東京のはなし2

小学校に上がるとき、線路の向こう側の町へ引っ越した。向こう側はこちら側になった。家族は父と母と私の3人になっていた。
百人一首の時間が好きだった。みんなのお道具箱の中に輪ゴムでとめられた自作の札が入っていた。菜摘という名前は短歌からとられたものだ。国語教師である父の案だった。両親は今でも変わらず、私をなっちゃん、と呼ぶ。

小学3年生の夏、わが家に子猫がやってきた。小さくてあまり鳴かない、怖がりの茶色い毛玉。この子のことを話そうと思っても、いつもうまく言葉にならない。この夏で12歳になる。名前は母がつけた。「茶色いから茶々丸」。

東京のはなし2

東京のはなし2

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-20

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