四行詩集
[1]
おぼろまなこを擦り明け
日輪草の垂る面に
君が憂ひをのぞめども
なす術もなくまた夢にまどひぬ
[2]
窓にながむるあけぼのの
雲ひとつなく澄むあをさ
うとくなりたる初恋の
君がこゝろも偲ばるゝかな
[3]
夢に結びし指と指
玻璃のナイフを包み持ち
互(かたみ)に唇(くち)を切り裂きて
あけに溶け入る破れごゝろ
[4]
定めなくなく虫の音に
定めなくゆるなみがしら
なべて果敢なき秋なれば
吾のこゝろも留めかねつも
[5]
野分やまざる十月の
伊勢はひねもす蒸し暑く
まだき銀杏はもみぢして
時雨も知らず勢多に散りゆく
[6 クリスマス]
ワイン一瓶呑みほせど
半刻待たずゑひさめて
うらめしきかなこの躰
こゝろながらにゑひ泣きもせぬ
[7 クリスマス 二]
ひとりワインを呑みしうち
イエス生れし日はあけぬ
午前六時の半ばすぎ
ゑひさめきりてふるへかじかむ
四行詩集