置いてけぼりの美学


足をくじいてしまいました
私はもう歩けません
膝をつく私に影を投げかけて
あなたは堂々と前に進みます


光の射す方へ


「いってらっしゃい」
と私は大声で叫びます
真っすぐな背中を押すには
私の腕は短すぎるから

「いかないで」
とは言いません
こんな暗くて寒いところに
あなたはもう留まる必要はない

ただ

一番近くで見ていたはずの
あなたのひたむきな瞳を
もううまく思い出せないことに
くちびるを噛みながら

「私もつれていって」と
腹の内でつぶやくのです

置いてけぼりの美学

置いてけぼりの美学

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-04

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