東京のはなし

東京で生まれ育った。

私が生まれたころ、父と母が住んでいたのはアパートだった。私が生まれると両親は杉並区の外れの家を買い、私の小学校入学までの間をそこで過ごした。
父がよくお手製のぬりえを作ってくれた。父は絵が上手い。母は完璧主義な一方、お茶目で気まぐれだった。私は人前に出るのが苦手で、夜泣きをしない子供だった。よく3人で夕飯の餃子を包んだ。
猫が2匹いた。モモちゃんとゲンちゃん。どちらももとは捨て猫で、私の生まれるずっと前から母と暮らしていた。モモちゃんは賢くおとなしい子だった。ゲンちゃんは人を好かず、よく噛みついた。小さかった私をかばってできた傷跡が、今も母の腕のあちこちに残っている。そのせいか今も猫に噛みつかれるのは怖い。でも猫は好きだ。とても好き。

東京のはなし

東京のはなし

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-17

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