三題噺「リボン・緑茶・ピアノ」

基本1人口調です

うるさいうるさいうるさい。ドックンドックンと耳障りだなぁ。今、曲調やリズムなんかを思い出してんのに。なんで体の芯の芯から響いてくるんだ。
「ナンバー13番の--」
私よりも3つも前だ。私の番号は…16。あってる。私の間にあと2人…。あと2人……なんだ。あともうすこし…。
私はこのコンクールに賭けているだ。失敗は許されない。いや、許さない、私が。絶対に。完璧にこなしてみせる。衣装だって完璧だ。この大きなリボン、私にぴったりだ。私のためにあるんだ。
だから、平気。私は失敗しない。失敗しないで成功させるんだ。そして、そして、認めてもらうんだ、あの頑固なーーーーー。
「次、ナンバー15のーー」
もうーー!次、もう次。やばい、復習が全然できていない!ああ、喉が乾いた。そういえば水筒、一口も飲んでなかったな。お母さん、魔法をかけたとか言ってたけどなんなんだろう。あ、ホットなんだ…。
「あーー」
この香り…。この緑茶の香り、おばあちゃんの緑茶だ。
「…」
小さい頃から緊張してたらこの緑茶、入れてくれたっけ…。
「ふふ」
ああ、なんだかーー。
「ナンバー16ーー」
私だ。私の番号だ。一度大きく深呼吸、だよね、お母さん、おばあちゃん。
「よしっ!」
さぁ、行くぞ。見ててねお母さん、おばあちゃん。見てろよ、お兄ちゃん。私はやってみせるから!
「この線で待っててね」
「はい」
いよいよだ。
「ピアノコンクール小学校の部、午前の部最後の演奏です。ナンバー16ーー」
とどいて、どうか、とどきますように。
さぁ、いこう!

三題噺「リボン・緑茶・ピアノ」

三題噺「リボン・緑茶・ピアノ」

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-27

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