絆創膏の義務

絆創膏は生まれた日から、義務を与えられた。
怪我をした人がいれば身を呈(てい)して傷口を守り、その傷が治るまで順番に介抱し、
せっせとその義務を果たした。

そして役目を終えた絆創膏は必ず、ゴミ箱に身を収めた。

感謝の言葉を述べられることもない絆創膏だったが、誰も絆創膏の不満を耳にしなかった。
それは、絆創膏が不平を言わなかったからではなく、絆創膏というものはそうでなければならないからだった。

絆創膏の義務

届かない不満ほど虚しいものはないが、それでも口にしてしまうのだ。

絆創膏の義務

絆創膏へ、尊敬の意を込めて。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-05-13

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