立ち読みの流儀

立ち読みの流儀

 この町には、コンビニは一つしかない。田畑に囲まれた、静かなところにあったが、品物はたくさんあった。中でも、雑誌は、町で一番早く手に入った。
 そこに、一人の若者がいた。彼は、ある週刊誌を読むために、毎週かかさず来ているのだった。しかし、彼は、雑誌を買ったことはなかった。雑誌は立ち読みをするもので、買っていくのは100円のジュース一本だった。それが彼の流儀だった。
 ある日、彼はコンビニに入ると、いつも通り立ち読みを始めた。はじめのページから、飛ばすことなく半分まで読んだ。
 そこに、一人の女性が、コンビニに入って来た。彼女は、仕事であちらこちらで働いていた。この町には、仕事で来たのだ。そして、このコンビニには、ある週刊誌を買うために来ているのだった。コンビニで雑誌を買い、次の町に仕事に行く。それが彼女の流儀だった。
 彼女は、彼に声をかけた。
「その雑誌を買いたいの」
「すまないが少し待ってくれないか」
「いそいでるのよ」
「君はこの町の者かい」
「仕事で来ているの」
「この町では、ここでしか読めないのだ」
「ほかの町に行けばよいじゃない」
「となり町へは、バスで1000円かかる。それなら雑誌を買ったほうが安い」
「それなら、待っているわ、早く読んでね」
 そう言うと、彼女は、入り口の近くの、席に座って彼を待つことにした。彼が雑誌を買うことが、彼女の一番の問題だったからだ。
 彼は、急いで雑誌を読みはじめた。それでも、読み終わるには、30分はかかるように思えた。そこで、彼は彼女を呼び、200円を渡し、これで何かを食べて待つように言った。彼女は、はじめは断ったが、ソフトクリームを買い、待つことにした。
 30分後、彼は読み終わった。雑誌を閉じると、そのまま彼女のもとに行き、雑誌を手渡した。
「すまない、待たせてしまって」
「大丈夫よ、ソフトクリームありがとう、おいしかったわ」
「そうか、今週も雑誌は面白かった」
「それを聞いて安心したわ、こんなに待ったのですもの」
 彼女は、立ち上がり、レジに向かった。雑誌代の500円を払うと、大きく背伸びをし、コンビニを出た。
 彼は、いつも通り、ジュースを買って、帰ろうと思った。だが、今日は得をしていると考えて、ソフトクリームを買った。立ち読みができなかったら、となりまちに、1000円をかけて行かなければならなかったからだ。彼はソフトクリームをもって、コンビニを出た。
 その時、彼は、自分がコンビニで500円使ったことに気が付いた。これでは、雑誌を買うのと同じである。しかし、立ち読みで得をしたぶん、使っただけなのだ。彼はこれから、コンビニで500円使うことを、流儀とすることに決めた。
 その時、彼女は車に乗っていた。今日の仕事も順調だ、次のコンビニに行かなくては。

立ち読みの流儀

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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-06-02

CC BY-NC-ND
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