チャーハンの無い街

マチミサキ

数日ぶりで迎えられた我が家での朝

良いものですな!

借家だのなんだのと言われても
此所は私の家

やっぱり落ち着きます。


だいたい借りている、とはいいますが
持ち家とて
地球から借りているだけ

地震天災病気不幸であっという間に
無くなる時はなくなります

未来永劫に持てる財産など
何処にも有りはしないし
どれ程の権力を握ろうとも
それを恒久に維持する事は難しいでしょう


ま、そんな
負け惜しみを列ねた所で本題


実は10日ほど前に
ヴェーダ(的な組織)から
指令が入り

某地方の街で起こってしまった懸案事項に
知力介入を行うべく
出撃してきました

モンダイヲ (*´ω`*)q クチクスルッ!

面倒ですが
世界に変革をもたらす夢を持つ一員としては
行かざるを得ませんでした。


知らない街で
しばらくのホテル暮らし

そして

知らないごはん

そう、
地方ならではの特色のある御飯


これが
楽しみであり
怖くもあります


とりあえず初日
歓迎会を催して頂いたので
有り難く
お招きに応じさせていただきました。


今回の街は完全に海から離れているので
そういった海産物には
縁がないはずなのですが

出てくるお料理は
お寿司など海鮮がメイン・・・


うん!

流通の進歩ですね♪


はい!

想像通り
あまり
美味しくありません!

全体的にタネが崩れるほど柔らか、

…と言えば聞こえが良いですが
これはおそらく鮮度的に上質とは
言いかねる類いのもの・・

その上
握りひとつひとつが
大き過ぎるのです
まるで江戸時代のスタイルを
忠実に守ったような・・

加えて
お醤油がドロドロ・・
いわゆる
溜まり醤油的なものだと
思いますが
こちらがどうにも
お寿司につけるには
抵抗があります。

勿論
地元では
お醤油といえば
こちらのモノを指すのでしょうが
見た目があまりにも
【ソース】なのです。

パッと見、お寿司にソースをつけているよう…。


店構えは立派ですが
正直、私の口にはどうにも。


・・・が、

━━へぇッ!このお寿司!
とっても不味いですね♪


そんな事を言える訳もありません


悪口ばかりを書いてしまいましたが

そもそも
好み
とは
人によって違うだけで
地元ではやはり
最上級のご馳走を用意してくれたのだと
感謝して然るべき

ここは
やはり
私が間違っていると認めなくては
なりません


笑顔で対応しながらも
この夜のお料理には
ほとんど手をつけず
早々にホテルへと戻りました。

本当に申し訳ないです。


そして
この日以降

ほとんどの食事は
ホテルで摂っていましたが

少し余裕が出来たある日

突然チャーハンが食べたく
なったので

街の中華料理店へ
向かう事にしました。


一軒目

メニューにチャーハンがない・・

そんなバカな。

チャーハンの無い中華料理店が
あるなんて。


・・・きっとたまたま。

二軒目、三軒目・・

何処にも
チャーハンがありません!


そんなバカな?!

ここは日本のはず!

これも
イオリアの壮大な計画のうちなのでしょうか?


・・・・・

はい!

もう、

関西圏の方は
お気付きでしょうけど


地域性で
チャーハンは【焼き飯】と表記される事が
多いのです。


今回
訪れた何れの店舗にも
焼き飯ならありました。


ただ、一切
【チャーハン】とは記されていません。


チャーハンを食べたければ焼き飯を。

厳密には違うお料理ですが
出てくる品はほぼ同じモノです。


そこで
今回
その差について少し気になり
ちょっと調べて見ました。


差としてよく云われているのは

○卵を先に入れるか、後入れか
○塩か醤油か
○中華鍋を用いるか否か

といった所で他には

○卵は入れない
○ソース味

というコダワリがある所も在るようです。



うーん
面白いですが

下手に頼むと
地域カスタムされた
凄いのが出てくる可能性が高い…

ウカツ ( ´△`) カモ…

名○屋シチィ級の
トップクラス・カスタマイズ
だったらどうしよう…

当たりは本当に美味しいですが
外れれば
悪ふざけしている、としか
思えないようなモノが
出てくる可能性さえあります。


不安は募るばかり


それを楽しむ度量を持ちたい所では
あるのですが
初日のお寿司の例もあります。

いくらなんでも
自分からお店に入り
オーダーしたものを
最悪の場合ほとんど食べずに
お店を後にするのは
かなり抵抗があります。

私は常に最悪の状況を想定して
行動に反映させるタイプなのです。

十代の頃などは
常に死を意識して
生活していたものです。



うーん、
でも
チャーハン食べたい…。


しかし


結局
この街でチャーハンを食べる事は
有りませんでした。

今回の街では
失礼を招きかねない冒険より
保険をかけ
ホテルや喫茶店での軽食をメインとしました。

量も少ないですし。


本当になんだか
こうして
見てみると

悪口ばかりになってしまうので・・・

良い所もいっぱいありましたよ!

夜21時には
街にある一切の店舗が営業していないとか。

条例なのか
街の伝統的なモノなのかは
わかりませんが
24時間営業などというものは
この街には存在しません。

連泊したホテルにしても
門限があるほど。


でもね、

これが本来の人間の生活というもの
なのかもしれない

そう
強く考えさせられました。

皮肉ではなく
本当に感心しましたよ。


無理に便利に、

ではなくして

出来ないからやらない

それでも
良いじゃないか!

休みたいのも
夜は寝たいのも
皆おなじ

なのだから

それで良いじゃない・・・・♪


夜は星が綺麗だし

古式ゆかしい
ザルに衣類をおく銭湯にも感動


住民の皆様とて色々な意見は
あるでしょうけど

この街はこれで
良いのではないかな

過労死などという
酷い現実がすぐ身近にある
現代日本の中では

不便どころか
寧ろ
オアシス的な印象さえ覚えました。

・・・

暇がない
人が足りない

なら

【 やらなければ良い 】


時間とは作るもので
それを
街全体で作っている


少なくとも私には
魅力的な部分も
とても多く感じられましたね。


仕事の事は抜きにしても
とても良い経験になりました。


またいつか

こんどは
純然たる旅行で
訪れたいものです。


その時こそ
チャーハンを食べましょう。

・・・・・


いえいえ、
焼き飯でした♪


ではでは。

チャーハンの無い街

【万智子妙】より~


万智はこの街にはチャーハンが無い、といふ
ほんとのチャーハンが食べたいといふ
私は驚いてこの店のメニウを見る

メニウに在るのは
地元では昔から愛されている
馴染みの焼き飯だ

万智にとってほんとうのチャーハンとは
若かりし日に新宿で食べた
あの一瞬、座るのを躊躇ふほどの

テーブル直ぐ向こうの爆炎の舞ふ中で
眺めた空躍るチャーハンなのだ

熱く芳ばしく素晴らしく果てしなく

ただ、食べる者を虜にする

シンプル素材を120%、いや
それ以上ともいえるほどに
活かしきった
あのチャーハンなのだ

・・・

あどけないチャーハンの話である

チャーハンの無い街

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-23

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