主人公は嘆いてる。

朝、いつものように目覚める。
 そしていつものように武器を装備して出掛ける。
 今はまだ短剣しか持ってない。
 服を着替えたり、食事をしたりする必要はない。
 なぜなら私はゲームの主人公だからだ。
 今日もまた城に行かなければならない。
 王様に呼び出されたのだ。
 呼び出される内容は毎回同じだがここでは
まだ知らない体で進まなければならない。
 一応私を操るプレーヤーが内容を知っていようが知っていまいが明かすわけにはいかないのだ。
 それがストーリーだからだ。
 

おっと、そろそろ出掛けるようだ。
今いる街から王様のいる城に目指し旅するのだ。
私にとっては城に着くまでの道中が一番憂鬱な時間だ。
 私を操るプレーヤーにとってはほんのちょっとの時間だけど旅をしている私にとっては長く憂鬱な時間なのだ。
 何故ならほとんどのプレーヤーがここで私のレベルを上げてくれないのだ。
 レベル上げのためにモンスターを倒せばついでに金も手に入る。
レベルだけの問題じゃない。
 この道中にはアイテムがたくさんあるのだ。
 こんないい機会はほとんどないのに大半のプレーヤーはすぐ城に行きたがる。
 城から目的の場所までの道には最初にいたような低級モンスターはいない。
 大抵のモンスターは強くなり、特殊効果が付く。
 このゲームが初見でプレーヤースキルが低いと中ボスや連続してモンスターに襲われたときに躓き先に進めない。
 このことをプレーヤーは私のせいにする。
 『勇者が弱いんだ。』とか『このキャラつかえねぇ。』とか言い出す。
 私が弱いのはレベル上げをしないプレーヤーのなのに---。
 しかもプレーヤーは私が死にそうなとき回復アイテムを使ってくれないのだ。
 理由は簡単、お金がないから回復アイテムをケチケチ使うのだ。
 『ボス戦で使おう』とか『こんな相手なら余裕でしょ』とか思っているのだろう。
 だから嫌なんだ。
 ちょっと攻撃力の高い『大剣』とか『双剣』とかを手に入れて調子に乗るから負けるんだ。
 回復アイテムを出し惜しみしないで使えば負けないのに---。
 それもこれもみんなレベル上げをしないプレーヤーのせいだ。
 最初にレベル上げしておけばある程度私は強くなって、お金も貯まる。
 そのお金で回復アイテムを買えばいいはずなのに。
 いつも思うがプレーヤーはホント馬鹿だ。
 ちょっと高めの武器のためならお金を貯めようとするけど、アイテムのためにお金を貯めようとしないんだ。


 そうこう話しているうちに城についてしまった。
 このプレーヤーもレベル上げしてくれなかった。
 まだ私はレベル9だ。
 これじゃあちょっと強くなったモンスターに勝てないよ---。
 しかもアイテム全然拾ってない。
 街から城までの道には意外といいアイテムがあったのに。
 たしか回復アイテムと片手剣と鎧だったかな?
 みんな全然拾わないから忘れてしまった。
 鎧はレアものだったのに。
 このゲームの中で最高レベルの防具なのにみんな拾わないんだ。 
 まぁ、プレーヤーに操られている身だか何を言っても仕方がないのだが。


 「勇者よ、よくぞ来てくれた。」
 「はい王様。私になんの御用でございましょうか?」
 「実は勇者に頼みたいことがある。我が娘マリアが魔王にさらわれてしまった。我が娘を取り戻してほしい。」
 「わかりました王様。私がマリア様を取り戻して見せます。」
 こうして勇者は魔王のもとに旅立つのであった


 城から出たけどどうするんだろこのプレーヤーは。
 私のレベルが低いからここからの道のりで出現するモンスターに勝てないのに。
 このプレーヤーはスキル低そうだからコマンドとか使えないんだろな。
 だから私が気を利かせて必殺技コマンドを正確に入れなくても必殺技発動させてあげなきゃいけないんだよ。
 ホントはいけないんだけど---。
 でもたまにやらないと私が死んじゃうんだよ。
 大抵のプレーヤーはギリギリになるまで必殺技とかを使わないんだよ。
 だからちょっとプレーヤーがしくじると私が死ぬ。
 プレーヤーは私が死ぬと『またアイツ倒さなきゃいけないのかよ』とか『めんどくせー』とかいうけど一番辛いのは私なんだよ。
 モンスターの攻撃を受けて死ぬのだから痛いんだよ。
 設定上すぐ復活するけどあれ2日くらい寝込んでるからね。 
 強いモンスターだと『毒』とか『やけど』とかのダメージも受けるからホント辛い。
 絶対に命が絶えることはないけど苦しいんだよ。
 このプレーヤーはスキルないから全然コマンド入力できてないんだよ。
 私がたまに気を使って強めの技を発動すると『奇跡だ』とか言ってると全部私のおかげだから。
 プレーヤーの言う『奇跡だ』の8割は奇跡じゃないから、私が勝手に技を発動しただけだからね。


 そろそろ魔王のいる洞窟に着くけどこのプレーヤー全然アイテム買ってない。
 やっぱり武器にしかお金かけてない。
 いくら強い『大剣』とか『双剣』とか『鎧』とか持っててもアイテムを駆使しなきゃ勝てないから魔王に。
 あと私のレベル低すぎ。
 何でラスボス前なのにまだレベル38だよ。 
 このゲームの最高レベルは50だけど、ラスボスには低くても43以上は必要だよ。
 体力的にだけど。
 さて魔王と戦う準備しますか。


 「目障りな勇者よ、よくここまで来れたな。」」
 「魔王、王女マリアを返してもらうぞ。」
 「ならば、この俺を倒すんだな。」
 「覚悟しろ、魔王。」
 こうして勇者は魔王と最後の決戦を挑んだ。


 ようやく魔王倒せたよ。
 何回戦うつもりだよ、ホントに。
 このプレーヤーほんとスキルない。
 だって、魔王に5回も負けたんだよ。
 ありえないでしょ、何回も死ぬ私の身にもなってほしいよ。
 毎回魔王の強攻撃でやられるんだもん。
 何で学習しないんだよ。
 一回やられたらよけ方覚えてほしいよ。
 王女うんざりしてたよ、全然勝てないんだもん。
 まぁ、王女も悪いのは私じゃなくて私を操るプレーヤーが悪いってことは分かってるけど。
 途中から私と魔王の決闘全然見てなかったもん。
 ずっと自分の爪見てたよ。
 仕舞いには魔王だって手加減してくれてたもん。
 なんか強攻撃ヒットさせたとき申し訳なさそうな顔してたもん。
 それなのに負けるんだよ。
 恥ずかしいったらありゃしない。
 王女もかなり呆れてたよ、多分。
 もう早く帰りたいから王様のいる城に行きますか。
 
 
 「王様、今帰りました。王女マリア様は無事救出しました。」
 「よくぞやってくれた、勇者よ。この功績をたたえ褒美を与えよう。」
 「ありがとうございます。」
 こうして勇者は街へ帰るのだった。


 ようやく、街へ帰れるや。
 プレーヤーの人たちはみんなエンドロール見てる時間だけど私たちは違う。
 城から自分の家に帰らなきゃいけないんだよ。
 いろいろやってられないよ。
 さっき王様が褒美くれたけどあれすぐ消えるからね。
 ゲームのストーリーが最初に戻るから。
 強い武器もアイテムも褒美も全部私の家に入った途端に消えるんだよ。
 結局こういうことを受け入れなきゃいけないんだよね。
 私はこのゲームの主人公だから。
 また誰か遊んでくれるその日まで寝ますか。
 今日は私の愚痴を聞いてくれてありがとう。
 また遊んでね。

主人公は嘆いてる。

始めにこの小説を少しでも読んでくれてありがとうございます。

初めて書いた小説何でいろいろ大変なことになっています。

もしよかったら感想を聞かせてください。

感想は「アオテンカキモノ」というブログの記事に「主人公は嘆いてる。」を読みましたという書き出しで書いて
いただけるとうれしいです。

主人公は嘆いてる。

これはとあるゲームの主人公のお話し。 主人公にだっていろいろ言いたいことがあるんです。

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-08-13

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