夏の溜息


夏の溜息がうたうこの空におなじ角度で寝そべっているあの記憶は

ゆめの裏側で溶けてゆく
為す術もなく浴槽に浸る僕の身体の奥にかなしい太陽がしずむ


かたっぽの耳がつまらない意味を探し続ける意味は


うなだれた君のにおいだけだろう

てをふって疲れたベランダの乳白色の雲がじっとりとおくで滲む
汗ばむてをふって 途切れる時間の砂 咲き続けるダリアの祈り


変わり果ててしまったのかい?


僕にきかないで


しだいに放たれたのだろうと薄めの月がゆうらゆうらと微笑む


まばらな呼吸のその先にみえるのは 熱風にあおられた黒髪と青すぎる木洩れ日
罪と悲鳴が漂いはじめる蜃気楼は とびらを開きだしているんだ


頼りない虹になってしまってもいいか


夢みたいに忘れてしまっていいか


ほら


消えそうだ


君のみずいろ



息もとまりそうなほどあどけない季節にどさくさに紛れてしまうか?



僕にきかないで


ひとつふたつみっつこぼれ落ちた世界と騒音と無力な
夏の溜息 夏の溜息 夏の溜息

夏の溜息

夏の溜息

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-05-01

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted