強人弱神 4
第4章 最強の神
自室のベットで俺はとうとう人間離れしてしまったと頭を抱えたくなってしまった。
「何を考えてるの、カミヤ?」
俺のベットで寝ている運が俺に聞いてくる。ちなみに俺と運は一晩をともにしたわけではない。この前の神を倒したあと俺は美紀を近くの病院に連れて行った後運のところに戻ると運が高熱を出して倒れていたのだ。
「まさか俺に全部運を渡しちゃうなんてな、正直かなりびっくりしたよお前が倒れてたときは」
「えへへへ、私もそれだけ真剣だったんだよ・・・・・・あ」
運は失言をしたと言わんばかりに真っ赤になった。
「真剣? 何をそんなに真剣にする必要があるんだ?」
運が言った意味が全然わからない俺がそう聞くとある女の子が俺の部屋に入ってきた。
「運ちゃんはあんたのことがかなり気になるみたいよ?」
おかしいな、ちゃんと玄関は鍵をしたと思ったのにな。
「なんで美紀がいるんだよ。てかお前玄関から入ってきたか?」
何かもっと重要なことがあったような気がするが・・・・・・
「そんなことよりもっと心配することことがあるんじゃない?」
「え? 何か・・・・・・あ、そうだお前、体は大丈夫か?」
いかにも元気ですって感じの話し方だったから怪我のことなんて忘れてた。そういえばコイツって致命傷を数箇所やられてたんだっけ・・・・・・
「そうそう最初はそれを聞くよ普通」
会って早々にダメ出しをされてしまった。
「それで? 大丈夫なのか、体」
「あの刀のおかげで死にはしなかったよ」
死にはしなかった? じゃあ、何か別のことがあるのか?
「ただ、病院出て来ちゃった」
はい?
「まさかとは思うが怪我が完治してないのか?」
「・・・・・・」
頼むからそこで行き詰まらないでくれ
「なんで出て来ちゃったんだよ!」
「だって、しょうがないじゃない。誰もお見舞いに来てくれないし、それにあんたにもあ―――」
「ゲホゲホ」
俺ではないぞ今のは。
「大丈夫か運、熱があるんだからゆっくりしてればいいのに」
まあ、俺と美紀がこの部屋にいる時点でゆっくりできるはずがないのだが。
「そうよ運ちゃん、ゆっくり寝ててそこで静かにじっと」
何やら刺々しい部分があったのはきっと気のせいだろう。
「ほら、美紀もそう言ってるんだしさ、邪魔なら俺たちも出て行くし。呼んでくれればすぐ来るしさ」
リビングと俺の部屋は近いから来るのも楽だし、何より運がそれで休めるなら・・・・・・
「そんなに私といたくないの?」
風邪で弱々しい体を一生懸命起こし上げたように(いや、実際にそうなのだが)運は上目遣いで俺にそんなことを聞いてきた。
「そ、そそそそんなことはないぞ、なあ、美紀?」
俺はそんな運を見にほんの一瞬見とれてしまい。恥かしさによってテンパってしまい噛んでしまった。
「そこでなんで私に振るの? ‥‥‥ちっ、もう少しでカミヤと二人きりになれたのに」
最後のほうはゴニョゴニョと小さい声だったから何を言っていたかわからないが、拒否されてしまったらしい。
「そもそもカミヤは私と最初に遊んでたんだから美紀ちゃんはそろそろ帰ったら? 病院の人が困ってるかもよ?」
初めてかもしれない。運が喧嘩腰で話すところを見るの。
「そうね。でも運ちゃん、カミヤはあなたと遊んでたんじゃないの、私と遊んでたのあなたは面倒を見てもらってただけ」
こちらも喧嘩腰で話すところを初めて見る。
「お、おい喧嘩はやめろって、俺ら仲間だろ? 仲良くやろうぜ?」
なんとか止めようとする俺
「カミヤ(あんた)がいけないんだよ(でしょ)!!」
なぜか俺が怒られた。
「なぜだ! なぜ俺が怒られなくてはならんのだ」
「ちょっと、黙ってなさいよカミヤ」
「そうだよ、これは女の戦いなんだから!」
今日俺はこの世で一番怖いものを見つけてしまったかもしれない。
なんでこんなに女の子は怖いんだ。
それから女の戦い(?)は数時間にも及ぶ争い(言い争い)となった。もちろん両者とも息を上げてはいるが退くことだけはしなかった。
そして、出た答えが
「カミヤ(あんた)今日私と付き合いなさい!」
「はいぃいいいいいい!?」
なんでそうなるんだよ! どう考えたって違うだろ!
「かか勘違いしないでよね、別にあんたが好きなんかじゃないんだからね!」
顔を真っ赤にして言う美紀
「私はパートナーであるカミヤと親睦深めようと誘っただけだよ!」
こちらも顔を真っ赤にして言う運
「ち、ちょっと待ってくれ二人共、美紀はまだ怪我が治ってないだろう? 運だって風邪気味だろう? 二人共治ったらみんなで行けばいいじゃないか」
おー、俺今久しぶりにいいこと言ったぞ。
「それじゃあ意味がないの(ないよ)」
なぜだろう、目の前が歪んで見えるよ。
「なんでだよ!」
「それは・・・・・・」
なんでそんな深刻そうな顔をしてんだよ。まるで誰か死んだような顔を
「来た」
その言葉とほぼ同時に美紀から殺気が吹き出した。
「き、来たって何がだよ」
「現一位の神様」
美紀が怖い顔で言ってくる。
「一位ってなんだよ」
「頂点に立つ神様だよ」
運も怖い顔で言ってくる。
「何でそんなのが俺のところに来るんだよ!」
「まあ、あんたが以外とあっさり神様を倒しているからでしょうね」
あっさりって……
俺ってそんなにあっさり神様を倒してたっけ?
「もしもそうだとしてもなぜ俺を狙う? 普通神様をたくさん倒してるヤツに喧嘩するもんか?」
「一位さんは自分より強い存在を許さないみたいで、自分より強い存在は端から潰していくんだって、だから一位でいられるんだよねきっと」
いられるんだよねきっと・・・じゃねぇよ
それかなり危ないじゃん、今度こそ俺死んじゃうよ。
「どどど、どうするんだよ! 今までぎりぎりで勝ってきたのにそんなに強いなんて今度こそ死んじまうよ!」
「今更弱音を吐いたって意味ないでしょ? 私も手伝ってあげるから」
まるで人ごとのように言いやがって、美紀のやついつか天罰が・・・
「・・・・・・て、一緒に戦ってくれるのか? そりゃ心強いや!」
「こ、心強いなんて・・・・・・あんたねぇ・・・・・・」
なぜか、赤面する美紀
「はーい、お二人さんそんなことより来たようだよ? 最強の神様が」
後ろから、ちょっと怒り気味の運が声をかけてきた。
運が声をかけてきた途端、背中がゾクッと鳥肌が立ち、一瞬体が硬直した。
「あなたが最強の人間ですか?」
十代の青年が突然俺の目の前に現れ、そして俺に問いかけて来た。
「お、お前は・・・・・・なんだ? 人間じゃ・・・・・・ないよな」
今までの感覚で神様的なものだとはすぐにわかった。
だが、こいつは今までの神様とは何か違うそんな気がした。
「お初にお目にかかります。 私は神様の一位を務めております。 創造を司る神、創造神でございます」
こいつなんかおかしいぞ。今までの神は敬語なんて使わなかったのにこいつは敬語で話すなんて……
「主よ! なぜ我らを置いて先に行かれてしまうのです!」
自らを創造神と呼ぶヤツの横に二人の青年が現れた。
両者ともに神の類と直感が伝えてくる。
「なんで、神の奴らがこんなにいるんだよ」
同時に三体なんて勝てるわけがねぇ
今度こそ負けるそんな気が俺の脳裏を走った。
「安心してください。 私は三体一で戦うなどまだ言っていません。 それに、あなたはまだ私と戦えるまでの力を持っていない」
今までの神様は勝てる気はしないが負ける気もしなかったがこいつは完全に負ける気がする。
力量差がありすぎる。
「なので、私の左腕を任しているこの方を倒し、次に右腕を任しているこの方を倒し、成長したあなたと戦うことにしました」
完全に舐められてやがる。
だが、こんなヤツに舐められているというのに俺の体は硬直して指一本動かせない。
「さあ、始めなさい。 私と戦えるだけの力を手に入れなさい」
そう言ってヤツは消えた……
その瞬間体の硬直も消え、体が軽くなった。
「やるしかないのか、やるしか」
「私はルール、掟を司る神だ、遠慮なく潰させてもらう」
相手が殺気を放った途端俺の部屋の窓ガラスが粉砕されてしまった。
「おま、ガラスって結構高いんだぞ、どうしてくれんだよ」
つい先日、初めて神獣とやらを倒したあとの部屋をもう一度繰り返しそうだったので、とりあえず、戦う場所を変えようと俺の部屋を出た。
部屋を出て、俺が次の戦場に選んだのは近くの公園だった。
「ほう、ここはなかなか良いところではないか」
神様も喜んでいるらしい。
「さあ、さっさとおっぱじめるか」
俺は刀を抜き戦闘態勢に入った。
「我は語ろうルールを、我は定めよう掟を」
神が何やら語り出したが無視して斬りかかった。
「ルール、我の半径一メートル以内に物及び生き物は入れぬ」
そう語った瞬間斬りかかった俺は吹っ飛ばされた。
「な、なんだ今の、なんで弾き返されたんだ?」
弾き返されたあとも何回も斬りかかったが、何か壁みたいのに弾き返されてしまう。
「もう一つ掟を追加するか……ルール、過去未来現在、我に斬りかかった回数及び強さよって斬りかかった人物が傷を負う」
語った瞬間、俺の体に衝撃が走った。
「うわあぁああぁぁあ」
衝撃は熱さに変わり、最後は痛みに変わり俺の体を支配していく……
「ふははは、痛いか? さぞ痛いだろう、それが今から斬りかかる限り永遠に続くのだ!」
か、勝てないかもしれない、痛みで体が動かない、どうしようもない。
そんなことを薄れゆく意識のなかで俺がそんなことを思っていると……
「そんなとこで倒れてまさか負けようなんて思ってないよね、カミヤ?」
後ろから運の声がして、辛うじて意識を取り戻した。
「そうよ、私を倒した人がこんなとこで負けるなんて冗談じゃないわよ」
美紀の声もする。
そうだよな、こんなとこで負けたら人間最強の名が廃るよな。
「無理だよ、少女達こいつはもう立てない、誰しも掟には抗えないあの方以外は……」
「そんなことない! カミヤ立ってくれる、だってカミヤは……カミヤは人間最強なんだから!」
運、そんなに俺のことを信じてくてれるのか
「立ってカミヤ!」
「無理だと―――」
「何が無理だって? 神様さんよ」
俺としたことが、立っちまったよ。寝てれば楽になれただろうに、だけど運に、パートナーにあれだけ呼ばれたら起きるしかないだろう?
「立ったところでお前に何ができる」
「さあな、今のままじゃ少なくとも勝てないだろうな、だから俺は今この瞬間強くなる」
そう俺ならそれができる。
この刀があればまた俺は強くなる。
「おい、月刀! 俺に力を渡せ! あいつに勝てるだけの力を!」
『承知した』
どうやら、俺の声が届いたらしく、答えが返って来た。
『半身は太陽によって、半身は自分自身で輝く月、すなわち半月なり』
三日月と違い形状も重さも変わらないがなんとなく今までとは何かが違う気がした。
だが……
「それで? 何が変わったというのだ」
「えーっと……何がでしょう?」
困った。
変化したのはなんとなくわかるんだけど、使い方がわからないや。
とりあえず、斬ってみるか。
結果は弾き返されて傷を負ってしまった。
「おい、月刀! どうすればいいんだよ、全然使えないぞ!」
『そんなことは知らぬ、我は力を与えるのみ、力を得た者は我に勝利を与えるそれが力を得た者の代償だ』
なんだそりゃ、そんなんじゃ戦況は全然変わらないじゃないか!
「どうすれば……どうすればいいんだよ」
「ねぇ、カミヤ」
不意に隣から運の声が聞こえたので振り向くと運が泣いていた。
「危ないから下がってろ、それでなくてもお前風邪引いてるんだから―――」
「大丈夫、大丈夫だから」
大丈夫ってこいつすごい辛そうなんだけど……
「わかったよ、で? なんだよ」
「こ、こっち向いて」
「は?」
振り向くと完全に不意打ちでキスをされた。
「ななな、何してんだよ!」
離れようと俺が力を込め始めたとき運が……
「あいつを倒したいんでしょ?」
と俺に聞いてきてもう一度キスをする。
「倒したいんなら私の力を使って」
「使うってどうやってだよ、こんな状態で使えるはずがないだろ」
こ、こんな恥ずかしい状態でど、どうやって……
「大丈夫だから、私と心を合わせて!」
そう言って運は俺の首を甘噛みしてきた。
「だ、だからこの格好はどうかと思うんだ」
「そんなこと言ってないで前を見なさいよ」
俺が運に講義をしていると後ろから美紀が大声で注意してきた。
「ふざけているのかお前らぁ!」
かなりお怒りモードの神様がこっちに向かって走って来た。
「うるせぇ、ふざけてるわけじゃねぇ!」
畜生なんで神様ってのはあんなに早いんだよ。
そこらへんで転びやがれ、このクソ野郎!
そう思った瞬間目の前の神が転んだ……
「グハッ」
勢いよく転んだせいか顔面をかなり強打したらしく、顔を抑えて悶えている。
「な、なんで転んだんだ? しかもあんなにタイミングよく……」
神が転んだことに動揺している俺に甘噛みしていた運が……
「まだ気づかないの? 私の力を使ってるんだよ?」
運の力を使ってる? 俺が?
「私の力は運命、つまり今はカミヤがこうなって欲しいっていう運命が叶っちゃうの」
そうか、だからあいつは転んだのか。
「じゃあ、こっからが俺たちの反撃だ!」
運もまた俺の首を甘噛みし、遅れはしたが美紀も参戦した、これで役者は全て揃った。
あとは俺たちが勝つだけだ!
「行くぞみんな!」
「戯け! 人間が神に勝てると思うな!」
勝てる感覚、イメージもできてる。 これなら行ける、さっきとは状況がまるっきり違う必ず勝ってやる。
「美紀、あいつに思いっきり斬りさけ」
「え、でもあいつは……」
「大丈夫だ! 俺を信じろ!」
「わかった、信じるよあんたのこと」
照れながらも答える美紀
「良し、行くぞ運! この勝負必ず勝つぞ」
甘噛みをしている運は声には出せないものの目で答えてくれた。
「いいか、神様! 俺たちはこんなところで立ち止まるわけにはいかない、だからお前を倒して俺たちは先に進ませてもらう!」
「戯け! お前らに負けるほど落ちてはない!」
俺の言った通りに美紀が思いっきり斬りさこうとする瞬間、俺は運の力、運命を決める力を発動した。
その内容は……
「運命はルールに勝つ」
そう唱えたと同時に美紀は神を斬りさいた。
「なにぃいぃいいいいい!」
神様は叫んだ。
当然だ、弾き返すはずのバリアーが消えたのだから。
「やった、これで―――」
「いや、まだだ、まだあいつは死んでいない」
直感でまだあいつは死んでないことがわかってしまう。
「最後はカミヤが―――」
「わかったよ、運」
甘噛みをしていた運はそれをやめ、俺は体が自由になった。
そして瞬時に月刀を半月から、三日月に変化させ紅の炎を注入する。
「そろそろ、終いだ!」
美紀の攻撃がかなりのダメージだったらしく動けない神に俺は容赦なく刀を振るう。
「あぁああぁぁああ、ぁあああぁああぁああああああああああああああああああああ」
いつもの如く紅の炎が神を包み込む。
神様は黒い灰になって風に飛ばされていった。
『カミヤ!』
美紀と運が同時に俺の名前を呼ぶ。
「ん? なんだよ」
俺はそれに答える。
「勝ったの?」
「まずは一体だね!」
二人は同時に違うことを聞いてくる。
「はは、なんとか……勝った……かな?」
言い切るとそれまでピンと張っていた糸が切れたみたいに意識を失った…………
強人弱神 4