ゴミのち宝物

少女の世界はゴミだらけ。

少年の世界は宝物だらけ。

私の世界は相も変わらず空っぽです。

右、左、上、下、前、後ろ

はい、確認完了です。私の世界にはなーんにもないのです。
真っ白というには汚すぎる世界ですが、私の世界はゴミばかり・・・
あ、ゴミはありました。前言を撤回します。

私の世界にはゴミばっかり。
捨てるものばかりなのです。

「本当に?」

はい、本当ですよ。
だってだって、苦しくて悲しいだけじゃないですか
私が今ゴミと認識したものを、君がいう・・・

「宝物」

そう、宝物とやらにしてしまったら。

「じゃあ僕からも言わせてもらおうか、

右、左、上、下、前、後ろ

確認完了。僕の世界にはものがごった返している。
きれいというには散らかりすぎているけれど、僕からすれば全て宝物さ。

僕の世界は宝物ばかり。
捨てられないものでいっぱいさ。」

そんなにいっぱいため込んでいたら、辛いだけじゃないですか。

「そうだね、苦しくて悲しくて、
この宝物の重さで潰れてしまいそうになる時もあるよ。」

ならどうして

「宝物は、大切に磨いて、大切にするほど僕を支えてくれた。
時には牙をむくこともあるけれど」

私は大切なものに裏切られたくない
怖いの、なくなってしまうのが
だから私は裏切られる前に、なくなる前に
それをゴミとして捨てるの

「うーん、まぁそれはそれでいいと思うけど
君、なんだか可哀想だね」

かわいそう?

「君は自ら幸せになる道を断ち切ってしまっている。
逃げてるんだ、幸せから。
そりゃ、幸せな分辛いこともあるさ、でも
それはとてもとても重大な事なんだ」

別に、幸せなんて

「あ、そろそろいかなきゃ
君があんまりにもネガティブで可哀想だからついつい話しかけちゃったけど、
君なら、君がいうゴミを磨き上げて、綺麗な宝物にできると思うよ」

どこにいくの?

「君にはまだ早くて、遠い所」

早くて、遠い?


「お願いよ、お願いだから目を覚ましてちょうだいっ」


この声、誰・・・

「ほら、君の大切な人が呼んでるよ」

大切な、人?おかあ・・・さん?
・・・私、もどらなきゃ・・・

「その道をまっすぐいけばすぐに戻れる、
早く戻ってやんなよ」

君は?一緒に行かないの?

「僕はね、わりと幸せ者だったよ。君の隣の病室で、僕を想って泣いてくれてる母さんと父さん。
最後がこんなに温かいなんて、思わなかったな」

私も、宝物見つけられますかね

「さぁ、でも君はわかってるんじゃない?
あとは優しく受け止めて磨いてやるだけさ」

・・・また会える?

「いや、もう会えない」

そう、か

「ほら、僕もいかなきゃ。
君も早く戻りなって」

うん、じゃあ

「じゃあね」



(ゴミのち宝物)

ゴミのち宝物

世界は無限大です、面白いです
無限大な世界のほんの一部。

これから始まる少女の世界。
終わってしまった少年の世界。

始まりも終わりも
ゴミも宝物も

世界の前では紙一重ってことで。

ゴミのち宝物

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-08-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted