『私的創作集・BL小説』

過去作を幾つか纏めて公開。これ以外の小説はhttps://tuki.novel.wox.ccにあります。
キーワード:奴隷・玩具扱いの少年達 悲哀と諦め、調教による精神の歪み
最初の短い話のみ軽いエロ話。

『玩具の仕事』

『玩具の仕事』

座り心地の良い椅子に座って、ここ数日とても気に入っている小説の続きを読んでいた。
エッセイと詩が混じり合う構成の本なのだが、不思議とスルスルと頭に入ってくる。
しばらく読み続けていたのだが、ふと顔を上げてみると陽が落ちていた。
すでに外の様子は真っ暗で、カーテンの合わせ目から見える灯りが、誘蛾灯のように遠くまで連なっていた。
読み始めたのは午後三時頃だった。まさかこんなに時間が経っているとは思わず、自分自身に腹が立ちながら舌打ちする。
「ちっ、もうこんな時間かよ」
マズった、時間がねえ、と慌てて本を傍のテーブルに置いた。
椅子から立ち上がろうとすると、急に動いたからか足が重く感じられた。それを気にすることなく数歩で廊下へと出る。
歩きながら首を回してコリを解すと、両手を上に上げて大きく伸びの格好を取る。
思ったよりも身体全体が固まっていたようだ。数回、肩を回した後、胸の前で手を組み、肘を伸ばすように背伸びした。

廊下を左に曲がり、突き当りの青色の扉を勢いよく開けた。
「くっそ~、何で俺がっ!」
毎日の日課になってしまった台詞を呟き、腹立ちそのままに洋服を脱いでいった。

髪と全身を念入りに洗うと、浴槽へと身体を沈めていく。
ここで油断すると眠ってしまうので、両手で自分の頬を何回か叩いた。
数か月前、気持ち良すぎて浴槽の中で眠ってしまい、大変な目に遭ったことがある。
勿論、自分が悪いのだが、そもそも現状に腹が立っていた俺は、つい反抗的な目で睨んでしまったのだ。
玄関に迎えに来ない俺を探して浴室まで入り込み、真上から見下ろしていた相手を。
「何だ、その目は誘っているのか。じゃあ酷くしてやるよ」
普段訪れる男達より比較的若い男は、舌なめずりしながら俺を強引に立ち上がらせた。
それからは、どんなに謝ろうとも行為は止まず、指一本動かせないほどに酷使され、最後は失神してようやく男から逃げることが出来た。

その時の様子も、今の俺の様子も、浴室内に設置されているカメラを通してジジイの元へと転送されているだろう。
どこかの大物らしいジジイに直接会ったのは、このマンションに連れて来られた時だ。
俺は椅子に座ることを許されず、強引に押し倒されて土下座の体勢にされてしまった。
屈辱的な格好に顔がカアっと赤くなった。それでも必死になって周囲をコソっと見渡してみる。
どうやらここは誰も入居していない新築のようだった。
真新しい家具が配置され、カーテンも床の絨毯も新品で、取り忘れたのかビニールの付いたダイニングテーブルの脚が見えた。

「頭をもっと下げろ。・・・この前、お前の弟の件で仮契約を結んだが、今日からお前にはここに住んでもらう」
俺の姿勢を指摘し、大きな掌で強引に下げた部下の男が、今後の予定を話し始めた。
(何勝手に決めてんだよっ。俺はまだOK出してないじゃねえかっ)
ムカムカする俺を置き去りにして話は進んで行き、時折、それを邪魔するようにクソジジイの言葉が挟まった。
「ワシには暇な時間などないが、友人らは退屈で死にそうだと煩そうてなぁ」
「闇市で売買する映像が足りないそうじゃ。可哀そうだと思わんか。じゃで、ここはひとつワシが手伝ってやろうと思ってのぉ」
「さてどこまでお前の痴態が広まるのやら。・・・なぁに、そのうちワシに泣いて感謝するじゃろうて」
ジジイの口調が腹立たしいと同時に冷たいモノが背筋を通り過ぎた。
自分が男に犯される。それだっておぞましいというのに複数に犯されるというのだ。それも毎日、休むことなく。
映像が裏の世界に渡され、複製、拡散という更に増殖する可能性を示唆されてガクガク身体が震え始めた。
優しいじゃろう? なんて平気でいうジジイに頭を下げたまま、床の絨毯の毛を必死に握り締めていた。

土下座から解放された後、犬の首輪をジジイが連れて来た黒服の手で着けられた。
涙がこぼれそうになるが必死に顔を上げてクソジジイを睨んでやった。
腹立つことに楽しそうに笑うジジイ。俺は、その顔を見ながら敗北感だけを感じていた。
それから、俺だけに不利な条件でクソジジイとの契約が結ばれた。
内容が自分の許容範囲を飛び出していたからか、最後の方は正直あまり覚えていない。
要約すれば、何もかも曝け出してジジイを愉しませろ、という一点に絞れるだろう。

「お前の仕事は、毎日違う相手から犯されること。相手はこちらで指定する。拒否権はない」
クソジジイの後ろに控えている黒服の一人が、淡々と契約内容を読み上げていく。
「ここの鍵はその方達に毎回手渡され、都合に合わせて到着時刻がメールされる」
おい、待て、と心の中でそいつを止めるものの、実際には周囲を取り囲む黒服の存在で何も言えやしない。
そんな俺を無視して、読み上げは続いた。
「基本は夜から明け方まで。次の方が来る一時間前まで延長は自由だとする」
普段の俺なら、ふざけんな、と叫んでこいつら殴り倒しその場を去っていただろう。
だが、俺には弱みがあったし、何より現実感がなかった。
犬の首輪を着けた俺は、まるで主人であるジジイに従う犬のように、読み上げが続くのを大人しく聞いているしかなかった。

メールの確認。風呂に入って身体を綺麗にする。浣腸は相手がやりたがる場合が多いので準備を怠らない。
やって見せろと言われたら従うこと。潤滑剤、調教用の玩具を必ず見える場所に置いておく。
ベッドメイクは常に整えておく。部屋の掃除は、週一回、食料品などの配達と同時に行われる。
その他いろいろを書いた紙を渡され、ノロノロとした動作で受け取った。
それをジジイがニマニマしながら見ていたが、睨み返す気概などもう俺には残ってなかった。


カメラを通して見られている。起きてから現在まで途切れることなく俺の姿は録画されているのだ。
読書中は忘れていたのに、浴室に入って服を脱ぎ出した瞬間から身体が疼いて仕方がなかった。
手を伸ばして慰めたりしないように、尖った乳首と勃起したモノを視界から外した。
それでも、ジジイを楽しませることが仕事だったから、浴槽の中で大きく脚を開いて組み替えたり、尖った乳首を見せ付けるようにカメラの方を何度も
向いて見せた。
感じている自分の頬が赤く染まっていることを知りながら、身体を捻るのを止められない。
時折、お湯から片足を浴槽の淵へと乗せ、興奮状態になってしまった部分を覗かせてやった。
(もう充分だろっ。クソっ、クソったれぇ~~)
浴槽の栓を抜くと、ボコボコと音を立てながら湯が流れていく。
大きく脚を上げ、股間をカメラへと向けて一時停止してから逃げるように浴槽を出た。

壁に掛けてあるスポンジを手に取り、汚れた浴槽を手早く洗っていく。
勿論、ジジイにサービスするように尻はカメラの方へと向ける。
(クソ、クソ、クソ~~っ。何で俺が・・・っ・・・)
思いとは裏腹に、身体はジンジン疼いて堪らなかった。
(早く慰めたいっ。だが俺の手は駄目だっ。使うんじゃないっ。使ったら、また酷い仕置きが・・・)
以前、耐え切れず自分で慰めたら、恐ろしい効き目の媚薬を使われてしまい、射精してもアレを突き込まれても疼きが止まらなかった。
羞恥心など吹き飛ばすほどの欲望が胸を巣くい、ドロドロする何かとジンジンする疼きと快感に全身が痺れ続けた。
終わったのは、翌日の男がやって来て暫く経ってからだった。
「ようやく満足したか。この淫売め」
ニタリと嗤われた瞬間、どこからか羞恥心が戻って来て本気で死ねる、と思った。

あんな仕打ちはもう絶対に嫌だ。そう思うのに、ビンビン疼いて震えるモノを慰めたくて堪らない。
もう誰の手でもいいから早く触って欲しかった。
(誰か触ってくれっ。頼むっ、頼むからっ)
そんな気持ちが浴室中に溢れているに違いない。
この淫乱な身体を触って慰めて欲しい。ギュっと抱いて欲しいのだ。
暖かい筈なのに震えて仕方がない身体を両腕で抑えながら、俺は浴室から抜け出した。

髪を拭き、ドライヤーを掛けて乾かす。その間、身体には何も纏えない。
ジジイから命令されている通りに生活しなければならないからだ。
全裸のまま廊下を戻り、今度は台所へ入った。
冷蔵庫を開けて水のペットボトルを手に取る。
それを持って居間へと移動した。さっきまで本を読んでいた椅子へと座る。
(冷たっ・・・。タオル一枚ぐらい許可しろよな)
聞こえないよう心の中で文句を言ったが、これも今更だった。
冷えた椅子の上で姿勢を正し、双尻の狭間を開かせるよう意識して両脚を開くと肘掛を跨がせた。
浴室のみならず全ての部屋にカメラが設置されており、どこにも俺の逃げ場はなかった。

自分の生活をジジイに見られる。この現実を噛みしめる度に屈辱が増していった。
それでも、弟を人質に取られていては小さな抵抗一つ出来ない。
(酷い目に遭っていないだろうか)
仮契約の後、弟は組織から救出されジジイの知人に預けられたと聞いていた。
未だ声すら聞いておらず、不安で堪らなかった。
(いや、今はこの後の地獄に備えて、少しで身体を濡らしておくんだ)
頭を振って弟の残像を振り払うと、天井のカメラを睨み付ける。
(好きにしろっ。その代わり弟を早く自由にしろってんだ)
触りたいのに触れない。その焦燥感に俺は必死になって尻を椅子に擦り付けていく。
両手を使って勃起したモノを何度も何度も擦りあげるイメージを脳裏に浮かべて、尻を振り続けた。

覗いているジジイを挑発するように。色に狂ったかと嘲笑されても構わなかった。
潤滑剤も使ってくれない男が多く、自分で少しでも濡らしておかないと、そこが酷い目に遭ってしまう。
俯きたくなる顔をカメラへと固定したまま、射精を促すように大胆に脚を開かせ、肘掛けで皮膚が痛むほどに尻を振りまくった。

カチャ。玄関の扉の開く音が自分の喘ぐ声に紛れて聞こえた気がした。
けれど乳首を弄る指も射精して濡れ濡れのモノを握る手も止められない。
それどころか。────嬉しかった。本当に嬉しかった。
誰よりも淫乱なこの身体を鎮めてもらえると分かって。
(あぁ、早くっ、早く来てくれっ!)
今回、ジジイが派遣した男はどんなだろうか。
アレが大きい人だと嬉しい。いや、長い人の方が思いっきり突いてもらえる。そんな事ばかり考えてしまう。
今か今かと、相手が歩いて来る方角を俺は見つめていた。

今日の相手は、どうやら俺を焦らす作戦のようだ。
中々この部屋へと入って来ない。台所で一服しているのかタバコの臭いが漂って来た。
おかげで妄想は止まらなかった。
奥の奥まで貫いて欲しい。身体を突き抜けるほどの勢いで俺を突き上げてくれっ、と口の端から涎を垂らした。
淫らな熱に思考は壊れ、視界は真っ赤に染まっていく。

俺の弱み。優しくて愚かな弟のことすらもうどうでも良くなっていた。
馬鹿なチンピラに捕まり、借金の返済に非合法な組織に売られた弟のことなど。
ジジイの契約で助かるなんて幻想だと、本当は分かっているのだ。
こんな取引をジジイがまともにやる筈がない、と。
(まだっ? ・・・あぁ、待てないっ、もうっ、待てないっ。 早くっ、早く来てくれっ・・・)
俺は軟体動物のように身体を揺らし続ける。

口からはひっきりなしに涎が垂れ下がり、ツーっと顎まで伝っていく。
それを指で拭い取ると、ヒクヒク震える鈴口へ塗り込めながら中へと差し込んだ。
ようやく姿を現した逞しい男に、俺を玩具扱いするだろう男に見えるように。
喜んでもらいたい、淫乱だとなじって欲しい、その気持ちを伝えるべく淫らに微笑んで見せた。

決まり事を破り、我慢出来ずに自分で慰めてしまった。そんな愚かな玩具を調教し壊してくれ。
俺は指を増やすと、その狭い場所を両側へ開いていった。

『買い物』

『買い物』

初めて給料を貰った弘樹は、振り込まれた通帳をポケットに入れると部屋に鍵を掛けて出掛けることにした。
随分前から目を付けていたモノがあった。それを買いに行くのだ。

バイトで生活費を稼いでいる弘樹の住まいは小さなアパートだ。
夜になって帰宅すると、最初にすることは真っ先に畳に倒れ込んで眠ること。
深夜四時頃に目覚め、インスタントの食事を作って食べる。そして畳の上で胡坐を組んでボーっとTVを眺めるのだ。
そのうち朝六時になるので慌ててシャワーを浴び、歯を磨いて出掛ける準備に入る。
最後に財布と携帯電話を確認し、土木作業員の恰好を大きな鏡でチェック。
今の現場は自転車で三十分なので、毎回、朝礼前のギリギリにタイムカードを押していた。

そんな生活を始めてから一か月が経っていた。
慣れない作業と筋肉痛に身体は疲労を訴えてくる。自分の手足が重くて言うことを聞かないのだ。
精神状態もあまり良くなかった。早朝から夜まで働くのだから当然と言えば当然だった。
怒られないよう手順を間違えないよう、ずっと気を張り続けているのは結構神経にくるのだ。
それでも労働基準監督署に叱られないよう休憩時間は長く設定されており、水分補給や健康チェックも一時間毎に行われていた。

数週間前のことだ。もう畳は嫌だ、椅子を買おう、と春樹は突然思った。
そして早速、仕事帰りに大きなデパートに出掛けてみることにした。
閉店より少し前に到着した弘樹は、何度も座り心地を確かめて一つの椅子を選んでいく。
「これは尻が痛いな」
「こっちは、う~ん、よく分からん」
「おっ、これは・・・・。うちの部屋には大きすぎるか」
翌日には他のデパートまで足を伸ばし、そこでも春樹は選びに選んだ。
そうして何日か目にやっと気に入ったものが見つかったのだ。

給料が振り込まれた二日後。
ようやく弘樹は休暇をもらえることになった。
「よし、今日こそは和風の部屋に、洒落た椅子という異文化を入れるぞ」
前日までの疲労が溜まっていたのか、訳の分からない意気込みを一人呟き、部屋を出て行く。
ずっと欲しかった椅子がようやく手に入るのだ。多少の興奮は仕方なかった。

給料をもらったらすぐに買おうと考えていたから、弘樹は弾む足取りでアパートの階段を下りていった。
「ふん、ふふ~~んっ。ふふふっ、ふふっ、ふふふ~~っ、んっ」
気分が良かったので歩きながら鼻歌が出てしまう。
「ふふふ~~っ、ふふっ。ふふふふ~~~んんっ」
一節が終わった所で銀行を通り過ぎたことに気が付いた。
春樹は一瞬悩んだものの、デパートにもATMが設置されていたことを思い出してホっとした。
そこで現金を下ろせばいいや、と歩き続ける。

デパートの手前にある歩道橋を渡り、あと少しだと階段を軽快に下っていく。
数秒後、最後の段に足を掛けた弘樹の背がいきなりドンっと押された。
当然のように前に倒れていく身体。
止める術など持たなかった。
「えっ」
小さく叫んだ時には、眼前に固いアスファルトの地面が迫っていた。
(ぶつかるっ!)
目を閉じ覚悟を決めた弘樹だったが、一向に衝撃は訪れない。
不思議に思って目を開けた彼の前に広がっていた風景、それは・・・。

自分と同じ年代の青年ばかり十数人が一箇所に纏められ、大柄な男の前に跪いて涙を流していた。
そこはどう見ても宇宙船の船内だった。
広い船室を大勢の船員が忙しそうにあちこち動き回っている。
壁一面にモニターが設置され、その前には無数の操作デスクが配置されていた。
(・・・何だ、コレは!)
アニメでしか見たことのない光景に呆然と座り込んでいた弘樹の傍を、一人の船員が通って行った。
まるでそこには何も無いかのように自然な動きで。
(訳が分からないっ)
何が起こったのか把握出来ない彼の様子を、大柄な男が無言で見つめていた。

青年達を支配する男の手には、長い鎖が十数本ひとまとめにして握られていた。
其々の鎖の先端は跪いている青年達の首輪に溶接されて繋がっているようだ。
青年達は皆全裸で床に蹲り、怯えて震える者、どこか諦めたような表情の者、現実を受け入れられず涙を流して嘆く者など様々だ。
よく見ると数人の足元が濡れており、それは少しずつ広がっていた。
彼らの肌には、一人残らず無数の白いモノが固まった状態でこびり付いている。
垂れるように幾筋も固まったそれを見れば、何も知らない者でも淫靡さを無意識に感じ取るに違いない。

この部屋全体を牛耳っている大柄な男が立ち上がった。
(動いたっ)
まるでアニメでも観ているような気持ちでいた弘樹は、男の動きに動揺した。
そのゆったりとした歩みには余裕が見て取れた。
背後では、男の動きに合わせて引き摺られてしまった青年達が悲鳴を上げている。
ズルズルと力任せに引っ張られ、剥き出しの肌を床で擦られているのだ。
鎖が首に巻き付いて解けずパニックになる者さえいた。周囲の誰もそれを助けようとはしない。

必死に付いて行こうとする青年がいた。床についた手が滑ったのか前のめりになって倒れてしまった。
ぐげぇえええ~~~~っ、という嫌な声が聞こえた後、ピクリとも動かなくなった。
その人物にぶつかった別の青年が、同じように手足を滑らせて鎖の餌食になるのを弘樹は見ていた。
何も出来ない。動くことも声さえも出せなかった。
動かない彼らを無視して男は歩き続けていた。
背後の阿鼻叫喚など興味ないのだろう。足取りに迷いは見えなかった。

とうとう男が弘樹の傍にやって来た。無意識に後ずさった弘樹へとその太い腕が伸びる。
物凄い力で立ち上がらされた弘樹は、ジロジロと物品を確認するような目で頭から足まで眺められた。
(こ、恐いっ)
弘樹の動揺など気にも掛けず、男はフンっと荒く鼻息を吹いた。
そして背後を振り向くと大声で部下らしい男に命じた。
「コイツをディジン様の部屋へ連れていけ」
「分かりました」
何故、言葉が分かったのか、なんて考える余裕が弘樹にはなかった。
自分の身に恐ろしいことが起こっている。それだけで一杯一杯だった。

怯えて立ち竦む弘樹に目もくれず、男は泣き続ける青年達の鎖を引き摺って元の場所へと戻って行く。
まだ意識がある者を数えた方が早いだろう。ほとんどの青年は失神していた。
弘樹には彼らの心配をする時間がなかった。
命令された部下が彼の背後に回って肩を掴んだからだ。
「ひい・・・っ・・・」
見知らぬ人間から力任せに掴まれ、肩が激しい痛みを訴えてくる。
だが、それを弘樹の思考が受け取る前に、身体全体が床へと強引に押し倒されてしまった。
「・・・うぐぅううううううううっ」
呻く弘樹の背を容赦ない部下の足が蹴り始めた。
「ひぃぎゃあ~~~~~っ!」
最初の一発で抵抗する気などなくなったというのに、何度も何度も部下の蹴りは続けられた。

乱れた髪を手で直した部下は、靴跡がシャツの背にベットリと付いた弘樹の身体をひっくり返した。
今度はその首に縄を結び、クイクイっと引っ張って外れないことを確かめていく。
そして徐に呻き続ける弘樹を強い力で引き摺り始めた。
部下が一歩進むごとに首が絞められていく。その恐怖に涙が溢れて止まらなかった。
指を縄の隙間に引っ掛けて必死に外そうと足掻いても、前を進んでいる部下の歩みは変わらなかった。
容赦ない力で出入り口へと縄を引いて歩いて行く。

扉がシュっと開き、誰も居ない無機質な冷たい廊下に出た。
唯一の音は、部下の確かな足音と虜囚の呻く声だけである。
暫らく進むうちに、それはカツカツと規則正しい部下の足音だけになった。
ようやくそれに気付いた部下が足元を見下ろすと、虜囚は首を圧迫されて息も絶え絶えの様相で蹲っていた。
仕方なく無言で虜囚の身体を足で仰向けにした。
股間目掛けて思い切り蹴りつけていく。
「うぎゃぁああああああああああ~~~~~~!」
部下は物凄い悲鳴を上げる虜囚を満足げに見下すと、再び歩き始めた。

手に持った縄を動かす力は先程と変わらなかった。
「ひぐううううぅ~~っ。・・・んぐっ、・・・うっ・・・んぐうっ。ぐぶぅっ、ううぐうぅ~~~~っ」
ただのモノ、それも悲鳴しか上げないつまらない玩具。
この虜囚に限らず玩具を気遣ったことなど一度もなかった。
この船の者にとっては、場所をとるだけの品物に過ぎないのだ。
だが、これを安く仕入れて売るだけで途方も無い稼ぎになるのも事実だった。

リストの品を買い揃え、時間が余った彼等はついでにと時空を超えていた。
そう、従順な玩具が生息することで有名な惑星まで船を進めたのだ。
十五匹の玩具をタダで仕入れて、ほくほく顔で自分達の星へと戻ろうとしたその時、十六匹目がモニターへ映し出された。
彼等の宇宙船は透明なバリアーで包まれており、この惑星のモノたちの目に船が映ることはない。
その利点を生かすことで、十六匹目も秘密裏に連れ出すのに成功した。
早速、仕入れ品をセンサーで確認すると、ディジン様ご所望のタイプだと判明した。
残りの十五匹の玩具は、ディジン様の要望と合わなかった。
故郷に戻り次第、玩具市で競りに出すことになっていた。


たまたま船に乗り合わせていた老人はその報告を聞くと、喜びを顕にして命令した。
「イヒヒヒヒっ。すぐに連れて来なさい」
ニタニタと笑う皺だらけの醜悪な老人に反吐が出るが、モニター越しの船長は無言で頷いておいた。
部下に老人の部屋まで玩具を届けさせると、早速映像が入った。
「フヒヒヒヒっ。ヒヒヒっ、気に入ったぞっ! コレはワシのもんじゃっ」
皺だらけの顔をくしゃくしゃにしてニタリと嗤う老人がおぞましかった。
この船内の権力者は船長である。それを無視する老人の振る舞いは船員全員から嫌われていた。
勿論、船長もこの老人が大嫌いで、今すぐ外に放り出してしまいたかったが流石にそれは出来ない。

この老人は、将軍とも親交のある商館の主であり、途方もない大金持ちである。
怒らせるのは得策ではなかった。
しかも旅はまだ数週間残っていた。
この玩具を与えて気持ち良く過ごしてもらえば何某かの見返りが有るかもしれない。
いや、部屋から出る回数は格段に減るだろう。それだけで自分たちに得と言えた。
モニターの端に映っている部下と視線を合わせ、船長は玩具を引き渡すことを許可した。

血の気が引き、涎が口の端から零れ落ちている。それに気付いていないのか、玩具はポイっと貴人用客室に放り込まれた。
老人に引き渡して仕事を終えた部下はブリッジへと戻って行った。


涙の痕が残り、口をパクパクして空気を吸い込む玩具に老人は近付いて行った。
ひいいいっと叫んだ玩具の顔に股間が疼いた。
久しぶりに楽しめるモノが見つかって嬉しくて堪らない。
まだ叫んでいる玩具の頬をパンっパンっと張り手で叩いてやった。
「黙るんじゃ。玩具のくせに」
そう言って玩具の頭を掴むと自分の股間へと押し付けた。
ひどくすえた臭いを放つそこに鼻をやられたのか、顔を引こうとする玩具の頭を再度老人が強い力で押した。
「舌でワシのを出すんじゃ」
ほれ、と恐ろしいモノをグイグイ押し付けて、息が出来ないと顔を強張らせる玩具の表情を愉しんだ。

「早うせんか、このグズが・・・」
このままでは股間に埋まった状態で窒息死だと思ったのだろう。玩具が呻きながらも顔を動かした。
ゆっくり舌を出して嫌々ながらも老人の前を開いていく様子にヒヒヒっと笑い声が漏れた。
大きくて太いモノを玩具に見えるように突き出してやった。
現れたそれをマジマジと見やる玩具に嬉しさが込み上げてきた。
(これは、・・・拾いものじゃて。こやつ、調教によっては最高の玩具になるかものぉ)
それは醜悪な臭いを放ち、白く濁った排泄物がこびり付いていた。
吐き気がこみ上げた玩具の頭が後ずさっていく。

少しでも離れたいのだろう。必死に目を逸らそうとする。
そんな玩具の鼻を老人の指が摘み上げた。
「フヒヒヒヒっ。どうじゃ」
暫らく頑張った玩具も、ついに息が出来ず口を大きく開けてしまった。
ハア、ハアと激しい呼吸が部屋中に広がっていた。
それを別の音に変えようとするかのように、老人が動いた。
息を吸う為に開かれた口を狙って長く太いモノをズボっと差し込んだのだ。
そうして、ある程度の長さが入り込んでから指を外してやった。
「んぐうううううっ、んんぐぶぅううぅっ。・・・うぅぐぐうぅうううう~~~~~っ! ・・・んんっ・・・ぐうっ・・・ぶふぅっ」
まだ奥まで入れるんじゃ、と叫んだ老人はグイグイと捩じ込むように押し入れていった。

咽喉の奥まで突き入れられ、顔が蒼白なる玩具を愉快そうに老人が見つめていた。
「クヒヒヒっ。・・・実にイイっ。なんとも可愛い泣き顔じゃわい」
ほい、っと呟いて少しだけ己の膨張した竿を引き抜くと、必死に息をしようとする玩具を嗤ってから元に押し込んでいく。
「こんなチンケな船に乗って、・・・おおぉうぅう~~~、イイっ、イイぞぉっ」
死にそうな苦しさの中で口の中のモノを必死に押し出そうとする玩具。その動きに老人の竿の先端が反応した。
「ヒヒヒっ。・・・最初は退屈じゃったが、ここまで来た甲斐があったわ。キヒヒヒヒっ」
嗤い続ける老人の股間では、頭を押さえ付けられ、咽喉を突かれて息も絶え絶えの玩具の姿があった。

▲  

それから数週間が経過した。
宇宙船から降りた老人の傍には、かつて弘樹と呼ばれた若者の姿があった。
だが、その若者を知人が見つけても近寄ることはないだろう。
ムンムンする何とも言えない淫猥な気配を漂わせ、もう人間でなくなっていたからだ。

老人の手によって立派な淫乱奴隷に仕込まれた玩具に名前はない。
迎えに来ていた車に玩具を押し込み、老人はそれを自分の経営する商館の一つに連れ帰った。
船内には調教用器具が少なく、順調に淫乱になっていく玩具に負けそうになったことがあるのだ。
この淫乱な玩具に最高の淫具や媚薬を用いて常に身体中を疼かせなくてはならない。
老人専用の玩具である自覚を持つよう厳しく調教することに決めていた。
やがては商館の看板として売りに出すことも出来るだろう。
「・・・ぼ、僕の淫乱おっぱい、吸ってぇえええ~~~~~~っ。あぁ~、あうぅっ。もっと、もっと大きくしてぇええ~~~~~~っ」
玩具の強請りに満足気に笑った老人は、更に嬲る為の指示を出した。
「キヒヒ、キヒヒヒ。もっとじゃ、もっと腰を振らんか。指は穴から出すんじゃないぞ」
何を言われても大人しく命令を聞く玩具が可愛かった。
嬉しいと喘ぐ表情に満足すると、老人は次の卑猥な指示をお気に入りの玩具へと与えてやった。

商館の地下で飼われてニヶ月が経っていた。
玩具弘樹は、現在でも老人一番のお気に入りである。
あれから幾つかの玩具が入荷されたが、その座をキープし続けているのだ。
「ひゃいっ、ひ、ひぃいいいいい~~~~~っ。いっ、ひぃぎいいぃいいいい~~~~っ」
それは、この玩具にとって不幸なのか、幸いなのか。
客に提供されることはなかったものの、老人に嬲られる毎日が幸せと言えるのか本人にすら分からないだろう。
ましてや、今日のように老人の息子と共に調教されることもあるのだから。

半月後には将軍と将軍の甥が商館を訪れ、専属の奉仕奴隷を購入することになっていた。
それに合わせて最高級の奴隷を準備していた。老人の息子の手による調教も順調に進んでいるようだ。
将軍の甥には悪い評判しかなかった。暴力で全てをなぎ倒すタイプで奴隷を与えても殴り殺して捨てるのが趣味だという。
後継ぎにしようと考えている将軍にとっては、早急に別の発散方法を取る必要に迫られているのだ。
「二体、いや三体の高級奴隷を買うよう持っていくんじゃ」
「どうせ殺されるんだろ。勿体ないから中級のにすればいい」
商売が下手なのか、単純に思ったことを言っただけなのか、老人の息子は消極的だった。
「お前は馬鹿だの。また買いに来るよう仕向けんかい」
老人はニタリと笑うと、商売用に飾ってある下級奴隷のペニスを掌で叩いた。

奉仕奴隷と別の言い方をしているが、結局はいつでも捨てていい玩具である。
最高級の奴隷を何度も欲しがるよう商館では色々な手を打つ必要があった。
その一つとして考えているのが、お気に入りの玩具を使っての体験だった。
「高級奴隷の売りは、元貴族の子息令嬢である血筋と初物散らし。その場で試させるのは確かに無理ですからね」
上司である父親から誘われた息子は、朝から一緒に玩具を犯し続けていた。
世間の評判と違って、将軍の方も品行方正とは言えない趣味を持っているのだ。
将軍と将軍の甥二人ともが、この商館で長時間楽しむに違いなかった。


自分の息子が何やら険しい顔で玩具の頬を叩いていた。
黙って眺めているとヒイヒイと泣いて玩具が壁へと逃げて行った。それを息子が追い掛けて行く。
床に蹲ってしまった玩具の足首を掴むと中央まで連れ戻し、強引に己のモノを突き込んでいった。
「フヒヒヒヒっ。あやつもまだまだ若いのぉ」
二人掛かりでの調教は久しぶりだった。
起き抜けの身体を床に押し倒すと、寝ぼけた状態の玩具の上下の口を塞いでザーメン塗れにしてやった。
交代して同じことを繰り返し、ボロボロと泣く玩具を四つん這いで犬のように歩かせていく。
時折、その濡れた穴に指を突っ込んだり、太いモノで貫いてやると、嬉しそうに悲鳴を上げて喜ぶ玩具。
老人は少し休憩だと、水を飲みに行ったのだが、戻って来たら息子はまだ玩具を使用して楽しんでいた。

最近の玩具は、確かに淫らさに磨きが掛かっている、と言えた。
いつの間にか息子があの熟れた身体にハマってしまっても当然だった。
だが、調教師としては失格だった。さっきから老人を無視して己の欲望を満たし続けている。
「まぁ、たまには良いじゃろうて」
あの息子にそうさせてしまうほど躾けられた玩具の淫らさを、老人はニヤニヤしながら目で楽しんでいた。

しばらく好きなように玩具を使わせた後、老人も調教へと戻った。
休憩を取ったのが良かったのだろう。股間がまたズクズクと疼き、ムクムクと砲身が立ち上がっていく。
息子が床に横たわり、そのペニスを玩具が腰を下ろして受け入れていた。
老人は立ったまま己の砲身を玩具の口に押し込むと、腰を振ってその咽喉を何度も何度も突き刺してやった。
「うっむぅぐぅううううううう~~~~~。ふっ、ぐうぅうううおっぐぅうう~~~~っ」
強引に突いてくる太いペニスに呼吸を止めれられ、苦しさに玩具が口からそれを引き抜いてしまった。
すぐに息子が繋がった状態で腰を起こすと、ビンタを張って怒鳴り散らした。
「淫乱奴隷に許されるのは哀願と嬌声だけだ! 何度も私の手を煩わせるな!」
パンっパンっと叩かれて、玩具の頬が真っ赤に染まっていく。

泣き喚くことを許されない玩具は項垂れたまま、それでも奴隷の性なのか老人のペニスを咥えようと口を大きく開いてみせた。
「よおし、よし。いい玩具じゃのぉ」
涙をポロポロ流す玩具の唇を先端で撫で回し、濡れたモノで汚してやった。
縋るような視線に股間が疼き、すでに太く膨れたモノを咽喉奥へと突き入れると、生暖かい口内の感触を楽しんだ。
ふと、黙ってしまった息子へと視線をやると、恨めしそうな悔しそうな目で玩具の従順さを見ていた。
(ほんに若いのぉ)
老人はかつての自分を思い出すと、笑いながら玩具の口から己のモノを抜き取っていった。
それから息子と態勢を交代する指示を出した。

更に一週間後。もう一度、息子と二人で玩具の調教を行うことにした。
玩具の頬は息子に叩かれてパンパンに腫れてしまった。
「ホっホっホっ、いい色じゃわい。どれ、ワシも叩こうかのぉ」
バシっ、バシっ、バシっ、と予想以上の良い音がして嬉しくなる。
さっきまで息子に突き入れられていた穴が大きくポッカリ開いていた。
老人は誘われた気がして、その穴の淵を己のペニスの先端で撫で回してやった。
前方では息子が玩具の頬をまた叩き始めたらしく、いい音が聞こえて来た。
悲鳴を上げるのを自分の掌で抑えた玩具が、救いを求めるように老人の方を振り向いた。
目で痛みと助けを訴えてくるのが可愛いかった。
(これはもっと苛めてやらねばのぉ)
叫ぶことの出来ない玩具が、怒鳴り始めた息子へと慌てて視線を戻していく。
何とかして怒りを治めようと考えたのだろう。身体を前に傾けて息子のペニスを咥えていくのが分かった。
部屋中にある鏡によって、本来見えない場所も角度を調整すれば見ることが出来る。
老人より太い息子のペニスに、必死になってむしゃぶりつく様に思わず笑いが零れていた。

濡れた舌を使ってペニスを頬張る玩具の艶かしさを、息子がギラギラした目で睨んでいた。
まるで、こんな舌使いでは勃起しないと言わんばかりだが、ペニスの方は喜びに膨れているのが分かる。
「んっ、・・・ぐぅ、んちゅっ。んんぶっ、んんちゅっぶっ。むぅ・・・ちゅぶうぅ・・・」
舌の動きが分かる恥音に目を眇めた息子は、まだまだ甘ちゃんのようだ。
「はぁむっ、んっ。・・・んぶっ、・・・んっ・・・。んむぅっ・・・はぁっ・・・。んちゅっ、ちゅぶっ、ちゅぶっ」
んちゅっ、ちゅばっ。れろれろっ。
咥える口の艶かしさと淫らさ。口端から流れ落ちる唾と生暖かい口内の熱に煽られたのだろう。
息子が玩具の後頭部を自身のペニスに押し付けていた。
(早いのう)
未熟な息子だわい、と思いながら老人自身も、その玩具によって煽られていることにを自覚していた。

玩具の方は、必死になって二人の支配者のペニスを上下の穴で咥えており、周囲を見る余裕がないようだ。
前に回して尿道を弄っていた指を外すと、老人は自慢の大きなモノで再度ガンガンと突き上げてやった。
元々埋まっていた老人のペニスに身体を押し上げられ、玩具は悲鳴を上げたに違いなかった。
だがその口には息子のペニスが入っており、声を出そうにも出せないのだ。
玩具の身体が綺麗な赤に染まっていく。
恍惚の表情を浮かべているだろう淫乱玩具に魅せられたのか、息子が一際太く勃たせたそれを咽喉奥へと埋めていくのが分かった。

上と下、両方の穴にザーメンが注ぎ込まれていた。玩具は何も考えることなく全てを受け止めていく。
調教前に尿道から注がれた媚薬の効果もあるのだろう。
あるいは、異星人のザーメンには何か特殊なモノが入っているのかも知れない。
毎日十回以上ものザーメンを上下の区別なく与えられていた。
媚薬も玩具用に調合されたという強いモノが使用されており、強烈な刺激で常に身体が疼いていた。
「フヒヒヒ。ジニアス、そろそろ店を開ける時間じゃろう。・・・準備するといい」
主人が息子のジニアスに指示を出してくれたので、玩具はホっと息を吐いて安堵した。
ジニアスのペニスは幾つもの凹凸があり、玩具の内壁を傷付けるようにして奥へ進んでいくのだ。
すぐには痛みを快感に換えられない玩具にとってジニアスは恐怖でしかなかった。
そう、その太さと長さに目を奪われるとしても。

あの宇宙船の中で過ごした期間、主人の与える痛みを快感として受け取るよう調教されていた。
他の人物、例えそれが主人の息子であっても、玩具には他人と共有されることに嫌悪しか抱けないのだ。
こんな自分はおかしいと分かっていた。人として狂っているのだろう。
男に犯されて喜ぶ、その段階で間違っているのだから。
だけど、こうも思うのだ。
主人と認めてしまった男のペニス以外を欲しがったら、もう後は一体どこまで堕ちていくのか自分でも推し量ることが出来ない、と。
それが玩具と呼ばれるモノになった今でも怖かった。

主人の指が胸と乳首に移動していくのを興奮しながら見つめていた。
ニヤリと笑った主人が、女のように大きく膨らんだ胸を鷲掴みにすると、乳首だけ人差し指と中指で挟んで揉み始めた。
その痺れるような刺激に尻穴も呼応したのだろう、パクパクと開閉して膨張したアレを欲しいと訴えていく。
自分の父親が玩具と交わるのが許せないのだろうか。
ギっと睨みつけてくるジニアスが怖くて、視線を合わせないように目を伏せた。
彼にとって玩具はただの『淫乱奴隷』という商品なのだ。
『淫乱奴隷』ではなく、自分専用の『淫乱玩具』として囲う父親に、
「アレは高く売り付けることが出来ると言ってるんだよ」
店に卸すよう毎日意見しているのを知っていた。

のらりくらりと息子の意見を交わす主人に縋って怯える姿が腹立たしいのだろう。
今日も何かに怒っているジニアスがこっちを睨んでいた。
「困った奴じゃのぉ。・・・ほれ、早う店に行かんかい」
父親に窘められ、ジニアスがワザとらしい溜息を零して、ようやく口から己のペニスを抜き始めた。
恐ろしいモノが消えて嬉しい筈なのに、何故か玩具の胸が痛み出した。
嫌なのに、本当に嫌なのに、どうしてこんなに悲しいのか分からなかった。

抵抗のつもりでジニアスはゆっくりと口からペニスを引き抜いてやった。
「・・・ぐぅふぅうう~~~っ。・・・うっぐうぅうう~~~~っ。んんっ、ぃやっ、・・・も、もっと・・・」
涎を垂らし、無意識にペニスを欲しがって呟いた玩具の唇を見てしまい、ジニアスのそこが熱く高ぶっていく。
だが、さすがにそろそろ店を開けないと本気で父親に叱られてしまう。
男女問わず数百人もの奴隷を売買している自分が、父親の玩具を欲しがるなど許せなかった。
「あぁはぁああ~~~~っ、んっ、んん~~っ! ・・・ぺ、ペニスぅうう~~~っ、ペニスっ頂戴ぃいいい~~~~っ」
あんなに苦しがって嫌がっていたくせに、この淫乱玩具はそれを忘れたように叫び始めた。
「お、おっきいのぉおおおお~~~~っ! 頂戴っ、頂戴っ、ねえぇええ~~~~っ」
父親の杭に激しく尻を貫かれていながら、それでもなお口にも欲しがって懇願する玩具に胸がムカムカした。
欲しがるままに今すぐブチ込んで滅茶苦茶に嬲ってやりたかった。
「クソっ」
それをグっと我慢してジニアスは店へ続く階段へと向かった。
背後からは泣いてペニスを欲しがる声が聞こえていたが、口元を引き締めて表情を改めると階段を上がって行った。
そんな自分の背中を、父親が二やけた視線で貫いている気がして気分が悪かった。


階段を上がって去っていくジニアスが視界から消えてしまった。
苦しかったのに、早く外して欲しかったのに、自分でも理解できない何かが胸を騒がせて仕方がなかった。
ずっと咥えておかなきゃ、アレがないとダメだ、と誰かが囁いている気がした。
諦めがつかなくて階段から目が離せない玩具の背後で、尻の穴を刺し貫いたままの主人が大声で笑い出した。
「クヒヒヒヒヒ。あいつもまだまだじゃのぉ~~。あの様子だと店の奴隷が一匹使えなくなるわい」
押し倒すように前屈みになった主人がグリっと尻穴を広げるようにペニスを回してきた。
「キヒヒヒヒヒ。・・・お前のせいじゃぞぉ、うん?」
分かっておるのか、と囁く言葉に頬が赤くなる。
「そ、そん・・・」
返事をする間もなく、膨張して凶器となったモノで身体が突き上げられて悲鳴を上げた。
「いぎいぃいいいいいいいいいいいい~~~~~っ! ひっ、ひいぃっ、いひいぃいいいいいい~~~~~っ」
「うむぅ、・・・いい締め付けじゃのおぅ。クヒヒっ、・・・おうっ、おうっ、いいぞおぅっ」
ズンズンっと遠慮のない突き上げが繰り返されて、握り締めた拳で何度も壁を叩いていた。

「ひいっ、ひぎぃいいいいい~~~~~っ。あぐぅっ、ぎぃっ、ぎひっ、あっ、ああぎぃいいい~~~~~~っ」
痛くて痛くて、生理的な涙を流しているというのに、元は弘樹という名の玩具の身体は悦びに震えていた。
無意識に腰を振ると主人の太い杭を奥へ、奥へ、もっと深く奥まで入ってと誘っているのだ。
優しい主人が望みを叶えてくれて、すぐに圧倒的な快感で身体中が歓喜に包まれていく。
そうして玩具は気付いてしまった。
さっき、あれほどまでにジニアスを、いやジニアスのペニスを求めた理由に。

そう、それは、主人以外与えてくれない素晴らしい悦びをこの身体の中に閉じ込めておく為だったのだ。
声として出て行くのさえ許せなくて、口を塞いでくれる蓋を欲していたのだろう。
「あぁ、あっ、いやぁあああああ~~~~~~っ! いやっ、いやだっ、駄目っ、駄目なのぉおおおおおお~~~~~~~~っ」
せっかく与えられた快感が部屋の中に響き渡り、そして消えて行ってしまう。
大切な、大好きな主人から与えられた興奮の渦が声として自分の口から出て行くのさえ許せなくて玩具は強請った。
「い、いやぁああああ~~~~~っ。欲しいっ、欲しいのっ、ああ、ああぁ~~っ」
「うん? 何じゃ、そんなに気持ちがよいのか、クヒヒヒヒヒヒっ」
嬉しそうな主人の声を聞きながら、蓋が欲しいと玩具は階段を見つめ続けた。

『愛撫』

『愛撫』

その場所には、普通の人々と特殊な人々が混ざり合って共存していた。
表面しか知らない又は知らないフリが出来る者にとっては、エリアさえ間違わなければ大丈夫なのだ。
「すっごく賑やかで楽しいぜ」
「キラキラしてんだよ、もう他とは全然違うんだって」
確かに光と音に溢れ、少し歩けば他人とぶつかりそうになるほど人が混み合っている。
だが、店と店の間の小道へと一歩足を踏み入れれば、まったく別の印象を受けるに違いない。
光は闇へと変わり、シンっとした静けさは怖がりには堪らない、肝試しさながらの異空間。
かなり先に薄ぼんやり光が見えているが、途中で幽霊か人攫いにでも遭いそうである。
帰宅を急ぐ者は人々の間を早足で通り抜け、その場所を良く知る者たちは用事がない限り決して小道へと入ることはなかった。

そんな不穏な道を男は恐れることなく進んでいた。
ふらふらと身体を揺らしている少年を連れて、更に奥の小道へと歩いてい行く。
やがて、安定しない少年の身体を押すようにして最奥へ辿り着くと、無理して覗き込まなければ見えない死角に移動してようやく足を止めた。
頭上には、今にも消えかかりそうな街灯が二人を照らしている。
数秒消えては点灯しているから、長時間この場所にいるのは防犯上とても危ういと言えた。

老年に差し掛かる手前の男が声を発することなく動き、少年の頭を掴んで壁と対面させた。
痛みが走ったのか、うっ、と小さく少年が呻いた。それでも男から逃げる素振りは見せない。
逆に頬を緩めると、次の行為を待っているかのように大人しく立っている。
まるで、このあと自分の身を襲うであろう凌辱を待っていると言わんばかりに。

ハミル・パチェリーは主人の大きなモノで尻を貫かれて喘いでいた。
壁に背を当て、主人の広い肩に両足を掛けた不安定な状態が苦しくて堪らない。
身体を支えているのは、僅かに壁にもたれた部分と抜き差しを繰り返す太い杭のみ。
激しい動きに足は今にも肩から落ちそうだった。
一段とピッチを上げる主人の杭の熱さに身体は燃え盛っている。
何も咥えていなければ口から舌を出し、溺れた魚のようにパクパク空気を取り込んでいる筈だ。
残念ながら彼のそこはあるモノで塞がれており、僅かな空気穴からの呼吸が精一杯だった。

この場所に二人が辿り着いた時、外はまだ夕闇だった。そして今は暗闇に包まれている。
屋敷を出る際に色々な準備をして時間が掛かったハミルは、ようやく最終目的地に着けてホっとしていた。
顔の下半分を覆う大きな黒いマスク、いや、その中に入っているモノの所為で満足に呼吸が出来ないのだ。
通常なら両耳に掛けるはずの紐もなく、一枚の黒い布で出来たマスクの端は後頭部で固く結ばれ、金属の小さな錠がついていた。
口の中には、咽喉の奥を突くと錯覚しそうな異物が入っている。
動かないように両方の耳で固定されていても怖いことに変わりなかった。
自分で引き出せないようマスクで押さえ込まれている。
これは主人がハミルの為に外国に特別注文した淫棒で、長さと太さ、そして質感も本物の五分の一で忠実に再現されていた。

思いがけない主人からの誕生祝いだった。嬉しいだろう、と見せられた時は正直怖気づいてしまった。
さすがに窒息死を免れる空気穴が作られていて、鼻呼吸すれば装着可能だ、と言われれば受け取らない訳にもいかない。
ただ、最初の数日は慣れることが出来ず、もがき苦しんだり数回の失神を経験している。
この一月近くの調教科目として、毎日一時間、長いと数時間の装着が義務付けられて、ようやく呼吸が出来るようになっていた。
今では僅かな時間で入れることが可能になり、主人も偉いぞ、と頭を撫でて下さった。
外出先で使うのは今夜の散歩が初めてでドキドキだったけれど、視界に入る度に、装着される毎に、今ではハミルの心と身体を悦びに震わせる大切なモノとなっていた。

残念ながら、一緒にプレゼントしてもらった尻穴専用のバイブは屋敷に置いてきていた。
こちらも細部まで主人のモノを忠実に模した縮小版で、大粒の真珠が先端の少し下に幅広く埋め込まれてある。
「お前には、これが一番嬉しいかな」
大粒の真珠を触りながら主人が耳元に囁いてきて、恐怖と興奮に身体を震わせたのを覚えている。

黒いマスクの下に隠した淫猥な道具を咥え込み、何食わぬ顔で外を歩くことはハミルにとって羞恥を覚えると同時に興奮の極みだった。
女顔だと言われて、クローゼットに用意されている服はワンピースばかり。装飾品や小物も全て女性用が準備されていた。
今回は、そこから主人が選んだものを着ているのだが、足元に外気が入り込んできて何だか心許なくて堪らない。
首には本物の犬用首輪が嵌められており、明るい光の下ですれ違えば怪しい人物に見えることだろう。
下着は一切許されず常に全裸で過ごすハミルにとって、服を着ている現状の方が遥かに恥ずかしい。
涙ぐんでいる姿を主人が面白そうに見ることで余計に頬が赤くなるのだった。

ただの普通の少年だったのに、何故こんなことになったのか。
それは、ハミルの浅はかな行動の結果だった。
ある日、兄と喧嘩して互いに一歩も引かなかったことで、短期なハミルの方が家を飛び出していた。
プチ家出のつもりで仲の良かった近所の小母さん宅の呼び鈴を押した。
こうやって転がり込むのは日常茶飯事だったので、ここまでは家族にもバレていたと思う。
初めは何の問題もなく、テレビドラマやワイドショーを観ながら優しい小母さんとお喋りし、心が癒されていた。
そこへ酒癖の悪い元亭主がやって来て暴力を振るわれるまでは。

怒鳴られ、足で蹴られて、追い出されたのが悪夢の始まり。
いや、その時に家に戻れば良かったのだ。
兄に謝ってリビングで過ごせば、そのうち普段と変わらぬ日常に戻れただろう。
そうするべきだったのに。
(プチとはいえ家出なんだから、あと数日は帰らないぞ)
馬鹿な意地の所為で近所をウロウロと動き回っていた。
そこを元亭主である暴力男に見つかってしまったのが運の尽き。
酒の抜けてないその男は、ハミルを殴り付けると、性質の悪い友人を呼び出して引き渡してしまった。

何処かの廃屋に連れ込まれた時、ハミルには何が行われるのかハッキリとは分かっていなかった。
精々、この男に殴られたり罵倒されたり、あるいは流血や骨折する可能性ぐらいしか想像出来なかったのだ。
まさか自分がセックスの対象になるなんて微塵も思い至らず、ましてや男が同性をレイプして屈伏させることを喜ぶ変態だなんて思うはずもない。
暴力男に殴られたショックが消えないまま次の男に床に蹴り落され、背中から押さえ付けられてもハミルは何の抵抗もしなかった。
与えられる痛みを我慢していれば、いつかは相手の気も治まって逃げる隙が出てくると考えていた。
すぐに腕っぷしの強そうな男がハミルの腰を跨ぐように乗っかって来た。
(ああ、始まる・・・。きっと痛いよね。ううっ、いやだっ、痛いのやだよっ)
覚悟を決めても怖い、と怯える視線の先で男の手が伸びて来た。
そう、ハミルは気付いていなかった。
このあと与えられる別の恐怖が、一生自分をどん底へと導く手始めに過ぎなかったことを。

男がようやく満足したのは、ボロ雑巾のように床に投げ出されたハミルが動かなくなってからだった。
自分の身に起こったことが信じられず、激痛と恐怖に涙を溢し続けていた。
(痛いよっ、痛いよ兄さんっ! ・・・助けてっ・・・)
それでも心の中で、これで自由になれる、それだけを祈っていたのに。
ハミルの不幸はまだ終わっていなかった。
隠れていたのだろう、廃屋に住み込んでいた十数人がゾロゾロと現れたのだ。
ゆっくりと離れて行く男に誰もが無言だった。強姦魔だと、犯罪だと糾弾する者は一人も居ない。
それどころか全員が笑いながらハミルへと手を伸ばしていく。
気配だけは感じていても指一本動かせないハミルは、その後一週間近くそこに捕らわれたまま、休む暇なく犯され続けた。
最後の日、汗や体液にまみれた汚い身体に唾を掛けられて、蹴り出されながら道に捨てられてしまった。

意識を取り戻したのは病院だった。誰かが通報してくれたのだろう、救急車に乗せられて来たと教えられた。
病室を訪れた院長は、警察からの報告や検査結果から大体の状況を把握していたのだろう。
ハミルに慰めの言葉を掛けることなく、生きてくれ、と命の大切さを説いてきた。
(何でだよっ・・・。何で、そんなことっ、言われなきゃならないんだよっ)
誰でもいいから殴りたかったし、泣き喚きたかった。
出来れば家に戻って、部屋に一生閉じこもっていたかった。
それでも、そのどれも出来なかった。暴力は嫌いだし、人なんて殴れない。
男なのに男に凌辱されたなんて、誰にも知られたくなかった。
(しかも・・・、お、大勢の男にっ、無抵抗で一週間も・・・なんてっ・・・)
ハミルは身体をブルブルと震わせて嗚咽を洩らした。

名前は教えても、家族の名前も住所も言わないハミルに、最初は誰もが同情的だった。
人道的な観点から極秘扱いで治療を施されることになり、一般病棟から特別病棟に移されていた。
心に深い傷跡を残しながらも、治癒力の高い若い身体は徐々に治り始め、しばらくすると歩けるようになった。
それでも採血や簡単な脈拍を測るのさえ嫌がり、病院は看護師ではなく医師になったばかりの青年をハミル専属で付けることに決めた。
辛い目に遭った患者に配慮した結果だった。
その好意が、ハミルと若い医師の両方に不幸な結果を招いてしまうことになるなんて誰が思うだろうか。

暫くは、互いに距離を取っていたものの、やがてハミルの方が諦めたのか医師に慣れ始めた。
そんな頃、それは起こった。
若い医師が突然ハミルに襲い掛かり、強引に身体を結ぼうとしたのだ。
院内でも口の堅い医師が集められ、緊急の被害者ケアについて話し合いが持たれた。
注視されたのは、若い医師の釈明だった。
彼は副院長の三男で、小さな頃からこの病院の待合室で皆の邪魔にならないよう遊んだり勉強に励んでいた。
常連の通院者にも評判が良く、将来を見込まれている。
大学生になっても医師を目指して勉学に励んだ生真面目で硬い男であり、この病院の誰もが彼のことを知っていて好意を抱いているのだ。

その医師が必死に訴えてきたのだ。
「彼が僕を誘惑したんです! 僕は、僕は必死に抵抗したんですっ! 信じてっ、信じて下さいっ」
宥める医師達の言葉も聞こえないのか、
「ああっ! あぁああ~~~~~っ。ぼ、僕は・・・。あ、あんな風に誘惑されたらぁ~~~っ」
髪を掻きむしり、真っ赤な顔で涙を流して訴えて続ける。
「・・・あぁ・・・・、どうして・・・。どうして僕は、僕は・・・」
大粒の涙を拭うことなく自分を責め続けていた。

入院する前のハミルの身に何が起こったのか病院側でも把握していた為、若い医師の言葉には説得力があった。
勿論、否定するハミルもまた正しいのだろう。
一週間も男達に陵辱され、強制的に躾けられた身体。
ハミルは、彼自身が意識せずとも被虐が奥深くに染み込み、二度とそこから這い上がることの出来ない状態にいるのだと。
そう皆が思ったのは仕方がなかった。
その身体から、もしかしたら普通の男性を狂わせるような何かが醸し出されていたのかも知れないと。
生真面目な医師が、簡単に堕とされてしまったのだから。

診療科の医師のアドバイス等を検討し、ハミルを静かな場所で静養させることに決定した。悪く言えば病院から追い出す訳である。
最初は興奮状態で手が付けられなかった彼もようやく落ち着いてきており、院長の説得で翌日には院長宅へと極秘裏に移動することになった。
院長は若い頃に結婚していたが数十年連れ添った結果、自分には結婚という制度自体が合わないことに気付いて独身に戻っていた。
「我が家は通いの家政婦しか訪れないからな」
不祥事が外にバレないよう、院長自らがハミルを引き受けると皆を説得したのだ。
問題を起こした若い医師には、長期休暇と院長の親戚の女性との見合いが設定された。
病院には結納を済ませた後に復帰することが内々に決まっており、何とか医師の父親の心の葛藤も折合いがついたようである。

最初の陵辱から4ヶ月が過ぎていた。
身体はすっかり元に戻ったハミルだったが、もう以前と同様の暮らしは出来なかった。
今の彼には、大勢の主人が与えられている。
院長宅に移された後も、精神異常ではないものの無意識に被虐の性が現れてはハミルを苦しめ続けていたからだ。
(さて、どうするかな・・・)
ハミルの症状を観察していた院長は、自分の病院から5人の医師を選び出すと、彼の相手をするよう指示を出した。
既婚者1人に未婚者3人、独身主義者が1人。
共通してるのは全員好色で隠れホモなことだろう。
公然と若い少年を甚振って遊ぶことが出来るとあってか、不平不満なく楽しんでいるようだった。
週に一度、各々の休みに合わせて順番が回って来ていた。

勿論、毎日顔を合わせる院長が一番目の主人としてハミルの心に刻まれていた。
院長自身もホモで、暇を見つけては秘密倶楽部で遊んでいたのだが、金も掛からず口止めの必要ない相手が出来て毎日上機嫌だった。
惜しむらくは忙しすぎて時間が取れないことだ。
本来ならば自分専属で奉仕させたかったのだが、被虐を覚えたばかりの彼には短時間のセックスは物足りないらしく、毎日自慰を繰り返していた。
「お前が満足するまで、うちの医師たちに相手をしてもらいなさい」
院長も引退前のこの時期に、彼にゆっくり構っている暇はなかった。
半年後には自由の身だからとハミルに言い聞かせ、男達の元へと出掛ける彼を笑顔で見送っている。


5人の相手になって数週間後、不穏な空気にハミルは気付いていた。
今では、彼らは院長に直談判してハミルを2人または3人で犯すようになっており、彼らと会うたびに医師たちの間でコソコソと話し合いが持たれているようなのだ。
身体を執拗に撫でられ、各々が何かを確認していくのが怖かった。
先日、ついに彼らの中の一人から、
「小遣いを稼ぎたくないかい?」
にっこりと、悪びれなくそう聞かれてしまい、ビックリして後退っていた。

彼らが何か恐ろしいことを考えている気がして、ハミルは院長に恐る恐る告げてみることにした。
叱ってくれる、そう期待していたのに返ってきた答えは、
「ああ、それなら聞いているな。お前をここから連れ出して5人で所有したいらしい」
穏やかに微笑む院長の姿にガタガタと身体が震え始める。
「お前も慣れてきたようだからな。好きなだけ男を漁って生きられる手助けをしてやりたいそうだ。どうだ、嬉しいか?」
「ひっ・・・。そんな・・・」
あっさり怖いことを言われたショックと、主人だと思っていた院長に捨てられる未来が襲ってきてハミルの身体が床へと屑折れていった。
ガンガンと痛み始めたハミルの脳裏には、
(いっ、いやだっ! 嫌だっ、捨てないでっ!)
かつてのように大勢に凌辱される恐怖と、やっと手に入れた安住の地が消える恐怖が暗雲さながらに立ち込めていた。
そこから抜け出す方法そして縋れる人は、この院長しかいなかった。
ハミルに出来るのは、震える指を伸ばして、嫌だ、助けて、と告げるように白衣の裾をギュっと握り締めるしかなかった。

そんなハミルの顔を見ながら院長が笑い出した。
「なんだ、嬉しくないのか? お前も彼らを気に入っているんだろうに。彼らが吟味した相手を連れて来てくれるなら安心じゃないか」
「やっ、いやです! ・・・僕は、僕は、ご主人様だけですっ。彼らは嫌いじゃないけど・・・怖い人もいるし」
そうハミルが言うと院長は更に笑い出した。
「何を言ってるんだ。お前はそれが嬉しいんだろう? こうやって・・・、こう・・・すると・・・」
院長は、ハミルの尿道に逆さに差し込まれているアンティークのマドラーを握ると、勢いよく抜き出してしまった。
「ひぎっいいいいいい~~っ。ひっ、ひぃいいいい~~~~っ。い、いひっ・・・ひぃい・・・。いっ、いぎぃっ、いぎぃいいい~~~っ」
悲鳴を上げるハミルが面白いのか、スポっと抜いたそれを再度ゆっくりと差し込んでいく。

「ほら、お前は誰でもいいんだよ。こうやって、・・・いじめてもらえれば」
ズプっ、グリュっ。
「あぎぃいいいい~~~~っ! はがぁああああああ~~~~~~~っ」
奥まで突き入れた後、強引にマドラーをグルっと回される。
その痛みが気持ちよくて涙が溢れる。
「はあんっ! はぁっ、あはぁ~~んんっ。ご、ご主人、さまぁ~~っ。ぼ、僕は、ご主人様が好きなんで・・・」
ハミルは必死に院長を見つめた。
「ほ、他のひとなんてっ、いらな、いいぎいぃ~~~~~っ」
遊びなさい、と常に差し込まれているマドラーに必死に自分の手を伸ばすと、ゆっくりと回していった。

涙と涎で汚れた顔を晒し、必死に哀願するハミルに対して、彼を見つめる院長は無表情のままマドラーを抜き取った。
それをハミルの口の中へ無造作に突き込んでいく。
躾け通りにマドラーを舐め咥えるハミルの頬に、院長の大きな皺だらけの掌が当てられ、ゆっくりと撫でられていった。
「ふん、引退後の私の元に残るという事は、お前には休む暇など与えられないと理解しているのか」
腫れている唇を指で触り、マドラーを更に奥まで差し込もうとする自分の主人を、ハミルは必死に見つめた。
細長い凶器で咽喉を突かれる恐怖に一瞬息が詰まる。けれど、強引にそれを呑み込んで恭順を示す為に。
フっと笑って院長の指の動きが止まる。
突かれる手前でマドラーが引き抜かれ、ホっとしたハミルは潤んだ瞳で主人を見つめた。
「・・・馬鹿が」
その一言と共にテーブルの上に投げ捨てられるマドラー。
代わりに尿道へと差し込まれた指の動きで、ここに留まることを許されたと知る。
嬉し涙が次から次へと零れ落ちていき、院長の笑いを誘っていた。

「ハミル、雨が上がったようだ。久しぶりにお前の散歩に行くとしようか」
ご主人様からの誘いに、コクっと頷いて窓際まで歩いて行く。
どうしても足取りは重くなり、時間が掛かってしまう。
何故なら尿道には普段使っているより細いマドラーと極細のバイブ付き棒玩具が二本入っているからだ。
そして全身には媚薬と共にある物が入ったローションが塗られている。
身体は中から熱く火照っていた。クーラーが効いている筈の部屋であっても汗と恥液をボタボタと零している。
勃起したペニスからは恥ずかしい淫液が棒の隙間を縫うようにしてチョロチョロと流れ出ていて、その感触が気持ちイイ。
尻穴に注がれた主人の尿は、太いゴム製の張り型で止めらており、内壁に浸み込むほど充満しているのが分かる。
熱と痒さが僕を苦しめ、同時に悦ばせていた。

「ご主人さまぁ~~」
やっと辿り着いてホっとする僕にニヤっと嗤った主人が、手にしていた犬の首輪を僕の首に回した。
カチっと止める音に身体がジーンっと震える。
「ようやく準備していたワンピースに出番が来たな。どうだ、この生地の薄さは? 太陽の下でお前の恥ずかしい格好を皆に見て貰えるぞ。さあ、着替えなさい」
主人が顎で示した先にはテーブルがあり、綺麗な黄色のワンピースとお揃いのパンプスが置いてあった。
ゾクゾクっと背中に何とも言えない震えが走る。
思わず舌で唇を舐めていた。

主人の精液と尿の入った特製ローションを再度全身に塗り直すと、渡された服に着替えた。
それを目でチェックしていく主人が愛おしい。
満足そうに頷いた後、その目がテーブルに置かれたままのパンプスに移った。
「あっ・・・」
ミスに気付いた僕は急いで靴に近付いた。
スカート部分を持ち上げて身体を指で撫で、ローションを掬い取っていく。
そのねっとりと濡れた指を使って靴の中をベタベタとローション塗れにした。
両方の靴底に十分ローションが行き渡ったのを確認すると、最後に床に靴を置いて足を差し込んだ。
その何とも言えない感触にゾクゾクしつつ、もう片方の足も入れると主人を見つめた。
気持ちがいいです、嬉しいですと、伝わるように。
「まあ、良かろう」
頷いた主人は、先に立って歩き出した。

早足の主人に追いつこうと僕も急いで玄関へと向かう。
グチュグチュ、と気持ち悪い音が耳に響いていた。
ワンピースは身体にピッタリ張り付き、華奢な体格とピンと勃起した僕のアレをハッキリと晒し出している。
もしかしたら尿道に差し込まれたマドラーの柄も飾り紐もバレバレかも知れないと、顔が赤く染まるのを感じた。
主人はいつも服を購入する際、黄色のワンピースだけを選んでいるのを知っていた。
不思議に思って訊ねたら、
「お前の為だよ」
含み笑いでそう教えてくれた。
今の僕ならば、その理由もすぐに理解出来た。
出掛ける前も後も、車中や無人の場所に限らず至る場所で、全身を主人が与えるモノで汚すことになるからだ。
赤や青のワンピースならば、染みがハッキリと分かってしまうに違いない。

主人の予定では、深夜になる前に戻って来るという。
今日中に服と靴を庭で焼却しなければならないからだ。
(行く前から汚れてるし、匂いもかなり酷いから当然かな)
興奮が醒めてしまったら、後始末は素早く終えるのが主人の決め事だった。
でも、きっと僕は恐縮しながら満足の一日を振り返るんだろう。
庭での散歩とは違う外出は、僕にとって一大イベントだった。
初めてワンピース姿を人前で晒す。そう考えただけで心地よい興奮が包んでいった。


車中では主人のモノを咥えて奉仕することに徹していた。
人混みの中を歩く時は、服の下の淫らな装飾品を誇るように背筋を伸ばした。
途中で何度も主人に哀願し、脇道や壁の隙間で尻を犯して貰う。
「面倒だ。尻の張り型は取りなさい。・・・こぼして歩くのは大好きだろう?」
言葉と同時に尿道をマドラーと棒玩具の二本を纏めて動かすことで虐めてもらい、嬉し涙を流す頬を主人が撫でてくれた。
甘えるように擦り寄ると、再度マドラーが尿道の奥まで突き入れられた。
主人に差し出されたマスクを装着したせいで声は出せなかったから、せめて目で気持ちを表したかった。
ありがとうございます、と。
分かっている、とでも言うように主人が優しく微笑み、僕の口を掌で軽く押して中の淫棒を更に奥へと突き入れてきた。
「んふっ! ぐぅっ、・・・んんっ。・・・ふぐぅううううっ」
涙がポロポロ零れてきてマスクを濡らし、しょっぱい塩気を感じた。

口内を塞ぐ太いモノで虐められたあと、尻の奥深くへ改めてたっぷり精液を注いで貰った。
そして淫棒を抜くと携帯していた小さなバイブに替えて頂いた。
抜き取られた寂しさがすぐに塞がれて、満足感に脚がブルブルと震えてしまう。
屑折れそうな僕を主人が支えてくれた。
そうして気が付けば辺りが暗くなっていた。
「ふむ、そろそろ時間だな。・・・もうマスクに注目が当たらないなら外すといい」
僕の羞恥を高める為に付けていたのに、暗くなったことで誰も気にしないなら確かに意味がなかった。
「さあ、もうすぐ目的地だからな。知人が教えてくれた誰も来ない場所で調教の仕上げだ」
首の後ろにある錠にカチっと鍵が回され、マスクと共に僕の呼吸を妨げていた淫棒が抜かれていく。
「うぅんっぐっ、がはっ・・・。がっ、・・・ぐぅうううう~~っ」
ほんの十数分とはいえ咽喉の奥を塞いでいたモノが急に抜けたことで、いきなり届けられた新鮮な空気に苦しくなった。

それでも暫らくすると、今度は抜けたモノが無い寂寥感に襲われてしまい、思わず主人を見上げて哀願していた。
自分でも淫乱だと思うけれど、もうどうしようもない。
「ははっ。・・・お前は本当に淫乱だな」
我慢しなさいとでも言うように僕の頬を撫でると、さっさと歩き出されてしまう。
急いでスカート部分の皺を軽く手で伸ばし、飛んでいたパンプスの片方を拾って履くと、見失わないように必死に追った。
見っともないほど皺だらけの服に、犬の首輪を付けた女装少年。
そう自分を卑下しながらも、どこか身体の奥底で熱いモノが込み上げてくるのが分かった。

意識せず微笑んで歩く少年を、通りすがりの若者や中年の男性が目を離せない、というように何度も振り返って見ていた。

長い散歩から戻った僕達は、寝室のベッドの上に居た。
帰宅してすぐにシャワーで流した汗と淫らな汚れは、また僕と主人の身体にまとわりついている。
主人の全身を僕の舌で舐めて濡らし、最後の仕上げに足指も舌で一本ずつ綺麗にしたからだ。
十指全て終えた時には僕の呼吸も絶え絶えだった。
そんな僕に視線が当てられ、急いで息を整えるとゆったり寝転んでいる主人の腰の上に顔を寄せていく。
そこには、僕の身体の奥深くを貫いてくれる凶器の様相を呈した立派なモノがそそり立っていた。
うっとりと見つめてから、徐にそれを口腔へと咥えていった。
先程綺麗にした時よりも格段に大きくなったモノに、自然頬が緩んで仕方がなかった。
そんな僕を見て、主人が指示を出してくる。
「遊んでないでもっと大きくしなさい」
嬉しい言葉に、僕は主人のモノを咥えたまま頷くと本気で奉仕を開始した。

激しく勃起した凶器が咽喉奥を突いてくるけれど、構わずに最奥へと咥え込む。
散歩中の淫棒と違って、本物の重量感は半端なかった。
ズシっと勢いを付けて主人のペニスが咽喉を突いてくる。
頬をへこませ、必死に奥まで犯してもらう。
死にそうな苦しさが気持ち良かった。この痛みが僕に生きている実感を抱かせるのだ。
それは目前の主人だけが与えてくれるものだった。
他の誰も代わりにはならない。

大切な主人の大好きなペニスに犯される日々。
淫乱な僕を、構えない間も愉しませようと色んな道具をプレゼントしてくれる方。
誰に後ろ指を差されようとも、主人との楽園の日々を失うことは出来ない。
ここが僕の生きる場所なのだ。

充分に満足されたのを確認すると、僕は自分の尻穴に膨張した主人のモノを当てがった。
ミシっと音を立てながら穴が強引に開かれていく。
拡張されて慣れているとはいえ、最初の瞬間は激痛が走る。
小さく悲鳴を上げながら、その凶器に自分の体重を預けていった。
「ひぎっ! ・・・は、はぎぃいいいいいい~~~~~っ。ひっ、ひっ、ひぃいい~~っ。ひぃぎいいいいい~~っ!」
主人の根元が大きく拡がった尻穴に当たり、あの長いモノが最後まで全て入ったことを教えてくる。
数秒の静寂を切り裂き、主人が激しく腰を使って僕の中を行き来し始めた。
「はがぁああ、あぐうぅがあぁああああ~~っ。・・・はっ、はぎぃっ! い、いたっ、いたあぁあいぃいい~~~~~っ」
あぁ、痛いのに、どうしてこんなに気持ちがいいのだろう。

「あっ、あっ、ああああぁ~~~! ・・・は、はぁあ~~んっ! あんっ、あぁんっ! 」
ズボズボと抜き差しされて翻弄される度、僕は喘ぐことしか出来なかった。
「 あぁ、あぁあ~~~~っ。いひぃ、ひいい~~っ、い、いぃっ、いぃいいいいいいいい~~っ!」
腰を捻るようにして打ち込まれて一瞬息が止まりそうになる。
「ひゅ・・・ぎっひぃいいいっ。あがっ、・・・やめっ、あっ、あう~~~~っ。・・・ぅ・・・ひぃっ、は、はぁぐぅうううっ。・・・ひっ、ひぎぃいいっ!!」
やがて小さく呻いた主人が、僕のそこへ大量の精液を注いでくれた。それを放心した状態で受け入れていく。
僕の尻穴に突き入れたまま左腕を伸ばし、ベッドサイドのテーブルの引き出しから、大きくて長いバイブを取り出すのをボ~っと見ていた。
そんな僕に視線を当てた主人が薄く嗤う。
無言の笑みに反応したのだろう、脳が正常に働き始めた。
躾けられた通りに動こうと、主人の意図を察するように身体が無意識に動いていた。

ゆっくりと恐ろしくて愛おしい凶器を自ら抜き出していった。
主人にその様子を楽しんでもらえるよう、ことさら時間を掛けて丁寧に。
尻から零れ落ちた精液が股間を濡らしていく様を見て欲しかった。
擦られる内壁が嬉しさにジンジン疼いていることも伝えたくて。
目を細めて観賞する主人の腕が僕の股間に伸ばされ、勃起したペニスの裏へと回された。
バーベル型のピアスが二本、間隔を開けて貫かれている場所へと。
その二本のピアスが指の腹で何度も回された後、根元を締めているペニスリングに刻まれた文字をじっくりと撫でられて、ビクっと身体が跳ねた。

分厚いリングには『被虐奴隷ハミル』と刻まれ、横に小さく主人の名が刻印されていた。
散歩や特別な調教、生理現象以外は週末にしか完全に外されることはない。
僕のペニスは常に射精を阻まれており、ほんの少しの量を僅かな隙間から流せるだけだった。
一日に3度、オシッコを排泄する為に主人の手で外してもらえる至福。
溜められて濃くなった精液ミルクは、僕の朝食に混ぜられ、スープとして消えていく。
その一杯の為だけの我慢に、僕は毎日発狂しそうになっていた。
けれど、ゴクゴクと美味しそうに飲んで見せることで主人が笑って頭を撫でて下さるから、もうそれだけでいいのだ。
自分からリングで締めて欲しい、と強請ることさえ当然のこと。
今朝もミルクを搾られており、散歩中は外されていたものの射精は許されず、またペニスリングを着けられていた。
だから僕のペニスは既に大量の精液が発射時期を今か今かと待ち侘びているのだ。

ククっと嗤った主人は、ご自分の精液が詰まった僕の尻穴にバイブを嵌め込んだ。
許しが出るまでコレを外されることはない。
主人の与えたモノを吐き出すなんて罰当たりだし、勿体ないから僕も必死に尻穴を締める。
次の奉仕を目で指示され、コクっと頷いた。
緊張と弛緩を繰り返した身体は、尻穴に大量に中出しされて疲労困憊だった。
それでも身体に鞭打つように、ゆっくり反対に捻っていく。
主人の顔に僕の下半身が当たるように。そして僕の口に主人のペニスが当たるように。
毎日、主人が剃ってくれる僕の恥毛の跡を、大きな濡れた舌が隠微に舐めてくれるのを待ち焦がれながら。

やがて与えられたゾクゾク感に僕のペニスは膨れ上がり、主人の顔や頬を何度も何度もピタピタと打ちまくってしまう。
聞こえてくるその音に羞恥し、カアーっと熱を含んで顔が赤らむのが分かった。
誤魔化すように目前の強大なモノを口内に含んでいく。
先端を舌でくすぐり、零れ落ちる淫液を美味しく頂いた。
竿全体を舌で舐め、再度口に含んで上下に動かすと最後まで啜り取る為に大きく口を開く。
必死に奉仕しているのが面白かったのか、僕の身体を少しずらした主人がコンコンと尻穴を塞いでいるバイブの底を叩いた。
その音の響きが気に入ったのか、何度も繰り返して愉しむ主人に、
「ひぐっ!」
大きな悲鳴を上げたけれど、奉仕の口と手を止めることはなかった。

濡れたモノに全ての指の腹を当て、優しく撫でさすって更に大きくしてく。
もうすぐ主人の濃い精液が、そして尿がここから溢れ出すのだ。
次は頭の上から掛けてもらおうと奉仕し続けるハミルは、幸せの真っ只中にいた。

『未来の光』

『未来の光』

その少年は、まだ成長途中の細い体格でありながら爆乳の持ち主だった。
女のように繊細な貌とのアンバランスに驚き、誰もが一度は見つめてしまうに違いない。
細い首には藍色の幅広の首環が溶接されていた。
へそにくっ付くほど勃起したペニスはベったり貼り付いた白いモノ塗れで、何とも言えない淫靡さが漂っている。
根元には金の環が嵌められていて、少年に射精の自由を許していないのがハッキリと分かった。

潤んだ瞳で教師を見つめ、口付けを強請るように顔を寄せる少年。
普通なら排泄にしか使わない穴を凶器で貫かれており、その激しい突きをやめてもらおうと、自分を牝犬扱いしている教師に懇願し続けていた。
「お、お願いっ、しま・・・すっ・・・。ぬ、抜いてぇえええ~~~っ」
けれどその願いが叶ったことは一度もなかった。
教師にとってこれは教育の一環だからだ。

少年は止まない突き上げに悲鳴を上げた。
「あぁ~~~っ。あっ、ああっ、お、お願いぃい~~~~~!」
その紅く染まった唇に魅せられ、教師は少年をもっと喘がせようと舌を伸ばしてプックリ膨れた口蓋を舐めてやった。
「ふうぅ~、んんっ! ・・・んんっ、んんっ」
ちゅぶっ、むちゅぅ。
濡れた音が周囲に響き渡る。
「んんっ、・・・ふっ、ぅうぐっ、んっ、んっ」
唇の膨らみを咥えては舐め、舌を差込んでは歯の表も裏も舐めてやった。

息苦しさに顔を背けようとする少年の顎に手を掛けて固定すると、教師は続きを強制した。
「んっむっ~。んんぅ~、んっ・・・。ふぅむぅうう~~~~っ」
綺麗な涙も美味くて、突き上げを激しく繰り返しながらべろっと何度も舐めてやった。
唾さえ甘く感じて、どれだけでも飲めてしまえそうだ。
顔を歪ませている少年が可愛くて、舌を絡ませたまま、お返しだと自分の唾を強引に飲ませていった。
「うぐっ・・・。んんっ、んぅうううぅ。ううぅううう~~~っ、んっ・・・、んんっ」
時間を掛けて大きくした爆乳がゆさゆさと揺れていた。

教師の手が見事な乳を持ち上げていく。
乳首ごと揉みこんでやると、激しい快感に襲われたのだろうか、少年は下半身を擦り付けるようにグイグイと動かしてきた。
射精したくて堪らないっ、と縋るように舌を絡ませたまま見つめてくる。
予定通りの仕上りに、咽喉の奥でクククっと嗤ってしまった。
満足すると同時に、まだまだ躾けを厳しくしなくてはならないと思う。
せっかく可愛がってやっているのに、さっきのように嫌がることも多いのだ。

この学園は、金持ちの子息専用の学校として某人物が創設した場所だ。
表向きは大人しい生徒が多く、自分から未来に禍根を残すような行いはしない者がほとんどである。
世に出たら、どこかで会ってしまうそれなりに狭い関係者同士なのだ、当然だろう。
誰もが適度な距離感で付き合い、勉強を続けていた。
そんな中にあって、少年はこの学園一の乱暴者として有名だった。
背は高くなかったものの有名人の子供であり、それに媚びへつらう学生がいて十数人のグループを作っていた。
足癖が悪く何か気に入らないとすぐに蹴るのは日常茶飯事で、言葉も汚かったからクラスのみならず校内中から避けられていた。

ある日のこと。数日とはいえ同学年の一人を入院させてしまう事件が起こった。
大問題である。普通は暴力少年を断罪するなり警察沙汰になったことを憂うものだ。
だが、この学園は違った。教師や学生達は事件を信じられず、首を傾げてしまったのだ。
少年自身はどう思っていたのか不明だが、実は喧嘩が弱くて威張っているだけの口先タイプだと誰もが見抜いていた。
そしてそんな彼を、面倒な奴だ、と遠巻きにしていただけである。
物を蹴るから乱暴者なのは間違いない。だが、少年が誰かに手を出したことは一度もなかった。
「いつものように蹴って終わりじゃなかったのか?」
「さぁな、どうでもいい。馬鹿だから引き際を間違えたんだろ」
何か突発的、偶発的な出来事が事件を誘発したのだと、誰もが思った。

少年のグループ連中は、面白がったと同時に、ああこれでアホ観賞も終わりか、と残念がっていた。
彼の愚かさを上から目線で楽しむ者と、アホだと思いながら眺めている者で構成されていたから誰も彼を庇うことはしない。
唯の寂しがり屋が一人で乱暴ぶっているのが物珍しかっただけである。
教師の方は流石に放っておく訳にもいかず、双方に聞き取りを行った。
ちゃんと話を聞いてみれば、その学生の方が先に手を出してきたのが発端で、すぐに互いの両親の間で和解が成立してしまった。
今時珍しい四男の彼に、両親も甘やかし過ぎたと反省したのだろう。
少年は退学することになり、事件の数日後には学園を去っていた。


両親にとって少年は可愛い息子である。それは間違いない。
だが、同時に上の三人の子息も可愛いし大切だった。
このままだと彼らの将来に傷が付く。いやその可能性があるだけで困るのだ。
退学手続きを取るに際して、両親は内密にある提案を学園長へ打診することにした。
長男だけは両親の考えを止めようとしたものの、賛成多数で決定してしまった。
『弱い者は去れ。力は正義である』という家訓によって、一人の寂しがり屋の少年は家族から捨てられることになった。

あの事件の翌日、昼になる前だったと思う。担当教科を持たない俺は学園長室に呼ばれていた。
「今の受け持ちは二人でしたよね、ギガ先生。あと一人増えそうなんです」
大丈夫ですよね、と断定するように言われた俺は、一応断るフリをしてみた。
「それって、例の子ですか。・・・う~ん、一人はもうすぐ卒業ですから、まあ」
学園長は俺の言葉にウン、と頷いて組んでいた脚を床に下ろした。
何故かと言うと、部屋の隅にいた飼い猫が近寄って来たからだ。
「でも購入者がいますかね。止めといたらどうです?」
足癖の悪い乱暴な子ですよ、と買い手が付かなかった時のことをチラっと尋ねてみる。
学園長はニッコリと笑った。
「大丈夫ですよ。元からその子を気に入っていた人がいましてね。事件を知ってすぐに連絡が来ました」
その胸元には抱き上げられた灰色の猫がいて、俺を馬鹿にするかのように睨んでいる。
「その方がすでに手を回して、両親にそれとなくウチのことを教えたそうです」
相変わらずくそムカつく猫だった。
少しは飼い主に似て表向きだけでも愛想よくしろ、と俺は猫と睨み合ってしまい、理事長の説明を話半分で済ませていた。

しばらくすると、例の少年の両親が退学手続きをする為に学園を訪れた。
事務関係の書類はすでに手渡されており、この学園長室には最後の挨拶と迷惑を掛けた謝罪に来たという。
両親は学園長の座るソファの後ろに俺が立っていたから少し驚いたようだった。
だが、気にすることなく示されたソファに座る仕草は、さすが有名人だけあって堂々としていた。
「こちらは教師のギガ先生です。とても優秀で頼りになる方です」
学園長は俺を紹介したものの、担当教科も経歴も何も伝えなかった。
資格こそ持っているが、俺は表向き臨時教師として、だが裏では別の要員として採用されている。
多分、その別の何かをすでに悟っているであろう両親は、淡々と俺に目礼しただけだった。

「・・・ということで、学園長さまには感謝しております。あと、これは内輪の話としてお聞き頂きたいのですが」
謝罪の言葉もそこそこに本題に入ろうとするのは、実の息子への後ろめたさなのか。
それとも面倒は早めに終わらせようということなのか、判断は難しいものだ。
何度かこんな場面に立ち会っているが、その時々の事情で子供を預けるから親の心情も態度も同じものはなかった。
さて、今回はどうかな、なんて興味津々で権力者と有名人の三人を観察させてもらうことにしたのだが。
最初から両親の方がブチ込んで来た。
「学園長先生。貴方に、いえ貴方の持っていらっしゃる力に全てを一任させて下さいませんか」
母親の勢いに釣られるように、父親が続けた。
「ぜひ、ぜひ私どもの息子を・・・貴方のお力で更生させて頂きたいのです。お願い致します」
いや、あんた達、ソレって人身売買だって本当に分かってるのか。
(早々に見捨てる宣言かよ)
自分の今やっている仕事は綺麗に無視して俺は心の中で突っ込んでいた。

こんなクズから引き離して正解かも知れないな、と俺は両親の言動をそれとなく確認しながら思った。
(噂では寂しん坊だというし、なら少し優しくしてやれば調教も進むか)
今後の調教方法を考えている俺の目前を灰色猫が通り過ぎていく。
母親の方の香水が嫌いなようで彼女の対角線にある机の奥に丸まってしまった。
「・・・力とは何のことか分かりませんが。・・・ご子息を私、いや私どもに、でしょうか」
「はい。宜しくお願い致します」
スっと風呂敷に包まれた何かが学園長の前に差し出された。
少し考えるフリをした学園長が徐に頷いて、これまたスっと風呂敷を後ろの机へと手を伸ばして置いていく。
それに驚いた猫が一目散にカーテンの中へ飛び込んで逃げたのが愉快だった。

両親がスッキリした顔で部屋を出て行くのを俺が睨んでいると、学園長がおかしそうに笑って言う。
「君は、いやウチの者たちは、仕事は仕事と割り切って楽しむのに、・・・普通の常識は捨てないんだよね」
「ほっといて下さい」
俺や同僚は、確かに調教を受け持っているし生徒には厳しいけれど、それなりに愛情だって持って接しているのだ。
少なくとも例の少年は、あの家庭で飼い殺しにされるか他所にやられて潰れるかよりもマシな生活が送れるはずである。
「いや、君の考え方は間違ってるよ。ギガ先生」
俺の心の声にツッコミを入れる学園長を無視すると、俺はさっきまであの両親が座っていたソファに移動した。
勝手に座ったけれど、それに学園長が何かを言うことはなかった。

ともかく、これで俺たちの組織は新たな依頼を受けることが決定した。
そう、この学園で行っている仔犬の、正しくは牝犬の調教請負という裏の仕事が入ったのだ。
珍しいことに今回は依頼者が二重になってしまった。
本来の依頼主と、その依頼主に唆されて実の息子を手放した愚かな両親という二件が同時に来たのだ。
「ということで、あの少年の再教育をお願いしますね」
早速、学園長は猫の姿を探すように身体を動かしながら俺に調教を指示した。
「・・・学園長、一応、言っておますが、あの両親は躾けを頼んだだけですよね」
息子を見捨てたのは間違いないが、それでも万が一、後から返してくれと言われても困るのだ。
本来の依頼者とは正式に書類を交わすことになっている。しかし、あの両親とは金銭のやり取りと言葉のみである。
「いやいや。親御さんは彼を一人前に育ててくれ、とウチに任せてくれたんだ。やはり、期待には応えてやらんとんな」
それを知っている学園長も、文句を言われる前に早めに調教に取り掛かるべきだと言っているのだろう。

退学手続きが済み次第、極秘裏に少年は学園から少し離れた建物に再入学することになる。
そこで厳しい再教育という名の調教を施され、依頼者の手に渡される卒業式を待つのだ。
「まあ、あの両親が返せ、と言って来ても、彼が厳しい教育に耐え切れず逃げ出した、とでも言えば済みますがね」
俺の言葉に、ニッコリ笑って頷く学園長。
「そうだね。・・・彼らも我が子を捨てた事実を私や君からバラされたら生きていけないからね」
ようやく見つけた灰色猫を抱き上げた学園長は嬉しそうに笑った。
「で、次は普通に躾けていいんですか」
俺の言葉に、学園長は机の中から一枚の書類を出して読み上げた。
「今度の依頼は、・・・え~と、爆・・・乳? の依頼が入ってますね。じゃあ、宜しくお願いしますよ」
風呂敷ごと机の二段目の引き出しに無造作にお金を仕舞った学園長は、これで終わりだと手をヒラヒラさせて俺を部屋から追い出した。
(はあ、今度は爆乳、ねぇ)
毎回、色んな趣向に合わた指示を受けるのだが、正直ろくでもない依頼ばかりだった。

最初は普通の食事量を与えておき、徐々に最低まで落としていった。
衰弱してもらっては困るが、主人となる相手を傷付ける体力を持たせる訳にはいかないからだ。
その量に慣れ始めたら、次は栄養の偏りをなくす為に流動食へと切り替えさせた。
腰の括れを出すためにキツくコルセットを装着し、ペニスの根元にリングを嵌めていく。
これは、好きな時に射精出来ない苦しさと、我慢した挙句の射精感を交互に与えて覚えさせる為だ。
こうして主人への懇願の仕方と、セックスの快感を身体に教え込んでいくのだ。
同時進行で、毎日、乳房を強引に絞り出し、綺麗に形作って縄で縛った。
縄を外している間は、自分の掌で何度も揉むように命令を出しておく。
勿論、乳首も長く摘めるように洗濯バサミで止めてやった。
そんな風にじっくり時間を掛けて身体を改造していった結果、身体に指が僅かに触れるだけで、布に身体が擦れただけで声を上げるように仕上がっていた。

毎朝、朝食だと俺のミルクを飲ませ、その後片付けを口でするよう徹底させた。
敏感な肌に勃ったままの乳首が布に擦れ、喘ぎながら与えられた制服を身に付けていく少年を見るのは楽しいものだ。
つい、脱がせて大きな胸にむしゃぶり付いてしまうのはご愛嬌だろう。
個別の勉強部屋に少年を連れて行き、基本教科を教えていく。
ジンジンっと疼く身体を嬲るように見つめるだけで、一度も触ってはやらなかった。
悔しそうに、それでいて羞恥に真っ赤になった顔で見つめられ、可愛い奴だと思った。
昼の食事として、今日はミルクを五杯与えることになっていた。
俺、学園長、俺と同じく調教を受け持っている教師三人分だ。
全員のを溢さないよう咽喉奥に注ぎ、後始末までさせるのだ。
勉強が終わり、昼食の時間になった。
抵抗することもなく、自ら口を大きく開く少年に目を眇める。
涙目になりながらも一滴も溢さなかった少年に俺は誇らしくなり、頭を撫でてやることにした。

少年の仕上り具合に、皆が満足の表情で部屋を出て行った。
去り際、学園長からお褒めの言葉を頂いた俺は、いい仔だったと少年にねっとりと痺れるような口付けを与えた。
もう一つおまけだと、尿道も同時に指先で弄り回してやった。
悦びに激しく喘ぐ少年を見て、機嫌の良かった俺は更に深く指を入れていった。
口を塞いだまま何度も何度もペニスと尿道を虐め、激しく善がらせ続ける。
善過ぎたのか、少年の身体が屑折れそうになった。
床に落ちる寸前に支えると、容赦ない力で頬をバシバシっと強く叩いて引き起こした。
「この俺にお前を運ばせる気じゃないだろうな!」
「・・・ぁ・・・、い、いぇ・・・。・・・す、みま、せ・・・ん・・・っ」
少年は、ヨロヨロと身体を犬の姿勢にすると、尻を大きく持ち上げて俺に見せるように何度も上下に振り続けた。

尻の狭間がモノ欲しそうにパクパクと開閉を繰り返すのが見えた。
その様子に、今日は一度も突き入れていなかったことを思い出した。 
「よし、ストップだ、牝犬。俺の息子を入れてやる。感謝しろよ」
「は・・・、はぃ・・・。ありがとう、ござ、います」
尻振りを止めた少年は片手を双尻にあてがい、自ら穴を大きく開いていく。
(よし、かなり拡いてるな)
ぱっくり開かれたソコは、ひくひくと蠢いて男を誘っていた。

ようやく、拡張の成果が出てきたようだった。
その誘う動きを満足気に見ながら、俺は最終目的を思い出していた。
この牝犬を飼う主人の依頼は、爆乳の他に確か本物の犬と交尾出来ることだったと。
(やはり、もう少し大きくするか)
長年使われる内に拡張されるに違いないが、最初に適度に拡いておくのもサービスだと思った。
調教のスケジュール変更を申し出よう、少年の尻穴を貫き激しく抜き差しを繰り返しながらそう考える。
そのうち、犬を連れて来て真似事だけでも味合わせてやらなければならないだろう。
いきなり本物を突っ込んでは、狂って使い物にならなくなってしまう。
(徐々に犬のアレに馴染ませなきゃな)
勿論、本番は取っておくのが筋だろう。
自分の選んだ犬を嗾けて、牝犬が初めて犯される様を楽しみたい主人は多いのだ。
 
この牝犬を犯す予定の犬種を学園長から依頼主に尋ねてもらわなければならなかった。
同じ犬種でなければ、本番で怖がって上手くいかない可能性が出て来る。
それを記憶に刻むと、俺は少年の尻穴を本格的に愉しむことにした。
(あぁ、何てイイ仕事なんだ)
勉強を教えるのも楽しいが、これ以上に自分を満足させる仕事がないことを俺は知っていた。

ギガ先生の太い指が、僕の尻穴をグニュグニュと弄って気持ちいい。
僕の淫乱な身体が仕上がるのを主人が待っているぞ、と囁きながら虐めてくる。
もうすぐ、僕はこの学園を卒業することになっていた。
そうして本来の主人に手渡されるのだ。
僕の部屋には、主人から送られてきた銀の首輪にリード、スケスケのブラジャーにペニスをすっぽり包み込む特注の布が数枚あった。
これらは全て黒い箱に収められており、その出番を待っている。
「牝犬として飼われる人間に服が必要だと思うか? ほら、主人がお前の為に用意してくれた品だ。毎日眺めて感謝するんだな」
そう言って、ギガ先生が僕の机に置いていったのだ。
この箱を開き、中のモノを身に付ける卒業式には主人が立ち会うと聞いていた。
牝犬として主人に与えられたモノだけを飾った状態で、僕の旦那様になるという犬と交尾しながら服従の誓いを立てるのだと。
僕の尻穴はその旦那様にだけ捧げられ、主人は口と乳房しか使用しないという。

ギガ先生は、怯える僕に暗示を掛けるように毎日痛みと快楽を与えていった。
「卒業まで玩具で我慢しなさい。抜いては駄目だ」
ここ暫らく、本物のちんぽが与えられていなかった。
玩具だけでは尻穴を塞ぐ圧倒的な重量感が満たされない。
触れることすら許されなくて、悲しむ僕の気を紛らわせるように先生は尿道を少しずつ大きくする調教を始めていた。
「追加依頼が有ったのさ。この穴で犬の、お前の旦那様のザーメンを受け止められるようにしてくれ、と」
僅かな期間しかないからピッチを上げるぞ、と笑う先生が怖かった。
「別にココに犬のアレを突っ込む訳じゃない。パーティの余興にするんだとさ」
自分のそこがドンドン拡張されていくのを見るのは悲しかった。
でも一番大きな感情の揺れは、先生と離れる寂しさだ。
「ずっと、ずっと先生と居たい」
そう呟いた僕を先生は張り飛ばした。
床に蹲る僕の背を、足で数回蹴り付けてくる。
悲鳴を上げて転がる僕の腕を掴み、勢いよく引き寄せると顎をガシっと掴んで上向かせた。

「いいか! お前は卒業するんだ。甘ったれるな。俺達や卒業生、今も調教中の牝犬に恥をかかせるんじゃねえ! 主人一筋、どんな命令だろうと喜んで脚を開いて受け止めろっ」
「・・・あ、・・・ああっ・・・っ・・・」
「分かったのか! 何なら精神壊して本物の犬にしてやるぞ。どうする?」
普段のギガ先生と全く違う、その形相に、僕はブルブルと身体を震わせて必死に顔を横に振った。
(怖いっ。怖いっ、怖いよぉ)
これまでだって怒られて来たけど、これほどの恐怖は初めてだった。
「す、すみ、・・・すみませ、んでした。・・・ぼ、僕はっ、主人の、・・・牝犬で、す」
俯いた瞬間、自分の指がペニスを握っているのが視界に入った。
無意識とはいえ、どうしてこんな状況でそれを触っているのか分からずパニックになる。
(あぁあああああ~~~~っ。・・・どう、してっ。ど、うして僕、・・・勃起して・・・)

信じられないと、自分の股間を見つめる僕の頭上から先生の声が聞こえて来た。
「ほおぉ~。蹴られて感じちゃったってか? この淫乱、変態牝犬め!」
「・・・あ・・・あああ~~~っ! ・・・いぃ、いぃやあああああ~~~~~~っ」
太い指を二本同時に尿道に突き入れられ、激しく抜き差しされる。
ズボっ、ぬぷっ、ググリっ。
「ひっ、ひいぃいいいいいい~~~~~~~~!」
ぬぷりっ、ズボっ。
ズンっ、ズズズっ。ズブリっ。
時にリズミカルに響き渡る恥ずかしい音が僕を狂わせていく。

「あぎぃいいいいいいい~~~~~っ。ひぎっ・・・ひぐぅっ。う、うぅぐうううううう~~~~っ」
乳首を貫いて取り付けられたガラスの環を引っ張られた。
「ぃぎゃあああああああ~~~~~っ。あがっ・・・、が、がぁはっ・・・、はっ、はがぁああっ」
もう片方の環も捻る様に引っ張られて、僕は痛みと快感に舌を出して喘ぎ続けた。
「いいぃぎいいいいい~~~~っ。・・・いいっ、いいっ!・・・あはぁ、ああぁ~~~~っ、あんっ、あぁあんん~~っ」
「どうだっ、牝犬! 気持ちイイか?」
ギガ先生の興奮している声にすら感じてしまう。
「はあぁああ~~~~~、ん、んんっ! いいっ、いいっ、いいぃいいいのぉおおお~~~っ! もっと、もっとぉおお~~~っ」
どうしてこんなに感じるのか。何が今までと違うのか分からなかった。
「いいっ、いいっ、痛いのぉおおっ、いっ、いいぃよおぉおお~~~~~~っ」
でももう、この被虐の喜びを与えてくれるモノなら何でも構わないと叫び続けた。

僕を購入したという主人は、僕の父より年上のようだった。
ドキドキする僕に優しく笑い掛けて下さり、プレゼントだと箱を渡してくれた。
中を開いてみると、それは成人男性の指二本分の太さもある淫棒だった。
「どうだね、お前の淫乱穴には小さ過ぎるかな」
入れるところを見せるよう命令しているのだと分かった。
それを断る権利など牝犬の僕は持っていない。
「ご主人さまぁっ。・・・こ、この、淫乱な尿道を、じっくり、み、見て下さいぃ~~~~っ」
口の端を上げる主人に胸が更にドキドキしてしまう。
「ひゃぎぃいいいいいいい~~~~~~~~っ、ひっ、ひぎぃいいいいい~~~~~」
痛くて痛くて堪らなかった。それでも手の動きは止まらない。
「うぐっ、ぐうぅふぅっ、・・・ぐぎぃいいいいいい~~~~~~~!」
かなり拡張された尿道でも、初めての大きさに時間が掛かってしまった。
それでもようやく握り輪だけを残して最後まで淫棒を押し込むことが出来た。
ホっとする僕に主人が、いい仔だ、と優しい笑みを見せてくれた。

特注されたという新しい淫棒を尿道に挿したまま、僕はゆっくりと地面に腰を下ろした。
「あぎぃいいいいいいいいいいいい~~~~っ! ひぎっ、ぎっ、ぎひぃいいいいいいいいい~~~~~~っ」
大きなモノを入れたまま座ったことで、初めての角度に尿道の中の粘膜が激しく擦られ悲鳴を上げてしまう。
「いい声だな。・・・これなら余興に充分だろう」
満足そうな主人の言葉が微かに耳に入って来る。
目前の主人と旦那様に、この淫乱な姿をもっと良く見て頂こうと僕は顔を上げた。
「クククっ。よくここまで調教したものよ。学園長には礼をしなければな」
尿道に突き刺さっている淫棒の上部をグイっと更に奥へ押しながら、主人がギガ先生を振り返った。

主人の足元には、行儀良く座る大きな犬が一匹。
その犬、いや、彼が僕の旦那様だと紹介されていた。
長いベロで顔中を舐められて顔がベタベタになったけれど、不思議なことにもう何処にも不快感はない。
「ありがとうございます。・・・では、そろそろ儀式に入りたいと思います」
ギガ先生は主人と旦那様に少し下がって欲しいと告げた。そして僕を見下ろすと視線を強めた。
それの意味することを正確に把握した僕は、小さく頷いて姿勢を四つん這いへと変えていった。

最初の宣誓だと、まずは主人のザーメンを顔に掛けてもらった。
いい仔だ、と頭を撫でられ、ホっとする。
綺麗に清めようと暫くちんぽを舐めさせて頂くと、やがてそれは元の逞しい状態へと戻っていった。
嬉しい、と微笑んだ僕の咽喉に、いきなり主人のちんぽが突き込まれた。
慌ててそれに舌を絡め、もう一度奥へ注いでもらう為に必死に咥え込む。
次のが与えられるには時間が掛かった。出してもらおうと必死になって舌を絡め続けた。
頭を大きな手で押さえ付けられ、出すぞ、の言葉と同時に発射されると感激に咽び泣いてしまった。
きっと安心したのだと思う。
これまで不安で不安で仕方がなかったから。

主人は僕を気に入ってくれたようで、射精が終わる寸前に僕の口からちんぽを引き抜くと、身体全体にザーメンを振り掛けて下さった。
その後、舌に残しておいた僅かなザーメンを差出して確認してもらうことに。
これが僕の服従の証となった。
主人は鷹揚に頷くと、その舌からザーメンを指で掬い取って僕の首環の布で拭った。
ギガ先生が差し出した専用のカッターを手にして、教わった通りに僕の首に溶接されている環を切り取っていく。
慎重な手付きで僕の環が切られ、主人の手に落ちた。
躾け中の証である藍色の布がくすんで見えるのは気のせいだろうか。
布を環から強引に剥ぎ取った主人が、懐から取り出したライターで燃やし始める。
僕はその光景に何故だか胸が苦しくなってしまった。

ライターを胸元に戻すと、注文した銀の環とリードを手に取った主人が僕の顎を持ち上げた。
「さて、帰るとするか。うん?」
いいな、と確かめるような言葉に、これで卒業の儀式が終わったことを知った。
「はい、ご主人さまぁ」
嬉しくて見えない尻尾を振り続ける僕の首に、主人の手で銀の輪とリードが取り付けられていく。
リードの持ち手を座ったまま動かない忠犬、いや、僕の旦那様の首輪に結びつけた主人が満足気に頷いた。
すぐに歩き出すのかと思っていたら、手を伸ばされて僕の巨大に膨れてみっともない乳房を揉み揉みされ始めた。
「いいデカさだ。だが、もう少し大きくしてもいいな。私の手でもっと大きくしてやろう」
頭上から囁かれる言葉に、僕はポーっとなった。

一度は理事長と挨拶を交わし、歩き出した主人だったが、
「そうか、忘れていたな。せっかくの初交尾だ。大勢に見てもらわんとな」
そう言って、さっきまでいた儀式用の場所へと僕と大型犬を戻らせた。
ギガ先生が立会人となり、僕と旦那様である本物の犬との初めての交合いを見届けてもらおうというのだ。
「さあ、お前の旦那様のシェリアーだ。今日は朝からこれも興奮しておったよ。頭のいいオス犬だからな、何かを感じていたんだろう」
僕の前へと大型犬を呼び寄せた主人の言葉が、どこか他人事のように聞こえていた。
内容なんてどうでも良かったのだ。
ただただ、これからこのシェリアーが僕の旦那様としてこの淫乱な身体を弄ってくれるのだと、そう思ったら。
一刻も早く、その大きなちんぽを疼きまくっている穴に差し込んで欲しかった。

「さあ、お前達の性交を皆さんに御覧頂こう」
主人の言葉に、シェリアーが静かに立ち上がり、僕の元へと匂いを嗅ぎながら近付いて来る。
「上手に出来たら、来週呼ばれているパーティの余興にシェリアーと一緒に連れて行ってやろう。お客様に喜んでもらう為にお前を飼うのだからね」
後半の主人の声はおぼろげにしか聞こえなかった。
何故なら、我慢出来ないのか僕の尻穴に旦那様の濡れてザラザラの舌が入り込んだからだ。
僕の思考が被虐へと引き摺り込まれていく。

犬に押し倒され、赤ちゃんがオシメを換えるような格好で服従することさえ惨めとは思わなかった。
とんでもなく長い舌に奥まで貫かれ、僕のソコは喜びに淫汁を溢し始める。
愉しそうに僕達を見つめる主人も、ギガ先生の存在も遠くに消えていた。
(早く、早く、早くっ! 早くぅううううううううう~~~~~~~~っ)
肉球が僕の双尻に乗せられた。
涙と涎を流しながら、僕はその時を待った。


「いや~、実に興奮する卒業式だったな」
「ああ、俺も久しぶりにイイ素材を躾けられたと思ってるよ」
自分が躾けた牝犬が飼い主に気に入られたようでホっとしていた。
「ギガ先生、次の調教はもう?」
「ああ。うちの学園長、ほんと金にガメついよな。俺達にも休暇ぐらい与えて欲しいものだ」
次から次へと依頼してくる好き者たちよりも、学園長の金への執着の方が凄いかも知れなかった。
あの牝犬の両親からは結局一度も連絡は来ていない。
だがそれでいいのだろう。あれはもう人間ではない。
牝犬として飼われることを自ら誓い、雌犬として雄犬に嫁いだのだから。

同僚も俺も本職の教師としての休みなどないに等しかった。
だからこそ調教で憂さを晴らしている部分も大きかったが、それにしても少しは休みが欲しいものだ。
そう呟いた俺に前後の二人が頷いた。
「だよぁなぁ。でも、好きなだけ可愛い男の子を虐めて遊べるんだ。文句を言う訳にもいかないだろ」
「確かに」
「そうだな」
同僚二人と校舎に向かいながら、俺は今送り出した牝犬のことを考えていた。
想像以上に良い仕上がりで、本当は俺も手元にずっと置いておきたいのが本心だった。
だが、今日の宣誓を見た限りでは、手放して正解だったのだろう。
「さあ、家に帰ろう」
声を掛けられた牝犬は、嬉しそうに主人と犬を見つめていた。
俺には見せたことのない、実にうっとりとした表情を晒して・・・。

ここで躾けられた通りの四つん這い歩きを一度も崩すことなく、牝犬は嬉々として車に乗り込んでいた。
今後一生、二足歩行することはないだろう。
先に車に乗った本物の犬は、嫁の尻穴を長いベロで突いては何度も喘がせていた。
あの犬から嫁として認められたからには、これから一生傍に仕え、交尾という凌辱を受け続けることになるだろう。
だがそれに反抗することも不満に思うこともない筈だ。
最初に本物の犬を連れて来て調教を始めた日のことを覚えている。
あの牝犬は、本物の犬を怖がりながら、それでも逃げることなく犬が近寄って来るのを黙って待っていた。
多分、あの頃から覚悟は出来ていたし、自分の性癖がそれと合致することも自覚していたに違いない。

主人の方は、飼い犬二匹の様子を口の端を上げながら見下ろしていた。
時折、爆乳を揉み揉みしては少年の嬌声を楽しみ、尿道に装填されたままの淫棒を抜き出しては差込み直していく。
悦びの声を上げて主人らに使えている少年の姿を思い出して、これで良かったのだと俺は微笑んでいた。
嗜虐の主人に被虐の牝犬。
人間の尻を犯すように調教された雄犬と、それを受け入れるよう調教された牝犬。
カッチリ組み合わさった変則カップルだと、俺のどこか深いところがジンっと震えていた。

卒業した牝犬の未来に、これほど確かな光を見ることは滅多にない。
儀式の最中で、これは駄目だと思うことも多いのだ。
正直、ほとんどの牝犬がすぐに飽きられて売られるか、使い捨てられていく運命だった。
頑張れよ、と呟き、俺は先に進んでいる同僚たちに追いつくよう足を速めた。
校舎の一室では、次の少年が疼きに震えながら俺を待っている。
彼もあの牝犬のように、主人に愛されるように躾けてやろう、そう思った。

『王の小花』

冬めいてきた或る日のこと。王宮は舞踏会の準備に追われていた。
先年、王の叔父である大将軍が長患いの末に亡くなり、この半年、宮廷では華やかな催しを開いていなかった。
その為、今宵の舞踏会には大勢の貴族や高級軍人が、その家族を引き連れてやって来るのだ。
招待客のリストは完璧で変更もなく順調に進んでいたのだが、昨日になって更に人数が増えることが判明していた。
付き添える人数は貴族の地位や職務で決まっているというのに、高位の女性貴族が複数人、絶対に必要だと強引に友人や愛人その付き添いを増やしていたのだ。
「ふざけてんのか?」
「許したのはどいつだっ! 一発殴らせろ」
その女性達に用意される部屋数が増やされ、その部屋に入る予定だった者を別の部屋に移動させた。そして、更にその部屋から追い出された者を別の場所に、と繰り返される悪循環。
断れなかっただろう役人の無能さにブチ切れ寸前の侍従や侍女達は、朝から王宮中を大忙しで動き回っていた。

王宮の最奥、王の私室に一番近い部屋も似て非なる理由で大変切羽詰っていた。
あと少しで夕刻だというのに、王の愛妾である少年が駄々を捏ね続けていたからだ。
ただ、少年は舞踏会の日取りが決まった時から抵抗しており、今も自分より背の高い本棚の後ろの小さな隙間に入り込んで出ようとはしなかった。
刻々と迫る開催時刻に、ついに7人の侍女達は切り札を出した。
「あと一刻で王がお見えになられます」
その言葉に、ビクっと少年の身体が震えるのを彼女達は静かに見守った。
優しくて気立ての良い少年を彼女達は敬い、その心が汚れないよう細心の注意を払って教育してきた。
元からの気性もあるのだろうが、少年は王唯一の愛妾であることに驕ることなく、侍女達を母のように、姉のように頼ってくれていた。
心優しく壊れやすい、繊細な魂の持ち主なのだ。

そんな少年を視線一つで支配し、その凶悪な振る舞いで恐怖させる。
彼らの王は、国民全ての畏怖と尊敬の象徴だった。


街道は活気付く人々の往来で賑わっていた。
誰もが、王宮主宰である舞踏会の開催を喜んでおり、この好機に頬を緩ませている。
王宮が催しを自粛していた為、貴族も裕福な商人も無駄に宴を開く訳にもいかなかったのだ。
この街は王と貴族の為の専門職が多く集まっている。
その職人に仕事が回らなくなり、その家族もまた暮らしを節約するしかなかった。
大きな市場で働く店主や店員、家族にも影響は大きく、皆が早く喪が明けることを心の中で祈り続けていた。
今回、ようやく舞踏会が発表されたことで、住人達はホっと胸を撫で下ろして喜び合った。
他国からの高貴な客人に付き従う者達が、この街で買い物をする機会もあるだろうし、もしかしたら、その主を秘密裏に案内してくるかも知れないと。
舞踏会場で彼らに張り合うつもりなのか、この国の貴族達も大量の品を発注してきていた。
今迄の分を取り戻す勢いで金が国中を回っており、商売も順調に伸びていた。

久しぶりに躍動する街で笑顔を見せている国民には、もう一つ楽しみがあった。
国中に知れ渡っていることだが、尊敬する王には後宮の女達を退けて愛でる花があり、その溺愛ぶりは有名だった。
決して誰も近付けず、誰にも見せないその花は、今年18歳になる儚げな少年だという。
今回初めて、その少年が公式の場に姿を見せると噂になっており、後宮の高貴な女性達との戦いが起こるのではないかと、賭けの対象になっているのだ。
勿論、本当に戦うのではなく、衣装や宝石の豪華さで競うであろうそれを、国民代表として招待された者達の評価を集計して勝者を決めることになっていた。
何と言っても王の一番のお気に入りであり、愛妾が圧勝するに違いないと誰もが思ってはいたものの、やはり番狂わせを望む者達も多く、人が集まる場所ではその話題が必ず出るほどだった。

5年前、その少年は目前で両親と一族全員を殺されていた。
王宮に招かれ、全員が広間に揃って跪いたその瞬間に。
阿鼻叫喚、逃げ惑う親族達が次々に切り殺されるのを、傍に居た兵士に引き摺られたまま、呆然とその惨状を見つめていたという。
余りの光景に思考はストップし、少年はやがて気を失った。
その彼を殺すことなく保護したのが、親族の抹殺を命令した王であった。
将軍が少年を切り殺そうとした寸前に、王の一声で救われたのだ。
いっそ殺されたほうが良かったのかもしれない。
その夜、王の褥に連れ込まれ、憎む暇も与えられずに陵辱、蹂躙されたのだから。

余程気に入ったのか、少年は連日寝所に呼ばれ続けた。
既に王には跡継ぎがおり、誰も異を唱えることはなかったと言われている。
実は、何人かの臣下が苦言を呈しており、その事実を知っている侍従数人は彼らがいつ切り殺されるかと本気で心配していたようだ。
今現在も彼は王の手厚い庇護の下、夜毎寝所に招かれているようで、後宮では怒り狂った女達が夜毎恨みを呟いている、そんな噂がまことしやかに囁かれていた。
一族全員の抹殺の理由は判明しておらず、何か問題を起こしたのだろう、と納得する者が多かった。
これが、愛妾について国民の知る事実だった。

今では知る者は少ないが、愛妾アデルは元々王家の為の形代だった。
王の初めての息子が13歳で病死し、慌てた大臣達によって神官が呼ばれると、その神官のお告げにより、神の怒りを避ける手段を二つを実行することになったのだ。
一つは、まだ幼い次男が無事成人するまでの身代わり(形代)を用意すること。
二つ目は、その形代を王宮の敷地内に住まわせ、神への捧げモノとして幽閉することだった。
勿論、誰も近付いてはならない、そう条件が付いていた。

内々に選考が行われ、自然と身分の低いものは排除されていった。
それは当然として受け止めつつも、候補に挙がった誰もが幼い子供を引き渡すのを躊躇い、何とかして拒否しようとする。
このままではらちが明かないと、大臣達が籤引きを行って形代を決めることになった。
息詰まる部屋の中。やがて、色の付いた棒を一人が引いた。
そう、アデルの祖父の兄、内務大臣である。
一族の中から選ばれた5歳の少年は、泣き叫んで抵抗する両親から引き離され、王宮へと連れて来られた。
誰も訪れない廃屋同然の小さな離宮に幽閉されたのだ。
1ヶ月に一度、遠くから見つめるだけという面会が内務大臣に許され、痩せてはいたが日々成長していく少年の姿を、心配する両親に報告することが出来たのが救いだろう。

8年後、跡継ぎの王子が無事成人すると同時に、アデルの役目もようやく終わりを迎えた。
自分の一族から形代を出さずに済んだ高位貴族達の懇願で、証拠隠滅に切り殺される心配はなかった。
だが、すぐに帰って来るはずだった息子が戻って来ない。両親は不安を覚えたものの抗議することも出来ず、じっと待ち続けた。
それから暫らくして、彼が実家へ戻される日がやってきた。
王が隣国に招待されて出立する日のことである。
手元に戻って来た我が子を抱きしめ泣いて喜ぶ両親に、アデルは初めは少し遠慮ぎみだった。
それでも嬉しかったのだろう。はにかむように静かに微笑んだという。
まだ幼いその身体に潜んだ、発狂しそうな疼きを必死に耐えながら手を伸ばして抱きついた。


隣国へと王が長い旅に出発する2週間と少し前のこと。
筆頭侍従は形代の件を報告する為、王へと跪いた。
「無事にお世継ぎである王子が成人されましたので、実家へと戻すことになります」
よくある簡単な報告の一つに過ぎない、そう思っていた。
王が顔を見せろ、と仰るまでは。
それでも、何かの気紛れだろう、と安易に考えていた。
(この8年間、一度も興味を示さなかったのにな)
驚きつつも、その形代の少年を王の前へと連れて来るよう部下に命じていた。

その後の展開は早かった。筆頭侍従が呆然とする間に、幼い子供が悪い大人の毒牙に掛かったのだ。
初対面で何を感じたのか誰にも分らない。
王は、床に片膝を付いて震えるアデルの腕を掴んで強引に立たせると、驚いて固まる少年を引き摺って広間から出て行ってしまわれたのだ。
ボーっとそれを見送っていた侍従達が、慌てて王を追い掛けた。
追い付けないまま寝室前の廊下に来てみると、そこには痛みに悲鳴を上げて助けを呼ぶアデルの叫び声が響き渡っていた。
事情を知った内務大臣や他の大臣達、筆頭侍従も扉の外で諌めてみたものの聞き入れられる筈もなく。
仕方が無い、飽きるまでの我慢だと、蒼白になる内務大臣を皆で慰め、殺されないよう注意することを約束した。

何かの気紛れだ。次の朝には解放される。誰もがそう思っていた。これまで王の寝所で夜を過ごした者は一人も居なかったからだ。
だが、その目論見は外れてしまい、一夜のみならず毎夜寝室から出すことなく寵愛する王に誰もが驚愕を隠せなかった。
このままではアデルが壊れるに違いない、と。
何より、緊張したバランスで成り立っている後宮が揺れてしまうだろう。
大勢の妃や妾に噂が入れば、大変な事が起こるのは想像出来た。
今でさえ滅多に訪れない王が、女である自分達よりも少年を選んだと知ったらどうなるだろうか。
せっかく平和が保たれているのだ、面倒を起こすことはない、と大臣達で協議した結果、旅に出る王の目を盗んでアデルを実家へと戻すことが決まった。

予定通り隣国へと旅立つ際に、王は自分が戻るまでアデルを監禁しているよう筆頭侍従に命じていた。
それに恭しく頷いた筆頭侍従だったが、閉じ込めている少年の部屋の扉を大臣達の前で開いていった。
王には、寝室の窓を開き、飛び降りて死んだと告げることになっていた。
信用されないと分かっていても、死んだ人間に興味を持ち続ける王など考えられなかった。
逃げ出した少年を切り殺すよう命じるほうが現実的であり、それはこちらにとっても都合が良かった。別人の死体を用意して殺したと伝えれば良いのだから。

5歳で両親から引き離され、孤独に蝕まれていたアデルの精神は幼いままだった。そこに恐ろしい大人の男からの凌辱が与えられ、魂を失う一歩手前の状態だった。
虚空を見つめ、無音の世界に逃避していたアデルは、最初扉が開いたことに気付かなかった。
自分の身体が持ち上げられ、馬車に乗せられて実家に戻ったことさえ現実とは思えなかった。まるで死ぬ前に神様が見せてくれる優しい夢だと、そう思っていたのだ。
それでも両親と再会し、壊れ掛けていた感情を徐々に取り戻していくアデル。
その姿を見て、内務大臣の胸もようやくホっとしたのだった。

それから数週間が経った或る日のこと。
王宮から一族全員の招集が入った。
「一体、何事だ」
「どうして全員が呼ばれたんだ。王は明後日にならないと帰国しない筈だろう」
「子供達まで集合だと? 何故なんだ」
訳が分からなかったが、誰も大して不安を抱くことはなかった。
これまで不正や謀反など起こした者は一族におらず、アデルの件もまだ王にバレるには早過ぎるからだ。
まさか、王が都へ戻る途中でアデルの件を聞き、激怒しての召集だとは考える筈もない。

早馬に乗り換え、極秘の内に王宮に戻って来た王は、さっそく大広間へと向かった。
自分の気に入りを勝手に奪った者達を、この世から全て葬り去る為に。
突然現れた王に一族全員が驚いたけれど、常の如く無意識に頭を垂れていた。
その瞬間を見計らったように、王が動いた。腰に着けていた剣を引き抜きながら。
そうして—。
アデルの目前で、両親と優しい親族達が惨殺されていった。
あまりに悲惨な光景に、広間に集まっていた他の大臣達がアデルの方へと視線を逸らせた。
それはただ単に、その場所だけが王の怒気から免れていたに過ぎない。
けれども、アデルは彼らの視線を別の意味で捉えてしまった。
全てが自分に起因している、と。
その真実が幼い少年の心を押し潰していくのに時間は掛からなかった。


アデルは暗闇の中に漂っていた。
暗くて寒いその場所は安全から程遠く、今にも自分自身が消えそうだと感じていた。
いつ惨殺としか呼べない処罰が済んだのか、それを覚えてはいなかったけれど。
自分への罰はまだ始まったばかりだと知っていた。
「いやあぁ~~~~~~っ。ひぃっ、ひっ、ゆ、許し、てぇ~~~~っ」
暗闇の中で見えない何かによって、現実では王の狂気のような陵辱に泣き叫び続けるしかなかった。

恐ろしい王からの毎夜の呼び出しはアデルを壊すのには充分だった。
一度は逃げられた、その事実が更に恐怖を増幅させていたのだ。
痛くて、痛くて。激痛を与えてくる恐ろしい男に怯える毎日。この国の最高権力者である王の姿が目に焼き付いて離れない。
それでも、闇の底に堕ちていくような・・・慣らされてしまった快楽が残っている。
両親や一族を殺した憎い相手なのに、愚かな身体は疼きを持ち続け、痛みの奥深くに眠っている黒い感情を、持ってはならない性への開放を呼び掛けてくる。
このままでは狂ってしまう。そう思ったのだろうか。
幼い精神が自己を守ろうとした結果、元凶の王を身体が拒絶するようになっていた。

一族を抹殺された幼い少年は、飢えた獣のように覆い被さっては蹂躙する恐ろしい王の正式な持ち物となり、豪奢な部屋を与えられていた。
本来ならば、愛妾として後宮に入る決まりだが、王の指示により王の寝所近くで過ごすことになったのだ。
肌に傷を残すことは無いが、王の冷酷な視線と冷徹な言葉は魂を傷つけて止まず、少年を萎縮させるのは簡単だった。
ほんの数日で鬱状態になり、日々進行していく心の病。
元凶の王が近づくだけで悲鳴を上げて蹲ってしまう。
その姿に不快を覚える王を見て、これはさすがに拙い、と筆頭侍従は進言することにした。
「このままでは壊れて使えなくなります。少しだけ時間を下さいませ」
無言で見返され、彼は背中に冷たい汗が流れてくるのを感じた。
まだ40代の王の気性は荒く、気に入らない者は本当に斬り殺してその場に捨てるのだ。眉一つ動かすことなく。

男女の別なく使い捨てる王。実は、後宮の女達の中にも王の訪れが無いことを喜んでいる者が多数いるという。
そんな王の激しい情欲を一手に受け止める相手が見つかったことは喜ばしい。筆頭侍従だってそう思っているのだ。
まだ13歳の幼い、しかも少年であることは問題だった。だから一度は逃がすことに同意したのだ。だが、連れ戻された今、自分の首を賭けてまで再度逃がすつもりはない。
筆頭侍従にとって、まだ暫らくは少年に壊れてもらうわけにはいかなかった。
せめて、もう一人でいいから、王に気に入られる者が出てくるまでは。

少しの間、治療させて下さい、そう訴える筆頭侍従の言葉に眉を顰めたものの、微かに顎を動かして王は頷いた。
不機嫌そうではあったが、無言で執務室へと戻って行くのを侍従達が息を潜めて見送った。
筆頭侍従は、誰にも気付かれぬようホっと息を吐いた後、背後に控える部下達を振り返って命じた。
「適当な部屋を準備して、あの子供を暫らく休ませろ。ああ、医師も呼ぶように」
上司に頷き、キビキビした足取りで廊下を曲がって姿を消す彼らを見ながら筆頭侍従は小さく呟いた。
「ふぅ。何とか説得出来たようだが・・・心臓に悪いな。まさか王がここまで気に入るとは思わなかった」
誰にも聞かれず廊下に落ちていく言葉。
城内の誰もが、これまで同様すぐに飽きられて終わる関係だと思っていた。
(子が出来ぬ男が相手で助かったな。もっとも、あれがもし女であったとしても妊娠したら王は見向きもされんだろうが。早々に切り捨てられるに決まっている)
憐れみを覚えるには、筆頭侍従の職に長く居過ぎた。
「・・・所詮、アレも数ヶ月の玩具でしかないが、出来るだけ長くたせたいものよ」
王の気性を良く知る彼は、それでも一年は持たないと予感していた。最後は殺されて捨てられる運命だろうと。

まさか、この先何年経っても王の寵愛が変わらぬとは誰も思わなかったのだ。
この事実は、後年の筆頭侍従にとって苦い経験となった。
あの時、自殺あるいは病死させておけば、他国からの揶揄も嘲笑も受けずに済んだのに、と。

忠実な家臣とその一族全てを殺すほど、王はアデルに執着していた。
そのアデルを手引きして城外へと逃がす算段をしたのは筆頭侍従である。勿論、大臣達も同罪ではあったが、王の怒りはまず自分に向くに違いない。
今は誰もが口を噤んでいるが、いつ知られてもおかしくなかった。いや、王のことだから、もうとっくに分かっているのだろう。
だからこそ、筆頭侍従は出来るだけアデルを長く保たせ、王の機嫌を取ろうという安易な方向へと方針転換するしかなかったのだ。
アデルに拒絶されて憮然とする王、という珍しいものを見ただけで少しは気が晴れるというものだった。
壊される前に素早く引き離すことは出来たので、後は王室専属の医師と薬師にアデルを診せるだけでいいだろう。
難しいのを承知の上で、病状を早く治すように医師らへと指示を出した。

医師というのは地位を守ることを第一としているのか、王が関わっていることに難色を示し、最初は誰も診ることを嫌がってきた。
宥めたり脅かしたりして、ようやく何人かで専属を組むことが出来た。
「開放的な庭のある部屋を準備して静養させましょう。それが回復への一番早い方法です」
「何らかの安らぐモノを与えるのも良いでしょう。小動物などは心を癒すのに最適と言われています」
子供でも考え付くそれが本当に効くのか、と呆れたが他にあるのは薬物だと言われてしまえば、まあいい、と頷くほかなかった。
急ぎたいのはやまやまだったが、心の病気である。時間は掛かって当然なのだろう。
医師の薦めを受け入れて小動物を飼育させることにした。

やがて、少しずつだが良い兆候が見られる、という報告が上がるようになった。
小動物に自分から手を伸ばし、話し掛けることも増えた、と医師がにこやかに告げた時は、正直胸を撫で下ろしていた。
このまま元に戻らなかったら、医師だけでなく自分までも王に殺される運命が待っているからだ。
「これでようやく試すことが出来るな」
筆頭侍従は、薬師を呼び寄せ、ある調合をするよう命じた。
更にそれから数ヵ月後、日常生活を送れるまで精神が安定しているとの報告書が手元に届いた。

王からは、早くアデルを戻せと矢の催促だったが、念を入れて更に1ヶ月療養させることに決めた。
毎日、特別な薬湯を与え、睡眠導入剤を使用して暗示を与えていたからだ。
恐怖に怯える幼い心に少しずつ刷り込ませるように。
「私は王の持ち物。逆らうことは許されていない」
「王だけが我が主」
「王には絶対服従します。何をされても喜ぶことが使命。私の存在意義です」
暗示にどれほどの効果があるかは不明だったが、気休めでも構わなかった。
筆頭侍従にとって少年の存在は、それほど大したものではなかったからだ。
何れ捨てられる愛妾に、時間も金も掛ける勿体無さの方が大きかった。
さすがに壊れたままでは王の前に出せないから長期間を療養に当てたが、高価な薬や高度な医療を施す気は初めからなかった。

5歳で王族の形代となり、13歳で王に凌辱された少年は一族を惨殺された後、精神を病んで治療を受けることになった。
暗示が効いたのかは難しい判断だが、愛妾となって5年が経った今も王の嗜虐嗜好の犠牲者である事実は変わっていない。
その王が訪れると聞いて恐怖を感じたのだろうか。
流れる涙を指で拭い、ようやく隙間からアデルが這い出て来た。

一人の侍女がさっと進み出て、水で濡らした布をその目に優しく当てて拭っていく。
「・・・ありがとう」
小さく礼を言うアデルに、皆がホっと微笑み合う。
「さあ、急いで準備に入りましょう」
「ええ、もう時間がないわ。・・・そっちのタオルを取って」
「衣装と装飾品を・・・。そうね、ここに全部揃えて持って来て頂戴な」
頼まれた侍女が数歩も行かないうちに、新たな頼みごとが増えていく。
「・・・あら、櫛が見当たらないわ。捜して持って来てくれる? 簪も幾つかお願いね」
「あっ、冷たい飲み物もお願い」

忙しく手と口を動かしながらも、アデルにすり抜けられる場合を想定して、7人の侍女は包囲網を敷いていた。
「2人で向こうの、・・・ああ、そこのソファでいいからここに運んで頂戴」
「鏡、・・・鏡はどこなの? 」
「ああもうっ、これ違うじゃないの。えっと、確か向こうに・・・」
口調は苛立ち混じりでも、小走りに隣室へと取りに行く侍女の顔は穏やかだった。
焦りながらも楽しそうな女性7人が一斉に動き出すと、途端に華やかな雰囲気が部屋を包み込でいく。
その慣れた空気に、自然とアデルも寛いでいった。

愛妾の埃に塗れた身体と髪を濡れた布で拭うと、侍女達は衣装をザっと再点検し、装飾品を横に並べ始めた。
1人が香を焚き、薬湯を準備し始める。
これは、王から命を受けた薬師が特別に調合したアデル専用の配合である。
「さぁ、お飲み下さいませ」
アデルは、侍女から渡されたそれを不味そうな顔でゆっくり飲んだ。
小さく笑った侍女の差し出す水を口に含むと、嚥下してから口を布で軽く拭っていく。
その手から布を受け取り、侍女が部屋を出て行った。

年長の侍女は恥ずかしそうに全裸になったアデルの腕を優しく取ると、大きな布を敷いた台の上にうつ伏せの状態を取らせた。
いつものように2人掛かりで、髪に振り掛けた香とは別の物を身体全体にじっくりと塗り込んでいく。
尻の狭間を女性の指に弄られ、アデルは羞恥に頬がカアっとなった。
そんないつまで経っても慣れる事のない愛妾を見て、皆は静かに微笑んだ。
今まで大勢の貢ぎ者を相手にし、子を強請る後宮の女達に飽きていた王が、アデルの物慣れない羞恥に喘ぐ可愛らしい仕草を好んでいたからだ。
嗜虐の性を隠すことなく成長した王の周りは、常に入れ代わりが激しい。
自然、王に阿る者達や気が弱く逆らわない小心者が目立つようになっていた。
その中でも大貴族や豪族達は、王を必要以上に持ち上げることに余念がない。
前王からの信頼も厚かった内務大臣と一族郎党が、王命により召集され、弁解する間もなく惨殺されたからである。

噂好きの民は勿論、王に仕える誰もがアデルに関心を持っていることを7人の侍女たちは知っていた。
「その生き残りの少年が愛妾となって、今も王の閨房を暖め続けているんだとさ。大変な可愛がりようだと言うから驚きだよな」
「誰にも見せないように囲っているらしいしな。後宮の女どもがイヤがらせをしたくとも、そりゃ出来ないよなぁ」
好き勝手な噂は瞬く間に国中に広がり、その姿を一目見ようと王宮の侍従に袖の下を渡す者が後を絶たなかった。
勿論、お気に入りの籠の鳥が王宮から出される筈もなく、アデルが愛妾になってから丸5年が過ぎようとしていた。

王の愛妾が目を伏せ、身体を羞恥に震わせている頃、後宮でも同じ様な光景が繰り広げられていた。
50以上ある部屋の主人とその侍女達、大勢の召使い達が、久しぶりの宴に歓声と怒号を上げて騒いでいるのだ。
後宮の中で一番若い妃は、唯一の競合相手だと思っている女性の衣装を事前に調べさせていた。
「もっと締めて! ・・・駄目よ、まだ細くするのっ。構わないからもっと締めなさいっ。今度こそ、あの第3妃に負けるものですか」
この衣装では駄目かもしれない、とキョロキョロ視線を動かし、床にまで置かれている艶やかな衣装を見比べる妃に、侍女達は見えないように溜息を吐いた。

一番最初に後宮に入った妃は、王に見てもらう為より、自らの存在を皆に知らしめる目的で衣装を選んでいた。
「・・・そっちの、いえ、こっちかしら? ああ、それも見せて。・・・ちょっと、このクズっ、早くなさいっ!」
王妃となれるよう教育されてきた淑女は、長年放って置かれている現状に苛立ち、自分以外なら人でもモノでも文句を付けるようになっていた。
清楚さが漂う衣装よりも大胆な配色の衣装を選んだのは自分なのに、身体の前に当てた瞬間に衣装が気に食わないと怒りを露わにした。
「もうっ! あんたたち何してるのよ! これじゃ色が合わないじゃないのっ。この 馬鹿女! 手をお出しっ」
金切り声を上げながら侍女から差し出された鞭を手に取り、毎日のように標的にしている召使いの背を打った。
何度も何度も打ち込んで、ようやく気が済んだのだろう、鞭が床へと投げ捨てられていく。
赤ん坊の時から育てて来た妃のそんな姿を微笑みながら見ていた侍女は、
「こちらの衣装はいかがでしょうか。美しいその髪と透明な肌に良くお似合いでございますよ」
穏やかな言葉で妃の関心を衣装へと戻していった。

王を含む男性全てを怖がりつつも、自分が一番可愛い、いや自分だけが可愛いと信じている若い妃は、
「香水はまだ届かないの? ・・・全くっ、お父様は何してるのよ!」
どんな言動でも許してくれる甘い父親からの荷物の到着が遅いことに苛立っていた。
後宮に入る前から周囲の者すべてが可愛い自分を欲しがり、だからこそ何度も誘拐されそうになったのだ、と信じている妃は、着飾るモノは最高級品でなければ手に取る意味がないと思い込んでいた。
「ああ、早く世界で一番可愛い私の姿を王に見てもらわなくては。・・・今までは、あのバカ女達に邪魔されたけど、今日はこっちが攻撃に出てやるわ。まあ、その前に私の可愛らしさに悶絶して平伏すでしょうけどっ」
本気でそう宣言する自分の主から視線を外して侍女達は無心に衣装を掻き集めていた。ようやく決まった衣装をまた変更されないように早く隠さなければならないのだ。
「なんって可愛らしいのかしら、この私は。・・・変態たちが私を誘拐して手元に置きたがったのも無理ないわぁ」
金持ちの貴族の末娘だったからですよ、と呟く訳にもいかず、侍女の一人はこんな性格にした彼女の両親を馬鹿だと心の中で罵った。
両親の教育が、この愚かな若い妃の将来を変容させ、そして延長線にある国母になる夢を抱かせていた。

戦争上手な王族に生まれ、生糸関連の事業で富む国の元王女は、クスクスと笑って鏡を見つめている。
「ふふ、やっぱり私が一番美しいわね。この長い髪とくびれた腰、そして長い脚と細い足首。我ながら何度見てもウットリする美しさに眩暈しそうよ」
後宮に入ってすぐに、王の寵愛を少年に取られていると知ってしまった彼女は肩を落としたけれど、次代の王を虜にしてみせるわ、と心に誓っていた。
それだけの価値が自分にはあるのだと。
「良くお似合いですわ。さすが大国の王女と、皆から絶賛されるのが見えるようです。さ、こちらの紅を唇に」
一緒にこの国へと付いて来てくれた信頼する侍女の言葉に鷹揚と頷いた後、
「ねえ、今度はいい男がいるかしら。こんなところ真っ平だわ。私より劣る見栄っ張りの女ばかりなんだもの」
以前の意気込みは今ではすっかり消えてしまっていた。
肝心の世継ぎに、すでに若い愛妾や側室が大勢いることを知ったのだ。
「この国の男たちは愚か者ばかりね。あと少し待っていれば、財を持つ美女がやって来たというのに」
彼女は自分を最高の美女だと知っていたけれど、相手から望まれるのをただ待っているだけでは孤独な老婆になってしまうことも分かっていた。
だからこそ、この後宮から早く抜け出すことを現在の目標にし、標的を大臣の息子らに定めて、開かれる大きな舞踏会や催しに何度も出席しているのだ。
公の場では無表情で相手を品定めしてみるものの、この国には醜い男が多い、と毎回侍女に文句を言い続けるしかない日々が続いていた。


この国の世継ぎを産んだ女性を筆頭に後宮に暮らす全ての女性が、久しぶりの宴に舞い上がっても仕方がないのだろう。
何といっても、今回は王宮主催の舞踏会である。
普段は王以外の男性に会うことも出来ない後宮に閉じ込められているのだ。
王女、姫、大貴族の娘達の気持ちが最高潮に達しても誰も眉を顰めることはなかった。
ヴェール越しとはいえ、堂々と出席出来る数少ない宴のため、その興奮は恐ろしいほどである。
数ヶ月前から衣装や宝石を準備していても、気に入るまで何度も付け替えるのは当然といえた。
中には思い通りにならず、召使いに当たる主人も多々いたが、これも誰も咎めることはなかった。
そんな異常な興奮の裏に、もう一つ理由があることを分かっていたからだ。
今回の宴で、初めて愛妾が出席すると発表された時は本当に怒号が飛び交っていた。
長年燻っていた、後宮の女達の山よりも高いプライドが再燃したのも仕方なかった。
愛妾に負けるものかと実家の親達に金の無心や無理難題が雨の様に降り注いだのは、両親達にとって不運というものだったが。

大臣の一族とはいえ、すでに失脚した貴族の生き残り。
本来ならばアデルのように身分もない者が、それも男が王の傍に侍るなんて、と誰もが心の中では憤っていた。
王の気性が恐ろしくて、愛妾から寵を奪おうとするのは一部の妃だけだったが、男に、それも少年に王を奪われた屈辱は胸にクッキリと刻まれている。
しかし、苛烈な王が唯一寵愛する者を堂々と卑下することも出来なかった。
そんなことをしたら死が訪れるのは周知の事実。あの冷酷な視線で虫けらのように切り殺されて終わりだろう。
後宮の女達にも守りたい実家があり、例の一族の二の舞を踏んで全てを灰にするわけにはいかなかった。

衣装を纏ったアデルを中央にして、7人の侍女が手落ちは無いかと眺めていた。
その怖いくらいの視線に頬がヒクつくけれど既に半分諦めており、もうどうにでもしてくれとアデルは沈黙を通した。
王が侍女達に宴の準備を言い渡したその日から、今日の為に特注されたドレスに宝石、髪飾りである。
彼女達はアデルにもカタログや見本を見せつつ、あれこれとおしゃべりしては顔を上気させ、嬉しそうに目を輝かせていたものだ。
ヴェールで見えないというのに髪型にも細かく拘り、何度も何度も髪飾りを変えてはその出来映えを確認された日のことを覚えている。
結局、腰までの長い髪は下ろしたまま丁寧に解され、艶が出るまで梳かれることになった。
清楚な装いにすべく、装飾品も上品なものを数品だけ厳選され、身を飾っていた。

アデルが嫌がったドレスは一見豪華で重そうだったが、その生地は超極細の高級糸で織られており、スリム軽量化により、華奢な体つきのアデルでも普通に装うことが出来るように作られていた。
異国から献上されたその生地は、王自ら保管庫から持ち出し、最高の職人を指名した後に、一針一針手縫いさせたものだという。
綺麗な刺繍が全面を飾ったドレスは、繊細で豪華な仕上がりとなって届けられ、アデルにピッタリだと侍女達の顔も喜びに綻んでいた。
顔を隠す薄い不透明なヴェールには高級レースが惜しげもなく使われ、これも職人の刺繍が華を添えていた。
王の手に吸い付くようなアデルの柔肌は薬師によって日々管理されており、剥き出しの腕や脚が、その艶やかさを見る者に魅せつけることだろう。
7人には、今から皆の感嘆の声が聞こえるようだった。
金髪と碧眼の逞しい筋肉質の王と、母親譲りの銀髪と紫眼の持ち主のアデル。
そんな2人が寄り添う姿は眼福さながら、招待者全員が、特に後宮の者達が目を見張ること間違いなかった。


王を守る護衛達の足音が廊下から聞こえて来た。
苛烈な王の、愛妾への固執。その溺愛ぶりは尋常でなく、18歳になった今も手放す気配は一向に見えない。
アデルに自分だけを見つめるよう強要し、周りを排除することに躊躇ない様はどこか幼い子供のようであったが、被害が大きすぎた。
ほんの少しでもアデルが他人や動物に興味を持った事に気付くと、容赦なく罰を与えて王宮から追放し、場合によっては切り殺す事さえあった。
それを知ったアデルは、二度と自分の所為で他人が傷つかないようにと、他人と交わることを避け、自然の動植物を視線で愛でることに留めるようになった。
それだけが、唯一、王宮での寂しさを慰める糧だと知っていたから、侍女達も王の居ない時を見計らって奥庭に連れ出していた。

「さ、アデル様。もうそこまで王がお見えですわ」
「ドレスはお脱ぎになって。・・・はい、このローブを着て下さいませ」
「髪のヴェールも今は外しておきましょう。大広間に行く前にお付けしますね」
せっかくの衣装を汚す訳にはいかなかくて、彼女達は大切な少年へと視線を合わせた。
この後、必ず王はアデルの身体に手を伸ばすに違いないからだ。
舞踏会に出るギリギリに着てもらうことで、王の傍らに初めて立つ愛妾が恥をかくことなく、その姿を人々に見てもらえる筈だ。
「・・・あぁ、そうね。王のお気に入りの杯を用意して頂戴な」
「椅子をもう一つここに持って来て・・・」
バタバタと動き回る侍女達の姿は、アデルにとって心温まる日常だった。
たとえ、それが恐ろしい人物を招く為の準備であっても。
テーブルに菊華水を用意させ、王専用のお茶の仕度が進められていく。
そうこうする内にノックが扉から聞こえて来た。

ガチャりと鉄の触れ合う音がして、ゆっくりと重い扉が開き始めた。
やがて堂々とした体躯を煌びやかな舞踏会用の礼服に包んだ王が入って来た。
すでに侍女達は、揃って床に跪き頭を下げている。
アデルもその場で深く一礼すると、王の足がソファへと進むのをじっと見つめた。
ドカっと王が座るのを確認していると、侍女達が目で合図しあう気配がする。
緊張に満ちた侍女達と同じようにアデルの胸の鼓動もいつしか速くなっていた。

別の者から水を乗せた盆を受け取り、侍女ネッサラが静々と王の前に進み出た。
跪き、捧げ持った盆を王が取り易い高さで止めて俯く。
チラッとそれを見た王は、気だるそうに杯を掴み、一気に喉へと注ぎ込んだ。
無造作に、だが優雅な所作で杯を戻し、ネッサラを下がらせる。
その様子を見ながら、アデルは王に歩み寄った。
全裸に薄紫のローブで身を包んだ愛妾が足元の床へ座ろうとするのを、王は無言で腕を伸ばして腰を抱くと、自分の膝の上に座らせていく。
頬を染めて王の胸に潜り込むように俯いたアデルの背を、王が淫靡に撫で始めた。
ピクっと身体を震わせ、イヤイヤと顔を左右に振り、その手から逃れようともがいた。
そんなアデルを咎めることなく、背から尻へと大きな掌が下りてく。
「っはあんっ! んんっ・・・」
小さく喘ぐ声が部屋の中に響き始める。
舞踏会へ向かう前に、いつものように王は愛妾の身体で愉しまれるのだと察した侍女達は、音を立てずに壁へと下がっていった。

太い指2本が無造作に尻の穴の奥深くに入り込み、中をぐちゅぐちゅと音を立てて掻き回していく。
「アレを用意しろ」
喘ぐアデルを見つめたまま、王は無表情で控えている侍女頭のアスキーンにそう命じた。
「2匹、大きいのだ」
その指示にアスキーンは頷くと、背後の侍女達を振り返って視線で指示を与えていく。
彼女達が小走りに去るのを確認すると、アスキーンは指の動きを邪魔しないように注意しつつ、王の上着を脱がさせてもらった。
それを戻ってきたネッサラに渡し、隣室に持っていくよう指示を出した。
入れ替わるように、ジブラサとビラチェが盆に大きなビン1つずつを乗せて戻って来る。
アスキーンはビンの1つを受け取ると、床に膝を付き、ゆっくりと王へと差し出した。

喘ぐアデルの尻に、王のもう片方の指2本が入り込み、大胆に横に開いていく。
ビンの中で蠢くモノの気配がアデルをより一層竦ませているが、王はそれを気にすることなく指を動かし続けた。
大胆にそこが開かれると、王は視線だけでアスキーンにビンの蓋を取るように指示を出した。
中に入っているモノが上手く届くようにと、愛妾の身体を軽く動かし続けながら。
開かれた入口の方へとビンの中の蠢くモノが方向転換し、やがてアデルの尻へと入り込み始めた。
「ひぃぎぃいぃいいいいいい~~っ!」
アデルは身体を大きく震わせ、涙を零して逃れようと必死になった。
その痛痒い、無数の細い足達が奏でるムズムズ感と刺激。
何より蟲が敏感な場所へ入ってしまった恐怖に。
指で開かれてしまった尻の奥に蟲がズブズブと入っていく。
抜け出そうとする蟲の後ろを長い指で中へ押し込むと、王はその感触に咽び泣くアデルの姿に目を細め、じっくり観察して愉しむことにした。

「ひぃぐうううううううううぅ~。ひぃぎぃっ、ぎっ、ぎぃひいいい~~っ」
何度もされた事とはいえ、余りの気持ち悪さにアデルの額にはビッシリと冷や汗が浮かんでいた。
その蟲は太さ4cm、全長5cm。
目も歯も無く、長い舌が特徴で短毛ミミズに無数の足が付いている。
その毛穴から非常に珍しいモノが排出されるので有名だった。
この国の薬師が創った高級蟲で、世界中に需要が有る。
これを創らせたのは数代前の王であり、後宮の女達を自分好みに調教するのに使われたと言われている。
内壁を傷つけずに女達の矜持を剥ぎ取り、時には心を壊すのに最適な道具。
精液や淫液など全ての排泄物が好物であり、その臭いを嗅ぎ取って無数の足で内壁を擦って進むのだが、その際に分泌される液体が排泄物と反応して媚薬効果を齎すのだ。
時間の経過と共に嫌悪が快感へと変わっていく恐ろしさ。
女性ならずとも恐れるモノ。
そんな蟲がアデル尻の奥へと収まっていた。

蓋を閉めて次のビンを受け取るアスキーンの手元を、空ろな目でアデルが見つめていた。
諦めと仄かな悦びがアデルの思考を更に惑乱させ、知らず舌で唇を舐めて次が与えられるのを待っている。
依然として王の指に支えられて大きく開いたままの尻穴に、新たなビンが当てられた。
やがて、ビンの入り口がスポっと隙間無く挟まって動かなくなった。
敏感なアデルの内壁がビンのふちを包み込んだのだ。

ビンの中で蠢いていた大きな蟲が焦れったく進んでいく。
暫らくして、全長5cmの蟲を前方に咥えたまま、太さ5cm、全長6cmの蟲も完全に中へとその姿を消してしまった。
アデルの拡張された尻穴の奥深くへと。
「あぎぃっ! ひぃっ、ひっ、いぃぎいいぃいいいいいいいいい~~っ。ひっ、ひぃいいいいいいい~~~~っ!」
尻たぶを王の掌に撫でられたまま、アデルが絶叫を上げる。
中を蟲の舌で微妙に擦られ、2匹が蠢く気持ち悪さに犯され続けているのだろう。
逃げ惑う身体を王はしっかりと腕に抱き止めると、気紛れに愛妾に口付けを繰り返した。
何度も大きく跳ね、ひいいっと腕の中で喘ぎ続ける愛妾を満足そうに見つめている。
「行くぞ」
アスキーンに鋭い視線を向けると、王はアデルを姫抱きに抱え直して立ち上がった。
ヒクヒクと身体を震わせ、唇を噛み締めるアデルの額に軽く口付け、王は愛妾を連れて部屋を後にする。
背後に必要な物を準備した侍女7人が続いていた。


蠢き続けるモノに嬲られたまま、アデルは王に連れられ大広間の一つ手前の部屋まで運ばれていった。
「あぎぃっ。うぐぅがあっ、・・・がっ、はがぁあああ~~~~! ひぎぃ、ひっ、ひゅ、ひゅぎぃひぃいいいい~~~~っ」
王が椅子に座ると同時にアデルも膝の上に下ろされてしまう。
その衝撃に尻の穴の奥で蟲がグルグルと動き回り、涙混じりの叫び声を上げた。
どんなに動き回ろうと、王の膨張したモノを全て収めることの出来るそこが裂ける事はなかった。
充分な歳月を掛けて調教されており、優しく妖しく王を締め付けるよう念入りに拡張されているのだ。

自分の欲を満たすことにした王は、愛妾の眦に浮かんだ涙を舌で舐め取るとソファの上でうつ伏せにさせた。
太い指で尻を大きく開けると蟲を摘んで引き摺り出していく。
「ひっ、ひぎぃ! あぎぃいいいいいい~~~~! ひゃがっ、がっ・・・はっ、・・・ぁ・・・、あっ、あひぃいいいい~~っ」
抜かれる度に粘膜が擦られて、気持ち悪さにアデルは泣き叫んで哀願を繰り返した。
「いひいぃ~~~っ、・・・やっ、いやぁっ。もうっ、もういやぁああ~~~~っ。・・・ぇっ・・・、お、おね・・・いしますぅううぅ。ゆ、許し・・・」
何度も何度も、もう許してと涙声で訴える可愛い愛妾の頼みをワザと逆に受け取って、王は許しを与えてやった。
「ほう、抜かれたくないか。お前がそんなに頼むなら、このまま入れて出るとしよう」
「・・・っ・・・! ひ、ひいいいい~~~! ぎぃ、ぎぃひいぃいい~~~~~っ」
急いで首をプルプルと振って拒絶した。けれど、恐怖に固まったのか言葉が中々出て来ない。
アデルの慄きに身体が反応し、次の蟲を掴んで入ったままの王の指を締め付けようとする。
絶妙の締まりに、王は口の端を上げて嗤った。
自分の欲を後回しにしても構わない程に、この愛妾の素直な身体と心を気に入っていた。

暫らくその締め付けを愉しんでから、ようやく蟲を引き出してやることにした。
涎を口端から流し、赤い頬に涙が零れ出るアデルの表情は、どこか恍惚としていて愛らしかった。
ブルブル震える愛妾の唇を奪うと、舌を差し込んで口腔を舌で嬲ってやる。
たっぷりと自分の唾を呑み込ませて、嚥下していく咽喉を見つめた。
ハア、ハアっと荒い息を吐くアデルを抱き込んでソファに座ると、膝に抱え上げて落ち着かせてやった。
部屋に控えていたアスキーンに視線をやり、準備の指示を出した。
心得た彼女は背後の部下達にヴェールの支度を急がせ、自分は抱えたドレスの皺を伸ばしながらアデルへと近寄って行った。
事実上のアデルのお披露目が、間も無く開始されようとしていた。

煌びやかに着飾った大勢の客人達。
後宮の女性達の指すような視線が痛い。
興奮に勃ち上がった小ぶりのペニスを王に弄くられ、尿道を太い指で塞がれて頬がカアっとなる。
直接には見えないといえど、ドレスの不自然な盛り上がり方で全員にバレていると分かっていた。
先程、大広間に盛大な拍手で迎え入れられた王は、アデルを膝に乗せて玉座に腰を据えてしまったのだ。
逃げたくても逃げることが出来ない。
他人に自分のあられもない姿や、興奮に火照る顔を見られる時間が一刻も早く終わることを願うしかなかった。

王の信じられない態度を見た客人は驚き、まさかそうするとは、と国の重鎮達も仰天した様子で誰一人声を出さない。
静まる広間の中で王の毅然とした態度と、愛妾の身動く音の対比が鮮やかにその場を支配していた。
誰もそれを常識外れだと、声高に指摘することは出来なかった。
後宮の妃達、貴族の女性達も怒りで顔を真っ赤にさせたものの声を上げることは控えるしかない。
面白くなさそうに見下ろす王の機嫌を損ねるなど、率先してやる者など一人も居ないのだ。
(いやぁああ~~~っ、もう許してっ。だ、誰かっ、お願いだから助けてっ)
この5年間、言葉に出さずとも視線で訴えて来た。けれど、誰一人としてそれに応える者などいない。
そう知っていてもアデルの濡れた目は救いを求めて彷徨っていた。

他人の前で男に身体を弄られて喘ぎたくなかった。
こんな恐ろしい男の与える行為に慣れてしまった身体が憎らしい。全身が過剰に反応して沸々と何かが沸き上がっているのが分かった。
助けて欲しいのに、真逆の懇願が今にも口から溢れ出そうで怖かった。
(ここは嫌いっ。ここで犯されるなんて嫌ぁ~~っ)
アデルはピリピリする空気を敏感に感じ取り、ひと時も休むことの出来ない緊張感に襲われ続けていた。
やがて、耐えられないと身体が悲鳴を上げるようにガタガタと震え出し始める。
激しく身震いする愛妾に気付いた王は、優しくアデルを抱えると腰を上げた。
「後は好きにしろ」
そう、筆頭侍従に言い捨て、ゆったりと寝所へ戻って行った。
恐ろしいほどの沈黙を背にしても、その足取りに変化はなかった。


強引に伸し掛かられ、何度も何度も尻の穴を指と舌で解されていた。
時間を掛けて拡張されたそこを太くて熱いモノで貫かれ、悲鳴を上げたのは数刻前のこと。
それからは嬲るように、ゆっくりじっくりと浅く突き込まれては引き抜かれることを繰り返されている。
「あ、はあぁぁぁ~~っ。・・・はぁう~~~~、んんっ。あっ、あっ、あはぁああああ~~~~~っ。ん、んんっ! あ、あんっ、あぁんっ」
太い男根がグルっと尻の中で回され、片足が王の肩から外れてピンと突っ張った。
その足首から精液が一筋流れ落ち、その感触にビクっと身体が震えて王のモノを締め付けてしまう。
「・・・くっ」
王が呻き、アデルに突き入れていたモノを更に奥へと強引に押し込んでいく。
「あぎぃいいいいいいいいい~~~っ。ひっ、ひぃいいいいい~~~~~! ・・・ひっ・・・、あひぃっ。ひぎゅうぅ、うぐうぅう~~~~~~」
ドプっドプっと大量に精液が注ぎ込まれ、失いかけていた意識が引き戻された。
「ふうっ」
満足気な王の声した。
憎くて、恐ろしい、すぐにでも逃げたい相手なのに、何故こんなにも胸が痛いのだろうか。
アデルには何が正しくて、何が間違っているのか、もう分からなかった。

「ひぎぃいいいいいい~~~~っ。・・・あ、あっ、ああぁあああ~~~~~~~んっ!」
中に注がれて感じたのだろう。ブルっと震える愛妾の何もかもが可愛いくて堪らない。
気持ち善すぎて大量に出したせいで少し萎れたモノを、濡れている尻穴から抜き出した。
代わりに指で乳首を捻ってやる。
「ひゃぃいいっ!」
小さく身を震わせ続けるアデルのペニスの根元には、太い環が嵌められていた。
特注に相応しく、貴重価値の高い宝石が無数に飾られている。
そのペニスの先端より下の部分は私の手で穴を開けており、素早く極小の真珠ピンを両端に嵌めるように貫いてあった。
泣き叫ぶアデルが可愛くて、そのピンの中央に強度のある乳白色の糸を潜らせると輪を作ってやった。
触ったり掴んで揉んだのが良かったのか、男にしては大きくなった長い両乳首にも同じ糸が結わえてある。
愛妾がイキたくなると糸を同時に引いて、それを阻止して愉しむ為の仕掛けだった。

全てを奪ったあの日から、アデルは王である私のオンナであり、奪い尽くす獲物でしかなかった。
あくまで私を喜ばせる存在であり、自分の欲は後回しにしなければならない。
若くて経験の少ないアデルは、我慢出来ずに何度も吐精してしまい、それを躾けるという口実で環を嵌めて調教を楽しんできた。
勿論、これからもそうするつもりだ。
こんなに楽しい、聞いていて下半身が痺れる悲鳴の持ち主をどうして手放せようか。

「あひぃっ。い、いひぃいいい~~~っ! ・・・んっ、んん~~っ、お願いっ、・・・イ、イキたいっ、あぁ~~っ!」
涙をボトボト零して哀願する愛妾に私は満足し、許しを与えることにした。
「お、お願いで・・・。ひっ、ひぃいい~~~んっ、んんっ! ・・・も、もうっ、ゆるし、てぇえええ~~~~!」
但し、環を嵌めたまま精液を零さず、オンナのように気をヤルという条件で。そう耳元で囁いてやる。
「ひっ、・・・む、むりっ、ですっ。い、やあぁああああ~~~~~っ。ゆ、許してぇえええ~~~~っ」
必死になって私に視線を合わせてくる姿に自分の唇が歪むのを感じた。
苛めれば苛めるほどに、この愛妾は清楚さを保ちつつも淫らになっていく。
その様が、無表情で冷酷だと呼ばれる私の胸を熱くさせるのだ。
「イクといい」
すでに激しい抜き差しの余韻も消え、今は内壁に注がれた淫液の熱さに羞恥を覚えているだろう愛妾を視姦してやった。

これまでの調教の成果だろうか。許しを与える王の低音に感じたアデルは、身体が望むまま射精していた。
「あぎぃいいいいいい~~~~~っ。ひぎいぃっ、ひっ、ひぐぅっ。うおぉ、おぐぅおぉおおうぅううう~~~っ」
可愛らしいイキ様だと薄く笑った王の指が、まだ途中だというのにペニスの紐へと伸びてきて、それを引っ張った。
「ひぃっ! ひぎぃいいいいいいい~~~っ! ・・・んっ、んんっ! い、いやっ、やだっまたっ・・・。いっ、いっちゃうっ、いっちゃうのぉおおおおお~~~~」
王は最後の一雫をも擦り付けるが如く、醜くて太いモノをアデルの乳首に押し当てて汚れを拭っていた。
悔しくて悲しいはずなのに、それにさえ感じている自分を自覚してアデルの頬が真っ赤に染まった。
「うぅっ。ひっ・・・ひぃい~~~~っ。・・・やっ、そこは・・・い、やぁああ~~~~っ、いやだぁっ」
ピクピク震えている尿道に王の指が伸びるのを見ていたアデルは、必死になって首を振った。けれども、そんな自身を裏切るかのように脚は大胆に開いたままで閉じる気配はなかった。
「は、はぁううぅ~っ! んっ、んんっ、・・・いいっ! あぁああ~~~~っ、いいっ、いいのぉおおお~~~~~~っ」
グブっと差し込まれた指を奥へと誘おうとするアデルの腰の動きが、王の視界を楽しませていた。


ある国に、一族全員を抹殺するほど独占欲の強い王がいた。
そんな王に囚われ寵愛される小さき花。
望まぬ淫らさで王を惹きつけた可憐な花は、今日も王の寝室で咲き誇っていた。

『私的創作集・BL小説』

『私的創作集・BL小説』

女性向けのBL凌辱小説です。 卑猥で露骨な直接的表現になります。犬との交尾など色々ご注意下さい。 気分が悪くなったら即バックして下さい。

  • 小説
  • 中編
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2017-05-08

Copyrighted
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  1. 『玩具の仕事』
  2. 『買い物』
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  5. 『王の小花』