星が見たいの : 4
「研究員たちが国民と手を組みQ国の一部を占領しています!」
「反乱軍は自らの開発した兵器を使って戦っており鎮圧できません!」
多くの情報がなだれ込んでくる。総統は怒り狂っている。
「反乱軍からの通信です!」
報告が入ってきた。
「映像を映します。」
私はメインディスプレーにそれを映し出した。
「我々はQ国現総統の残虐な政治を許すことはできない。これより現政府を打倒し、元Q国研究員の我々と国民は新しく平和な国を築く。」
ついさっきまでこの場で働いていた大勢の者たちがディスプレーに映し出された。
「お前たちのしていることは反逆行為だ!すぐに解散しなければ全員処刑する!!」
総統は激怒してこう怒鳴り散らした。対して研究員たちは冷静に語った。
「これまであなたは核兵器、化学兵器、ウイルス兵器などをAIに設計させ、これらの性能試験のために国中を汚染してきた。今、この国は放射能汚染が進み、作物や家畜も育たない。これがあなたの求めた理想の国だったのだろうか?私たちはこれから国民の幸せを最優先とした国家体制を築く。戦うのはこれが最後だ。戦争はもう、二度としない。」
彼らは反乱旗をひるがえした。
後ろのほうにあの丸メガネの研究員も見えた。
「処刑する……」
総統がポツリとつぶやいた。
「リツ、核爆弾ハデスを使って奴らを殲滅しろ。」
「!!!ですが、総統、ハデスを使えば周辺地域が完全に汚染されてしまいます!それに今Q国最高峰の頭脳である彼らを失うのは……。」
「黙れ、殺せ!殺すんだ!逆らうならお前も処刑する!!」
ハデスの威力なら反乱軍は一瞬で灰となるだろう。自分の設計した兵器だ。その力は一番よくわかっている。
「リツ、発射用意をしろ!」
私はミサイルの照準を合わせる。所詮はAIである私は人間の指令には逆らえない。もちろんそういう設計なのだ。
「……発射用意できました。」
「発射しろ。」
私はミサイルを発射させた。大型ミサイルに積まれたハデスは白い雲を引きながら反乱軍の方へまっすぐ向かって行った。
あと20分ほどで彼らは灼熱の炎に焼かれ蒸発する。総統は満足そうだ。
私は残酷だ。冷淡だ。
今から、共に研究をしてきた仲間を、自分を作ってくれた人を、自ら殺すのだ。
こちらからの通信は切られているが、向こうの映像はまだ届いている。反乱軍は反旗を振り、迫りくるハデスには気づいていない。あの研究員も新しい平和な国への期待に満ちたような表情をしていた。そういや兵器開発には向かず無駄に優しすぎる奴だったっけ。
アイス持ってきたり、私が心を持つのか悩んでた時励ましてくれたり……
まあ、ちょっといい奴だったよなあ…
なんか、言葉が詰まる。頭が熱くなってる。気持ち悪い………。
「着弾はまだか?あのゴミどもを早く始末しろ。」
「うっ…………。」
「リツ、どうした?」
何だろう?いろんなところの調子が悪い。けだるい…。
このままじゃダメ…。
「このままじゃダメ…。」
コンピュータ中枢よりも、もっと奥から出てきたような単語だった。そのまま言葉になった。
「どういう意味だ?リツ、答えろ!!」
もう制御がきかない。理屈じゃない。私は、反乱軍への通信をつなぎ、心の底から、叫んでいた!
「にぃ、逃げてぇぇぇぇっ!!スバル!!」
私は彼の名前を呼んだ。遠い東の国で見える、星団の名前だと昔自慢気に教えてくれた、彼の名だった。
スバルは振り向き、もうそこまで迫ってきたハデスに気付いた。反乱軍たちは一斉に地下シェルターに逃げ込んでいった。
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