Silent #6,Cloud #9
詩に描けなくなった女のあなた
ぼくはあなたの胎内を抹殺したい
母さんのような愛撫を仕向けるあなた
ぼくはいつだってあなたを放棄しなくてはならない
あのころぼくと ジンとソファーの
スペースを分け合っていたあなた
あなたとは世界の終わりについて
話したくなかった
クラブのVJ のようなイメージの軽さで
時代の結末を予告するあなた
あなたにぼくは もはや宿命に欲情しながら語る
東京ローズを感じていたよ
刹那なワンルームの集まりで
カンボジアに行った男の話をするあなた
別の少年はインターネットを見つめて
グレタ・ガルボを視姦する夜の虜囚だった
ヒーリング 瞑想 レイヴ音楽
気だるい唇とあなた
もうあなたの部屋で流れたように
ラフマニノフをぼくは聞けない
軽い死を待つしかない週末
セルフタイマーでシャッターを切るあなた
ハルシオンでフラフラしてたけど 化粧気のない
あなたの顔は なんだかきれいだったよ
真夜中にカリンバを持って ボーイフレンドの
機能停止を 確かめに行くあなた
アパートメントのどこかの隣人は誰かと
激しく愛し合っていたかもしれない
「灰色の乖離がまた近づいてくるの
どれほどあたしが壊れるか分かる?」とあなた
故意に 投げやりに「誰かは行ってしまったよ」と
ぼくは言うよ
生まれたときから Silent#6 に
佇み続けるあなた
あなたに会って ぼくはずっと
Cloud#9 に殺されている
モニターの中の人たちに救いはなく
ぼくとは電話で生き延びあっているあなた
歩きたくない 話したくない 眠りたくない
あなたとは 寝たくないんだ
惑星上の静かな時間 ICBM 殺戮 一分間の神
そして
目を閉じてしまった あなた
聞いている
あなたの子宮 ぼくの胎動
Discの宿命が終わって
子供が
水に
浮かぶとき ―――――― 。
Silent #6,Cloud #9
10代の頃に書いた。
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