言葉をなくした少年
頭の中でうまく文章をまとめられない少年がいた。
だれかに話しかけられても少年は単語か、最低限の言葉を口にするだけだったが、
それを気にしているのは少年ひとりだけだった。
しかし、口下手なことを隠してきた少年を気遣う大人がいなくなった頃、
以前までは聞き手に徹することで隠していた短所が表に出てくるようになった。
これはもう解決のために動かなければならないと悩んだ少年はある日、
自分が言葉をうまく伝えられないことや、会話がどれほど苦手であるかを専門家に相談をした。
しかし専門家は「これだけ話ができれば大丈夫ですよ」と微笑んだ。
そして少年は言葉を失った。
言葉をなくした少年