夏の日差しに誘われて

あの日、初めて君と出会った。

名前も住んでいるところも知らない。

だけど君と目が合った瞬間に私の心に波が押し寄せた。

その日からいつも夢見てた。

あなたといつかあえるって。

第一章 再会



20○○年、4月。

ぴかぴかの制服に、ぴかぴかのローファー。

さわやかな希望に満ち溢れた笑顔と共にこの南山高等学校にも新入生が入学した。

石井千紗(いしいちさ)もその一人だった。

「やっとガイダンス終わった!」

入学式のあと、長々と高校についてのガイダンスを聞かされたため千紗は思わずあくびをした。

「本当長かったよね!」

そう言ってだるそうに千紗の隣を歩くのは中学からの親友、光田明日香(みつだあすか)だ。

「今日入学したばっかりなんだから、そんなぐちぐち言う必要ないじゃんね。」

明日香はずっと文句を言っている。

「う・・ん・・・」

千紗は適当に相槌を打った。

先ほどからやたらと人ごみを見ている。

「千紗?誰か探してるの?」

「ううん。なんでもない。ごめんごめん。」

千紗は笑顔でそう言うと明日香との会話に集中しようとした。

しかし目はまだ人ごみを追っている。

――ばかだなあ・・・どこのだれかもわからないのにいるわけないよね。

そう思い溜息をついた。

それは千紗が中学2年のときのこと。

「おかあさーん!おとーさん!」

父の故響、鳥取に帰省していた千紗は高大な鳥取砂丘で迷子になってしまった。

「どうしよう・・・・。ここがどこだか全くわからないよ・・・」

途方に暮れた千紗はその場にうずくまった。

「どうしたの?」

ふと声をかけられて顔をあげると、そこには千紗と同年代くらいの青年が立っていた。

千紗は安堵感から思わず泣きながらその青年に飛びついた。

青年は黙って千紗の背中を摩ってくれた。

千紗が落ち着くと、青年は千紗の手を取りながら人通りのある商店街まで連れて行ってくれた。

「ここに公衆電話もあるし、ここからは大丈夫だと思うよ。」

「ありがとう」

千紗がお礼を言うと、青年は眩しいくらいの笑顔で去って行った。

これが千紗の初恋だった。

夏の日差しに誘われて

夏の日差しに誘われて

  • 小説
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更新日
登録日
2012-08-05

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