老いらく・最終章(年の差を超えた愛) 

老いらくの小説以降、誠、じゅん、ゆきの人生を書いた物です。

一からの出発

金町に引っ越してきた時、誠75歳、じゅん35歳、ゆき5歳であった。3人の人生はここから始まろうとしていた。
6年前、誠とじゅんは運命的な出会いをした。
誠が70歳、じゅんが29歳の時、年の差を超えて愛し合っていた2人に神様が試練を与えた。
ある日一夜を過ごしたじゅんが身ごもった。
誠はじゅんに子供が出来たのも知らず失踪をした。
誠が失踪してからじゅんは1年間誠を探しつ続けた。
1年経った日にじゅんは亡き母親と紫の紐を通して1回だけの願い事をした。
じゅんの1回だけの願い事を叶えるため亡き母親はこの世に再来をした。
母親の再来を期に3人の生活は一変した。
一変した生活の中で3人は新たな旅立をしようとしていた。

朝6時に目覚めたじゅんは2階のリビングに下りて行った。
キッチンの納戸を開けるとじゅんの母親の写真が扉の裏側に張り付けてある。
じゅんは
「お母さん、おはようございます」
と朝の挨拶をした。
写真の母親もじゅんにおはようと言っている様だった。
じゅんが朝食の支度が終わろえとしている所に誠が
「じゅん、おはよう」
と起きて来た。
「誠、おはよう」
じゅんはコーヒーを差し出した。
「有難う」「よく眠れた?」
誠はあくびをしながら尋ねた。
昨夜今まで起こった事、これからの事を遅くまで話をした。
誠は、じゅんも疲れているはずだと思っている。
俺も疲れた。これも年の差かな誠は思った。
「じゅん、引っ越して来て1週間だね」
「まだ慣れないけどこれからの事を考えないと、、、」
と言って誠の言葉が途切れた。
じゅんは
「誠、誠に黙っていたけど私今度の月曜日から仕事に行きます」
「何時誠に話そうか迷っていたの」
そう言ってじゅんは誠に話をした。
2人が話し混んでいる時ゆきが起きてきた。
「お母さん、お父さんおはようございます」
「おはよう、ゆきちゃん」
じゅんが言った。
「おはよう」
誠も続けて言った。
じゅんが
「あ!そうそうゆきの保育園を決めて来ました」
じゅんがにこやかに言った。
にこやかな笑顔の中にも心配そうな一面が有った。
誠はじゅんが仕事の事で悩んでいるようで心配になっていた。
6年前は夜の仕事をしていた事もあるようだった。
「じゅん、仕事の事で悩んでいるの?」
と口ごもっていると
「うん、そうなの」
と言うと誠は少し心配そうな顔をした。
それを見たじゅんは
「誠、誠が心配している事を当てて見ようか」
じゅんは意地悪く誠の顔を見た。
「私が夜の仕事をやると思っているでしよう」
「はい。ピンポーン。当たり」
と言ってのけた。
誠は
「え!」
じゅんは含み笑いをして
「嘘よ」
「駅の近くにある100円ショップですよ」
「おどろいた?」
誠はじゅんと言う女性が解らなくなっていた。
朝食が終わってから3人は銀行により預金残高を確認して車の展示場に足を運んだ。
じゅんは
「自動車なんて夢の又夢だよね」
「でもいいな~あ」
「3人で何処でも行けるしね」
「でも誠とゆきちゃんがいるからいらない」
と言ってのけた。
その時誠は
「じゅん、車買うよ」
「俺もじゅんも免許は持っているから」
「え!誠車買うの?」
じゅんは目を丸くして誠に迫った。
誠は
「じゅんが良ければ買いたいと思っているよ」
「誠、お金は大丈夫なの?」
誠は
「じゅんには言ったか言わないか忘れたが6000万円弟が遺産を残してくれた」
「このお金はゆきとじゅんの為に残したいと考えている」
と言って預金通帳をじゅんに見せた。
「誠、見たくない!」
「私は貧乏でも誠とゆきがいればそれでいい!」
じゅんははっきりと言い切った。
じゅんは誠と知り合う前の事を話し始めた。
「6年前誠と一夜を共にする前は夜の仕事をしていたの」
「男とホテルに行ったことも有ったよ、でも誠とホテルに行った日指に付けていた紫の紐が光ったの」
「この紐が光ると必ず不思議なことが起こるの」
「その時は何とも思わなかったけれど」
「誠お尻が冷たいと言った時又紐が光ったの」
「その時死んだお母さんとの約束を思い出しました」
「お母さんが何か言おうとしている」
じゅんが話している最中うっすらと目に涙が浮かんで来た。
「誠がいなくなった日から必死で1年間誠を探したよ。でも見つからなかった」
「探しまっくて1年経った日お母さんにお願いをしました」
「誠に合わせて下さいと」
「そして、ゆきが生まれた時から夜の仕事は止めました」
「生活は苦しくなったけど誠の子供と一緒だて思うと幸せだった」
誠は失踪してからじゅんの生活がぼんやりとかいま見えたような気がした。
誠は失踪したわけをじゅんに話そうと決心した。
じゅんに6年前居なくなったわけを話そうと思うが聞いてくれるかとじゅんに尋ねた。
良いよと返事が有ったので話始めた。
誠は失踪する2ヶ月前余りに疲れるので病院に行った。
いろいろ検査をした結果末期の肺がんと診断された。
余命1年か2年だとも知らされた。
ただ老人であるがゆえに進行が遅いので余命はもう少し延びるかもしれないと。
病院からの帰り道、誠は治療しないと決断した。
誠の心の中で引っ掛かっている女がいたので
もう遊びも最後だと思い女をホテルに誘って見た。
それがじゅんで有った。
断られると思っていたがじゅんは直ぐに良いよと言う返事をした。
誠は簡単だなと思いじゅんが店を終わるのを店の外で待っていた。
0時じゅんは店から出て来た。
「誠さん、待った」
「ん、いいや、喫茶店にいたから待たないよ」
そう言うと2人は夜の闇に消えて行った。
じゅんには直ぐホテルに行く返事をしたのはわけが有った。
誠はそのわけを知らずじゅんをホテルに誘った。
じゅんは誠に
「誠、ホテルに行ったわけを聞きたい?」
「聞きたい?」
と言った。
誠は
「うん、聞きたい」
「じぁあ、話すよ」
と言ってじゅんは話を始めた。
店で誠の席に着くと紫の紐を着けた指が傷んだ。
最初は何も思わなかったが何度何度そう言う事が有ったので何かなと思っていた。
そんな日、店から帰る途中紫の紐が輝いた。
輝きの中から声が聞こえた。
「じゅん、あなたは気がついていませんがあなた
を心から思い心配している人がいますよ」
「きっとあなたを幸せにして素晴らしい贈り物を
授かりますよ」
「でもその人はいま病気です」
「じゅんの愛する気持ちで病気を直す事が
できます」
その言葉で1年間必死で誠を探しました。
じゅんの話を聞いて誠は失踪している時に不思議な体験をしたわけが今解った。
誠の不思議な体験とは夏の暑い日に夜空を眺めていたとき
「私の話を聞けば誠さんあなたは生まれ変わりますよ」
突然ひときわ輝く星から声が聞こえた。
何だろうと思ったが空耳だろうと思い歩き始めた。
すると又声が聞こえた。
空を見ると一段と輝きを増している。
何か俺に話しているかな思った。
どうせ長くない命だから聞こえた言葉を信じようと思った。
思った瞬間力が抜け生まれ変わった様に感じた。
不思議な声はじゅんのお母さんの声で有った。
一通り話した時誠もじゅんも胸の支えが取れた様にスッキリとした。
車の展示場で一通り見た3人は、車のパンフレットを手に帰ろうとしていた。
ゆきを真ん中に川の字となって歩き始めた。
じゅんが
「お~て~て~つないで」
と歌えば誠が
「の~み~ちをゆけば~」
ゆきも
「み~んな~かわい」
と歌い出す。
誠はじゅんとゆきを残して死んでいられるかと心に誓った。
「じゅん、病院に行って検査受けて来るよ」
「うん、私とゆきがついているから」
「それから私のお母さんもついている」
じゅんはそう言って歌の続きを歌い出した。
「誠、コーヒー飲む?」
じゅんはキッチンから誠に声をかけた。
「ありがとう、一緒に飲もう」
そう言って誠は車のパンフレットを見ていた。
「誠、本当に自動車買うの?」
「自動車無くても電車でも良いよ」
「う~ん」
と頼りない返事をしてパンフレットを見ていた。
「ま!こ!と!」
と言うと
「ああ!びっくりした!」
「何❓」
誠はパンフレットから目を放した。
「何じぁあ無いよ」
「さっきから呼んでいるのに」
じゅんはキツい言葉であったが目は微笑んでいた。
「ゴメン❗ゴメン❗車に夢中になっていた」
そう言いながらコーヒーを口にした。
「じゅん、トヨタのヴィッツが良いと思うが?」
「私自動車の事は解らない」
「本当に買うの?」
じゅんは尋ねた。
「うん」
「車が来たら最初に何をすると思う?」
コーヒーを飲みながら誠がじゅんに尋ねた。
じゅんは
「3人でドライブね」
「温泉がいいな~あ」
「違うよ」
「もっと大事な人に会いに行く」
と言って誠はゆきの顔を見た。
じゅんは
「大事な人?」
「誰?」
「一番大事な人だよ」
「じゅんのお か あ さ ん」
と誠が言った。
「お母さん!」
とじゅんは驚いた。
「そう、お母さんのお墓に行く」
「3人の一番大事な人だから」
と言った。
じゅんはその言葉に一瞬息が詰まった。
大きく息をすると涙が止めでなく流れた。
「誠!」
と言ってその場にじゅんは泣き崩れだ。
泣き止んだじゅんはすくっと立ち上がり
「まこと、ありがとう❤」
と言って誠の体に抱きついた。
誠もじゅんの体を
「じゅん!」
と言って強く抱き締めた。
「あいしてる、あいしてる、あいしてる」
と何度も何度もじゅんは誠の腕の中で呟いた。
「お母さん、泣いているの?」
ゆきが心配そうな顔をして2人のそばに来た。
「ゆき、お母さんは泣いてなんかいないよ」
「お母さんは嬉しいの」
「幸せなの」
ゆきを抱き締めた。
その夜3人はゆきを真ん中に川の字で寝た。
じゅんが朝食の支度をしていると誠が起きてきた。
「おはよう」
じゅんも
「おはよう」
「今日だね」
「うん、今日だ」
誠は嬉しそうに言った。
誠は
「10時に車が来るから朝食が済んだら出かける支度をしないと」
「もう出かける支度は終わってますよ」
「誠は鈍いんだから」
そう言ってじゅんは舌をペロッと出した。
朝食が終わり出かける荷物を1階に下ろしている時ピンポンとチャイムが鳴った。
じゅんが
「きた❗」
と言ってドアを開けた。
自動車ディーラーは駐車場に車を入れると簡単な説明をして帰った。
「誠、車だよ、家の車だよ」
「ゆきちゃん、お父さんが買ってくれたんだよ」
じゅんは子供の様にはしゃいだ。
ゆきとじゅんが2人で
「お父さんありがとう」
と言ってペコッと頭を下げた。
誠は天を仰ぎ
「お母さん、ありがとう」
「今からお母さんに会いに行きます」
と3人で言った。
じゅんとゆきは後ろに乗り誠が運転した。
首都高速から東名高速に入り静岡に向かった。
御殿場のサービスエリアで軽く食事をした。
「誠、私たちこれで良いのかなあ」
「あれもこれもみんな誠のおかげです」
じゅんはしみじみと呟いた。
「違うよ」
「みんなじゅんのおかげさ」
「ゆきを生んで育て上げた」
「苦労して」
そう言って誠は心からじゅんに感謝していた。
「誠、静岡に着いたらおさかなを食べたいな」
「美味しいんだから」
「誠とゆきちゃんに食べさせたいな」
じゅんは優しく微笑んだ。
誠は
「今日はゆきちゃんとお母さんと3人でに美味しいものを一杯食べようね」
「そうそう、じゅんのお母さんにも美味しい物を持って行こう」
と言いながらサービスアリアを出発した。
車は静岡市内を通過して安倍川を渡り焼津市内に入った。
お花とお供えを買いお寺さんに向かった。
じゅんが
「お母さん来たよ」
「3人で来たよ」
誠も
「お母さん、じゅんとゆきと一緒に来ました」
ゆきはじゅんの手をしっかり握りしめていた。
誠とゆきの右手人差し指が輝き始めた。
3人はお母さんが何か言っている。
と思った時、ゆきの様子が変わった。
「誠さん、じゅん、ゆきちゃん、よく来ましたね」
ゆきの目から涙が落ちた。
じゅんはお母さんが喜んでいると感じていた。
「誠さん、じゅんの誠さんを愛する心でかんは無くなりましたよ」
じゅんと誠さんの相手を思う心が病気を消滅させた。
じゅんの母親は
「誠さん、ありがとう」
「これから、じゅんとゆきをおねがいします」
ゆきの口を借りて話した。
その時まで病気の事が気になっていたが、もう今は病院に行って検査をする気持ちが無くなっていた。
自暴自棄て検査を受けないのではなかった。
じゅんの母親言う事と不思議なの出来事を信じたからである。
「お母さん、いずれ私も誠もお母さんさんの所に行きます」
「それまでゆきを2人力を合わせて育てます」
「見守っていて下さい」
誠も心の中で同じ事を言っていた。
3人は長い間お墓の前で手を合わせいた。
誠は墓石から離れる前にもう一度墓石を見た。
はっきりとお母さんの全身がそこに現れた。
にこやかに微笑んでいた。
「誠さん」
一言いって消えた。
「お母さん!」
誠は叫んだ。
その一部始終をじゅんもゆきも見ていた。
「さ、帰ろ」
誠の声に
じゅんもゆきもうなずいて答えた。
帰りの車の中でじゅんが
「誠、お墓の前でお母さんが私にだけ言った事があるの」
「聞きたい?」
「聞きたくない」
「余り良いことじぁあないね」
「じゅん1人に言う事は!」
誠は意地悪く言った。でも目は微笑んでいた。
「あっそ、聞きたくないのね」
「じぁあ言わない!」
じゅんのその言葉に
「ゴメン❗聞かせて下さい❗」
誠は言って頭をペコと下げた。
2人とも笑っていた。
じゅんは母親との話を話始めた。
「お母さんがゆきが1人では寂しいので子供を作ったらと言ったの」
「でも、誠は年だし?」
そう言ったら
「誠さんは大丈夫よ」
「まだ子供は出来ます」
とお母さんは言った。
じゅんは
「誠に話してみる」
誠は話を聞いて、俺が今から子供を作る。
そんなバカな!と思い
「じゅん、ダメ!」
と言い放した。
じゅんは母親と話をした内容を誠に話した。
誠は何て言ったら言いか解らなくなっいた。
「じゅん、少し考えさせてくれ」
誠は途方にくれた。
車は御殿場のサービスエリアに入り休憩する事にした。
サービスエリアのレストランで笑顔一杯のゆきとじゅんを見ていると目に涙が浮かんで来た。
それをよこ目で見たじゅんは
「誠、どうしたの?」
「泣いてるの?」
「違うよ、幸せで嬉しくてさ!」
誠は笑顔で言い放した。
じゅんはゆきの手をしっかりと握りしめた。
「お母さん、痛い!」
ゆきの声にじゅんは
「ゴメン❗ゴメン❗」
と言ってゆきの手を握る力を緩めた。
「さ~、帰ろか」
誠が言うとじゅんが
「しゅっぱつ、しんこう」
と言っておどけて見せた。
車は東名高速を抜けて首都高速を四つ木インターに向けて出発した。
葛飾の家に着いたのは夜も遅かった。
リビングで誠とじゅんは2人目の子供の件で話しをしていた。
「誠、私誠の子供もう1人り欲しい」
じゅんは真剣な目をして誠を見つめた。
「少し考えさせて」
と言って視線をじゅんから放した。
じゅんは目を真っ赤にして
「誠、今夜いっしょに寝よ!」
「いいでしょ!」
誠にすがる目をして言った。
誠は
「う、、うん」
3階にはゆきが寝ていたのでじゅんは1階に降りて行った。
誠が1階のドアを開けるとじゅんは誠に抱きつ
「誠、愛してる」
「もう逃がさない!」
と言ってキスをした。
キスをしながら誠も
「じゅん」
と言いながらベッドに向かった。
「誠、愛してる!」
「赤ちゃん、お願い!」
「誠の赤ちゃん!」
そう言って誠の下半身にむしゃぶりついて来た。
その夜、誠は年甲斐もなく燃えていた。
「じゅん、いいのか?」
じゅんも
「うん!」
誠はじゅんの足を大きく広げた。
誠の下半身は痛いくらい大きく充血していた。
「じゅん、行くよ❤」
「うん、来て❤」
2つの体は1つになった。
「うう~ん」
「うう~ん」
じゅんは歓喜の声を喉の奥から出していた。
誠も絶頂に達し
「じゅん、行くよ❤」
といって誠はじゅんをしっかりと抱き締た。
「ん!!」
と言いながらはてた。
しばらくして1つの体が2つに別れた。
じゅんな目から大粒の涙がこぼれていた。
「誠、ありがとう❤」
一言いって室を出て行った。
誠はベッドに横たわり天井の一点を見つめていた。
シャワーを浴びてリビングに行くとじゅんはシャワーを浴びてパジャマに着替えソファーにいた。
「ありがとう❤」
「今、お母さんと話してたの」
「誠さんを大事にしなさいと言われたよ」
じゅんは優しい口調で話した。
じゅん、この年になって生き甲斐を見つけた。ありがとう、誠は心からそう思っていた。
俺はこれからどうしたら良いか、何をしたら良いかまだ決まった物はなかった。
これでは何の為に生きているのか何の為にじゅんとゆきと一緒にいるのか解らなくなっていた。
「誠、誠さんは悩んでいるから私に誠さんの支えになってあげなさい」
お母さんに言われたわ。
「でも安心しなさい」
「誠さんは強い人だから、あなたたちは幸せになりますよ」
ともお母さんは言っていたよ。
その夜3人は3階で川の字になって寝た。
2人はじゅんは駅前の100円ショップ、誠は警備の仕事に行っているある日、1通の手紙が届いた。

誠がんばる

「誠、静岡から手紙が来ているよ」
じゅんの声に
「ありがとう」
誠は返事をした。
誰からだろうと思いながら差出人を見た。
田久保利作と書いてある。
誠は
「田久保利作」
声を出して読んだが思い出せない。
住所を見ると焼津市中港1丁目としか書いていない。
じゅんが
「誰から?」
台所から声をかけた。
「田久保さんと差出人ってあるが見当つかないな」
誠は思い出せないでいた。
「誠、中身はなんて書いてあるの?」
「今見る」
誠は封筒の中身を取り出して開いた。
「佐藤誠様、ご連絡を頂きたく宜しくお願いいたします。」
と書いてありあとは電話番号が書かれているのみであった。
何だろうと思いながら誠はじゅんに
「ただ、連絡を下さいとしか書いてないよ」
「ふ~ん、電話してみたら」
じゅんもあまり関心は無いような口調であった。
この1通の手紙から3人の運命が大きく変わるとは3人共解ってはいなかった。
数日たって誠は手紙のことを思い出し電話を掛けようと思いたった。
手紙を取り出し携帯から電話を掛けた。
「もしもし、佐藤誠と申します」
「お手紙を拝見してお電話をお掛けいたしました」
「はいはい、佐藤誠さんですか」
「お電話お待ちしていました」
返事が返ってきた。
佐藤さんに手紙を差し上げたのはある人からの依頼で手紙を差し上げたという内容を聞かされた、
その後今までの一部始終を田久保さんから聞くことになった。
最後まで話を聞いた誠は
「そう~か、そんな事だったのか」
ため息交じりで言葉をはいた。
最後に田久保さんはフリーダイヤルの電話番号を言った。
「私に手紙を依頼された方が必ずフリーダイヤルの電話番号に電話するように言われました」
その言葉を最後に電話を切った。
メモした番号を見ながら誠は何だろうと考えていた。
じゅんは長電話であったので心配になり誠のそばで立っていた。
「じゅん、今度はこの電話番号を教えられた」
と言ってメモを見せた。
「誠、話はどんなことだったの」
「うん、今から話す」
誠は今電話で聞いた内容を話し始めた。
話が終わった所でじゅんは
「誠はどうするの?」
「解らない」
と答えるだけだった。
誠は今後何をしたいか決めたらフリーダイヤルに電話する事だけは頭にあった。
そんな話をしてその日は終わった。
誠は今後やるべきことが決まらないまま2か月が経った。
じゅんが
「誠、今夜話があるんだけど」
「うん」
誠は仕事に出かけた。
仕事から帰って来てリビングに上がった誠にじゅんは
「食事済んだら大事な話があるから」
じゅんは夕食の支度をしていた。
ゆきはテレビの前で1人遊んでいた。
ふと誠の脳裏に兄弟がいたらゆきも寂しく無いのになあの言葉がよぎった。
キッチンからじゅんが
「誠、ゆきちゃんごはんだよ」
の声に2人はテーブルに着いた。
夕食が済んでゆきが寝たのを確認した後じゅんは
「誠、お待たせ」
3階から降りてきた。
「誠、お医者に行ってきた」
「何処か具合が悪いの」
じゅんの言葉に誠は聞き返した。
じゅんは
「悪いじゃあ無くて良いの」
誠は
「?????」
「何?」
と聞き返した。
じゅんはふふふと含み笑いをして
「赤ちゃんが出来たの」
頬をピンク色にして囁いた。
「え❗」
まさか?まさか?と誠は呟いていた。
「ほんと!」
誠は嬉しさと不安混じりあって複雑な気持ちであった。
じゅんは
「お母さん、ありがとう。」
と言って誠に抱きついた。
「お母さん有難う御座います」
「お母さん、やりたいことが見つかりました」
「フリーダイヤルに電話します」
「じゅんと2人でやります」
誠は心の中でじゅんのお母さんに報告した。
「じゅん、やりたい事が見つかった」
「じゅんのお母さんに報告した」
「忙しくなるよ」
「じゅん、俺頑張るからな」
誠の言葉にじゅんも
「うん」
と笑顔で答えた。
その夜誠はフリーダイヤルに電話をした。
電話の発信音が最初トゥルル、トゥルルとなっていましたが一瞬プツンと切れるとトゥルー、トゥルルと言う音に変わった。
誠は何かなと思っていると、誠さんと言う声が聞こえた。
誠ですけど誰ですか?と言うと私です、じゅんの母です。と答えた。
「えっ!!」
「お母さんですか?」
誠の声にじゅんもびっくりしたようであった。
誠はじゅんを見て
「お母さんだ、お母さんだ」
叫んだ。
「誠、さっきお母さんと話したよ」
「誠さんから電話が来ると」
じゅんは涼しい顔をして誠に話した。
知らないのは俺だけかと言いながら
「お母さんひどい」
電話に向かってにらみつけた。
しかし、にらみつけたと言うが目は微笑んでいた。
「じゅん、電話交代する?」
「ううん、誠、話して」
しばらく誠とじゅんの母親の話が続いていた。
話が終わり電話を切ると誠はじゅんに
「明日宝くじのBIGを買いにいくよ」
「うん!」
じゅんは何もかも解っているようであった。
「 何が有っても私とゆきは誠に着いて行きます」
誠は亡くなったはずのじゅんの母親と話したりフリーダイヤルが何処か解らない所に繋がったり訳が解らなくなっていた。
じゅんは何もかも解っているようでクスクス笑っていた。
翌日誠は近くのコンビニに行った。店の前に旗が立っていた。当選金額が10億円の旗が風にたなびいていた。
コンビニでBIG5口を買った。引き換えは1週間後からである。
夕食の時誠はじゅんにこれから何をするか話をした。
「じゅん、宝くじが当たらなくても働いて何としてでもやりたいことがある」
「弟から受け取った遺産には手をつけないよ」
「これはゆきとじゅんのために取って置く」
前置きをして誠は話始めた。
今高齢化社会で老人が増えている。そんな中で年を取った親に生活のすべてを頼りきっている子供がいます。
体が不自由な子供、引きこもりの子供を持っている親は自分が死んだらと言う事を考えたら死んでも死にきれないと思う。
そういった親の苦悩を取り去るボランティア活動をしたいと考えている。
誠の話を聞いたじゅんは
「誠の考えている事思う通りにやって」
「家は私が守る!」
と言い切った。
誠は1つ心に引っ掛かっている事がある。
前にじゅんが他の男とホテルに行った事があると言っていた事である。しかし俺も他の女とホテルに行っていた。何故女がホテルに行くことが駄目で男は良いのだろう?俺の身勝手さだな。そう思うと胸の支えが取れた。過去の事ではなく今現在どうであるかが重要である。俺は今じゅんを猛烈に愛してる。ゆきを猛烈に愛してる。それで良いのだと思った。
今夜も3人は川の字になって寝た。
今日は宝くじの発表日である。
「じゅん、今日宝くじの発表があるから後で見に行って来る」
の言葉にじゅんは
「は~い」
と一言言っただけだった。
発表結果を見た誠の顔は青ざめていた。手も心ならず震えていた。
当たったのである。10億円当たった。
誠の頭の中は混乱していた。
家に帰り誠は
「じゅん、宝くじ当たった❗」
「当たったよ❗」
「そうよ、当たったのよ」
じゅんの言葉に誠は
「????」
「何❓」
じゅんに聞き返した。
「宝くじ当たることお母さんから聞いていました」
「知っていましたよ」
「ええっえ~っ」
誠は玄関にしゃがみこんだ。
誠の指に着けた紫の紐が光輝いていた。
「お母さん!」
と一言誠は呟いた。
その夜、誠とじゅんは遅くまて話し合っていた。
突然誠はじゅんに向かって
「俺は何の為にじゅんと一緒にいるのかなあ」
「俺はじゅんに取って必要なのかなあ」
と考えてしまう。
「あのねえ、誠」
「お母さんは私に取って誠が必要だから誠に命を与えてくれたんじぁあない」
「誠が必要でなかったら今の誠はここにいないよ」
誠は今思うと、今までの人生はじゅんを探してじゅんに会うために過ごした人生だったと思った。
誠は、俺はじゅんを探し当てたがじゅんを探し当てない人は沢山いるだろうと思っていた。
「じゅん、有難う」
「俺と出会ってくれて」
「誠、私も本当の事言うわ」

じゅんの秘密と愛の結末

じゅんは誠に本当の事を言う決心をした。
「誠、私が今から話す事を信じて頂戴」
じゅんは、意を決したように話し始めた。
私と母は私達の志を託せる人を探していたの、母も私もこの世の人間では有りません。
一度死んだ人間です。死んだと言う表現は私達私達から見れば正しくないのですが、、、、。
私の肉体、外見は人間と同じです。ただ一つ違うのは脳が二つ有ることです。二つ目の脳は検査してもその存在は解りません。脳が二つ有るものしか見えないのです。この二つ目の脳で私達は交信出来るのです。
ゆきにも脳が二つ有ります。
そう、これは人間が言う四次元の世界なのです。
三次元の世界の人は四次元の世界を見られませんが、四次元の世界の人は三次元の世界が見えます。三次元から四次元の世界に戻ろうとすると三次元の世界の人には死んだと映るのです。でも三次元の世界で死んだ人は四次元の世界で生きています。
四次元の世界では一家の家長は女性なのです。
男はただ繁殖の為に存在するに過ぎないのです。
しかし、四次元の世界では女性が生まれる確率は0.1%以下です。
四次元の世界にも死は有ります。家長が女性を出産しなければその家は消えて無くなります。又、女性を出産すれば男の繁殖行動は無くなり、男はその時点で消えて無くなります。
男が消えて無くなるのは四次元で生活している男の事です。誠は三次元にいますから消えて無くなりません。
私の家庭はゆきが生まれたので無事です。誠には感謝しています。
じゅんの話が終わった後誠は
「じゅん、じゅんは俺を愛していなかったんだ」
「ただ、女を生むための道具だったんだ」
じゅんは
「そうよ、男は皆女の道具なのよ❗」
そう言って微笑んでいた。

誠とじゅんのその後

誠はじゅんの秘密を知った日からじゅんとの関係がぎこちない物になっていた。
しかし、じゅんはいつも通り明るく元気な様子を見せている。
「誠、最近元気ないね」
「どうかした?」
「心配よ」
誠はうんうんと言うばかりであった。
誠はこれからじゅんとの関わりをどうしたら良いか解らなくなっていた。
「誠、誠が何を悩んでいるか解るよ」
「でも、これが現実だから現実を受け入れるしかないよ」
一つ良いことを教えてあげるとじゅんは言って話始めた。
誠お腹の赤ちゃんは女の子だよ。でも、脳は一つしか無いよ。誠と同じだよ。
私達世界では一家族に女性は1人しかいらないの。たからお腹の赤ちゃんは誠と同じだよ。
私決めたの!ゆきを一家の家長にする。そして、私は脳を一つ捨てます。三次元の人間になって死ぬまで誠と一緒にいることを。決めたの!
誠はじゅんの話を聞いてやっぱりじゅんは俺の事を愛してくれていたんだ。じゅんを疑って何て俺は愚かな男だと情けなくなていた。
「じゅん、ゴメン❗よ」
「疑ったりして」
「誠、いいの」
「誠を愛してるからいいの」
「誠、ゆきはいずれ向こうの世界に行くけど泣かないでね」
「死ぬのではないから」
「向こうの世界から私達の事を何時も見ているわ」
「泣かないでね」
誠は理解出来ないけれども解ったと言うしかなかった。
「じゅん、ゆきは何時向こうの世界に行くの?」
「うん、赤ちゃんが生まれたら直ぐ」
「そしたら、ゆきとは二度と会えないの?」
誠は寂しそうな顔を してずねた。
「うん」
私も会えないよ。じゅんも寂しげに言った。
でも、赤ちゃんがお腹にいる。ゆきちゃんではないけど3人いる。誠にはまだまだ頑張ってもらわなくちゃ❗とじゅんはおどけて見せた。
「愛してる、誠❗」
誠も
「愛してる、じゅん❗」
幸せな家族がここにあった。

老いらく・最終章(年の差を超えた愛) 

老いらく・最終章(年の差を超えた愛) 

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-02

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  1. 一からの出発
  2. 誠がんばる
  3. じゅんの秘密と愛の結末
  4. 誠とじゅんのその後