砂漠の旅 4
彼女が帰ってきたのは夕方だった。大きな車輪の小型リアカーは、やはり彼女が持っていた。リアカーに大量の薪を積んでいた。
「これ、便利ねー!」彼女は上機嫌だった。たぶん色んな所をウロチョロしていたのだろう。
(勝手に使うなよ)彼は心の中でぼやいた。
薪以外にも木の実や野草が見えた。
「お前が寝ている間に魚も捕った」彼女は言った。
(薪も木の実も野草も魚も不必要に多い)彼は思った。
「ありがとうとかすごいとか、なんか言ったらどうなの?君のも含めた今晩の用意を取ってきたんだよ?」
「うん。ありがとう。すごい。」彼は言った。
「やっぱりわたし、君の事嫌いだ」
(急にそんなこと言われても)と彼は思った。
「そうですか。」彼は言った。
彼女はまた不機嫌になった様子だった。
「君と話をしていとなんだかもどかしくなるんだよ。イライラする。」彼女は言った。
「はあ。すみません」彼は特に申し訳ない、とも思ってない素振りでそう言った。
「リアカーありがとう。勝手に使わせてもらった」彼女が言った。
「こちらこそ」彼は言った。
腰袋の中で厚い布で包まれた彼の茶碗が小さくピキンと鳴り、貫入が小さく走った。
彼はそれに気づかなかった。
砂漠の旅 4