雪の中
ㅤ雪が降っている。すっぽりと沈みこんだので、遠くからは誰かがそこに寝転んでいることなんてわからないはず。
ㅤなかよしの友達におすすめの小説をメールで送った日だった。それは私にはとても大切に思える話で、この子になら、と思って伝えたのだった。結果は最悪だった。
「四回くらい読んだけどなんとも思わないし、読みにくいね」
ㅤ私が書いたと違えたかもしれなかった。確かに私は書くことが下手くそで、とても読めたもんじゃない。もう少し相手に気を遣わせるように、例えば「好きな作家さんの」とかいう風に説明しておけばよかった。失敗した。
ㅤ私がそのメールを読み終わった時には既にすべて今更という感じで、「まじか(笑)」と返信するほかなかった。
ㅤ彼女が悪いわけではなくて、ただ私が間違えたということで、私が送らなければよかったのだ。好みでない文章を読まされる側の身を思うと、私の悲しみの主張はできたもんじゃない。彼女は四回も読んでくれたのに、私が傷付いている風なのはよくないと思った。だから雪に隠れた。
ㅤだれも私をみつけないで。出会ってしまうから感情を共有したいだなんて高次な欲求がでてきてしまうの。
ㅤ雪降る晩はずっと、雪の中にいた。地面の揺れを感じながら、目をつぶっていた。寝返りを打つこともなく、ただひんやりと湿り始めるところの心配だけをして、白い雪の中で携帯の通知音が遠ざかっていった。
雪の中