ピアスのお守り

ピアスのお守り




   


  



   


  




「猫よ、媚びないの」

子犬だと思った

砂糖を探す寂しげな犬



アタシが褒めるときは

心底褒めるの

スタンディングオベーションよ



「最近リルとアンナさんほほえましいね」

 本当のアンナ呟く



クールにも

ドライにもならない

ウェットな潤いで 身体を待ってる



おまえを待ちながら

にわか雨が降る

濡れていきたい 濡れるのが好き



新たな日々

テラスに置いたカップ

紅茶の残りに雨が降る



足を洗ってくれる

おまえ

宗教画とドビュッシー 哀しすぎて



目覚めたてのまどろみ

二人だけで

サンドイッチ食べ

裸で過ごす



陽の光降りてきて

熱いコーヒーのなか 運命浮いていないか



この街角を

いつか手を繋ぎ

秘密のない朝 けなげな恋人



五月の陽 ほろ苦く

ずっと眠る

切ないおまえの唇なぞる



ゆっくり 目を覚ましていく

夕べ おまえの声なんどでも

風 ゆれる



陽のひかりと

クローバー

おまえ自転車ごと転んで微笑む



木々がゆれるのは風のせいじゃなく

おまえがざわざわ

立ち尽くす



だんだんコーヒー冷める

ティラミスが残る

涯てまでも おまえがいる



透明なおまえを

黒いおまえを 語れ

屋上から

地上降りる



「あたしもいつか、“今までの女”、加わるのかな」

 運命が呟く



弱い雨 窓を打つ

地下鉄のおまえ

立ったまま 夢を見ているか



おまえ あそこで立ち

おれ ここで立ってた

     偶然は見逃さなかった



引き裂くように 引きちぎるようにして

おれたちは

おれたちを向かう



ドラッグストアで拾ったおまえ

「中に出して」

日曜日を誘った



あつかましい日常に

おまえだけが摂理

この街では

おまえだけが



話 求めない

街行く人 沈黙

来てくれ おまえ寂しいなら



おれに何があった

おまえが遠く感じる九時間 たった九時間



夕暮れ 夜明け

かつてなかった

おまえが訪れて孤独を感じた



山肌さえもが泣いているように見える

夕方の光も消えた



写真に撮った

かわいい寂しさが残った

ピアスがお守りだった



夕暮れ涙して

おまえの声が か細く ローソクの火の先端



おまえ待ち侘びる夕暮れの凪

行き先のパンケーキ

バターの笑み



ワッフルには

運気逃げないようシロップ垂らす

でもおまえ恋しい



そのままのアンナ

そのままのおれが愛する

歌は地上にこそある



夜明けはやさしい

おまえにコーヒー煎れる

新しい今日を語ろう







   


  



   


  

ピアスのお守り

大切な人のためにずっと書いている。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
先端KANQ38ツイッター https://twitter.com/kanq38

ピアスのお守り

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-05-12

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