てた人には
しかし世界のマニ教の善悪が
イデアとロゴスの合成語
旧い家を支えてきた錆びた八寸釘
針のない時計である

その人は三人称の転換を
はじめて迎えた新しい朝に告げる
国家に認められた機関から
教わったありがたい文法を信仰する
その人を産んだ人と育てた人には
しかしヴァーチャルはヴァーチャル
生物学が原始人類
出生記録が預言者の石板
赤い旗の糸が編んだ黒い隕石である

その人は三人称の転換を
はじめて迎えた新しい朝に告げる
その人は三人称の転換を
これから迎える古い朝に捨てる
その人は三人称の転換を
もはや迎えない棘の夜に捨てる
その人はその人
その人がその人

ふへん

ふへん

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-12

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