砂漠の旅 嘘の町
「理性は何より本能を立たせることに長けている。人のおぞましさは理性を使って何よりも生き物らしく本能のままに生きる権利を得てしまった事にある。」
「では戦争に僕たちはどのように対峙していてばいいのでしょうか?」
そのあばたのある若者はいたずらっぽく微笑んで言った
「幸せな反逆、と言う戦争をすればいい。」
「あの豚も昔は普通の人だった。目の前に絶対勝てる試合があったら君だって試合をする事を選択するだろう?あの人はある意味不幸だ。自分は全く傷つかずに、隔離された完璧なシェルターの中にいて、目の前に絶対勝てる試合が、用意されてしまっていると勘違いしている。それも試合する事で莫大な利益と名声を手に入れられる、と。」「人が沢山死にます」
「僕たちだって同じ立場なら同じ『不幸な』選択をしてしまうだろう」
「人間だって、自分の行動の全ては自分の利益のためにある。だから戦争はある種の絶対性を持っている。それを逆手に取るのさ」
「戦争は起きてしまうものだ。本能からは逃れられないのだから。どこかで本能の発散は必要不可欠な事だ」「それは僕たちにも言える事なのですか?」「もちろん」
「だからあの豚を利用する、と言う言い方もできる。奴らはある意味孤立している。利益の奪取は常に孤立とともにある、と言う性格を持っている。
僕らは仲間をたくさん持っている。だから孤立してゆく奴ら、奴らが戦争をしたがるのを待って、その方向に動いたら即座に僕らは幸せな反逆と言う旗を掲げ、奴らと戦えばいい。」
「それが僕たちの本能の発散にもつながる、という事ですか」
「そうだ。平和に向かおうとすることが本能の発散につながるんだ。一石二鳥じゃないか。そしてその本能の発散は心を穏やかにしてくれる。平和につながるのさ。あの豚を利用しよう」そのあばたのある若者は満足げに言った。
ぐんぐん目が落ちくぼみ、鼻を中心に顔が伸びるあばたから長いひげがズシャリと生えてくる
手が大きくなる。彼は何も知らないモグラの獣だった。「俺を利用しろよ」モグラが言った。
(この人、ちょっと変だけど魅力的な人だ)彼は思った。
破壊
破壊
破壊
死
死
死
偉大な人はすべてに絶望して言った
「これがお前の結果だ」
彼はそこにいたのだろうか。
砂漠の旅 嘘の町