18.015

未到達の惑星には水の痕跡があり、僕たちのような生物もすんでいた「かもしれない」。そう、子供っぽい期待を含んだ探求心が、仮説に縋りたがっている。
行けるだろうか、辿りつけるだろうか、たしかな名も分からぬ星へ。昔よりだいぶ酸っぱくなった雨は止まないけれど、そこでならば、にびいろでない空が見えるのだろうか。心から望んではいない、でも望まれていることだからと、僕たちは晴れの日を祈っている。
水泡を吐きだす夢から追われ、からだは規範的なサーモグラフィを写すのだ。木星より海王星がいいと言ったのはあの青が欲しかったからだ。他に何もいらなかった、そこでは僕たちを保つすべがないと知っていても、青が欲しかった。

けれど、本当の幸せなど信じていなかった君が先に行ってしまった。
未熟な紫色が残されて、僕は、青をくれよ、とは言えなかった。

だからここで綴るのだ、風景や色や音を。夜に降る静けさを雪と呼ぶこと、昼の虹は無用心に信じてはいけないこと、朝に見えた寒暖の気水域はひとつ覚えている、君の色をしていたことを。
君に置いていかれたとばかり思っていて、僕が追いつけなかったのだとは考えもしなかったこと。ひとりきりで広いくらやみを泳ぐのは、ぞんがいに難しいこと。

分裂した海のひとつで藻掻きつづけているのは僕だけだったろうか。君を求めたって意味はないよと笑う君がいないから、僕は溺れかけながら呼吸をつらねている。

にんげんになりはててしまった、
そう嘆いたところで、君は戻ってきやしない。
ならば、塩素の匂いを歩く前にもう一度、
水へ、海へ。

18.015

18.015

おいていかれた。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-10

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