おやじ狩りⅡ

 目が覚めた明美は、頭が朦朧としていた。
いつの間にかパンティとパジャマが着せられている。
(もう朝かな?昨日の快感は何だったの?あんなに感じたのは生まれて初めて。あの白い粉が原因なのかしら?)
頭の中は?マークでいっぱいであった。
まだ寝ていたいがここに長居は無用と辺りを見回して自分の服が畳んで置かれている事を確認し、慌てて着ていたパジャマを脱ぎ、ブラは無かったが服を着た。
そこへ、あの男が部屋へ入って来た。
(あ~、もっと早く起きていれば逃げられたかも知れなかった!)
「お目覚めはいかがですか?御嬢さん」
「もうお仕置きは終わったのですよね。帰らせて欲しいのですが」
「まぁそう言わずに、もう少しゆっくりしていてください。なに、もうお仕置きはしませんから」
「何の話があるのでしょうか?本当に帰りたいの」
「あなたの痴態は全てビデオで撮らせて頂きました。これをばら撒くなんて脅しはしません。こっちの保険として大事に保管しておきます」
男は口笛を吹いた。それが合図だったのか?
数名の男達がお盆にサンドイッチと熱いコーヒーが入ったカップをそれぞれ2個ずつ持ってきて、テーブルの上に並べていった。
「お腹が空いたでしょう。一緒に朝食を食べましょう」
男はサンドイッチに手を出し、一口食べてコーヒーを啜っている。
足を組み、座っている格好は若くてもかなりの貫録と度胸があるのが見て取れた。
しぶしぶ明美は「頂きます」と言って、コーヒーカップを両手で持ち一口飲んだ。
空腹の胃に熱いコーヒーが流れ込むのを感じながら、これから何が起こるのか?の不安が大きく頭の中を占めていた。
「ここのサンドイッチは格別に美味しいでしょう。本社がアメリカにある店から取り寄せた物です」
「ええ、美味しいです」
食べ終わった男は、立ち上がり大きく両手を挙げて伸びをした。
そして座り直し、話し出した。
「実は明美さん。昨日のセックスはすごく良かったでしょう。これからある物をお渡しします。かなり高価な物なので大事に扱ってくださいね」と言って、アルミ製の缶(市販薬龍角散くらいの大きさ)を渡された。
「こ、これは何ですか?」
「ハッキリ申し上げます。中身はヘロインです。日本で流通しているような粗悪品ではありません。かなり純度の高い物です」
「ヘ、ヘロイン!こんなもの受け取れません」
「いや、あなたは受け取らなければならない身となっているのです。この品の中身は本物ですが、試供品としてあなたに預けます。そしてあなたが憎んでいる男に与えてください。もうご存知かも知れませんが、一度使うと禁断症状が出るくらい純度の高い物です。一つ注意が必要です。使うのは必ず密室で二人きりとなった時のみご使用ください。くれぐれも大勢の人が見ている中での使用は禁止します」
「しかし……。ヘロインって麻薬ですよね。昨日使った粉がこれですか?そうなら私も禁断症状が出て来るのでしょうか?」
「ええ、多分。いろんな症状があるようです。その苦しみに耐えられるとお考えなら間違っております。依存性がかなり高いものですので、使用は法律で禁止されています。男に復讐したいのでしょ」
「それは、私の過去の男に出会い、痛めつけて心の中から忌まわしい記憶を消せると思っています」
「ええ、その行為も全て我々の仲間が証拠としての写真を撮っております。見られますか?」
「いえ、結構です。あんなに細心の注意を払ったのに、見られていたのですか?」
「ああいう事はプロに頼むべきですね。素人さんは、その事に集中しすぎて穴だらけでしたよ。ここまであなたの事を知っている大きな組織を敵に回せる度胸がありますか」
「……」俯いたまま、何も考えられなかった。
この要求を受け入れなければ解放してくれないだろうし、拒否すれば顔も知っている訳なので自分は殺されるだろう。
15分くらい沈黙が続いた。
「どうですか?あなたには選ぶ権利はないのが分かっていただけましたか?」
「はい。もう覚悟を決めました。この品を頂きます。そうすれば、家に帰してくれるのですね」
「ええ、手下に送らせます。お家の前まで」
「自分の足で帰るのもダメなのですか?」
「ええ、ダメですね。また追って携帯へ連絡させてもらいます。昨日はすごく楽しかったし素晴らしい肢体を味わわせて頂きありがとうございました」男は立ち上がり、ドアを開けてどうぞお帰りくださいのポーズを取った。
明美は部屋を出て、下の階へ行くと別のスーツ姿の男が待っており、「どうぞこちらへ」と言われ付いて行く。
外にはベンツが止まっていてすでにエンジンがかかっていた。
後部座席のドアを開け、中に入るように促される。
言われるまま後部座席のシートに座る。
沈み込みそうな体全体が被われる感触のシートに座った。
男は運転席に移動し、ナビをセットした車を走らせた。
暫く走って、「あの場所は忘れた方がいい。もう跡形もなくなるでしょう」
激しい睡魔で明美は寝てしまった。
明美が寝ているのでその男はしばらく車を周回させ、1時間半後ピッタリに明美のマンションの前で車を止めた。
「着きましたよ。起きて頂けますか」
「あ、ありがとうございます」
「例の物の扱いは慎重にお願いします」と、言うと運転手は車から降りて、後部座席のドアを開けてくれた。
「あちがとうございました」明美は、深々と頭を下げ車が立ち去るのを見守っていた。
 マンションの郵便物を確認すると、小ぶりのダンボール箱があった。
それを持ち部屋に入りまだ朦朧としている意識の中で何もする気になれないが、例の物をタンスの下着入れ一番奥にしまった。
水をコップに入れ一気に飲み、ソファーに座りボ~っとしていた。
そして箱を開けると、多量の小袋や秤が入っていた。
説明書があり、初めて使う場合0.05g。
常連になってきても、0.5gが最大量とする。と書いてあったので、0.05g入りを10個程作り、同じ場所に収納した。
携帯が鳴った。
ビクッとして電話に出た。
あの男からだ。
「俺だ。名乗ってなかったな。日本ではエースと呼ばれている。アルファベットのAだ。ブツはしっかり隠したか?それと初めて男か女に使うタイミングはセックスの時としてくれ。一番スキがある時だからな。ではアヒルちゃんしっかり稼いでくれよ」
「あ、はい。承知しました」
一気に目が覚めた。
別に痛い目にあったわけでも、怖い思いもしていないのだが、それ故にかなり大きな組織と想像できる。
何故私がターゲットに?
(会社で悪い事をしてはいけない。と言われたな。今までの男、山田か?川元か?田川か?まさか佐田ではないだろう。初めの3人のうち誰かが裏の世界に通じている)
しかし、と明美は思い直す。
まず言われた事をしなければならない。
夜になったら、駅前のスナックにでも行こうか。
しかし体がだるい。
しまった品を取り出し、蓋を開けた。
中フタがあり、それも開ける。
左手の小指を舐め唾液を付けて、粉末を少しだけ付け歯茎に塗り込んだ。
暫くすると気分はすごく良くなり、目に写る景色の周りが原色で色づいているようにも見える。
急にエッチがしたくなり、自分で乳房を揉みだした。
「あぁぁぁ~、気持ちいい~、すごいこの薬」仕事しなければいけないと、乳房を揉むのを止め、超ミニスカートでTバックの下着をつけ、ブラもパンティと同色薄紫のハーフカップを着けた。
セーターも胸が見えるくらいの物を着た。
コートと手袋を着ける前にバッグの財布の中に小袋3つ入れておき出かけた。
駅前のスナックにしようと考えていたが、新宿まで行く事にし、タクシーに乗った。
新宿まで渋滞もなく直ぐに行く事ができた。
雑居ビルでも通りに面している店に入った。
店内は薄暗く、カウンター席とボックス席が数客あった。
まだ客は来ていないようであった。
明美はカウンターに座り、ウイスキーハイボールを注文する。
バーテンは無言でお酒を作り、おしぼりと突出しコースターにやや濃い目のウイスキーが乗せられた。
手持ちぶさたで、ウイスキーの入ったグラスの氷をカラカラ回し、舐めるように飲んでいる。
ものの5分も経たない内に、数名の客が入って来てボックス席に座った。
常連客のようで、何も言わないのにバーテンダーはボトルなどをお盆に乗せ席まで持って行き、何やら二言三言話しカウンター内に戻りグラスを磨き出した。
「うちは初めてですね」
急にバーテンが話しかけて来た。
「え?はい。素敵なお店だなと思い入りました」
「女性一人で初めて入るのは勇気がいりませんか?」
「ええ、確かに。しかし私が初めて来たと分かるのですね」
「はい、プロですから。一度来られたお客様のお顔は覚えるようにしております」
「流石ですね。失礼ですがこのお店にはどのようなお客さんが多いのですか?」
「皆さま紳士、淑女ですね。アッチが好きな人はそういう店に行きますからね。それとやはりお商売にお使いになるお客様が目立ちます。昔は割烹とか行き、密談される場面などテレビで見ますが、こういう店の方が怪しまれずに済みそうだからでしょうか?商売柄お客様のプライバシーは守りますので」
「良い店に入れてよかったわ。あ、またお客さんですよ」
ドアが開き、男二人で明美の座っている席から2つくらい開け座った。
「お久しぶりです。いつ日本に?」バーテンが声を掛ける。
「3ヵ月になるかな~。ちょっと大きな商談があったので。やはり日本がいいよ」
「また大儲けされたのでしょう。ここでしっかり使って行ってくださいね」
「ああ、そのつもりで友達連れてきたのだよ」
「ありがとうございます。お飲物はいつもので宜しいでしょうか?」
「うん。日本では日本製が飲みたいな。向こうのは、とにかく味が粗い」
「はい。畏まりました」バーテンはダルマを取り出し、グラスにダブルの量を入れ、手際よく水割りを作っている。
二人の男達は、何か話ながら大笑いしていた。
そんな光景を見ているだけで、こっちも楽しくなる。
明美は一人で誰をターゲットにしようか、店内をさりげなく見まわしていた。
隣の二人組のバーテンと話してした別の男のスマホが鳴った。電話で何やらややこしそうな話をしていた。
「達夫申し訳ない。会社で問題発生したみたいだ。今から戻って対応しないといけない。折角久しぶりに会ったのに悪い。このお返しは必ずするから」と、言ってコートを掴み走ってドアを開け出て行った。
残った男がバーテンに、「こんな事ある?男は仕事に縛られているのだな。いや失言。男女ともに働いている者は大変だ。どうしようかな?もう少し飲んだらホテルに戻るわ」
「仕方ないですね。久しぶりに親友と酒を交わそうと来られたのですが、お仕事なら私が言う事ではございませんが、許してあげてください」
「そうだよな」と、ため息をついた後、チラリと明美の方を見た。
その視線に笑顔を返す。
「すみません。あの方にマティーニを差し上げてください」バーテンを呼び小声で話した。
「はい、承知しました」
明美の前にスット、カクテルグラスが置かれた。
明美が首を傾げると、「あちらのお客様からです」
「そうですか」バーテンに返し、達夫と呼ばれていた男に、「ありがとうございます。遠慮なく頂きます」と声をかけた。
男はグラスを持ち上げ、笑顔で合図してきた。
ハイボールを一気に飲み干し、マティーニを舐める。
やや苦いがカクテルなので甘さが際立っている。
「美味しい!」思わす声を出してしまった。
バーテンも嬉しそうにニコニコしていて、そのタイミングで男が「隣に座っても宜しいでしょうか?」と、声をかけて来た。
(おお、獲物が向こうから来たかな?)と内心喜びその気持ちのままの笑顔で、「ええ、私でよければ、どうぞ」
「失礼します」男は声をかけ、横に座った。
バーテンがドリンクのセットを明美と男の前に移動させた。
「この近くにお住まいですか?」男が聞く。
「いいえ、このような都会の真ん中には住めません。山手沿線ですけど。お名前を教えて頂けませんか?」
「これは失礼しました」男は名刺を取り出し、明美に手渡した。
○○商事 外商部 狩野達夫とあった。役職はマネージャである。
「超一流の会社にお勤めなのですね。それで先ほど聞こえてきました、アメリカから帰ってきたところだと」
「ええ、日本には年の三分の一くらいしか滞在していません。ほとんどアメリカで商談を行っています」
「お一人で?」
「はい。部下はいてますが、秘書を付けてくれる程優しい会社ではないので」
「大変ですね。お住まいはどちらですか?」
「これも会社が用意してくれるのですが、今回は手違いでマンションの手続きが遅れまして、今はホテル住まいです」大きく笑う。
「結婚はされていないのでしょうか?」
「一度結婚しましたが、アメリカと日本の往復ばかりで、家に帰る時間が無くて、愛想を付かれて出ていかれてしまいました。所謂バツイチです」
「そうなのですか。何かと不住な事が多いのではないですか」
「そうですね。男住まいに何とかと言いますが、結構きれい好きなので休みの度に掃除・洗濯はしています。
ただ食事だけはどうも苦手で外食ばかりですね」
知らぬ間に、男のボトルの酒が明美の前にも出されている。
話に夢中になり、気づかずかなり飲んでしまった。
「ちょっと失礼します」と明美がトイレに立とうとした時、足元がふら付いて男に抱きつく恰好となった。
男の手が明美の胸に触れていた。
「失礼しました。飲み過ぎたようです」立ちなおして、トイレへ向かった。
トイレから戻り、先ほどに非礼を詫びた。
「大変失礼な姿を見せてしまいました。申し訳ございません」
「大丈夫ですか?お家まで送りましょうか?それともボクの部屋へ来ますか?」
「お部屋に?お伺いしてもよろしいのでしょうか?」
「ええ、是非来て頂ければ大歓迎致します」
「それじゃ、少しだけお邪魔します」
男は目の前でガッツポーズを取ったので、朱美も笑ってしまった。
「早々で申し訳ないですが、行きましょうか」
「はい、お願いします」
「御馳走様。お勘定お願いします」バーテンに伝える。
店を出て通りに出ると、直ぐにタクシーを停めた。
車内では簡単な話ばかりして、これから男一人で泊まっているホテルへ、向かおうとしているのに手も出さない。
(紳士なのか?遊び慣れているのか?まさかウブって事ないわよね)
タクシーがホテルに横づけされ、明美が降りその後に支払ってから達夫が降りた。
フロントでキーを受け取って、エレベータに乗りそのまま部屋へ移動した。
「どうぞごゆっくり。何か飲まれますか?」
「ええ、お水を頂けますか?今日は飲み過ぎたようです」
「そのようですね。酔いを醒ましてから帰宅されるといいです」
「お邪魔して申し訳ございません」
「いえいえ、こちらこそこんな美しい女性がホテルの部屋まで来てくれると夢にも思っていませんでした。丁度連れが急用で帰ってしまったので、どうしようか考えていた所です」
「じゃ、お邪魔ではなかった?」
「ええ、大歓迎ですよ。楽しくお話ししましょう。それとも、大人の遊びを致しますか?」
明美は水を飲む手を止めて、「大人の遊びって?」
「ここまで来たのは、そうなってもいいってことですよね」
「エッチするのですか?」
「ハッキリ言いますね。その通りです。どうです?」
「行きずりの人といきなりエッチするとは……」
「じゃ、お水を飲んで帰りますか?」
「いえ、お相手させて頂きます」
「ほ~、言ってみるものだね。あなたのような容姿端麗な方ならいくらでも男は寄ってくるでしょう。ボクもその中の一人です」
「アメリカでもいろいろ遊ばれていたのですか?」
「ええ、でも向こうの人は体臭がキツイ。やはり日本の女性がいいですね。恥じらいがあり、何よりいい香りがしますから」
腰かけている明美を立ちあがらせ、顎を持ち上げて口づけして来た。
初めは啄むような口づけであったが、徐々に強く押し当てられ、明美の口の中に舌を差しいれて来る。
明美もその気になって、舌を絡めて行く。
唾液が溢れてくるのを、達夫は舐め取るように掬い呑み込んだ。
せっつく口づけでなく、優しく包み込まれるような口づけであった。
(この男をヘロイン漬けにしよう。初めに与えてやれば、後は向こうから欲しくていくらでもお金を出してくる)事実明美もあれいらい、数日に何回かはヘロインを吸引していた。
その快感にもう溺れてしまっている。この薬から逃れる事はできないだろうなと感じていた。今まで経験した事もない快感なのだ。
何度もエクスタシーを迎える以上の快感に浸る事ができる。幸福感に満ち溢れるのだ。
特に体調面での異常はみられない。この薬がそんなに人体に影響するとは思えない。
男は明美の着ている服を脱がせ始めた。それに協力するように、脱がせやすい体勢を取る。
あっと言う間に、ストッキングまで脱がされブラとパンティのみの姿となった。
そして明美を抱き上げベッドへ運んでくれた。
達夫は自ら服を脱ぎ、パンツ(トランクスではなく、ビキニタイプの下着であった)
全身筋肉で覆われており、お腹は筋肉の割れ目ができ、胸の筋肉も盛り上がっていた。
一番目についたのは、太ももが異常に太かった。ガッシリした体型を誇示するように、あちこちの筋肉を盛り上げながら近づいて来た。
明美は直ぐに、自分のバッグから小袋を取り出して枕の下に入れた。丁度男が後ろを向いている間であったので気づかれていないだろう。
達夫は明美の身体に覆いかぶさって来て、再度口づけをして来た。今度はいきなり舌を差し入れ、お互いの舌を絡め合う激しいものであった。明美もすっかりその気になり、乳首が痛い程立ち、あそこからジワ~と愛液が滲み出てくるのが分かった。
上体を起こされ、髪を撫でられ、ブラの上から乳房を揉まれた。
「あん~、いい~、感じる~、お上手ね」
ブラのフォックに指を掛けて外す。大きな乳房がポロリと飛び出して来た。その乳房にむしゃぶりつくように乳首を口に含み吸い、乳房全体を強く揉んできた。
「いい~、もっと~、もっと強く~」達夫の頭を抱えて、強く自分の乳房に達夫の顔を押し付ける。
明美の手は、達夫の股間に伸びて行き、パンツの上からペニスの形を確認するように、撫でて行く。それだけで「ウッ!」と達夫は呻いた。
再度ベッドに押し倒され、達夫の舌は乳首から徐々に下に降りてくる。腰骨近くまで来ると、パンティに手を掛けて脱がせてくる。
腰を上げて脱がせやすいようにする。
パンティを脱がせ股間に目をやり達夫は唸った。
「綺麗だ。容姿だけではなく、ここも汚れを知らない子供のようにつやつやしている。陰毛も手入れされて、綺麗にカットされていますね。すごい!しゃぶり付きたくなりました」
「ああん~、舐めて~。その代わりあなた物を舐めさせて」
「合舐めですね。所謂シックスナイン」ニッコリ笑いパンツを脱いで逆向きに跨って来た。
達夫はいきなり明美の陰唇の中に舌を差しいれて来た。
「ああ、あぁぁぁぁ~、気持ちいい~」
明美はそっと枕の下から小袋を出し、中身を少し舐めてから、その粉を達夫の肛門に塗り付けた。「うぉ~」と唸っている。
(その内に耐えがたい快感が襲ってくるよ。お楽しみに)
ペニスを手で持ち、口を窄めて先からゆっくり咥えて行く。唾液をたっぷり塗り、ジュポジュポと音を立てながらペニスを扱く。
明美も薬の効果が出てきたようだ。
あそこがすごく熱くなって、より感じやすくなってきている。クリトリスを少し舐められただけで、逝ってしまいそうになるくらいの快感だ。
一方達夫は、ペニスはカチカチに勃起しだし、先走り液がトロトロと流れ出てくる。
「おお~、どうしたんだ。あなたの口技が素晴らしので、すごく感じている。ちょっと待って。もう出そうになってきている」
「まだ出しては嫌よ。中で出して~」
「うん。そうだよな。じゃ、もう入れてもいいかな?」
「ええ、お好きなようにして」
達夫の顔は真っ赤になっている。しかし、焦点が合っていない目つきとなっていた。
(これはもう薬の効果が出てきている。至福の時を味わいなさい。これから地獄がはじまるのだから)
達夫は体勢を反転させ、明美の膝を抱えて陰唇にペニスを宛がい、一気に突き差した。
もう我慢の限界なのであろう、いきなり激しいピストン運動が始まる。
「おお~、ダメだ。出る~、出る~」ピクピクとペニスは躍動して、その先から熱い精の塊を放出していた。
「おお~、いつまで続くのだ!まだどんどん出て来る~」実際の射精は終わっているのだが、射精感がずっと続いているようであった。
達夫はヒクヒクと痙攣し、まだピストン運動を続けている。結構長い時間その行為を続け、ガックリとして明美の上に突っ伏して来た。
そのまま眠ってしまったようであった。
明美も達夫が動く間何度も頂点を迎えていた。
「はぁはぁはぁ、すごすぎるわ。私も身体が痺れて動く事ができない」
しかしここに長居は無用と考え、服を着てベッドサイドの上に、「明美です。連絡していただけるなら、×××‐××451128まで」と、メモを残してホテルを後にした。
 数日後、狩野達夫から連絡があった。
「先日は大変お世話になりました。楽しい時間を過ごさせて頂きありがとうございます。
早速ですが、あなたはドープをお持ちのようで、少量でよろしいので分けていただけないか?と思い連絡しました」
「ドープ?あ~、例の物ですね。確かに持っております。高純度の物です。1袋で宜しいでしょか?0.03g入りです」
「米国でも使用していましたが、こんなに混ざり気のない物は初めてです。一袋おいくらでしょうか?」
「一袋3千円です。纏めて買われますか?1g10万円でもご用意できますが」
「では、1g頂けますか」
「はい、承知しました。用意できましたら、こちらから連絡させてもらいます」
「早々のご連絡をお待ちしております」
(これはかなり来ているな~。カモが出来たって事ね。私はもうどうなってもいい。いろんな男達にこの薬をばら撒いてやる。それにAはかなり大きな組織の一員だろう。私なんかゴキブリみたいにミスしたら殺されるだろうな~。でも反対にいざこざに巻き込まれたら組織の力を借りようっと)
底なし沼に足を突っ込んだようだ。
相手の重い通りに動く操り人形。ご褒美はこれ。これさえあれば、永遠の快楽を手にいれる事ができると明美は錯覚していた。
Aに連絡を取った。
「お客様ができました。1g10万円で買うそうです。受け渡し方法など教えていただけませんか?それとお金は教えて頂いた口座へ振り込みます」
「お~、早いね。いい子だ。もっと稼いでくれよ。そいつも10日もすればまた欲しくなって連絡してくるだろう。渡し方は簡単だ。現金を貰って、ブツを渡すだけ。ただし、受け渡し場所はその度に変える事。また、もうそいつとは寝るなよ」
「はい。分かりました。あなたの為に私は一生懸命働きます」
「うむ」の返答で電話は切れた。
達夫は喉から手が出る程、この薬を欲しがっているであろう。
電話があって一日置いた日の朝に電話を入れた。
「おお~、待っていたのだ。いつ渡してくれる?お金はいつでも渡せられるように用意している」
「はい、承知しました。では、今日の午前10時に○○デパートの地下にある三河屋という店の前で」電話を切った。
10時までには、1時間以上ある。
目立たない服を選び、昨日計量しておいたビニール袋をプレゼント用包装をしてカバンに入れる。
電車で行っても、30分あれば現地に着く事ができる。
ゆっくりお茶を飲み、化粧直しをして家を出て目的地へ向かった。
約束の場所へ行くと、もう狩野はイライラしながら待っていた。(デパートが開くのが10時なのに……。余程これが欲しいみたいね)
「おはようございます」明美が声を掛けた。
狩野は、「持って来てくれたよね。これ代金」と封筒に入った物を渡された。中身は確認しないそのままバッグに入れ、代わりにバッグから例の物を狩野に渡す。
狩野はそれを奪い取るように受取り、「お茶でもと言いたいのですが、急ぎの用事がありますので」とサッサと立ち去った。
(早く家に帰って、吸引したいのであろう。どんどん使う量が増えて行くよ。体はボロボロになるけどね。それが等価交換。そうだろうか?快楽を得る代わりの代償が大きすぎる)
明美は折角デパートに来たので、装飾品や服などを買って帰った。
(あしたから会社だな。しかし私を売ったのはどいつなのか?絶対に許さないからね)一瞬鬼の形相に変わったが、それに気づく人は誰もいなかったようである。
昼ごはんを抜いているのに、夜になっても食欲が湧かない。
無理してでも食べないと、どんどん痩せて行って薬をしているのがバレテしまう。と、無理やりカップスープを飲むのがやっとであった。
明美はこの薬がかなりヤバイ事を感じていたので、2,3日に一度だけ使用すると決めていた。
 久しぶりの出勤である。皆、笑顔で迎えてくれた。山田だけは苦虫を潰した顔をしていた。「課長、長期間の休養申し訳ございませんでした。またよろしくお願い致します」
「うむ」と答え、クルリと向きを変えた。
(まずこいつから調査しようか?直接聞いても「ハイそうです」とは答えないだろう。そうそうあの薬があったわ)
山田の傍まで行き、「今まで大変申し訳ない事をしておりました。もう二度と課長を脅迫するような事は致しません。信じて頂けなければ、念書でも何でも書きます。もう一度だけ私を可愛がって頂けないでしょうか?」
山田はビックリしたような顔をして、晴美を見つめる。
「そ、それは本当なのか?ウソを言ってまた俺を騙そうとしていないだろうな」
「ええ、ですから、今から念書を書き、課長へ提出致します。万一私が同じように、課長を脅迫した時はこれを証拠に訴えてください」
「そ、そこまで言うなら、その念書とか言うのを書いてくれ」
「はい、承知致しました」満面の笑みを返した。
山田は苦笑いで返して来た。
明美は早速自席に戻り、念書なる物を書き始めた。ワープロ打ちではなく自筆で書いた。
「この度は大変ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。頂いたお金の全てをお返し致します。今後課長に対し失礼な態度・言動は一切致しません。ここに課長に対しての非礼を詫びると共に、誠心誠意尽くす事をお誓い致します。 日比野明美㊞」
書いた便箋を課長へ提出し、お詫びに今週のどこかでお食事でもしたい旨伝えた。
山田はその文面を読み、ニヤリとした。お金が返ってくるのも嬉しい事だが、また明美を抱けるかも知れない事を喜んでいるようであった。
早々にメールが入った。
「仲直りをしてくれるのだね。では、今週の金曜日を空けておいて欲しい」
「はい、承知しました。頂いたお金はその時にお返し致します。申し訳ございませんでした」
急に山田の機嫌は良くなって、周りの部下に冗談など言っていた。部下は嫌な顔をしていたが。
(金曜日かぁ~、今日は月曜日なので達夫からの連絡はないはずだが、ブッキングしたらヤバイな。まぁその時は達夫を優先して、薬を与えてやらないと何をするかわからないからな~)
火曜日から課長との約束の金曜日まで、真面目に働いた。
金曜日、朝から課長の機嫌が特にいい。今週は大きな仕事をしたかのようなはしゃぎようであった。
明美は前日、課長から貰ったお金150万円を銀行から下し、バッグにしまっている。
メールが入った。
「今日はお肉を食べに行こう。美味しい店を探しておいたのだ」
「はい。ありがとございます。お忙しいのにお時間を作って頂いて」
「楽しい夜を過ごそう」
「はい、課長のおっしゃる通り従います」
向こうでガッツポーズを取る課長の姿が見えた。
(何てバカな男だ。一度懲りたはずだろ。それも同じ女に。それでもまた騙されるのか。
学習能力のないバカおやじ!そんな奴でも家庭は持てるのが理解できないな~)
銀座で待ち合わせ、かなり高級そうな焼肉店に入る。シェフが目の前の鉄板で分厚い肉の塊を焼いてくれる。その鉄板も鏡のように光輝き、いつも丁寧に手入れされているのが分かる。山田はワインリストから適当に選らんのであろう赤ワインのボトルが置かれた。
テイスティングもなしに、ドボドボと明美のワイングラスに注ぐ。
(マナーってものがあるだろ!いい歳をしてそれも出来ない。そんな風に歳は重ねたくないな)
それでも笑顔を返し、乾杯をした。
高級なお店だけあって、お肉は口の中で溶けてしまうくらい柔らかくて美味しかった。
ワインボトルが空く頃、デザートとなりアイスクリームをクレープの皮に包んで、メロンがたっぷり入った物で、これもすごく美味しかった。
「さて、お腹も一杯になったし、出ようか?」
「はい」と従順な態度を見せた。
山田はもうその気になっており、通りにでるとタクシーを停め、ラブホテル街がある地名を運転手に告げた。
車内でもう明美の肩を抱き、ストッキングの上から膝から太ももを撫でて来た。その手を優しく上から押さえる。
しかし手を引っ込めようともせず、何度も撫でられる。明美は嫌悪感で鳥肌が立っていた。
(こんな所で止めろ!つうの。私をその気にさせようと思っているのだろうが、お前はただの獲物なだけなのだよ)
タクシーが停まり、支払いを済ませた後、山田は明美の肩を再度抱いて、ホテル街へと向かった。
その中でも高級そうなホテルを選び中に入る。
部屋を選び、キーを受け取る。そのままエレベータに乗った途端にキスをしてきた。
明美はあえて、拒まなかった。されるままで、明美からは攻めない。
車中でもそうであったが、ホテルに入ってもお互い無言である。異様な雰囲気のまま部屋へ入った。
「美味しかったね。お肉。ビールを飲む?それとも他の物でいいかな?」
「ええ、御馳走さまでした。私はお水を頂きたいです」
「俺はビールを飲むね」(断らなくても、自分の好きな物を飲めばいい)
山田はミネラルウォーターをコップに入れ渡してくれた。自分はビール缶のままゴクゴクのんでいる。
(どこまで下品な奴なのだ!女性の前ではコップに移し替えてから飲んで欲しいな)
「ビールも美味しいな。シャワーを浴びるか」
「はい、お背中流させて頂きます。その前に今まで頂いていたお金をお返しします」
封筒を渡すと、山田は中身を確認して、カバンの中に入れた。
(何を勘違いしているのか?私を自分の物だと思っているのだろうな)
山田は浴槽に湯を貯めに浴室へ行き、そのまま服を脱いで入ったようだ。
浴室の中から、「お~い。入っておいでよ。お湯もタップリ入っているから」
「は~い」と答え、前と同じように小袋をベッドのまくらの下に置いた。
明美も全裸となり、バスタオルで胸から下を隠して浴室へ入った。
「お、きたきた。しかしバスタオルで隠しているのか?」
「恥ずかしいですから」
「もう君の体は知っているから、もう恥ずかしがる事ないじゃないか」
「女はそういう生き物です」
「だよね。背中の荒い合いしよう。ボクが洗うから、向こうを向いてくれる?」
明美はバスチェアーに座り驚いた。椅子の中心がUの字に大きくえぐれているからであった。何のためにこんな形にしているのだろう?
山田はスポンジに石鹸液をタップリ垂らし、泡立てた後明美のバスタオルを剥ぎ取り、背中を洗い始めた。背中が終ると後ろから乳房をスポンジで洗い、お腹も局部も洗って来た。
次に椅子のU字の隙間から肛門まで洗われた。
(あ~こういう時に使う為に凹んでいるのか)
改めてそれを考えた人は余程助平なのであろうと考えていた。
でも、泡まみれになった体を、両手を使って撫でてくる。乳房を揉まれ、乳首を捻るように抓まれると感じてきた。
「はぁぁぁ~、あぁぁ~、あん、あん」
「もっと感じなさい。気持ちいいだろ~」
耳を塞ぎたくなるような言葉で悪寒が走るが、乳首からの刺激が電流のように全身を駆け巡る。
陰部にも手を伸ばして来た。割れ目に指を宛がい、クリトリスを小刻みに震わせる。
勝手に腰が動いてしまう快感であった。
「あ~、そこ~、クリちゃんはもっと優しく触って~」
「ゴメン。ゴメン。つい本気になってしまった」
明美が振りかると、太鼓腹の下に小さなペニスが起立していた。
(ちっちゃいチンポしやがって、そんなので女を喜ばせる事はできないよ)
それでも、「交代しましょう」と言って、山田を向こう向きにさせ、同じスポンジで背中を洗う。中年なので背中にシミがいっぱいできている。なんて汚い背中なのだ!
心の中で毒づいていた。
バスマットの上に直接座っている格好は、小さなカバのように見えた。(何て醜い身体なのだ!)しかしサービスしておかないと、例の薬が使えない。
これも商売であり、男への復讐である。
「課長、私の事怒っておられますよね」
「前はそうだったが、今は違う」
「その前で怒っておられる時に、私をどうかしてやろうと考えませんでしたか?」
「正直言うと、何とか困らせてやろうと思ったよ。部長に相談して派遣会社に戻ってもらうようお願いしたが、部長の反対があり断念したよ」
「それだけですか?」
「それだけと言うと?」
「はい、私の周りに良からぬ人が寄ってきました。会社の人から頼まれたとハッキリ言っていましたのでそれが課長かな?と思いました」
「そんな知り合いは俺にはいてないよ。そのような人に頼むと後々もっとややこしくなる。でも誰がそんな事をしたのかな?」
「課長でなくて良かったです。今の話は忘れてください」
「俺でなかったら、他にも君は寝た事があるのか?」
「いいえ、決してそのような事はしません。万一してしまえば、派遣元の会社に連絡が行き今の会社におられなくなります」
「そうだろう。俺もそうしようとしたからな」
「失礼な事を聞きました。さぁ続きはベッドで楽しみましょう~」
(どうやらコイツではなさそうだな。後は薬の奴隷にするだけだ)
お互いに体を拭いて、山田は明美の手を取り、ベッドまで行った。
そのまま寝かされ、覆いかぶさられた。
突き出たお腹が明美の腹部に当たってくる。それに重い。早くどいて欲しかった。
そんな事は意にも介さず、口づけをしてくる。
今度は明美からも舌を差し出してやった。
その舌に吸い付いてくる。また悪寒が走る。
(こいつといつまでも我慢してセックスしたくない!早々にあの薬を使おう~)
山田の口が乳首に移ったのを機に、サット枕の下にある小袋を出し、自分も少し舐めて指にたっぷりと粉を付け、「指を舐めて~」と懇願する。
言われるまま山田は明美の指を舐めた。少し変な顔をしたが、気づかれていないようであった。
(後5分もすれば、天国に行ける快感が襲ってくるよ)
薬の効果は直ぐに現れたようだ、目を白黒させ何度も目を擦っている。目の前は極彩色の景色が見えているはずである。
そして真っ赤な顔をして、愛撫もそこそこで終わり、ペニスは異様に大きくなっている。
そのペニスを明美の陰唇めがけて挿入して来た。
さっきの戯れと薬のお蔭で、明美の膣内も粘液でヌルヌルになっていた為、痛みはなかった。
「おお~、何だかいつもと違うぞ!すごく気持ちいい~、イクぞ~、出すぞ~」
「はい、来て~私もイキそう~」
山田は直ぐに果てた。達夫の時と同じように、ずっと射精感が続いているようだ。まだ腰を振っているから分かる。
明美も感じてはいたが、絶頂を迎えるまでになっていないので耐えた。
「おう、おう、おう~。まだ出ているぞ~」
首筋やこめかみの血管がかなり浮いてきている。
(ヤバイかな?素人でも大丈夫と言われた量より少ないはずなんだけどな~)
「うぎゃ~~」と奇声をあげそのままベッドに突っ伏してしまった。
(やれやれやっと終わったか。これでこいつも薬から離れられなくなる。いい気味だ)
後の事など知った事ではないので、明美は山田を放置して、シャワーを浴びて山田の唾液を綺麗に洗い流した。
そして服を着て、ホテルからさっさと帰った。
 心配は心配であったが、山田もお客さんになった達成感でウキウキした気分で自宅まで帰り、部屋でゆっくり寛いでいた。
急にAから電話があり、今月の報酬を明美の口座に振り込んだとの連絡が入った。
(ホォ~、お金が貰えるだ。じゃ、もっと頑張ろう~)嬉しくなり、酎ハイを一気に飲みそのまま寝る事にした。
ネットバンキングしているので、土曜日の接続可能時間になるのを待って、自分の口座を確認した。
そこには見間違えか?と思うくらい、0が並んでいた。入金は300万円である。
(こんなに貰っていいのかな?顧客を作る事でその倍、イヤ10倍は儲かるからかな?それともご褒美?)
早々にクレジットカードをブラックに変えた。
 月曜日に会社へ行くと、課長に呼ばれた。
「何か体の調子が良くないのだ。君を抱いてからね」
「そうですか~。病院に行かれました?」と、とぼけた。
「今日の朝に行こうと思っている。君が何か知っているかな?と思って聞いただけだ。気にしないでくれ」
「お大事に」
自席に戻り、ニヤリと笑っていた。
(しかし私を売ったのは、田川か川元か?佐田じゃないだろう。イヤ以外に佐田が怪しいかも知れないな)
大人しそうに見える者は、実はすごい人物だったって事はよくある話である。
仕事中であったが、佐田に電話した。
「お久しぶりです。日比野です。先生にまた会いたいなと思い電話しました」
「おお、君かぁ~。久しぶり~。ボクも会えたらいいな~と思っていた所だよ」
「明日とかお時間頂けますか?」
「明日ね。大丈夫だよ。美味しい物食べに行こう」
「ええ、では楽しみにしております」
一番怪しくない奴だが、候補から消したくて連絡した。
昼前に課長は帰って来た。顔色は真っ青である。
「ちょっと、ちょっと」と明美が呼ばれた。
「医者に診てもらったのだけれど、どこも悪い所がないんだ。それなのに、動悸はするしフラつく。涙も止まらないし、手が震える」
「そうでしたか。お医者様が分からなのじゃ、治療のしようもないですね。痛む所を冷やしますが?」
「それより喉が渇いたので、申し訳ないお茶を入れてくれないか」
「はい、承知しました」
明美はお茶室に入り、山田の湯呑に粉を入れお茶を注いだ。
「お待たせ致しました。ご用があればまた呼んでください」一礼して自席へ戻った。
山田は医者から処方された薬だろう、錠剤をお茶で呑み込んだ。
やや怪訝な顔をしたが、ゴクリと呑み込み暫くすると、さっきまで真っ青だった顔色に赤味が差してきている。
「日比野君~」また呼ばれた。
課長席に行くと、「この書類を作って欲しい。説明するから付いて来てくれ」
メモを持ち明美は山田に付いて行く。
第二会議室に入った。そして中から鍵を山田はかけた。
「仕事はウソだ。さっきまでの不調が急によくなっている。医者からもらったのは、安定剤だ。そんな物であの症状が消えるとは思えない。さっきまでの症状と君が関係しているようにしか思えないのだ。それに、急に君を抱きたくなった」
「こ、ここで、ですか?会社ですよ」
「分かっている。でも止められないくらい欲情しているのだ。頼むフェラだけでもいい」
「仕方ないですね。でもこれで最後ですよ」
「ああ、分かっている。どうしようもないのだ」
もう山田はズボンを下し、パンツまで下してペニスをさらけ出している。
「課長。フェラをする代わりに、買ってもらいたい物があるのです」
「君は懲りずにまた脅迫するのか!」
「いいえ、欲しくなければ買わなくていいです。その代わりまた苦しみますよ」
「何!やはり君か。俺に何をしたのだ」
「私にはよく分かりませんけど、ヤバイ人から頼まれていまして」小袋を出した。
「そ、それは世間でいろいろ言われている覚せい剤か?」
「それも私には分かりません」
「そんな事をするのは犯罪だぞ。俺が警察に言えば、君は逮捕されるぞ」
「ええ、確かに犯罪ですね。私も脅迫されてしているのです。警察に行けば、きっと組織が動きますね。命が無くなるかも知れません。自分の命をとるか、お金を払うか?どっちにします」
「ん~、買う、買うよ。いくらだ」
「これは1回分で、3千円です」
「そんな物なのか。もっと高いと思っていた。それくらいなら、5個買うよ」
「では先払いで、1万5千円頂きます。物は後でお渡しします」
「商談成立か!じゃ、頼むよ」腰を突きだして来た。
明美は優しく、そして徐々に激しくジュポジュポと音を立ててペニスを喉奥まで飲み込みフェラを繰り返した。
山田は、「おうぉ~」と獣のような叫び声をあげ、明美の口の中に多量の精液を吐き出していた。
いつまでも明美の頭を抱えて離さない。
前と同じように、射精が終っているのに、何度も腰を振っている。のどに突き刺さり、明美は何度もえずいた。
「はぁ、はぁ、はぁ」と長い時間荒い息をしていたが、やっと落ち着いたようである。
会議室に置いてあったティッシュで自分のペニスを拭き、パンツ・ズボンを履いた。
明美は隠れて、ティッシュに精液を吐き出していた。
会議室の鍵を開け、何事も無かったように廊下へ出て行く。歩いている格好がかなりふら付いていた。
明美はトイレで口を濯ぎ、化粧直しをしてから自席に戻った。バッグから5個袋を出し、封筒にいれる。その封筒を課長の机に上に置いた。
山田は中身を確認して、頷きスーツの内ポケットへ仕舞った。
(これでまた客が増えたな。まぁ月に一人ずつ増やして行けば、報酬も上がっていくだろう)
 狩野から連絡があった。また1g欲しいと言って来た。1gあれば、1ヵ月はもつはずなのに、まだ15日も経っていない。
「はい、分かりました。明日のお昼に○○駅前の本屋さんで」と答え電話を切った。
(もう使い切ったのか!本物のジャンキーになってしまったな。お前はもう終わりだ)
翌日は忙しかった。
昼休みに会社を抜け、狩野と約束した本屋へタクシーを飛ばす。
何とか間に合った。しかし狩野は既に来ていた。
「あ~。待っていたよ。悪いね。少なくなると心細くて」
「そういう物ですね。じゃ、代金を先に頂きます」
狩野はクシャクシャの封筒を差し出した。
それを受け取り、チラッと中身を確認して確かに入っているようであった。
「では、これを渡します。使い過ぎたらヤバイですよ」と、狩野の耳元で囁く。
無言で狩野は小走りに、駅の方角へ向かって行った。
ファーストフード店で簡単に昼食を済ませ、再度タクシーに乗って会社へ戻ってきた。
午後の始業ギリギリセーフであった。
山田がこちらをチラチラ見て来るが、何事も無く終業となり、明美は化粧室へ行き、綺麗に化粧直しをした。
佐田との約束の場所へ行く。
「やぁ、久しぶり~」佐田が先に見つけて声をかけて来た。
「お久しぶりです。先生」
「じゃ、スランス料理予約してあるのだ。そこへ行こう」
「はい、お共します」
駅から少し歩き、路地のような所へ入って行く。(こんな所にレストランがあるのかな?)
疑いながら付いて行った。
「ここだよ。隠れ宿みたいな店だろ」
「ええ、ネットかで調べられたのですか?」
「いや、ここへは学会の時に友人が教えてくれた店なのだ」
「そうなのですか。先生はお顔が広いからいいですね」
「まぁ、昔からの悪友だけどね」
「悪友だなんて、先生にはそんな方はおられないと思います」
「いやいや、ボクも男だからね。立ち話は寒くなる。早く入ろう」
「はい」
店の中は薄暗く、テーブルに置かれたローソクの火と壁にある小さなライトだけである。しかし見えるものはしっかり見えるので、何かに躓くほどは暗くない。
店の人がやって来て。
「お久しぶりです。予約席はこちらになります」と、一番奥のテーブルに案内された。
佐田は椅子を引き、明美を座らせる。
する事が紳士的なのが徹底している。
(やっぱり違うよな。こんな優しい先生が、ヤクザと繋がっている訳がない。間違ったか。先生に薬を使う事は止めておこう)
ワインリストから先生が選ぶ。
ソムリエと思われる人がワインクーラーに入ったワインとグラスを乗せたテーブルを押して近くまで来た。
明美と佐田の前にグラスを置き、佐田のグラスにワインの栓を開け少量注ぐ。
佐田は、それを啜るように口に入れ、舌で転がしているようだ。
「これをお願いします」と、言うと、「畏まりました」ソムリエ風の人が答え、明美のグラスに半分より少な目に注いだ。そして先生のグラスにも注ぐ。
「じゃ、二人の再会を祝って、乾杯しよう」
グラスを差し出され、明美はゴラス同士をぶつける恰好だけして、乾杯した。
ワインを飲む。口の中に芳醇な香りが広がり、壮大な草原を思い浮かべるような味わいであった。
「美味しい~」
「だろ。そんなに高くないのにウマイのだ」
料理が次から次に運ばれ、食べながら会話も弾む。
「先生の顔の広さは承知しました。先生のような方ばかりですか?」
「え?どういう事?研究者の友達は多いよ。それ以外は親戚ぐらいかな?」
「いえ、いろんな世界の方とお知り合いかな?と思いまして。政界の方とか財界の方とか」
「そうだな。政治家には知り合いは居てないな~。財界と言えるか?は、解らないけど小さな工場を経営している人は何人か知っているよ。研究の為にいろんな道具を作ってもらう場合があるので」
「そうでしたか。また、お友達を紹介して頂ければ嬉しいです」
「そういう事か。人脈を増やして行こうって訳だね。いいことだ。協力するよ」
「ありがとうございます。機会があれば連絡してください」
「任せておきなさい。所で今日は食事して、少し飲んだら帰ろうか」
「はいお共致します。しかし前は私を抱いてくれました。今日はダメなのですか?」
「いや、そんな事はないのだが、いつまでもそういう関係でいるのはどうかな?と、感じていただけだよ。あなたが良ければ、その美しい身体に触れてみたいよ。男だからね」
「はい、嬉しいです。しっかり抱いてください」
「最近の子はハッキリしているね。ボクが若い頃は、女性とそういう関係になるまでかなり苦労したものだ」
「はしたないですか」
「いや、昔も女性はそれを望んでいるのに口にしないし、まず断られる。何度もアタックして、仕方なしにって形ですることは同じだよ」
「それは難しいでしょうね。本音を出さない女の方がもっとエッチなのですけどね」
「そうだろ。ボクもそう思う……。失礼。女性の前で侮辱するような言い方をした」
「いえ、構いません。その通りなのですから」
佐田は大きく笑った。
「じゃ、バーに行こう」手を挙げてウエイターを呼ぶ。支払のようだ。佐田が持っているのもブラックカードであった。
そのバーはさっきの店から歩いて5分くらいの所にあった。
途中でヤクザ風の男とすれ違うが、向こうが道を開けた。(ん?どういうことだ?一般人には関わらないようにしているのか?今の者は、明らかにチンピラ。何か引っかかるな)
バーに入っても顔見知りのようで、バーテンがここのオーナーと佐田から聞いた。
佐田はハイボールを頼み、明美にはカクテルを頼んだ。
カウンター席で並んで座っていても、手も出さない。
丁度佐田がトイレに立った時に、カウンター内のオーナーに佐田の事を聞いた。
先生は裏の世界でも、顔が効くのでしょうか?と。
「どういうことでしょうか?先生のご実家は、資産家ですからね。そういうお付き合いもあるかも……。そう言えば、ややこしい事が起こったら私に言いなさいと言われました。水商売でしょう。裏の世界の人がかなりの頻度でやってきますからね。商売始めたばかりの頃、ショバ代払えと脅かされましたが、先生のお名前を出すと、それから来なくなりました」
「なるほど~、さっきね。チンピラ風の人達が先生の顔を見ると道を譲ったのです」
「そりゃそうでしょ。自分達が所属している組を纏めている組織に顔が効くのだから」
「すごいですね。でも、少し怖いです」
「あ~、この話は内緒にしておいてください。あなたのような若い人が付き合う相手ではない事を教えたかっただけですから」
「どうもありがとうございました」
(佐田が黒幕っぽい。しかし、手を出さない方が身の為だ。相手が悪い。私のような一般庶民が関わると火傷だけでは済まないかも)
佐田が戻って来た。
「どうかしたの?少し顔色が悪いけど。気分が悪くなったかな?」
「はい。朝から体調が悪くて、お酒を飲んだら治るかなと思ってのですが、反ってしんどくなってきました」
「それはいけない。じゃ、帰る?」
「先生は残っていてください・私一人で帰られますから」
「そうかい。じゃ、私はマスターと暫く飲むよ。これ、タクシー代」佐田が1万円を出す。
「いいえ、散々御馳走になって、帰りの車代まで貰うわけにはいきません。先生大変申し訳ないです。また一緒に飲みに行ける日を楽しみにしています」
「ああ、じゃ、気を付けて帰るのだよ」
「お先に失礼します」明美は最敬礼して、店を出た。
心臓の音が聞こえるくらい、ドキドキしているのが分かる。
明美は家にタクシーで帰った。誰かに付けられるのも怖かったからだ。
タクシーを降り周りを見渡して、誰もいない事を確認してエントランスから部屋へ向かった。携帯が鳴った。出るとAからであった。
「なかなか頑張ってくれているようだな。まだ商品は残っているかな?無くなってからでは遅いので、送っておくよ」
「あ、あの~。Aさん。私を組織に売ったのは佐田って人じゃないですか?」
「佐田さんね。知っているけど違うな。お前が相手できるような人じゃない。佐田さんには近づかない事だな。俺も佐田さんには絶対に近づかないからな」
「そうですか」
「お前は自分を売った犯人を捜しているのか?止めておいた方がいい。きっとお前が探している人物には辿り着けないだろうから」
「どういう事ですか?」
「おしゃべりしすぎたようだな。俺に抱いて欲しくなったら、連絡をくれ。それともう犯人探しは止めるんだ!」
「はい、わかりました。おっしゃる通りに致します」
「いい子だ。300g送っておく。自分にはあまり使うなよ。体がボロボロになるからな」
「はい。承知しました」電話は切れた。
(佐田は裏の世界でも有名で、私を売るような小さな人物ではない。それじゃ誰?私に見つけられないってどういう事?)
いろいろあり、その日明美はメイクを落とすと、泥のように眠ってしまった。

 佐田先生がそんな顔を持っていたとは、世の中分からないものだ。
残るは川元か田川だが、もうどちらでもよくなってきている。
両者ともヘロインの亡者となるがいい。と、思うようになっていた。
まず変態田川からやろうと決めた。
会社へ行くと、また課長から呼ばれた。
また別の会議室へ連れて行かれる。
「君が持っている薬は、かなりヤバイ物じゃないか?しかしこんなに気持ちいい思いしたのは生まれて初めてだよ。またお願いできないかな?と思ってね」
「お願いと申しますと、薬が無くなったのですか?」
「それもある。朝に使ってしまい。すごく興奮しているのだ。君のあそこに入れたいのだ」
「課長!いい加減にしてください。私は課長の女ではないですし、ここは会社ですよ。ここでしたくなるのは薬のせいでしょうが、立場をお考えください」
「分かっているのだが、妻を抱く気にならないのだ。こんな事頼めるのは君しかいてないのだ」
「ん~、分かりました。その代わり薬を1g買ってもらいます。それプラスお相手代として5万円でどうですか?」
「なに!1gはいくらになるのだ?それに、一発5万円か?」
「イヤなら結構です。これは脅しではありません。交渉決裂です。では、ご自分で自分を慰めてください」
部屋を出て行こうとした明美の腕を掴む。
「わ、分かった。条件を飲むよ。1gいくらだ?」
「10万円です。合計15万円」
「なに!15万円だと」
「はい。これは普通に手に入る物でもないですし、万一手に入ってもこれ以上純度の高いものはありませんから」
「わ、分かった。前に返してもらった金がある。そこから払う」
「すぐしたいお気持ちは分かりますが、前払いとなっております。どうぞ席まで戻って、お金を持って来てください。それと、本当にここでエッチするのですか?」
「ああ、払うもの払えば、好きなようにさせてもらうからな」課長は走るように会議室から出て行った。
明美は隠しカメラをこんな場面の為に購入していた。そのカメラをセットする。形はキーホルダーとなっているので分からないだろう。
息を切らせて課長が戻って来た。
(そこまで快楽を得たいのか!愚かな奴だ)
封筒を差出し、「ここに15万円ある。よろしく頼む」
明美は中身を確かめた。狩野用に1g入りの袋を、札束を抜いた封筒に入れ返す。
「秤を持っていますか?きっちり一回量0.03gを計って使って下さいね」
「そうだったね。帰りに、そこまで測れる秤を買って帰るよ。そう考えると1g10万円はそんなに高くない気がしてきたよ」
「ええ、課長ですから格安でお譲りしております」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか~」と言いながら明美に抱きついて来た。
明美は体の力を抜いて好きなようにさせる。
制服の上着を脱がされ、その下のブラウスのボタンを目の色を変えて外している。
(こいつ、もう正気じゃないな。生きる屍か、色バカだな)
ブラウスも脱がされると、薄紫色のハーフカップのブラが飛び出して来た。
やっと乳首を隠していて、大半が布からはみ出ているくらい豊満な胸である。
その乳房を両手で揉み、ブラも下に下され小さ目の乳首が露わになる。
その乳首に吸い付いて来た。
「ああ~、課長~、いい~、感じるわ~、でも早く済ませないと誰かが来ますよ」
「おお、そうだった。君のあまりにも美しい乳房に見惚れてしまっていた」
山田は明美のタイトスカートを捲り上げ、ストッキングとパンティを一緒に下す。
見ると山田は既にズボンを下げ、ペニスをむき出しにして、それはそそり立っていた。
まだ十分濡れていないが、仕方がない。
山田のペニスからは多量の我慢汁が滴っている。その液を明美の陰唇に塗るように、擦り付けてくる。
(早くしろ~。時間がないのだ!)
山田は一気に腰を突出し、ズブズブとペニスを膣に挿入していった。
「あ、あ、あぁぁぁぁ~」明美の腰が震える。
「おお~、いいぞ~、すごくいい~」
いきなりのフルピッチのピストン運動となっている。
「もう出そうだ。出るぞ、出る、出る~~」
「来て~、いっぱい出して~」
「うぉぉぉ~」山田も痙攣しながら射精した。
それでも前と同じように、ピストン運動を止めない。まだ射精しているつもりなのだろう。
「あう、あう、あう~~~」その場に崩れるように、山田は倒れてしまった。
顔は極楽にいるように、涎を垂らしにやけており、倒れていても何度も腰を振っていた。
明美はさっさとティッシュで後始末をして、下着を履き、ブラウス、上着を素早く着た。
そして会議室を出て、トイレに駆け込む。
この会社の女子トイレはビデ付きなので、お湯で局部を綺麗に洗った。生理が近いから妊娠はしないだろう。そうだ、Aに言ってピルも用意してもらおうと考えていた。
明美は部署の自席に戻ったが、課長はなかなか帰って来ない。心配になったけれど、関わっていると人に知られたくない。
フラフラ状態で課長が戻って来た。
近くに居た社員が声をかける。
「課長大丈夫ですか?顔色が悪いようですが」
「ああ、大丈夫だ。ありがとう」
(そうそう、ちゃんとしてよ。病院に行けば、ヘロインを吸引している事がバレルかも知れない。しかし、こいつも先は長くないな)
田川をまずターゲットにする事で気持ちを引き締める。
田川は営業部所属である。
フラリと営業部が居ている部屋を覗いてみる。
田川は課長席に座っており、忙しく電話して手帳を捲りながら相手の対応をしていた。
(へぇ~、真面目に仕事しているんだ。本性はド助平なオヤジなのだけどね)
チラリと視線を送るが、気が付かないようなので、そのまま自席に戻り、田川にメールした。
「お忙しい所申し訳ございませんが、私と会って頂けるお時間を作って頂くとこはできますでしょうか?」と。
「申し訳ないが、君とはもう懲りている。ただお金を返してくれた事のお礼を言ってなかった。ありがとう」
「いろいろ嫌な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした。課長のお気持ちが分かればそれで良かったのです。ですから、最後に一度だけお会いしたいのですが。私の我儘を聞いて頂けないでしょうか?」
「本当に我儘だよ。君の美しさに負けてしまった。一度懲りているのだけれど、それを承知の上で一度だけなら……」
「ありがとうございます。最高のおもてなしをさせて頂きます。お楽しみに」
「何だか怖いな。俺を最高の気分にさせてくれるのだな。それなら今までの事は忘れよう」
「では、課長のご都合のよい日を知らせてください。お待ちしております」
そこで一旦、メールは途切れた。しかし、数時間後田川から連絡が入った。
「今週の金曜日はどうかな?私はいつも空いているのだがね」
「早々のご連絡ありがとうございます。では金曜日楽しみにしております」
「最高の気分にさせてくれるのだよね」
「はい、何度も気持ち良くさしあげます」
「楽しみにしているよ」
(また客が増えそうだ。若くて少し整った顔をしているだけで、男はコロリと騙される。何度も何度も、本当に学習能力のない奴ばかりだ)
狩野、山田からは定期的に薬の購入がある。
どこで調べて来たのか、狩野は知り合いの看護師から注射筒と針を入手して、少しずつ生理食塩液に混ぜ、静脈注射をしているようであった。確かに直に血管を通し体内に注入する方が、効果がてきめんである。
感染しないか?心配であったが、本人の自由であるのでそのまま何も言わずに薬を渡していた。
 金曜日となった。
田川から○○駅前の喫茶店で待っているとメールが入る。それを承知し、終業時間まで待った。
田川が先に出る。
「課長珍しいですね。もう帰られるのですか?」
「ああ、ヤボ用があってね」
「お疲れ様でした」
「ああ、お疲れ様。皆も仕事が終れば、早く帰ってくれ」
「は~い」と、今日は週末である。皆それぞれ用事を入れているのであろう。
明美は、田川が出てから10分くらいして化粧直しして、ゆっくり会社から出た。
その喫茶店には、田川は既に着いており、コーヒーを飲んでいた。
「お待たせしました」
「おお~、来てくれたか。何か飲む?」
「いいえ、時間がもったいないです。早く出ましょう」
伝票を掴み、田川は代金を払って直ぐに出てきた。
「お酒でも飲もうか?」
「ええ、お腹が空いていますので、軽く食事して行きません?」
「洒落た店はこの辺では知らないのだが」
「ファーストフードでいいですよ。そこのマクドで食べましょう」
「あそこでいいのか?」
「ええ、直ぐに済みますし、たっぷり楽しむ時間ができますわ」
「そうれもそうだな」
二人でマクドに入り、セットコースを注文して店内で食べた。実に味気ない食事だが、田川を客にする為に、ホテルでしっかり薬の味を覚えこまさないといけない。
30分も居たであろうか?
店を出て田川はタクシーを停めて、ホテル街の地名を告げていた。
タクシーの中では、二人とも黙ったままであった。これからする事は決まっている。しかしそれでも、田川の手が明美のスカートの中に入り込もうとする。その手を優しく宥めながら、タクシーが停まるのを待った。
タクシーが停まると、明美はさっさと降りて田川は降りて来るのを待つ。
明美が先に歩きだすと、慌てて追いつき肩を抱く。(これくらいは許してやろう。もうすぐお前は、薬の奴隷となるのだから)
ネオンがチカチカして派手なホテルを選び入って行く。手順は慣れたもので、キーを受け取り部屋へと向かう。エレベータの中で、肩にあった手は乳房を触っていた。それも知らぬ顔をして許してやる。
部屋に入ると、田川は明美にしがみ付いて来て、キスを強要してくる。やや顔を背けながら、「シャワーを浴びてもいい?」と聞く。
「あ~、勿論いいよ。先に入っておいでよ」
「それではお先に失礼します。後、交代しましょう」
一日働いていた為、結構汗をかいておりシャワーを浴びないと気持ち悪かった。
ボディシャンプーをいっぱい泡立てて、全身を手で洗った。局部を入念に洗う。(あの助平親父だったら、途中で乱入してくるかと思ったけど、意外に大人しくしているのだな)
シャワーを浴びてサッパリし、着ていた服を再度来て部屋へと戻った。
「お先に頂きました。課長も入って来られたらどうでしょう。サッパリ致しますよ」
「あ~、そうだな。じゃ、さっさと入ってくるわ。ビールでも飲んで待っていてくれ」
田川が浴室に入るのを見届けてから、バッグに入っている小袋を枕の下に忍ばせた。そして冷蔵庫からビールを出し、コップに注いで一口飲んだ。「美味しい!シャワーの後のビールは格別に美味しいわ」ゴクゴクと喉を鳴らして一杯を飲み干した。
暫くして、田川がバスタオルを腰に巻いた格好でこちらに近づいてくる。
(本当にデリカシーのない、教養の欠片もないオヤシだ)
明美を立たせ、上着を剥ぎ取るように脱がせ、ブラウスのボタンを外して行く。手つきを見ていても慣れていないのがよくわかる。
上半身はブラだけとなり、次にスカートも脱がされる。立ったままの恰好で、女をその気にさせる術すら知らず、ただ脱がしていく事に専念している。あまりに滑稽なので、少し笑ってしまった。
ストッキングに手を掛けられた時、「これは私が脱ぎます。電線が入ると嫌ですので」
田川は手をひっこめ、明美が自らストッキングを脱いでいくのを、ニヤニヤしながら見ていた。
「いい身体しているね。しゃぶり付きたくなるおっぱいに、その卑猥な太ももが何とも言えない」
明美はブラとパンティだけの姿となりベッドへ移動して、その上に座った。
田川も直ぐに横に座り、ぎこちない手つきで肩を掴まれ自分の方に向け、顔を近づけて来た。醜悪な中年男の顔など見たくもない。明美はしっかりと目を閉じてされるままにしようと決めていた。唇を合わせて来て、舌を差しいれて来る。逆らわずにその舌を迎え入れ、お互いの舌を絡め合った。田川の鼻息が荒い。
明美もだんだんその気になって来ている。
ブラの隙間から手を入れられ、乳房を揉まれながら、ディープキスされる。
身体の芯から熱くなってきているのが分かる。
ツンと立った乳首を捻るように揉まれた。
「ああ~、いい~」声が出てしまう。
乳房を揉みながら、首筋や耳朶を甘噛みされる。くすぐったいが、それが徐々に快感へ変わって行く。
「あぅぅぅ~」
ブラのフォックを外され、ベッドへ押し倒すように寝かされた。
寝ても乳房は形を留め、張のある若い肢体が輝いている。
仰向けになった晴美の上に覆い被さり、乳首を丁寧に舌で転がせる。
「はぁぁぁ~、気持ちいい~、あぁぁぁ~」
田川の頭を抱えて悶えている。
田川は上体を起こして、下へ移動して行く。
パンティの端に手を掛けて、ずり下して行く。
協力するように、腰を持ち上げて脱がせやすくする。桃の皮を剥くように、ツルッとパンティは脱がされた。そこには、細くて柔らかな絨毛があった。その面積は広くない。
股を大きく広げられ、陰唇に直接舌が這いまわる。
「あん、あん、あぁぁぁ~、はぁぁぁ~」
まだ皮に隠れているクリトリスを指で剥かれ、その真珠のように輝くクリトリスの周りを舌が這いまわる。
「あぅ~、あ、あ、あぁぁぁ~」腰が勝手に動く。子宮の奥深くがどんどん熱くなってきている。
膣の内部からトロトロと愛液が滲み出て来るのが分かる。
「おお~、陰唇がポッテリとしてきだぞ。気持ちいいか?」
「ええ、すごく気持ちいいです。そこ、そこを優しく舐めてください」
田川は更に舌の動きを早め、愛液を掬い取るように舐めまわしている。
「あ、あ、あ~~、いい~、はぁぁぁぁ~」首を仰け反らせて、頭を振っている。
「この匂いが堪らないな~。メスの匂いだ」
「イヤ~恥ずかしい~」ピチャピチャと音を立てて匂いと共にヌルヌルの液体を吸う。
田川の指が1本膣の中に入り、まだクリトリスを舐めながら、膣壁を捏ねるように動き回る。
「アッ。ダメ~、イク~、イク、イク、イク~~~」叫ぶや、腰を高く跳ね上げ、身体全体がビクンビクンと痙攣する。それでも、田川は責めるのを止めないので、痙攣が止まらない。
「あ、あ、もう、もう、止めてください。おかしくなりそう~」
「もっと感じろ!おかしくなれ~」
「ダメ、ダメ」明美は辛うじて、気が遠くなる前にその行為から逃げ出した。
「もっと気持ち良くさせてあげたのに」
「交代です。今度は私が課長を気持ちよくさせます。仰向けに寝てください」
「こうか?」ブヨブヨの醜悪な肉体をさらけ出し、異様に黒光りしているペニスの先からは粘液がトロ~と溢れていた。
田川が体勢を変える時に、枕の下から小袋を取り出していた。
田川の異様に長い毛が生えている乳首に吸い付く。
「ウッ!」男でもここは感じるみたいだ。
暫く乳首を舐めてから、ペニスを握り亀頭の裏側をペロペロと舐める。
「おお~、いいぞ~」
ここもまた長い毛が生えている、睾丸を口に含む。片方ずつ含み、口の中で玉を転がせる。
睾丸を舐めるのを止め、ペニスを左手で握り、右手の手のひらで先をコネコネすると、田川は悶えるように体を動かせていた。
「ちょ、ちょっと、それは刺激が強すぎるから止めてくれ~」
止めて欲しいと言われると、反対にもっとしたくなる。更にその動きを続ける。
「だから~、止めてくれ~、感じすぎて気持ちいいを通り越している」
「は~い。やめておきますね」自分の指を舐め、唾液を付けてから小袋の粉を付ける。
会陰に塗り付け、更に粉を増やして肛門へ何度も塗り付けた。
「おい、おい、そこも止めてくれ~。俺は男色の気がないからな」
「おしりの穴も気持ちいいと聞きますが」
「人による、じゃないか?病院で前立腺の件さされてから、そこに指を突っ込まれるのが嫌いになった」
「まぁ。男の人も大変ですね。もう前立腺肥大ですか?」
「そんな事はどうでもいい」
もう小袋の中身ほとんどが、田川の粘膜に塗り付けられた。
暫くすると効果が出て来たのか、目はトロンとしているのに、猛然と明美に挑みかかってきた。
明美を押し倒し、大きく股を広げられ、カチカチになったペニスを陰唇に宛がい、一気に埋没させた。
「あう~~」急な侵入に心の準備もできていない行為であった為いささか動揺した。
明美の膣内は十分濡れていた為、苦痛なく受け入れる事ができたが、以前の田川と明らかに違う。性行為に集中している。相手を気遣う気持ちなどなく、自分の快楽のみ追いかけている。
それでも初めはゆっくりしたストロークであったが、一気に頂点に登るべく激しいピストン運動へと変わった。
「あん、あん、はぁ、はぁ、あぁぁぁ~」
クチュクチュと粘液同士が混ざり合い、卑猥な音を立てている。田川の目の色が変わった。
「おお~、出るぞ~、出る、出る~~」
言うや、熱い塊が子宮目がけて放たれた。
いつもならそれでグッタリとなるのだが、まだピストン運動を繰り返している。終わっているのに。
「出ているぞ~、まだまだ出ている~」
額から汗を滴らせながら、必死になって腰を振っている。子宮を突かれる度に、大きな快感が襲ってくる。これ以上突かれたら、こっちが失神してしまいそうだ。
明美もイキまくっていた。何度も何度も大きな快感の波が押し寄せて来る。
「アギャ~、うぉぉぉ~」獣の声になっている。明美の全身も汗だくとなり、ペニスで突かれる行為かた逃れようとするが、男の強い力で、腰を固定されている。
「まだまだ出る~」大きく叫び白目を剥いて田川は倒れてしまった。
(やっと終わったか。私も少々ヘロインを舐めていたため耐えられたのかも?そうじゃなかったら、とっくに気絶してしまうくらいの快感の大波に襲われていたのだから)
グッタリした田川は、大きなイビキをかいて寝込んでしまったようだ。
明美はふら付く体を制御しながら、シャワーを浴びて、田川の痕跡を洗い流した。
しっかりと服を着て、ベッドサイドにメモを置いた。
「お先に失礼します。楽しかったです。またお誘いください」と。
(これでまた客が増えたな。せっせと稼いで何か事業でもしようかな?しかし、組織から離れるのは難しいだろうな。このままズルズルと組織の餌食になってしまうのか!嫌だけれど、それも運命。組織のお蔭でお金を貰えるし、万一の時は手を差し伸べてくれるだろう)

 最近なるべく薬は使わないようにしているが、倦怠感が辛い。薬を吸引すれば、天国にいるような快楽と至福の時が得られるのだが、これ以上続けていると、本当に依存症になってしまう事が怖かった。
麻薬はそんなに甘いものではない事は、薄々感じていたけれど、一度体に入れてしまったら最後、その呪縛から逃れるには入院してしっかり医師の監視の元、完全に体から薬が抜けてそれでも生活ができるようになるまで耐えなければならない。一番辛いのは激痛との戦いと聞く。
土日と空いて月曜日になり、田川が明美の席まで息を切らせて来た。ハァハァとかなり荒い息をしており、顔色がかなり悪い。
「どうされたのですか?」
「そ、それはこっちが聞きたいのだ。ちょっと来てくれるかな?」田川は山田に手を挙げて明美の腕を掴んで廊下の隅で皆から死角になる場所で肩を掴まれまだ荒い息で聞いてきた。
「俺に何かしたか?」
「あの日ですか?何もしておりませんが」
「そんな事はないはずだ。確かにあの日はいままで味わったことのない快楽に溺れてしまった。それはいいのだが、夜も寝られないくらい、イライラしているのだ」
「気持ち良かったら本望ですわ」
「いや、そうではなく、とにかくイライラしてどうしようもないのだ」
「では、私の指を舐めてみてください」明美はバッグの中にある小袋に指を入れ、粉を少し付けて田川の前に差し出す。
「指を舐めろと?そんな事で治まるのか!」かなりイラついているのが分かる。
「ええ、舐めるだけですよ」
田川は明美の人差し指を舐めた。
暫くすると、田川の顔に赤みが差して、荒い息も治まっていた。
「何なのだ?君は指に何を付けたのだ?」
明美はバッグから小袋を出し、「この粉を舐めてもらっただけです」
「それは何だ?覚せい剤か?」
「いいえ、そんな甘い物ではありません。麻薬です」
「ま、麻薬!!」
「課長!声が大きいですわ。これは立派な犯罪なのですからね」
「いきなり麻薬だの、犯罪だのと言われても。
今は頭の中が混乱している。どういう事か説明してくれないか?」
「正直に申し上げます。会社で私と関係のある人が世界的な組織に売ったのです。私はその為に麻薬の売人をしなくてはいけなくなりました。それで今まで関係のあった方を対象に麻薬を使用しました。田川課長!あなたではないでしょうね」
「お、俺がそんな組織を関係があると思うか?」
「田川課長、何だか落ち着かない様子ですね。こちらが詳しく説明を聞かないといけないようですわ」
「いや、何でもない。この事は無かった事にしてくれ。それに、その麻薬はこれから俺にとって必要となっていくのか?」
「今なかった事にしてくれ!と、おっしゃったのでは?では、麻薬の事も無かった事にしてくれって事じゃないでしょうか?それで私が引き下がると思われるならそれは大きな間違いである事を、身を持って知らしめましょう」
「ま、待ってくれ。誤解だ!俺は友達に相談しただけなのだ」
「はい、分かりました。そのお友達か誰かが組織につながっているようですね。お金もお返ししました。それなのに何故そのままにしてくれなかったのでしょう」
「悪い。また君から脅迫されると思ったからだ」
「ついに自白されましたね。あなたが私を組織に売った張本人だと」
「………」
「その組織に捕らわれ、どのような目に合ったか想像もできないでしょうね。目には目を歯には歯をですわ。警察に行かれても構いませんよ。それを組織が許すかどうか?は、私は保証できませんが」
田川は膝を着いて土下座をしようとするのを止めた。
「止めてください。ここは会社です。そのような事をされて済む事ではございません。では、仕事がございますので失礼致します」
田川は憔悴仕切った顔で自分の部署へ戻って行く。
自席に戻り、エースに頼もうかと考えたが止めた。これは自分の事で自分がどうしたいか?が問題であるから。
そのまま放置しておいても、薬物中毒になり廃人となってしまうのは目に見えている。しかし、私を売った行為に対しての落とし前を取ってもらわないと気が済まない。
仕事も手に就かず、田川への復讐のみが頭の中を占有していた。
まずは薬物を十分に与えておいて、ピタッと供給を止める。それも1案だろう。
若い女に弱いようだから、美人局も一計かも知れない。しかしそのような事を引き受けてくれる筋者を知らない。
じわじわと真綿で首を絞めていくような、苦しみを与えてやりたかった。
復讐についていろいろ考えていた時、携帯が鳴りやはり狩野からであった。また薬が欲しいと言う。本当に一人で使っているのだろうか?と思うくらい要求してくる。
「渡しても構いませんが、使い過ぎていませんか?体に悪いですよ」
「分かっているのだが、止められないのだ」
「では、15時に○○駅の構外売店前でお待ちしております」
「ありがとう感謝するよ・断られたらどうしようと考えていたのだ」
「狩野さん。他人に渡していませんよね。それをすると組織が黙っていませんから」
「うん。自分だけで使っているよ。約束は守っている。信用してくれ」
「念の為に聞きました。では、約束のお時間に」電話は切れた。
狩野は急速にジャンキーになって行っている。
他人の事なので、どうなろうが知った事ではないが、使用量が尋常でない為、一応エースに連絡を入れておいた。
「確かに一人で使う量としては多いな。こちらもそいつの事は分かっている。内偵しておこう。報告ご苦労様」
15に約束の場所へ行くと、狩野の容貌は豹変していた。目は落ち込み、頬も肉がなくなって、物を受け取る手も骨に皮が付いているだけに見えた。
「大丈夫ですか?暫く薬を止められたらいかがです?」
「いや、これが無いともう生きていけない。止めろ=死ねと言われるのと同じだ」
(ここまで人を狂わす薬なのか!この体ではまともに働いていないだろう。どっかから調達して来た金に違いない。それでも欲しいと言う男が哀れに思えて来たな)
明美はそれ以上何も言わず、封筒を渡し交換に紙幣が入った袋を受け取った。
あろうことか、狩野はその場で吸引しだそうとした。慌てた明美はそれを阻止して、狩野を抱きかかえるようにして喫茶店に入った。
幸い中は客がほとんどいなかった為、異様な二人をジロジロ見る者はいなかった。
コーヒーを頼み、店の者から見えない位置に明美が立ち、狩野に吸引させる。
「フ~」と、安堵のため息をついて狩野の目はギラギラしてきた。
「もう大丈夫だ。心配かけたね。申し訳ないがここの支払お願いしてもいいかな」
「ええ、私が連れて来たので。支払は気にしないでください。それよりやはり量が増えていると思います。減らす努力をしてください」
「ああ、分かったよ。じゃ、また頼むね」
とスキップするように店から出て行った。
不吉な感じがしたので、エースへ事の次第を報告した。
「それはもうダメだな。せっかくのカモだったが仕方がない。後はこちらで考えるので、君は客を増やす事を考えてくれ。マトリはおとり捜査許されているから気をつけるようにな」
(マトリとは、厚生労働省管轄の麻薬取締官の事で、普通の警察・公安は、おとり捜査は禁止されているが、マトリだけは組織に潜入して組織ごと壊滅させる力を持っている)
「承知しました。よろしくお願い致します」
「あ~、ブツはまだあったかな?余裕があるように今日にでもまた送っておくよ。受取りしっかり頼む。報酬も振込んでおくからな」
「ありがとうございます」
(狩野はどうなるのだろうか?しかし、組織に報告した以上、多分生きていられないだろう。このままでは、犯罪を起こし警察に捕まって麻薬を使用している事が判明すると、何をしゃべるか分からない。自分の身に危険が迫るだけだ)
明美は何食わぬ顔で職場に戻り、事前に外出する事を上司に告げていたので、何も言われなかった。その反対に上司の山田から今夜付き合って欲しい事が伝えられた。
(仕方がない。狩野の事を考えると寝る事もできないだろう。そうならば、セックスに没頭し全てをその時だけでも忘れていたい)
快く山田の誘いを受けた。
終業チャイムが鳴り、明美はサッサと会社から出た。待ち合わせ場所は、2駅離れた駅前の喫茶店である事は山田から告げられていた。
まっすぐそこに向かい、暖かいコーヒーを注文して、落ち着かない気持ちを何とか落ち着かせようとしていた。カップを持つ手が微かに震えていた。
そこへ何も知らない山田が現れた。
今までは憎むべき相手であったが、今回は助けて欲しい気持ちでいっぱいである。
狩野が組織からどのような方法で処分されてしまうのか?考えないようにしているが、自分がどんどん薬を与えてしまった事が原因であるのは確かであるから、その事が頭から離れなかった。
「待たせたかな?」
「いいえ、先ほど着いたばかりです」カップのコーヒーがかなり減っているのでウソだと言うのは見て分かるが、山田はそういう神経は持ち合わせていなかった。
「じゃ、ここを出て食事に行こう。飲める所がいいよね」
「はい。お共致します」
「それと例の物なのだが、また少し分けてくれないかな?」
「ええ、構いませんが使い過ぎないように、辛くなった時だけ使って頂けますか?」
「ああ、分かっているよ。しかし身近な……自分にこういう薬が回って来るとは夢にも思わなかったな」二人は歩きながら話している。
誰もそんな会話など聞いていないであろう。
「後悔されていますか?」
「いや、人間として生まれこれを知らずに死ぬのが普通だろうが、世の中にこんなに快楽を与えてくれる薬が存在する事を経験できてよかったよ」
「そう言って頂けますと、私も救われます」
「救われる?どういう事だ?」
「いえ、喜んで頂けて嬉しいです」
「ああ、そういう事か」と言いながら、山田は居酒屋風の店に入って行った。
明美はその後を追うように中に入る。
中はほとんど中年の男で、話声や店の人の注文の声で普通であれば、倒れそうになるくらい騒然としており、店内はタバコの煙や焼き物の煙で霞んでいた。
「いらっしゃい!お二人ですね。こちらへどうぞ」と、店の奥の方へ案内された。その時席の間を通っている際、チラッと見覚えのある顔があった。エースの手下である。
(なんで奴がここにいるの?連中は高級クラブをネグラとしていたハズ。私をマークしているのだろうか?)また、身体に悪寒が走った。
そんな事も知らずに山田は適当に料理を頼み、ビールを注文した。
位置的に部下は明美の背後に座っている。
振り向く訳にもいかない。
(私も狩野と同じく処分されるのだろうか?)
背後に人の気配を感じた。
「お楽しみの所申し訳ないですね~。御嬢さんに用事があるので、お借りしますよ」と、部下は言い明美の腕を取って連れて行こうとした。
「ま、待ってくれ。これから大事な話があるのだ。もう少し時間をくれないか?」山田は顔色を変えて泣きそうな顔をして懇願している。
「仕方ないですね。5分だけですよ。5分経てばこの子は連れて行きますから」
「は、はい。直ぐに終わります」山田も筋者である事は分かったようで、素直に話す。
「明美ちゃん。助けられなくて申し訳ない。今欲しいんだ、薬が」
「は、はい。いいですよ。課長が相手できるような人達ではないので。で、はい薬。お代は後日で結構ですので」明美の顔色も真っ青になっており、身体が小刻みに震えている。
「さぁ、済んだかな?」
「はい、お待たせしました」
男は黙って明美の腕を取り、コートを自分の肩にかけて店から出た。
「何の用事でしょうか?」
「俺は知らねぇよ。ボスが連れて来いつぅから指示に従っただけだ」
近くの駐車場まで歩き、白色のベンツの助手席に座らされ、車はタイヤの音を鳴らしながら急発進した。
首都高速を暫く走り、雑居ビルの前で車は停まった。
顎で合図して降りるように促す。
言われるまま車から降り、また腕を取られてビルの中に入りエレベータに乗って最上階まで行った。
扉が開くとそこはビルの外観とは正反対な豪華で真っ赤な絨毯が敷き詰められた廊下で、その先に重たそうな扉があった。
男は明美を先に歩かせて後ろから背中を押しならが歩く。膝に力が入らないくらいの恐怖が全身を襲っていた。
扉の前まで行き、男が割と大きな声で
「ボス、連れてきました。入ってよろしいでしょうか?」
「うむ。入れ。お前はもう帰っていい」
「へい、分かりました」
男は扉を開けて明美を中に押し込み、自分はそのまま来た道を帰っていったようである。
「よく来たな。まぁ、そこに座れよ」
目の前には、エースが座っていた。白のスーツに黒のネクタイをしている。足を組みタバコを吸っていた。
「な、何の用事ですか?」
「何の用事ですか?だと!」大声で怒鳴られ身がすくむ。
「あ、悪い。脅かすつもりは無かったのだ。狩野は始末したよ。あれはヒドイ状態だったな。よく報告してくれた。何、今日はお前を抱こうと思ってな。ご褒美だよ」
「ご褒美ですか」
「ああ、俺に抱かれたら、もう誰も日本でお前に手出しできる者はいなくなるだろう。まぁ裏の世界ではトップに近いクラスに入れるって事になる。嫌か?」
「いいえ、恐れ多くて私のような者にそこまでして頂けるだけで光栄です」
「お前は綺麗と言うより可愛いし、組織の為に一生懸命働いてくれた。今日からはお前は準幹部だ。ほれ、このバッジを持っておけ」
手渡されたバッジは金で出来ているのか?かなり重く、中央に鷲の彫刻がありその周りに蛇が連なって円を描いていた。
明美は受け取ったバッジを両手でしっかり持ち無くさないようにハンカチに包み、バッグにしまった。
「私が組織の準幹部?そのような大役務められそうもないのですが」
「そのバッジを付けるだけで、幹部だよ。日本のヤクザや中国マフィアなどザコがいろいろいるが、裏の世界でそのバッジを知らない者はいない。それを見れば皆道を開けるよ。それと用件だけ先に伝える。3ヵ月に一度幹部会がある。その会には必ず出席するように。
今の会社は辞めろ。週ごとに大金が口座に振り込まれるからな。そして俺の手足となっていろんな仕事をしてもらう。もうヤクの売人はしなくていい。それだけだ。さぁこっちにおいで」
エースは立ち上がり両手を広げた。
明美はフラフラと体が吸い込まれるようにその腕の中に入り込んだ。
そのまま腰に手を添えられ、口づけされた。
甘い香りがする。さっき吸っていたタバゴの香りだろう。
もうそれだけで明美の身体は溶けてしまいそうなくらい、官能の世界に導かれていた。
ジャケットを脱がされ、スカートもいつの間に?な感じで着ている服を脱がされていく。
明美はされるままに体の向きを変えているだけですっかり下着姿となった。
その明美を軽々と抱き上げ、ベッドまで運ぶ。
服の上からでもその分厚い筋肉で覆われた肢体が想像される。
「ああ~」思わず吐息が出てしまう。
明美のすぐ横でエースは自分の服を脱ぎだした。
薄眼で見ていたが想像していたよりもっと筋肉に被われた体をしていた。
太腿も明美のウエストくらいあるのでは?と思えるくらい太くて硬そうである。
それぞれの筋肉が己を誇示するかのように、別々に動いている。
体重をかけないよう気を遣い、明美の上に被い被さって来た。
また口づけされ、エースの唇がゆっくりと移動していく。
耳朶や首筋に舌を這わされただけで、局部が熱くなりジュワ~と愛液が滲み出て来るのが分かる。
「はぁぁぁ~、いいです。気持ちいい~」エースの頭を抱える。
それを取り払うでもなく頭は明美の乳房へ移り、両手で強く揉みながらその先の乳首を舌で転がせる。
恥ずかしいくらい愛液がどんどん出て来るのが分かる。
シーツには愛液のシミができているに違いない。そんな事も一瞬頭をよぎっただけで、直ぐに官能の世界に引きずり込まれていく。
「あ、あ、あぁぁぁぁ~」自分では分かっていないが、かなり大きな喘ぎ声となっていた。
何時の間にブラも取られていたが、それすら明美には意識にない事であった。
エースの舌はどんどん下がって行き、恥丘に辿り着き、陰唇全体を舐められた。
「はぅ~、あぁぁぁ~、おかしくなりそう~」
エースは少量の粉を陰核に擦り込んだ。
それだけで体は一度宙に浮き、どんどん奈落の底に落ちていく感じを繰り返していた。
身体全体が子宮と膣、陰唇になったように触れられる度に、快楽を全身で感じていた。
これ以上責められたら、本当に気を失ってしまうかも?と思う間もなく、硬くて太い物が陰唇をかき分け膣内に挿入された。
「ぎゃぁぁぁ~、うぉぉぉ~」獣と化してその肉の棒を下の口でしっかり咥え込んでいた。
エースがゆっくり律動を始めた所まで記憶があるが、その後は失神していたのであろう、気が付けば、エースもいなくなり明美は全裸のままで膣から流れ出た精液がすっかり冷えていた。
(今度はしっかり私の中で出してくれたのだ)
それが嬉しくて、狂うような激しいセックスの余韻を感じていた。
身体は思うように動かせない。そのくらい激しいものであった。
大きな波が何度も何度も襲って来て、休む間もなく永遠の快楽に身を任せているだけであった。
テーブルを見るとメモがあり、「素晴らしかったよ、明美。早速だが今度の幹部会は、来週水曜日の15時に場所は追って連絡する」とあった。
(私が組織の幹部?それってどんなにスゴイことなのかしら?)
ようやく体を動かす事が出来るようになったので、軽くシャワーを浴びて外に出た。
まだ夜中の2時くらいであった。
試しにもらったバッジを付けて、新宿の方へ行ってみた。
歌舞伎町へでも行ってみようか?と、通りに入りかけた所で、肩で風を切っていた強面の集団に出会った。
普段なら避けて通るのだが、集団の真ん中を堂々と歩いた。すると、集団は素早い動きで道を開けて最敬礼している。
(スゴイなこのバッジの威力は。地場の組長も頭を下げるかも?)
寒い夜であったが、明美の頬を撫でる風が気持ち良かった。
その集団の中でも一番偉そうにしている者に、
「こんな時間にゴメンなさい。眠たくなったので寝られる所まで案内してくれない?」
「はい。畏まりました。おい!」と近くの男に声を掛け、何か話しその男は慌ててスマホを取り出して連絡していた。
ものの5分もしないくらいで、白のベンツが近くに停まり、車に案内された。
同乗した男は助手席に座っている。
「直ぐにホテルまでご案内致します。暫くおまちください」
若手の運転手であった為、急発進した。
その行為に助手席の男は激怒し、「大事な人を乗せているのに、なんて運転するんだ!」と、運転している男の顔が歪むくらい強く殴られた。
「手荒な事はしないでください。私が我儘言っただけですから」
「へい。すみません」と謝ったきり、一切何もしゃべらない間に、六本木の高級ホテル前に車は滑るように横づけされた。
助手席の男は飛び降りて、後部座席のドアを開け降りて下さいと言う手振りをした。
言われるまま降りて、中に入ると連絡があったのか、チェックインの手続きも無しにベルボーイが部屋まで案内してくれた。
靴が沈み込むような絨毯の上を歩き、振り返ると先ほどの男二人が腰の位置まで頭を下げて見送っていた。
部屋に入るなり、ベッドに倒れ込んで、そのまま寝てしまった。

 その日を境に明美の生活はガラリと変わった。
会社へ辞表を出し、タワーマンションの最上階に近いフロアーで2部屋分をぶち抜いてそのフロアーには4部屋あったが、3部屋となり片側全てが明美名義の物となった。
古い家具は全て捨てた。
当座必要最小限の物はキャリーバッグ1個で済むくらいで、家具一式はイタリア製の高級ブランドで統一された。
リビングには白色で統一されたソファーとテーブルが置かれ、テレビは小さな映画館のスクリーンかと思われるくらい大きな物であった。
ゲスト用のベッド・浴室がある部屋もあった。
何と言っても壁が1枚の強化ガラスで作られているので、そこから見る夜景は圧巻である。
(このような広い部屋に私一人で住むのかしら?料理は自分で作れるにしても、掃除を考えるとうんざり)
そこへエースから電話が入った。
「新居は気に入ってもらえたかな?今後の生活の面倒を看てもらう為に、メイドと用心棒を付けるからよろしく」
「ええ、とても素敵な部屋で私にはもったいない物です。その上にメイドさんと用心棒さんも付けて頂けるのですか?ありがとうございます。こんなに広い部屋どのように掃除しようか?悩んでいた所です」
「はは~。君が掃除する事はない。料理も特別な日はレストランのシェフも呼ぶよ。それと明日の幹部会だが、帝国ホテルの翡翠の間で行う。遅れないようにな」
「はい、承知致しました。そこでこれから私がする仕事が分かるのですね」
「他の議題が主だが、それもあるな。くれぐれも遅れないように」電話は切れた。
(フ~。良かった~。メイドさんが来てくれるのだ。じゃ、私は何もしなくていいようね)
エースの話では、週に500万円振り込まれる事となっている。クレジットカードを初めはチタンにしようか?と考えたが、ブラックに留めた。
幹部会に貧相な服装で行く事はできない。
しかし今からオーダーしても間に合わないので銀座へ出かけ、数軒のブランド物を扱っている店を梯子してやっと自分に合うスーツを選ぶ事が出来た。
念の為に、下着も高級な物を数点買っておく。
お届けしますが…と店員の申し入れも、明日必要なので持って帰る事にした。
車はまだ買っていないのでタクシーで移動する。
部屋に戻り、買ってきた服を何度も合わせなおした。
気が付くと夜の9時近くとなっておりお腹が空いた為マンションから出て、近くレストランに入った。
メニューから適当に品を選び、ワインも頼んだ。
ハーフボトルにしようか?と考えたが、フルボトルの赤ワインを頼んだ。
グラスに注がれたそれは、芳醇な香りを漂わせやや透明な赤色の液体は生き物のように、グラスの中で蠢いているようであった。
そのワインを啜るように、喉に流し込む。
口の中はワインの香りで満たされ、その味わいと香りに恍惚となるようであった。
「フゥ~」とため息をつき、色々あった事を一時忘れ自分だけの世界に入っていく幸福感を感じていた。
料理も美味しく頂いた。
これから自分に起こる事は想像もできない。
今は全てを忘れて自分だけの世界に入っている。
そんな時、スマホが鳴った。
エースから渡されているスマホは、普通のスマホよりやや大き目で、どう見ても日本製でない事が分かる。
その使い方も幹部会で公開されると聞いている。
今鳴っているのは、その前に使って愛用していた自分の携帯であった。
相手は前の会社の山田からであった。
「急に退職するから驚いている所なんだ。それより例の物はまだ君から買う事はできるのか?」
「ほとんどお世話になったお礼も申し上げず急に退職した事をお詫び致します。それと例の物については、組織の別の人物から供給されると聞いております。まだ連絡はないですか?もう無くなって来たので、要りようなのでしょうか?」
「そうなんだ。あることはあるのだが、残り少ない。それと君以外から買いたくないな~。なんとかならないかな?」
「承知しました。本日品物をお渡しします。それと私以外から購入できるか?組織に確認してみますね。では、終業時間の30分後に○○駅の売店前で渡します。では、失礼します」
一気に現実へ引き戻された感じがしたが、いつまでも甘美な世界に浸っている訳には行かない。
一応エースに山田の事を伝えた。
「今回だけでなく、しばらくは君から薬を渡してやってくれ。全くの素人さんなので、知らない人からヤバイ物を買うのは抵抗があるだろう」
「はい、畏まりました」
常に薬はバッグに入っている。
しかし、万一職務質問されると麻薬所持、使用の罪で捕まってしまう。
これからは、連絡があった時のみ持参するようにしようと決めた。
約束の場所へ10分くらい前に着いたのだが、山田は既に来ていた。
遠くから見ていても、イライラして落ち着きがないのが見てとれる。
狩野ほどヒドイ状態ではなかったが、将来どうなるのか?分からない。
ジャンキーになれば組織に消されるだろう。僅かに震えが起こった。
そんな心の内を微塵も見せずに、山田に近づき笑顔で挨拶した。
「お待たせしました。課長来られるのが早いです。まさかお待たせしているとは思いませんでした」
「いやいやいいんだよ。早く君に逢いたくてね。用事は分かっていると思う。それと今後の取引も君がしてくれる事になったのかな?」
「物はここにあります。また今後、必要な時は私に連絡してください。私が直接課長にお渡し致します」
「おお~そうか。ありがとう。知らない人、正直に言うとヤバイ人とはお付き合いしたくないのだ。君なら安心して買う事ができる」
「課長、くれぐれも使い過ぎには気を付けてください。調子の悪い時だけ使うと約束して頂けるのでしたら、課長のご希望通りにさせて頂きます」
「ああ、分かっているよ。しかしこの手の薬はどんどん使用量が増えると聞く。自分でも自粛しながら使っているつもりなのだが、嫌な事があったりすると、これを吸引したら全てを忘れる事ができる魔法の薬だ」
「はい。できるだけ必要最低限の量だけご使用ください。では、ここに1gあります。これだけあれば、当分必要ないと思っています。
課長の事を考えれば渡す量を減らしたいのですが、私も今後そんなに時間が取れなくなりそうなので纏めて渡します」
「おお~、ありがとう。代金はここに入っている」
明美は代金を受け取り、薬を渡した。
その薬を奪い取るように、山田は取り。さっさとどっかへ行ってしまった。
(先は短いかな?一度この薬の快楽を味わってしまうと、それ以上の快楽は存在しないので頼らざるを得ない。ジャンキーとなって、警察に捕まる前に組織が始末するであろう。これが私が望んでいた復讐と違う気がするが、ここまで来てしまったら、もう後戻りはできないな)

 幹部会当日となった。
どれだけの人が集まるのか?どういう人物達なのか?何も聞かされていない。
決めていた服に着替え、時計を見ると午後1時を過ぎた所であった。
絶対に遅れるなと言うエースの言葉通り、早めに自宅を出てタクシーで帝国ホテルへ向かった。
早く来たつもりであったが、ロビーでは大勢の人が集まって何やら打合せをしているようであった。
その中のリーダーらしき人物が明美を見つけて走り寄って来た。
「ご苦労様です。新しく参加される方ですね。話は伺っております。私共は今日集まられる方々の警備に当たらせて頂く部隊で、私は須藤と申します。今後も何かとお手伝いさせて頂く事があると思います。どうぞ宜しくお願い致します」
精悍な顔つきで、短髪でガッシリした体型をした男が、明美に対して最敬礼した。
「こちらこそ宜しくお願いします。何もわからないので。着くのが早かったかしら?メンバーの方々はまだ来られていませんか?」
「ええ、まだ誰も来られておりません。どうぞコートをお預かり致します。それと……」
無線で誰かを呼んだ。
直ぐに若い女性が現れた。
「大変失礼いたします。そこのお手洗いでこの者が一応ボディチェックさせて頂きます。気を悪くされないで下さい。ここに来られるメンバーはボスであっても、この儀式は義務付けられておりますので」
若い女性も最敬礼し、お手洗いの方に付いて来るように促してくる。
明美は黙って言う通りにした。
ホテルの手洗い場は広く誰も居なかったが、個室に案内されその中で、服の上から手で武器を持っていないか?チェックされ、簡易な金属探知機で体中をなぞられた。
「ご協力に大変感謝致します。何もない事を確認させて頂きました。では会場までご案内させて頂きます」
エレベータで2Fまで上がり、案内されたのが「孔雀の間」であった。
他の会場は予約が入っていないのか?その会場のみ入口が解放され、会場前には黒服の男達が大勢受付として座っていた。
明美の姿を見ると、全員が一斉に立ち上がり、最敬礼をしている。
明美が案内され会場内に入るまでその姿勢を崩さなかった。
中は、広々とし大きなシャンデリアが室内を照らしていた。
部屋の半分でコの字型にテーブルが並べられ、残りの半分には、ホテルの従業員達が忙しく動き回り、豪華な料理が次々と運ばれている。
明美は何処に座ればいいのか?思案していると、例の須藤が現れ明美の席まで案内してくれた。
「しばらくお待ちください。それと初めてでしょうから、これからメンバーの方々が次々と来られます。申し訳ございませんが、その度に起立して会釈して頂きますようお願いいたします」
「ありがとう」と、明美が座ると、ウエイターらしき者が水の入ったグラスを目の前に置いてくれた。明美は緊張の極限まで来ている為、グラスに手を伸ばす事すらできないでいた。
一人初老の男性が入って来た。
見る限りでは、上品な普通のお金持ちって感じであった。
明美は立ち上がり、「日比野明美と申します。本日から参加致します。どうぞ宜しくお願い致します」と最敬礼した。
「うむ。君か。ボスがすごくお気に入りで優秀な人材と言うのは。私は渡辺と言う。よろしく」と会釈をしてかなり上座に座った。
時間が経つにつれ、次々と人が集まってきた。
その一人一人に挨拶をしたつもりでいたが、抜けていたかも知れない。
そんな事はメンバーにとってどうでもいい事である。
総数はざっと見て、100名くらいの人が来ていた。
最後にエースが会場に入って来た。
明美は立ち上がり挨拶しようとするのをエースは手で制した。
全員が立ち上がる。エースが座るのを見届けてから、全員は座った。
エースが全てを取り仕切るようであった。
「本日は皆さまお忙しい中、幹部会に集まって頂きありがとう」マイクを通しているとは言え、低く威厳のある離し方である。
「米国本部からの連絡事項を伝える」
かなり隠語が多くて話の内容が良く分からなかった。
緊張しているのもあるかも知れない。
周りの者のほとんどはノートに記録している。
ICレコーダーを使用している者はいなさそうだ。
身体検査でレコーダーが見つかれば没収だけで済みそうもない雰囲気であった。
次は各地区での業績報告であり、売上の悪い北海道・東北両幹部がキツク叱咤され、次回目標に達さない場合は、幹部交代もある事をはっきり告げられていた。
1時間半くらいの報告などがあり、最後にエースが明美を立たせた。
「この者が今回から新たに加わったメンバーだ。今後の仕事は私の補佐をしてもらう。彼女から出た指示は私からの物と思って真剣に聞くように。次回の会では当然私の横に座る事になる。皆宜しく頼む」
エースからはそれだけであった。
(私が巨大闇組織のボス代行??私が??そんな事出来る訳がない!)縋るような視線をエースに投げるが、無視され「以上。次回開催は追って連絡する。皆ご苦労様。後ろに宴会の用意がしてある。ここからは、無礼講で構わない。お互いの親睦を図って欲しい」
全員が起立し、最敬礼して会は終了した。
明美はエースに近づこうとするが、列をなしてエースに話をする順番を多数が待っているようなので諦めた。
明美は立食コーナーに向かうと、数名が付いて来ていた。
各々自己紹介する。
なるべく覚えるようにしていたが、挨拶に来る人数が半端でない為とてもではないが、覚える事などできなかった。
いろんな方と話をし、組織についておぼろげながら、その巨大さと絶大な支配力を持っている事が分かった。
薄々感じていたが、ここまでグローバルに大きな組織であるとは想像を超えていた。
エースが言っていたように、日本の広域暴力団や中国マフィアなど取るに足らないくらいの権力を持っていた。
その日本支部のトップの代行??何をすればいいのか?頭の中は?マークと不安でいっぱいであった。
午後6時頃になり、エースが近づいて来て、
「そろそろ我々は引揚げようか」
「まだ皆さま残られてますが、よろしいのでしょうか?」
「こっちはいろいろ処理しないといけない仕事が山ほどある。今日は疲れただろう。お疲れさま。もう解放してあげるよ。また連絡する。渡した携帯の機能の説明もあるしな」
「はい。畏まりました。では、私はこれで帰らせてもらいます。皆様にご挨拶したいのですが」
「いいよ。そんな事は。好きな時に帰ればいい。さっき連絡したからお前のボディガードが玄関で待っているはずだ」
「はい。いろいろありがとうございます。今後ともご指導頂きますよう宜しくお願い致します」最敬礼する。
「うむ」と答えただけで、エースも会場を後にした。
明美がロビーに下りると、須藤と言う男がコートを持って近づいて来た。
「あ、ありがとう」
コートを羽織るのを手伝ってくれ、玄関まで誘導された。
エースが言っていた通り、玄関にはグレーのベンツが停まっていた。
ドアボーイが合図され、ベンツの後部座席のドアを開けてくれた。
そのまま明美は車に乗り込む。
「お疲れ様でした。真っ直ぐマンションまでお送り致します。静かにしておきますので、出来るだけ寛いでください。BGMかけましょうか?」
「あ、ありがとう。音楽いいわね。静かなジャズをかけて欲しいです」
「承知しました。それと、私に対して敬語は止めてください。あなたは私のボスですから」
「はい。分かりました。いや、分かったわ」
「はい、では出発します」
ベンツは滑るように発車し、静かにジャズが流れ出した。
明美は目を瞑り、何も考えないようにした。
神経が高ぶりすぎている。
交感神経を抑えて副交感神経を呼び起こすように瞑想していた。
気が付くとマンションに着いており、ボディガードがドアを開けてくれて、玄関まで送ってくれた。
さりげない動作であるが、周囲を常に気をつけているのが分かる。
「今日はありがとう」
「本当にお疲れ様でした。私への連絡は渡された携帯に登録されております。ジンと言う名前で。用事があればいつでも連絡してください。では、おやすみなさい」
明美がドアを通りエレベータが締まるまで、頭を下げ明美に何かあれば直ぐ行動する完璧なボディガードであった。
明美は自室に入り、朦朧状態でシャワーだけ浴び、ほぼ全裸のままベッドに入り寝込んでしまった。
翌日は早く寝た為か、朝の6時くらいに目覚め、ベッドの横に大男が座っているのに気づき心臓が口から出るくらい驚いた。
「だ、誰?」
「俺だよ。エースだ」
「ボ、ボス。何のご用でしょうか?」
その時になり、自分が全裸である事に気付き掛布団で体を隠した。
「いつみてもいい身体しているな。仕事の話や今後の事について直に話そうと思ってね」
「呼んで頂ければ、飛んで行きましたのに。わざわざこちらまで来て頂き恐縮致します」
「いや、好きでここに来ただけだ。気にするな。仕事の前にお前を抱く」
「え?あ、はい承知しました」
応え終わらない内に、エースは着ている物を脱ぎだした。
脱いではソファーの上に投げ出して行く。
パンツ一枚となったエースの体は、前も見たが鍛え上げられており、贅肉の欠片も付いていない。
最後のパンツを脱いだが、一物はダラリと垂れさがっている。その状態でもかなり太くて長い。
掛布団を剥ぎ取った。
明美は一瞬、胸や下腹部を手で隠したが、直ぐにエースを迎えるように両手を差し出した。
黙ったままエースは明美の身体の上に乗って来た。
熱い口づけを受けた。舌を絡め合い、お互いの唾液を交換している。
明美の鼻息はかなり荒くなり、局部からジワ~っと粘液が滲み出て来るのが分かる。
局部にエースの一物が徐々に頭をもたげてきているものが当っているのも更に欲情してくる。
乳房を両手で掴まれ揉まれる。
「あ、あ~~。強く。もっと強く揉んでください」
エースは両乳房を揉みながら、ツンと立っている乳首に舌を這わせる。
舐められた場所から快感が電流のように全身に流れる。
「はぁ~、あぁぁぁぁ~」明美は仰け反り徐々に高まってくる快楽を貪っていた。
エースはそのまま上体を下にずらして行き、陰毛を口で啄むように吸って来る。
更に足を広げられ、陰唇を指で広げられた。
そのテカテカと濡れ輝く肉襞に舌を差しいれられた。
「あ、あ、あ~~。いい~。気持ちいい~。あなたが欲しい~」
それでもエースは優しく長い時間そこを舐めていて、会陰から肛門に舌が移動して行く。
もう明美は限界を迎えており、早く膣にペニスを入れて欲しくて堪らなくなっていた。
ヌルヌルの愛液が後から後から溢れて来る。
その愛液を愛おしそうに舌で掬っている。
「ね~、ダメ~。イキそう。入れて~お願い」
明美は自分の乳房を激しく揉み、懇願する。
膣に当たって入って来た。しかしそれは指であった。
初めはGスポットを優しく刺激される。
「あん、あん、あん。あ~~~」急激な快感が子宮を収縮させ、頭の中は真っ白になり腰が跳ね上がる。
「いや~~。イク~~」叫ぶと同時に明美の陰唇から水のような物が噴き出ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」息をするのが苦しいくらい、強い刺激であった。
「お漏らししちゃった~。初めてよ。こんな事」
エースは笑いながら、濡れた手をシーツで拭き、広げた股に自分の腰を差し入れて、ペニスを陰唇に宛がい、ゆっくりと挿入してくる。
「あ、あ、また~、イク~、イク~」
明美は頭を大きく振って、意識が遠のくのを耐えている。
ペニスはじわじわ奥に入ってくる。ついに子宮口まで到達し、腰をグライドしてくる。
ボルチオへの刺激は、今まで以上の快感を伝えてくる。
腰を動かされる度に、また水のような物が明美の陰唇から噴き出てくる。
水鉄砲のようにピュ~、ピュ~と。
そしてエースはピストン運動を始めた。
膣いっぱいになくくらい太くて長いペニスが膣壁を刺激し、ボルチオもGスポットもエラが張りだした亀頭で刺激してくる。
「あう、あう、うぉぉぉ~」上体が起き上がるくらいの快感である。
その体を受け止めエースは口づけしてきた。
明美は貪るように、その舌を吸い、エースの腰を強く抱きしめた。
その体勢でエースの動きは更に激しくなり、明美の中に熱い精の塊を放出して来た。と、同時に明美は失神してしまった。
エースはシャワーを浴びて、ガウンを羽織り、コーヒーを飲んで、明美が目を覚ますのを待っていた。
「う~ん」と一声上げて明美は目を覚ました。
全身を動かす事が出来ないくらいの倦怠感であった。
エースがガラス板に粉を撒き、カミソリで粉を等分に分けて、更にその粉を細い筋となるよう揃えた。明美の前に差し出す。
明美は、ストローを鼻に当てその粉を吸った。
気怠かった体はウソのようにシャキっとした。
これはヘロインではなく、コカインであった。
「お疲れさま。さて仕事の話をしよう。まずこの携帯の使い方だが、組織の者にしか通話は出来ない。ネットは使い放題だ。ここにボタンが並んでいるだろ。青いボタンは高電流が流れるスタンガンとなる。緑のボタンは高出力のレーザー光がここから発せられる。目に入ると失明するから気を付けるように。竿後にこの赤いボタンは、3回連続で押すと手りゅう弾のように3秒後に爆発する。指で強く押さない限り反応しないから安心してくれ。
登録されている人物は、主要な幹部達だ。これから連絡する事がお前の仕事となる。後は俺の言う通りに行動すればいい。報酬も毎週振り込まれるし、俺から連絡がない限りは好きに暮らすといい」
「それだけでいいのですか?」
「ああ、それだけだ。何か聞きたい事あるか?」
「ええ、私のような何の取り柄もない者がこのような大きな組織の幹部になれるのが分かりません」
「俺も疲れてきてな。と、言って誰かに今の座を譲るつもりもない。俺の代わりを素直に受けてくれる者を探していた。一瞬でも気を抜けば、仲間から抹殺される世界だ。それが嫌なら今言うがいい。しかし、お前に選択肢はないけどな」
「はい、承知しております。勿論お断りはいたしません。あなたの言う通りに動きます。でもそれだけで本当によろしいのでしょうか?」
「くどいな。俺がお前を見込んだのだ。それ以外に理由はない」
「承知致しました。これからは何も言わず、あなたの命令に従います」
「それでいい。それとこれを渡しておく。一応護身用だ」銃を渡された。女性向けの小ぶりだが22口径あるらしい。手のひらにスッポリ収まる感じである。
それをハンカチで包みバッグに仕舞う。
「それを使う事はほぼないと思うが、練習したい時はいつでも行ってくれ。日本では正規で拳銃を打てる場所はないからな」
「はい、ありがとうございます」
「では、早速だが俺の事務所の方に後で来てくれるかな?毎日来客があるのでね。その連中にお前を紹介しておく」
「はい、承知しました」明美は、自分がまだ全裸であった事を知り、セックスの痕跡もまだ局部に残っていた。
エースが放った精がドロリと流れ出て来る。
汗はすっかり乾いていたが、気持ちは悪くないが身を清めたくてシャワーを浴びた。
頭はスッキリしている。
朝食はメイドが用意してくれていた。
それをガウン姿で食べ、紺のスーツに着替えてジンに電話を入れた。
「今からボスの所へ行きたいの。車用意してくれる。こっちに着いたら連絡頂戴」
「はい。承知しました。5分で参ります」
キッチリ5分でジンからマンション前に着いた連絡があった。
その車に乗り、首都高速を使って走って行く。
高級車なので乗り心地は最高であった。
ウトウトしかけた所で、例のプレハブの工事現場での事務所に横づけされた。
車から降り、その建物に入って行く。
そこは明美が拉致され、薬を投与され犯された現場である。
そこにエースが居ている場所ではなく、あくまでも入口であった。
明美は既に教えられた手順で、地下室への扉を開けた。電動で動く扉であるが、銀行の金庫に匹敵するくらい重厚な物であった。
その扉の中に入ると、虹彩チェックを受け暗唱番号を入力する。
「日比野さまと認識しました。どうぞ中にお入りください」とコンピュータの声がして、カチッと鍵が開く音がした。
この手順を飛ばすと、360度全体からマシンガン弾が降り注ぎ蜂の巣状態となり即死となる。
事務所の扉の様な物を開け進んで行く。
この扉にも仕組みがあり、金属探知機は当然で特殊なX線照射されて持ち物全て丸見えになっている。
全身も調べられるので、画像に写るのは全裸の状態である。
長い廊下が続いている。実はこの廊下にも仕組みが施されていた。
全関門を万一通過できても、正規の手順を踏まないと縦横無人に張り巡らされた赤外線網が廊下全体に張り巡らされる。
その1本でも光線が遮断されたと同時にターゲットに向けて無数のマシンガン弾が降って来る。
明美はその廊下をゆっくりと歩く。用心棒のジンは入室を許可されていない。明美一人で廊下の突き当たりまで行く。
何もないただの壁だが、僅かに記されたマークに人差し指を当て、手のひら全体を壁に押し付ける。
指紋及び静脈認証の登録されている者だけが秘密の扉を見る事ができる。
目の前に立派な扉が出現して来た。
その扉を開ける。
「やぁ、ご苦労様。結構早く来たね。今日は中国マフィアにヘロインを10Kg渡す事になっている。立ち会ってくれるな」
「はい承知しました。その方々も私が来たルートで来られるのですか?」
「そんな訳がないだろう。ここには誰も入る事はできない。それ用に作った特別室で商売をするのだ」
「まだ他にも別室があるのですか?」
「ああ、ここは俺とお前と後数名しか入る事ができない部屋だ。例え核戦争が起こってもここに居る限りは安全だ」
「約束の時間は午後の3時だから、まだまだ時間はある。何か飲むか?」
「ええ、少し緊張してここまで来ましたので水でも頂けますか?」
エースは合図した。銀のトレイに水が入ったピッチャーとグラスが2個乗っているのを持ち、身体に密着したドレスを着た金髪の女性が現れた。
無言でテーブルの上にそれらを置く。
女性はさっさと退散した。
「少し欲しいか?これからいかつい連中と会わないといけないので、安定剤代わりに」
「ええ、頂くわ」
「これはそのへんに出回っているまがい物ではない。純度98%のヘロインだ。お前はまだ吸引しかしたことがないよな。普通は注射で入れるのが一番効く」
エースは注射筒と使い捨ての注射針を出しセットした。
コップに入っているのは生理食塩液だと言う。
化学者のようにピペットで生理食塩液を吸い、シャーレーに粉を入れその粉にピペットから生理食塩液を垂らす。
ガラス棒で粉を液体に溶かす。その液を注射筒で吸い上げた。
明美の腕を取り、袖をまくり上げる。明美自身にも自分の静脈がどこだか確認できない。
エースはある装置で肘の内側を照らす。そこには青色に幾筋もの静脈が浮かび上がっていた。
その中で一番太い物に向け針を差し、注射筒の中身を一気に注入した。
チクッとしたが、直ぐにヘロインが全身を駆け巡るのが分かる。気分がスッキリしたハイは気分になっている。もう幻覚は現れない。
エースは同じ注射筒を使い自分にも注射した。
慣れているのか、浮き出た静脈に液体が流れ込む。
「ああ~」エースは薬が効いてくるのを体で感じているようであった。
「こっちにおいで」
明美はエースの膝の上に乗り、首に出を回す。
「ああ~、欲しくなっている。頂戴」
「商売が終ってからだ。この取引で1億円が入る」
「あん。お預けですか?仕方ないですね。仕事が先ですわね」
熱い口づけが交わされた。いきなり舌を絡ませて唾液の交換をする。
エースの手は明美を触ろうとしない。
明美は局部から愛液がジュンと流れ出るのを感じていた。
「さぁ、そろそろ時間かな?行こう」
明美はエースの膝から飛び降り、身支度を整え起立して待つ。
エースはアタッシュケースを持ち、入口とは逆の方向へ歩き出した。
そこにはエレベータがあり、それに乗った。
エレベータには現在位置「B1」となっており、ボタンは地下5Fまであり、地上は3Fとなっていた。
プレハブの周りにはビルらしき物はなかったはずなのに、何故3Fまであるのだろう?
明美はそれが不思議で理解できなかった。
エースは2Fのボタンを押した。エレベータが上昇して行く。
扉が開いたそこには建設途中で工事を止めたとしか見えない骨組みだけの建物が現れた。
(ここは何処?私が歩いた距離にこのような建物は無かったはずなのに、何故あるの?)
明美の頭の中は?マークだらけである。
無言のまま歩くエースに付いて行くしかない。
鉄筋コンクリートがむき出しのままの一角にそこだけ不自然な形で部屋らしき扉の前まで行く。
エースはドアをノックした。
中から、「どうぞ」と、片言の日本語が返ってくる。
エースは扉を開け中に入る。
部屋には応接セットや本棚などが並んでいた。
そのソファーに座っていた大男が立ち上がり、
「ボスお久しぶりです。お元気そうでなによりです」手を出し握手を求めて来る。
エースも手を出しそれに応え、「久しぶりだな陳。早速だがブツはここにある。金は持って来ただろうな」
「勿論であるよ。大き目のスーツケース3つを指し示す」
「じゃ、これを渡す。今回もかなり純度の高い物だ。これで御前もまた儲かるな」
「ハハハ。需要と供給って言うのか?日本では。欲しい人に分けてあげる善意であるよ」
陳と言う男は、エースから受取ったケースを開け中身を目で確認して、頷き、閉じた。
「じゃ、私はこれで失礼するよ。また要る時になったら連絡させてもらうあるね」
「ああ、いつでも言ってくれ」
「ボス。そちらの方は?初めて見るよ」
「ああ、こいつはクイーンって言うのだ。俺の秘書みたいな者だ。これから時々こいつから渡す事もある。顔だけは覚えておくように」
「へい。分かったあるよ。私は陳と言う。これからよろしく」軽く頭を下げた。
明美もゆっくり頭を下げ、「よろしくお願いします」とだけ言った。
「もう行くよ。今日はありがとう」
陳と言う男は部屋から出て行った。
(なんだすごく簡単じゃない。テレビで見るようなお互い大勢の人が集まる訳じゃないのだ。これなら私でも出来そうだわ)
お互いバックに大きな組織がある事を考え、個人利益の為にルールを守らなければ、想像以上の罰が待っている事を知っているからである。
エースは携帯で連絡した。暫くすると、屈強な男達3名が部屋に入って来た。
「このケースを例の場所まで運んでくれ。頼んだぞ」
「はい。承知しました」男達の動きは俊敏であった。
あっと言う間に、大きなアタッシュケースを持ちだし何処かへ消えていた。
「さて商売は終わった。この世界で生きていく為に、謀反者がどういう目に合うか見ておいた方がいいが、明美に耐えられるかな?」
「人を殺める所を見るのですか?できれば遠慮したいところです」
「ははは、正直だな。そういう所がいい。分かった。今回は止めておこう。その内そういう場面を目の当たりにする事は覚悟しておいてくれ」
「はい。ありがとうございます」
「では俺の事務所まで戻ろう。一日俺が何をしているのか?傍で見て勉強してくれ」
「はい。承知しました」      (続く)

おやじ狩りⅡ

おやじ狩りⅡ

  • 小説
  • 中編
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2017-05-02

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著作権法内での利用のみを許可します。

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