ヒラギノ
ここ柊野の冬景色に粉雪が舞う頃
街に子供たちの聖─歌が響く
夜を走るヘッドランプが街の装飾を照らす
美しい灯りの裏で、暗闇が息を潜めている
窓の外に凍え─たように光る月が見える
冬のりんごを囓ると甘酸っぱさが口の中に広がる
シズルフルな画面を気にかけながら
ヒラギノの涼しく透き通った文字が
蛍光灯の反射光に白く染め抜かれた紙─に現れる
あの頃はこのソリッドなラインに強く惹かれたものだ
大人になる事で失うものと、得るもの
そんな話題がこの季節になると思い浮かぶ
不確かなつながりに涙流したことも
子供の頃は色々なことで頭を悩ませ、苦しんだ……
きっと良い育ちではなかっただろうけど
でも、自分が何を欲しているかわかった者に
まやかしを気にかける必要など無いのだろう
この街で生きていかなければならない
それがわかっていても足元がすくむ思いばかりだ
子供の頃に見ていた夢はもう捨ててしまった──
数─年前の聖─夜のあの日─、あのカフェで
周りの人と話している君を初めて─見たときに、
ハッとした感覚があったのを覚えている
臆病な─君の、あの無邪気な微笑に
何か大事なもの、失ってはならないものに
気づかされたような、そんなインスピレーション……
きっと─人─はそれを運命と呼ぶのだろう
窓の外は黒い冷たい空気でいっぱいだった
この世界に美しい言葉があることを僕は信じている
言霊は強く受け止めれば─それだけ傷つく─もの
暗闇の中で白色光の照らすこの明るい部屋に、
あの日からいくぶんか─大人びた君の微笑みがある
ここにひとつ─の言葉を君に捧げよう
いつもそばに居てくれて、ありがとう
ヒラギノ