アンナ・トースト

アンナ・トースト



   


  



   


  


たましいのアンナ・トースト


材料: 愛しあうのに必要なもの


  愛の結実のパン・ド・ミ1斤, 確かめあう熱量の電子レンジ

  確かめあうスペースのお皿, 確かに濡れあうバターorマーガリン


感度が伝う白い陶器 弾力を鎮めるように

アンナとリルの断片 ふたつを重ねて熱をくべらせる。


ダブルサイズで 突き燃やすトースターはいらない

濡れあう先端を引き伸ばしあうには セミダブルのレンジがいい。


“たましい、気持ちいい?”

その先端 滑る小麦の上 渇いたイーストを摺り合わせる術。


レンジでチンする一分間のなかに

互いの心臓が止まるまでの日々を歌う。

なだらかに肌が 柔らかい生地

熱すぎる夜を焦がさない ふわふわの朝を。 


“マーガリンならリルで バターならあたしね”


濡れあいを擦りあうアンナとリル、練りこむ。たましいふたつ、揺りながら塗る。

アンナとリルの先端の湿り、交じり合う生地。

ジャムも蜜もクリームもジェルもいらない。

なにもつけない湿りが必要。


“来て。熱には熱で、ただただ潤うの、果てるまで” 


  

黄金色 風 揺れる穂麦 丘陵

ログハウスのコテージがあればいい

ハンモックでチューさえすれば 物語の高鳴りは夜に刈り入れる。




きみが探したエスプレッソの絵、僕が一番似てたんだね、か細く。シナモンが溶けるように秘密。どちらが先に、なぜ選んだかなんて。「アイシテル」は泣いた後の沈黙が鳴る、諍いの消えたラズベリーの音色。ふわふわって、生まれたての気持ちだよ。どちらがさきに心臓とまっても。ふたつ、たましいは見つけた。背負って、背負いきれなかったものをわけた、穏やかな人生の一日の朝。




たましいの アンナ・トーストの出来上がり。





   


  



   


  

アンナ・トースト

久しぶりに、短歌を使わない純粋な詩を書いた。

内容は単純に、パンをトースターで焼かずに電子レンジで温める方法で食べたら美味しいです、ということ。僕は1分だけチンする。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
先端KANQ38ツイッター https://twitter.com/kanq38

アンナ・トースト

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-05-27

Copyrighted
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