猫、飼い始めました。
蝉の声がする。うるさいな。食べてやろうか。うえっ、自分で言って気持ち悪い。冷房が効いたこの部屋から出たくないし。あ、野良だ。かわいい子だな。おーい、おーい。…手を振ったって意味ないか。この部屋の大きな窓からは、夏の景色を切り取ったように青い空、白い雲、緑鮮やかな木々が見える。大好きなカリンも居るし。僕の城だ。お腹すいた。おやつにでもするか。ああ、夏が終わって秋になっても、ずっとずっとこうしていたいな。
今日も蝉はうるさい。そして、この部屋もうるさい。オヤがなにやら騒いでいる。カリン、どうしたの?そんな目で僕を見ないで。カリン、泣かないでよ。僕がいるから、ね?
そこで僕は、カリンに抱きかかえられた。そして、ゲージに入れられる。病院でも行くのかな?あれ、でも、カリンは来ない。オヤに連れて行かれる。僕の城は?カリンは?ねえ。
僕は、車に乗せられて寝てしまったみたい。何処かに着いたようだけど、ここはどこ?あ、たくさんの動物がいる。お腹すいた。蝉でも食べよう。そう思ったけど、ここには蝉の鳴き声はなかった。やっと見つけた蝉は、死んでいた。うえっ、気持ち悪い。美味しくないや。
その日、また一匹の猫が保健所に預けられた。
猫、飼い始めました。
猫ちゃん飼いたい。