君の殺害方法
僕は高校に入学してから、友人と言うものは一人しか居ない。
それは入学試験を満点で合格し、僕と十点もの差をつけた。
名前は、日暮望という男だ。
僕は入学式早々から、日暮への劣等感を感じた。
それと共に「こいつと仲良くなれば、テストにおいての手の内が読める」なんて安易な想像をしたが為に、僕はこの殺害計画を練ることになった。
日暮は、全く読めない男だったのだ。
入学式が終わり、僕は日暮に声を掛けた。
「君、入学試験満点だったんだって?凄いな」
僕は怒りに駆られていたが、それを抑えて日暮を敬うように声を掛けた。
しかし日暮は、こう言った。
「あんなの満点でない方がおかしい」
僕の殺意はもうこの時から沸いていたのかもしれない。
そして日暮と僕はなあなあの友人となった。
友人となって、日暮の行動パターンや仕草など、奴を殺害するにあたって、僕は日暮を隅々まで調べた。
毎晩ノートに殺害計画を練った。
そして実行する日が来た。
僕は完全犯罪を成し遂げ、友人が死んで悲しむ只の青年を演じるのだ。
全ては固まった。
まず日暮の行動第一は、通学路で踏切を渡ることだった。
僕はそれを利用して日暮を殺害することに決めた。
普通なら踏切のバーが降りてきたら誰も線路に足を踏み入れないが、僕はそこを利用し、この事件は日暮の自殺と見せかけるという方法だった。
まず僕は日暮に話をかける。
そして談笑している隙を見て、線路に誘い込む。
僕は真後ろに鞄を投げ、鞄を落とした振りをする。
バーが降りる時間を予め調べて置き、下がる寸前で投げ、僕は取りに戻る。
そしてバーが下がり、日暮は線路に置き去りになる。
この時間に来る列車は快速列車でバーが降りれば、ものすごいスピードで踏切を通過する。
これが僕の考えた完全犯罪だ。
至って簡単な考えかもしれないが、簡単な殺害方法が以外にも成功するのではないだろうか。
僕は浮かれた足取りで、家を出た。
歩いているとすぐに日暮の後ろ姿が見えた。
僕は普段と同じ装いを心掛けて日暮に声を掛けた。
「おはよう日暮。昨日の物理の小テストどうだった?」
僕は心の奥に潜む悪の笑いを抑えながらにこやかに言った。
「ああ、あんなの授業をちゃんと聞いていれば誰でも満点をとれるだろう」
挨拶も返さない、朝から嫌味を言う、やはりこいつは殺さなければ気が済まない。
僕は談笑をしている振りをしてゆっくり歩き、線路目前までやってきた。
そしていつもなら素通りするはずの線路だが、ゆっくりと歩いた事で時間が丁度、バーが降りる時間になる。
この時を待っていた。
僕はにやけそうになるのを抑えた。
そして線路に足を踏み入れよう、その時だった。
普段自分から話さない日暮が、自ら声を掛けてきた。
「知っているか」
僕は時間がないのですぐに答えた。
「なんだよ」
「俺最近小説を書くのにはまっていてね」
「だからなんだ」
バーが下がり始めた。
僕は自分の計画が崩れ焦りに焦って、冷や汗をかいていた。
バーが完全に降りた。
この計画は失敗に終わった。
僕は怒りに駆られていた。
向こうから電車の走ってくる音が聞こえる。
そしてまた日暮が口を開いた。
「俺が今書いている小説は、推理小説なんだ。それで犯人側の目線に立った時、人をどうやって殺そうか考えていた」
「それで」
「それで俺は身近なもので殺害方法を考えて、誰でも考えそうな簡単な殺害方法にしたんだ」
「どんな」
列車が僕らの前を通過したとき、日暮は言った。
「快速列車が来る時間とバーの降りる時間を予め調べておき、殺す相手と談笑する振りをしてゆっくり歩をすすめ、予定通りバーが降りる頃に踏切を通過する。そして犯人は鞄を真後ろに投げ、あたかも落とした風を装う。バーが下がって来てすぐに快速列車が通過すると言う事を知らない被害者は、電車にひかれて息絶える」
僕は日暮が語る言葉に、息も吸えないほどの恐怖を覚えた。
「まあこんなの小説のネタにもならない、阿保がやりそうな計画犯罪だけど」
こうして僕の計画は水の泡となった。
次に日暮を殺害する方法を早々に考えねばならなくなったのだ。
君の殺害方法