砂漠の旅 嘘の町

「僕はそれほど美しい事をしてもよいのでしょうか?僕は毒です。壊してしまうのが僕は何より、何より怖いのです」
彼が言い終わらないうちに鳥の人は言った
「いい。君だって幸せになっていい。美しい日常を作り上げていい。」きっぱりと絶対性を持ってはっきり伝えるように言った。
「何故ですか。僕は今までの様々な中で埋まらなさを持ってしまった」
「理由などない。理由など」なぜわからないんだ、とばかりに涙をためて梁を見つめながら言った
「この理由のなさは事象に対する根拠の放棄ではない。」
「それは誰もが持てるぜったいに崩れない「権利」だ」
「理由などない。これは理屈じゃない。比喩や理性では説明できない絶対性を人間は生まれながらに持っている。これはとても幸せな事なんだよ」
涙をいっぱいためて静かに鳥の人は彼を、彼を見た。
「僕はそれを作ってゆく自信がありません」
彼もまた涙をためていた
「自信があるないの問題でもないんだ」
「忘れない事だいっときも忘れない事だ。自分にも幸せに小さな日常を作り上げ、その中に溶け込む権利がある、と」
「それだけで君は随分変われるはずだ。変わる義務を感じるはずだ」「絶対性を前にした人間は強い力を持てるんだ」「その美しさを持つ絶対性を前に、君は変わってゆけるはずだ」強い、強い力を持った眼差しだった。

彼は泣いた。頬を濡らした。

「僕の心は生きていいのですね」
泣きながら彼は言った。

旅の終わりが近づいていた。

砂漠の旅 嘘の町

砂漠の旅 嘘の町

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2017-06-19

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