ロボー人間
三題話
お題
「棒」
「ロボット」
「ラーメン」
てくてくてく。
規則正しい歩調。背筋も手足もぴんと伸び、寸分違わぬ動きを繰り返す。
だから、
「おはよう、棒人間」
彼の背の高さと線の細さも相まってこんなアダ名を付けられてしまう。
「む……」
当然そんなアダ名は快く思わないわけで、しかし彼はそんな言葉は無視をして、やはり規則正しく身体を動かすのだった。
…
午前の授業が終わり、お昼休み。
それぞれ友達同士が集まって、または一人で、昼食の時間。
給食だったり、弁当だったり。
人それぞれ。
そんな中、黙々と箸を進める彼の姿があった。
「…………」
身体は少し前傾して、だけど背筋は伸びている。美しいとも言える正確な箸遣いで次々と食べ物を口へ運んでゆく。
一口での咀嚼は三十回。
一定のリズムで、早くも遅くもなく、彼の昼食は進む。
これが麺類なら彼は音を立てずにこれをすする。うどんもそばも、ラーメンもパスタも、一定の量を一定の速度で、静かに食す。
箸を置くときも音を立てない。
前傾した身体を戻して。
手を合わせるときも音を立てない。
「ごちそうさまでした」
一人で、だけど近くの席の人には聞こえる声で感謝の挨拶。それが作ってくれた人に向けたものなのか食材に向けたものなのか、それともただのルーチンワークだったのか、誰にもわからない。
そんな彼を見て、周りの人は思う。
ロボットみたいだ、と。
決められたことを決められた通りに、一定の速度で、正確に動く。
一部の人はこう呼ぶ。
ロボー人間だ、と。
だが、そんな彼も普通の人間であることに変わりはない。
◇
彼は今、女の子と向かい合っている。
「な、なにかな?」
「あ、あの……ぼくと………」
いつも以上のぎこちなさで、彼は言葉を紡ぐ。
身体はがちがちに固まっていて直立不動。
棒人間でもなくロボットでもなく、普通の人間なのだから。
ロボー人間