句集「落葉」
落選句や、応募しなかった句、すなわち「落ちた言葉」を集め、これを「落葉」と名付け、まとめてみました。
《無季》
お日様に愛されたくて空眺む
ふと気づくこの星包む天の慈愛
雨打ちて車窓に走る流星群
《春》
御馳走や雀散らかす注連飾り
パンプスの足で寄り道春の海
慎ましくそんなの知らねえと咲く桜
洗車して庭先生まれた花筏
春愁を其処此処(そこここ)に散りばめる花弁
蒲公英の綿毛故郷を捨てゆくか
何しても何かが足りない春の夜
春日和何にもしない日曜日
春麗ベランダにくまのぬいぐるみ
餞別のお菓子を食べ終え新年度
《夏》
夏だからその一言で片付ける
新緑の握手に応ずる二階窓
鈍行で浴衣と甚平横の席
甲子園国旗掲揚坊主之野
朝焼けに煙もくもく焼却炉
昼寝して夕焼け襖に映ってる
蚊一匹安寝許さぬデスマッチ
満面の笑顔の手の平拉た蚊
夕立の興も流してゲリラかな
熱帯夜熟れて仏間の果が香る
自転車もマンホール避ける炎昼か
二十四に祖父が勧める盆踊り
夏休み殺した命の数幾つ
満面の笑顔の手の平潰れた蚊
恋をして物語れなくなった夏
手にとって折りたくなる夏の三日月
雨の朝蝉の夢の残骸や
あわよくば寝巻きのままで盆休み
《秋》
手にとって口に入れたし秋の月
天高し上着を脱いだ正午過ぎ
小望月見上げて一人明日も一人
その野分人間勝てるはずもなく
飛行機は一点の白秋の晴れ
晴天に拍手喝采紅葉かな
《冬》
雪の夜積もる話もある炬燵
凍てつけど二輪で駆ける星の下
子は笑ふ雪よふれふれ積もるまで
待たせてるサドルに霜降り冬来る
なんとなくペチカを歌いたい夜道
桜より寒梅みたいに愛されたい
冬麗サボっちゃえよと空が言う
あゝホットココアばかりの頑張りや
冬の雨孤独が私を愛しけり
冬曇り稜線の柔らかな朝
鍋の日の奥歯のエノキの逞しさ
湯たんぽを抱きしめ今日も夜なべかな
白い手で赤本捲る元球児
そっと手をコタツの下で繋ぐ恋
句集「落葉」
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