私の好きだった子

鍋島タマ子

今はもう昔ほどの熱情はないけれど、気持ちの整理に書きました。ひたすら心理です。短いです。

「久しぶり。職場の人と今度花火をみに行くんだ」
「久しぶり。あの人と付き合うことになったよ。告白は向こうから!」
「久しぶり。もうすぐ10ヶ月。半同棲状態なんだ」
「久しぶり。お互いに距離感や空気感が合っていて、この人とじゃなきゃ結婚ってできないと思うっていうくらい大切な人」
 会うたびに、必ず聞く。「まだ続いてるの?」
 もしかしたら別れてるかもしれない、喧嘩とかしてるかもしれない。そんな後ろめたい願いとは裏腹に、彼女と彼は驚くほど順調だった。
 「そう」相槌を打って頼んだ梅酒に口をつける。友達のままでいたいという気持ちと、自分にはあの子を幸せにできると思えないという気持ち。ずっとずっと、時には隠した嫉妬で気が狂いそうなくらい、大事に思ってきたけれどあの子は「普通」の恋愛を思う存分に楽しんでいる。
 あの子は昔とは比べものにならないくらいしっかり生きている。以前は、生活能力が無くて生きる気力も無いように見えた。一番近くで、あるいは遠くで、悟られないようにずっと側にいた。あの子のわがままも叶えてきた。あの子が一人で生きていけるのか不安で、かつ必要とされているようで嬉しかった。でも私たちは少し大人になって、私が思っていたよりもずっとずっと自分の考えを持って生きていることがわかった。
 まっ白い肌、細い細い髪。少しずつ知らない部分が増えていく。肩まで伸びた髪の毛、昔はうなじが見えていた。少し化粧が上手くなって血色が良くなった。ダイエットを始めたと言っていた。慣れた様子で夜の新宿を歩く。
 可愛い人。私がそう考えていると「なんで笑ってるの?」と聞く。うーん、幸せそうだなあと思って。「そう?」あなたは変わらず可愛い人。眩しくて羨ましくて、恨めしい。この子の気持ちを埋める存在になりたかった。
 この気持ちを抱えたままあなたの結婚を祝い、出産を祝い、そして、
 私は今も、あなたを好きだった気持ちのまま取り残される。

私の好きだった子

「私の好きだった子」は今もとても可愛い。

私の好きだった子

昔好きだったあの子への気持ち。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-09

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