悲日

君と出会った頃は僕もまだ若く、22になりたての成人した子供でした。そして君は14の少女でしたね。今でも初めて会った14の君の顔をくっきりと覚えています。
なぜ君が僕に恋をしたのかも分からないし、僕が君を死んでもいいと思うくらい愛したのかも未だにわからずにいます。答えがはっきり、今ここに残っているのはただ、あの日々は間違ったものではなかったということだけです。
君は14の容姿でもっと、もっとその先に知っていくすべての事柄を知ってしまった後のような顔をしていましたね。垢抜けない僕と同じ、いやそれよりもっと大人びたそんな目で僕との会話に興じてくれるのです。それほどにも僕は現実を夢見ていたし、それほどにも君はその先の現実を知っているような子だったのです。
その自分にはないものを持っている君にすぐに惹かれていったのはあの頃の僕からすれば当然の成り行きです。それほど魅力的な子に君は見えていたのです。
中学生に成人した男が惹かれるなんて、傍から見れば気味の悪いものでしょう。隣に並んで歩くと殆どの人たちは兄妹として見るのです。それほど素直に受け入れがたいことなのかもしれませんね。ですが、君はそんな周りも常識も興味が無いようでした。
共にする日は増え、日々は過ぎ、一線を越え、その幼い身体に僕は手を出す。倫理的には間違っていたはずですね。
ですがあの頃の僕は間違いという発想すらなかったのです。
僕には年の離れた姉がいました。もう亡くなりましたが。彼女は僕を包み込み愛してくれて、姉の行為の相手をさせられ続けた僕には、倫理など子供の頃からすでに持っていなかったのです。
そんな君も僕を受け入れてくれて、すべてを包み込んでくれましたね。なぜだか姉を思い出すようなそんな温かさでした。
そんな君との行為に君からの愛を感じることが一度もなかったことが僕にとって悲しいことでした。君からの身体からは切なささえ伝わってきます。僕が君に伝えているこの君ととはきっと異なるのもだと身体で感じ取っていたのです。
僕はそのことについて、君に聞くことも、伝えることも出来ませんでした。
それでも君は僕が好きだと言ってくれましたね。あの言葉はきっと本当の君の言葉と僕は信じています。君は照れるときに一度髪を撫でる癖があることを僕は知っているのですから。
ですが髪を撫でながらそう君が言った後には必ず虚しい目をしていましたね。僕は君のその目がとても心に引っかかっていたのです。
なので、僕の前から突然消えてしまったとき、あの時の君の虚しい目をまず最初に思い出してしまいました。
消えてしまった君を探して1年が経った頃です。君を探す過程で僕は君のすべてを知ることになりました。君はきっと出会う前から知っていたのですね。
君が僕の前から消えてもう4年が経ちます。僕の死んだ姉のように美人になっているかもしれませんね。僕はもう想像することしか出来ません。きみが僕と出会おうと思ったきっかけの最初はきっと寂しさからの出会いだったのでしょう。大事な繋がりを欲した違う形の愛だったのかもしれません。ですが、その真意に気付かず愛してしまった僕と、それに答えてしまった君の本意は今になって知る必要はないと思っています。
今、ここに残っているのは君との思い出と、君を女性として今も愛し続ける僕の想いだけです。だから、いつかもう一度僕の元で好きだと言ってください。



親愛なる姉の娘、君に贈る

悲日

悲日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-05-27

Copyrighted
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