夏から来た手紙
夏から来た手紙は豪雨に曝されて乾いた後の凹凸
不自然にコントラストの効いた合成甘味料の飛沫
なめらかなフローリング足裏のつめたさ夜の羽音
田舎になんか帰らないわたしの汗明滅する信号機
吸っても吸っても蒸し暑い大気を胸にためて
終わってしまった夏だけが乾いているのは不思議
夏の湿気がわたしとわたしじゃないもの全てを溶かし込んで
境界という境界をぼかしていく
孕んだ疲れを乾いた葉が請け負って積み重なり
いつのまにかがたがたになってしまったわたしの隙間を
するどい罅の先が舐めるころ
レースのカーテンが不自然に揺れて落ちてきた
その夏から来た手紙は乾いている
夏から来た手紙