別れ

大切なのは、いつだろう。

「今、あなたは生きている。」

少し重たい話になってしまいます。ごめんなさい。単刀直入に言いますね。私は、「死」が怖くありません。恐怖の念どころか、悲しさも感じないのです。なぜなら私は、そういう人に育ててもらったから。

2週間くらい前でしょうか。私は初めて、人の「死」に直接直面しました。自分の親戚とかが亡くなった訳ではありません。恩人の家族が亡くなったのです。私は恩人の家族が亡くなった次の日に恩人に会いました。
さぁ、みなさん。私たちは会って何をしたと思いますか?最初に交わした言葉はなんだと思いますか?
会ってしたことは、お茶。最初に交わした言葉は、お疲れ様!でした。
その恩人(Nさんとしておきましょうか。)は何事もなかったかのように笑い、甘いものを食べ、お茶を飲み…とにかくいつも通りだったのです。そんなNさんに対してどう反応していいかわからない私は、素直に言いました。
「私、家族が死んじゃったことないから、Nさんにどう接していいか、わからないの。」
と。そしたら
「そういう時は、「ご愁傷様です。」って言えばいいんだよ。私ね、悲しくないよ。涙、出なかった。だから気にしなくていいよ。いつも通りで。」
私はポカンとしてしまいました。ポカンとしている私に、Nさんは
「私昨日(家族が亡くなった日)、焼肉食べに行ったよ。」
と言いました。私はもう
「うん。」
と返すことしかできません。
そんなやりとりがあり、いつも通りなNさんとポカン化が進んだ私は、お茶をしました。お話をしました。いつも通りの会話がひと段落した時、Nさんが言ったのです。
「家族が亡くなって私の中にある気持ちはね、90%のありがとうと10%の寂しいだよ。喧嘩だってした、反抗期もあった、いい思い出ばかりじゃない。でも、いつも向き合ってきたから。だからお別れの時に「ありがとう」って送り出せたの。Aさん(私)にも、そういう人になってほしい。」

Nさんの言葉は強烈に私の心に残りました。
Nさんとばいばいした後、いろいろ考えました。Nさんが前に話してくれた、Nさんのお母さんが亡くなった時の話を思い出しました。その話をしてくれた時にNさんが言っていた
「悲しくなかった。涙の一滴も出なかった。」
という言葉も思い出しました。そして、思いました。
「今この瞬間瞬間に全力で向き合って生きていこう。今はもう、戻らない。でも、向き合って生きれば、気持ちは通じるはず。いつまでも、いつまでも。」

今、どんな状況ですか?どんな心情ですか?苦しいも、つらいも、うれしいも、楽しいも…ひとりひとり立場や感性は違う訳ですから、みなさん違うと思います。でも、どんな今の中でも「今に向き合って生きる」ことは、なにかを変えることだと頭の片隅に置いていてくれたら、私はうれしいです。Nさんもうれしいです。

別れ

別れ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-24

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