『パンのヒーロー、もういない』より
「お金持ちになりたいとか、ないものねだりとかそんなのじゃなくて、
怪我をした時に心配してくれる人とか、つらい時に支えてくれる人とか……
なくしてしまったものを取り戻す幸せくらいあっていいと思うの」
彼女は願い事を口にする様に不満を零した。
その言葉に僕は次の一秒を刻む前の秒針の様になった。元々何も持っていなかったけれど……
(略)もし僕が今でもパンのヒーローの様に生きていく事が出来ていたら
諦めていた世の中が少しだけでも変わっていたのだろうか。
そんなもしもを想像しようとしてやめたーー
『パンのヒーロー、もういない』より
幼少期ヒーローだった僕はいない。