園児と「ジンセイ」
また一年がたった。窓を開けても寒くない季節になると近くの保育園から元気な歌声が聞こえてくる。今年は水前寺清子の歌「三百六十五歩のマーチ」だ。以前は水戸黄門の歌「ああ人生に涙あり」だった。幼児たちが「あせかき べそかき あるこうよ」や「ジンセイ ラクありゃ クもあるさ」と歌っている。
なんだか励まされているようだな、と妻と二人しておもわず笑ってしまった。幼児達は「ジンセイ」をどんな顔して歌っているのか。「なみだ、べそかきジンセイ」ってなんだ? 意味も分からずに、小さな口をパクパクさせて「ジーンセイは」と大きな声で歌っている様子が目にうかんだ。
幼児教育の重要性が言われている反面、私には心配もある。「生きていくという事は大変だ、最後まで頑張れ、頑張れ」とプレッシャーをかけたら、子供は「大人になりたくない」とか、「生まれて来なければよかった」と言うかもしれない。
そうかといって「人生はばら色、楽しく生きよう」と過度な期待を持たせるのも問題がある。いじめを受けたり、挫折したりした子供が「自分はハッピーでない」と失望して命を捨てるかもしれない。また教育次第で子供のマインドコントロールが可能となる点にも一抹の不安を感じる。園児をきちんと整列させて「教育勅語」を大声で暗唱させている○○保育園が話題になったが、そのような幼児教育を受けた子供たちはどんな大人になるのだろうか。
昔から「アリとキリギリス」、「ピノキオ」、「浦島太郎」、「桃太郎」などの童話や絵本が沢山ある。幼児達は面白い話を聞きながら、努力の大切さ、夢の実現、思いやり、社会貢献等についてなんとなく学びとれる。幼児にはもってこいの教材だ。私は適正な情操教育があれば、小さい時は型にはめないで、「人生の苦労も喜びもやがて自分で体験して分かる事だから、せめてそれまでは楽しく」、「どのように生きていくかは自分で考えさせて」と余裕を持って子供達を見ていく方がいいのではないかと思っている。冒頭の歌はむしろ子育て中のパパ、ママに歌ってもらったらどうか。
私も病気に負けないで残りの人生を頑張ろうと思う。
今日は保育園から聞こえてきた人生の歌で考えてしまった。 2017年6月7日
園児と「ジンセイ」