浦島と亀

三題話

お題
「くじ」
「浦島太郎」
「再び」

 美しく楽しかった竜宮から、三年振りに村へ戻ってみると、そこは知っているはずなのに知らない風景があった。
 自分の家がない。家族も友人達もいない。
 それ以前に誰もいない。
 まるで異界へ来てしまったかのように、何もかもが違っている。
 おかしい。砂浜は見覚えがあるような気がしたけど、それにしても周りの情景が変わりすぎている。
 どうしてだろう。
 砂浜へ戻ってみると、あの亀がまだそこにいた。
 私の姿を確認して、亀は体の向きを変えて海へ向かってのそのそと動き出した。
 前足が水に入ったところで、こちらを振り返る。
「乗れ、ということなのか……?」
 私は再び亀の背中に乗り、どこかへ連れて行かれることとなった。

      …

 辿り着いた先は、竜宮。
 だけど前回とは様子が違っていた。
 外観はそのままなのに、静まり返っていて、そして。
「こ、これは……」
 中は廃れて荒れ果てていた。
 豪奢さも、煌びやかさも、そんなものは初めから存在していなかったかのように、何もなかった。
「いったい何があったんだ」
 つい昨日までここにいたというのに。

 そういえば、と。
 乙姫さまから頂いた玉手箱を見つめる。
「開けてはいけない、と言われたけど……」
 この箱には『時』が入っていると言っていたな。もしかしたら開ければ元に戻るのかもしれない。
 くじ運は、期待できないけれど。
 恐る恐る蓋を開けると、中から白い煙が立ち上った。
「ぐ……けほっ、けほっ」

      …

 気が付くと床に倒れていた。
「あら、起きたのかしら?」
 あ、はい。
 どうやらうつ伏せになっているよう。目線を上げると、乙姫さまが目の前にいた。
「はい、それでは水槽に戻りましょうか」
 え……え?
 体が、亀になっていた……。
 そのまま水槽まで連れて行かれて、ヒラメたちの仲間入りをした。
 全く状況が理解できない。
 竜宮から村へ戻ったけどなくなっていて、再び竜宮へ戻ってきたけど廃れていて、そして、玉手箱を開けて……。
 一体何がどうなったのか。
 

      ◇

 そして、数年後。
 私はあの砂浜へ向かうこととなった。
「浦島太郎さん。このあいだは助けていただいて、ありがとうございました」

浦島と亀

浦島と亀

自分以外の誰かからいただいた3つのお題を使ってSS

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-01

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