時の足跡 ~second story~17章~20章
Ⅱ 十七章~お兄ちゃん~
忘れてた、もう一人のお兄ちゃんの存在、名前を聞くまでうちは、気づかづにいた・・。
慎兄ちゃんの祝いのこの時に、聞く事じゃ無かったのかもしれない、だから聞いちゃいけないって何処か心の奥でそう言い聞かせてる・・、
でも慎兄ちゃんの口から出かかった建兄ちゃんの名前、忘れてしまってた自分も許せなくて、どしても受け流す事ができなかった・・、
でも慎兄ちゃんは黙ってしまった、聞いちゃいけないって言っているかのように、うつむいたまま、何も応えてはくれない・・・、
そんな時、この静けさを幸恵さんの言葉が解した・・・、
「あら~?どうかなさったの?お料理、お口に合いませんでしたかしら?慎一さん?気分でもお悪いの?大丈夫ですか~?」
って聞かれるとお兄ちゃんは、
「あ~いや、大丈夫だ、すまない、ヒデ?さあ~食べてくれよ、幸恵が君たちが来てくれるというので、張り切って昨夜から頑張って作って
くれたんだ、カナ~?食べてやってくれないか、な?」って笑顔を作ってた、
するとヒデさんが、
「あ~そうなんですか~?それじゃ~遠慮なく御ちそうになります、カナ?頂こうか、な?」って言われて、
「あっそうね、あ~そうだ、お兄ちゃん?退院おめでとう~?それでね?これ貰ってくれるかな~お守りなんだけど・・」
って、うちは作ったお守りを差しだした、
お兄ちゃんは、
「これ、お前が作ったのか?」って聞かれて、少し恥ずかしい気もしたけど、でも・・、
「そう、上手く無いけど、でもこのお守りは元気をくれるの、それに守ってくれるのよ?あたしに出来る事はこんな事しかなくて・・、でも、
必ず守ってくれるからお兄ちゃんのこと、あっごめんなさい・・あの・・」って言い終わらない内に、
お兄ちゃんが、
「ありがとカナ?喜んで貰うよ、下手なんかじゃないさ、裁縫なんて教える人もなかったのに、良く出来てるよ・・」って笑ってた、
すると幸恵さんが覗き込んで、
「ほんと、器用ですわね~?ねえカナさん?好かったら、私にも作って下さらないかしら?」って言った、
意外な言葉にうちが困惑してたら、ヒデさんが、
「好かったな?喜んでもらえたんだ、作りなよ、カナ?」って言われて、「あっはい、喜んで・・」
って言うと幸恵さんは、
「あら、ほんと~?嬉しいわ~楽しみにしてるわね?・・」って手を叩いて喜んでくれた、ちょっと恥ずかしい気はしたけど、でも嬉しい。
そんな時、お兄ちゃんが急に、
「カナ?建のこと、気になるか?どうも俺は気にさせてしまったようだ・・、とは言っても、いずれお前にも話しはいくだろうけどな、
カナ?お前がお父さんと見舞いに来てくれたあの日の翌日、建が俺の見舞いにと、ひょっこり顔を見せたんだよ・・、
あの家を売ってからはあいつも俺もそれぞれの道を歩き出してたから、来てくれた時は、正直驚いた・・、建とはあれ以来、会う事も
なかったからな・・、それで、その時に俺も初めて聞かされた事なんだが、あいつ、建はお前を養女に出したあの家に入ってるそうだ・・、
理由は聞いても教えてはくれなかったよ、だから俺もそれ以上の事は知らない、ただあいつが俺に会いに来たのは、カナ?お前の事でだ、
お前、あのお母さんに会ったんだろ?俺に会いに来たあの日に・・、あの人は建に興奮して話してたそうだよ・・、
あいつはそれを伝えに来たと言って帰った・・、あの人の事だ、どんなことしたのか俺にもそれなりに想像はつく、辛かったろうカナ?
俺はお前には本当にすまないと思ってる、許してくれカナ?ほんとすまない・・」ってお兄ちゃんが頭をさげた、
お兄ちゃん、誰の話をしてるの、可笑しいよ、可笑しいよこんなの、どうして建兄ちゃんは・・、うちは信じたくないよ、それに・・・、
「あたし、お兄ちゃんの所為だなんて思ってない、だからお兄ちゃんが謝る事なんて何もないの、あたしの所為で今まで、お兄ちゃんに
迷惑かけて、それなのにあたしはお兄ちゃんになにもできなくて・・、ごめんなさい、
お母さんの事はあたしの所為なの、だからお兄ちゃんが謝ること無い、あたしは大丈夫よお兄ちゃん?ありがと・・」
って言ったらまた涙が溢れて止まらなくなって、うちは手の平に落ちてく涙を必死になって拭ってた、
そしたらお兄ちゃんが、
「分かったよカナ、だからお前も建の事は気にするな?あいつなりの考えがあっての事だろ、分かってやってくれ、でなければ、この事を
わざわざ伝えになんか来なかっただろうからな?だからもうお前が気にする事は無いんだよ、俺の言う事はそれだけだ、もう泣くな・・」
って言われて、うちが慌てて涙を拭ったら、その時ヒデさんが、クスッと笑った、
その笑みにうちは少し恥ずかしくなって、「笑わないでよ・・」って言ったらヒデさんが、
「やっぱりカナは笑った方がいいよ、な?」って言いだした、「やっぱりヒデさん・・意地悪になった・・」って言ったら、
お兄ちゃんが、
「カナ~?ヒデの言う事はホントだよ?カナは笑ってる方がいい・・」って面と向かって言われて、顔が熱くなった・・、
これ以上うちは聞いてられそうになくて・・、
「もう~あたしの話しはおしま~い!・・」って言うと、さらに笑の渦が広がってしまった・・・。
そんな時、幸恵さんが、
「ねえ~ヒデさん?この町でお店持つ気ないかしら?物件は有るの、それに資金の面も全然心配は要らないのよ?ただ使ってくれる人が
いなくて、どうかしら~?貴方に来てもらえると嬉しいのだけれど・・」って聞かれた・・、
するとヒデさんは、
「すごくありがたいお話なんですけど、すみません、今の店は親の形見なんで、それに愛着もあって俺はあの店が好きなんです、
それに細々ですけど、カナと暮らすには不自由はさせない暮らしは出来るんで、ほんと申し訳ないですけど・・」って言って頭をさげた、
するとお兄ちゃんが、
「そうか~御両親の~それじゃ~仕方ないよな?幸恵?諦めなさい、だけどヒデは、ほんとカナの事好きなんだな~?話しの端々から良く
分かるよ、ああいや、別にからかってる訳じゃないんだよ?ヒデ?カナの事宜しく頼むな・・」
ってお兄ちゃんが笑って見せるとヒデさん、少し照れてるように見えた。
するとお兄ちゃんは、うちの顔を見て、
「カナ~?俺はこれからはお前の事家族として迎え入れたいと思ってる、それは幸恵も同じ気持ちでいてくれてるんだ、お前、言ってたよな?
血の繋がりなんて関係ないって、俺はお前に教えて貰った、だからカナ?いつでも此処がお前の帰って来る場所にしてくれないか?
そうしてくれれば幸恵も・・、ヒデ?これは俺の気持ちなんだが、これからも宜しく頼みたい、納得してもらえるかな・・」って言った、
ヒデさんは、
「嬉しいですよ、俺にはもったいない話しですから、ありがとうございます・・」って笑ってた・・、
「お兄ちゃん、ありがとう?それから、幸恵お姉さん?ありがとう?こんなあたしですけど、これらも宜しくお願いします・・」
って頭をさげた、
すると幸恵さんが、いきなりうちに抱きついて来て、
「カナさん?今、私の事お姉さんって呼んでくれたの?ありがとう?私凄く嬉しいわ、こちらこそ宜しくね、カナさん?」
そう言って笑顔を見せた、すると思いついたように幸恵さんが、
「ねえ~?カナさん?ヒデさん?今日は泊ってってくださるわよね~?是非そうしてらして~?ねえ~?駄目かしら?」
って不安そうに聞かれて、ヒデさんと顔を見合せてたら、
お兄ちゃんが、
「そうだよ~?是非そうしてくれ、な~?ヒデ?カナ?」って言われて、ヒデさんが、
「それじゃ~お言葉に甘えてそうさせて貰います、ありがとうございます・・」って言うと
お兄ちゃんは、
「そうか、よかった、よし、これで決りだな、幸恵?・・」って言うと幸恵さんは、「はい、嬉しいわ~、早速、お部屋用意するわね~?」
って言うと、急ぎ足で、もう二階へと掛けて行ってしまった。
お兄ちゃんは、そんな幸恵さんの後ろ姿を苦笑いしながら・、
「あのはしゃぎようは・・、ああ、すまないね?幸恵は、一人っ子なもんで、よほど嬉しいようだ・・」って笑ってた・・。
そう話すお兄ちゃんの幸恵さんへの想いは、何も言葉にしてなくても、うちには見てとれるほどに、幸恵さんの事愛しているのが分かる
お兄ちゃんの穏やかな表情は見ているうちまでも、幸せにさせてくれるから・・。
翌朝、帰る支度をすませると、お兄ちゃんと幸恵さんに玄関まで見送られた・・・、
「お世話になりました~、お兄ちゃん、お姉さん?また来ます・・」って言ったら
ヒデさんが
「それじゃまた?今度、自分の店にも食べに来てください、お世話になりました~・・」って言ったら、
お兄ちゃんは、
「そうだな?幸恵と今度ぜひ寄らせて貰うよ、ヒデ~ありがとな?・・」って言った、
ヒデさんは、
「辞めてくださいよ~それはこっちのセリフですよ、それじゃお元気で・・」
って言うと幸恵さんが、
「また、いつでも遊びにいらしてくださいね~?お待ちしてます・・」って少し涙目になってた、
うちもヒデさんも、「はい、また来ます・・」って応えて家を出た・・。
外の空気はひんやりと北風が吹いて冷たさが増したように思う、それでも今のうちは心地好かった、それはきっと今のうちが幸せだって
感じられるからかもしれない・・。
そんな時ヒデさんはうちの肩を抱きしめて、「亜紀~?寒くないか~?」って聞いた、
「あたしは大丈夫よ、ありがとう?」って言ったら、「そっか・・」って笑ってみせた。
そして駅に着いた時、うちは駅のベンチに男の人と坐って楽しげに話してるお母さんを見かけた、でもうちには気づいてないように思う、
でも身体が震え出して、思わずヒデさんの腕にしがみついた、
するとヒデさんが、
「亜紀~?どうした~?寒いのか?なにどうした~?可笑しいぞ~?」ってうちの顔を覗き込んできた、
「ああっごめんね?早く帰ろう~ね?」って言ってたら、その内涙が溢れてた、うちは泣いてるんだって気づいた、でも何も言えなくて
戸惑ってたら、丁度その時、電車がきて、何も言えないまま夢中で車内の中、空いた席を見つけて腰をおろして息をついた
するとヒデさんが、
「亜紀~?落ち着いたか?もう話してくれるよな?」って聞かれた・・、
「ああ、あっもう大丈夫よ・・」って言ったら、ヒデさん「そんな訳無いだろ~?」ってうちの手を握って、
「まだ震えてるだろ~?無理するな?教えてくれないなら・・」って言いかけた時、咄嗟にもしかしてうちは置いてかれるのかって思った・・、
「いやだ置いてかないで!話すから~!」って思わず声を荒げてしまったら周りに振り向かれてうちは顔があげられなくなった・・、
するとヒデさんは、クスクス笑い出して、
「置いてったりなんかしないよ?大丈夫だ、だから話してくれないか~?」って聞かれて・・、
「お母さん、ベンチに居たの、あたし、もう来るなって言われてたのに・・」って言ったら、
ヒデさん、
「そうか、居たのか~分かったよ、ありがとな?・・」って言うと、うちの手を軽く叩いて窓の外に眼を逸らして、うちの手を握り締めてた。
やっと帰りついたヒデさんと暮す街、二人が駅を降りて街に出たら、雪が、降りだした、
うちはつい足を止めて手の平を広げて空を仰いだ、あの日もこんな雪だった、この街にはじめて来たのはもう随分昔のように思えたのに、
振り返るのはもうしないって決めたのに、今のうちは少し自信がまた薄れてく気がした・・・。
その時ヒデさんが、
「亜紀?何考えてるんだ~?心配か、不安なんだろう~?・・」って言われて、なんだか見透かされたようで、うちは言葉に詰まった・・、
そしたらヒデさん、
「心配ない俺がついてる、今度は亜紀を一人にはしない、亜紀は俺が守るよ、絶対だ、今度は後悔させないからさ?」
って言うと抱き寄せた・・、
電車の中、お母さんの事話してからヒデさんは窓の外を眺めながらも無言のままずっとうちの手を握ってくれてた、
そんなヒデさん手の暖かさはこんなにもうちを包みこんでくれる、ヒデさんのそんな優しさも想いも、それだけでうちを癒してくれる・・、
だから寄り添って居られる・・、だから寄りかかっていたいってそう思う・・、
「ありがとう?ヒデさん・・」って言うとヒデさんは「大丈夫だよ?お~寒いな~さあ~早く帰ろう?なあ~亜紀?」って笑顔を見せた。
それから一周間が過ぎて、店の切り盛りで慌ただしい一日は、時の流れにため息つきながら、やっと片付いた店を見渡して、ふたり、
椅子を並べて腰を下ろした、
そんな時ヒデさんが、
「ここんとこやけにお客増えきたな~?まあ嬉しい事だけどさ、けど亜紀は疲れたろう~?」って言われて、
「そんなの、ヒデさんも一緒でしょ?ヒデさんに比べたらあたしなんて、大したこと無いよ?平気だから・・」って言うと、
ヒデさんは
「そっか、でも身体の方は大丈夫か~?亜紀はすぐ無理しちゃうからな~無理だけはするなよ?な亜紀?・・」って言われて、
ちょっと心苦しい気もしたけど、
「はい、分かりました!・・」って言ったら、ヒデさんは、「好かった、さて~そろそろ、閉めようか~?」って言葉に立ち上がったら、
アンちゃんが、大きなバックを肩に担いで帰って来た、
するとアンちゃんは、
「ヒデさん、ただいま?亜紀ちゃん、ただいま?」って顔を見せた、「アンちゃん、お帰り~?・・」って言うと、ヒデさんが、
「お~靖、お帰り~?」って笑顔を見せた、
するとアンちゃん、バックを下ろしてヒデさんに、
「帰って来ましたよヒデさん?これからまた、お世話になります・・」って頭を下げた、どこかいつもと違うアンちゃんを見ているようで、
少し複雑な気持ちになった・・、ヒデさんは、
「そんな型っ苦しい挨拶は辞めてくれよ、宜しく頼むのは俺の方だ、お帰り?・・」って苦笑いしてた。
どうしたの、いつもと違うように感じるのは、うちの気の所為、あの時と同じ顔してるアンちゃん・・、アンちゃんが行ってからもう十日も
過ぎてた事、うちはこの時になって気づいた・・・。
Ⅱ 十八章~アンちゃん~
時が教えてくれる自分が本当に求めているものはきっとあるってこと・・、そう信じたい、今はまだ見つけられなくても・・、
今はただ見失っているだけだから、一人じゃないよ、みんなが何時だって傍に居るから・・・。
店じまいの頃に突然帰って来たアンちゃん、でも何処かいつもと違って見えたアンちゃん、
ヒデさんに言われた言葉に少し笑みを浮かべてアンちゃんは「ありがと、それじゃ~俺、部屋に行ってもいいかな?」って言った、
するとヒデさんは、
「靖~なんか可笑しいぞ?お前らしくないだろ~?何か有ったのか~?」
って聞いたら、アンちゃんは、
「そうかな~?俺はいつもと変わんないつもりだけど、悪い、俺部屋に荷物置いて来るよ・・
」そう言ってアンちゃんは、二階へと掛け上がって行った、
ヒデさんはアンちゃんの後ろ姿を見ながら、
「あいつ、なにかあったのか~?あいつらしくも無い・・」って呟いた、
ヒデさんが感じてた事は、うちも同じだった・・、やっぱりらしくないって思う・・.
アンちゃんが部屋へ戻ってから、ヒデさんと店じまいを済ませて、居間へふたり腰を下ろしたら、その時、二階で大きな物音が響いて
うちは咄嗟に、二階へ駆けだしてた、
するとヒデさんが、「亜紀~?」って呼んだ・・、でもうちはもう足が動いてた、それから二階に駆け上がったら、
アンちゃんが顔を出して・・、
「あ~ごめん~?ちょっと手が滑っちゃった、悪い~?」って言った、
「な~んだ~、驚いた~」って言ってたら息苦しくて、思わずその場に坐り込んでた、
その時アンちゃんが、
「亜紀ちゃん?どうした~大丈夫か~?俺、驚かせちゃったかな~?ごめんな・・」って謝った・・、
そんなんじゃないって言いたかったけど、声に出して言えそうになくて、うちは、眼を閉じて思いっきり深呼吸してた、
そんな時ヒデさんが上がって来て
「亜紀?どうした大丈夫か~?」って聞くと、アンちゃんが、「いや~俺が驚かせたから、ごめん、亜紀ちゃん?・・」
ってなんだか責任感じさせてしまったみたい・・、
「アンちゃんごめん?アンちゃんの所為じゃないの、だから気にしないで、こんなのすぐ治まるから、ね?」
って言ったら二人驚いた顔してた、
「どうしたの?またあたし、可笑しなこと言ったの?」
って聞くと、ヒデさんが、
「亜紀~?よくあったのか?こういうこと・・」って聞かれて、初めてうちは、自分の言った事に気づいた・・・、
「ええっよくじゃないけど、でもそんな大したこと無いよ?だからそんなに怖い顔しないで・・」って言うと、
ヒデさんは、
「どうして言ってくれないんだよ~?亜紀は言ってたろ~?ちゃんと話してくれるってさ~?今まで無理してたのか?」
ってヒデさん、少し怒ってた・・、
「そんなんじゃないよ、無理はしてない、今までは、少し有ったってだけで、無理してた訳じゃないから、信じて?ほんとに無理なんて
してないから・・、ごめんなさい・・」
って言ったらアンちゃんが、
「ヒデさん?そんなにムキニならないでくれよ~、俺も悪かったんだからさ~?・・」って言うとうつむいてた、
ヒデさんは、
「あ~いや、悪かった、別にムキニなったつもりはないんだ、すまない靖・・、亜紀信じるよ、もう大丈夫なのか?」
って言うと坐り込んでたうちの手を掴んで引き起こしてくれた・・。
何時の間にか、うちのことでヒデさんの笑顔は、どこか遠退いたように思う、三人が居間へ降りてきてから、
座り込んだまま、誰も言葉を交わす事も無くなってた、これはうちの所為だって嫌でも分かる、でもどうしていいのか分からなくて、
ただ時間だけが過ぎた、
そんな時、この静けさを取り払うかのように、アンちゃんが、
「ヒデさん?まだ気にしてるのかな?俺、帰って来たのまずかった~?亜紀ちゃんのことは前から分かってた事だし、俺はその為に
此処に居る事決めたんだよ?けどこれじゃ~俺、いずらいよな~何処に居ても俺って駄目かな・・」
そう言ってアンちゃんがテーブルに顔を埋めてしまった、
うちにはそんなアンちゃんが泣いているようにも思えて、やっぱりアンちゃん、何処か可笑しいって思う、
するとヒデさんが、
「何言ってるんだ~?お前が来てくれたお陰で俺は助かってるしずっといてほしいと思ってるよ、それに俺はいつまでも気にして
なんかないさ?なあ靖?俺が気にするのは今お前の事だよ、なんかあったのか~?なあ話してくれないかな?」
ってアンちゃんの顔を覗き込んでた、
するとアンちゃんは、顔を上げて、
「ありがと、でも俺は大丈夫だよ?ヒデさんが心配するような事は何もないからさ、ちょっと言ってみただけだよ、そんなことより、
ヒデさんがそんな顔してるから亜紀ちゃん、しょげちゃっってるだろ?気にするなら亜紀ちゃん気にしてあげなよ、かわいそうだよ」
って笑って見せた、
するとヒデさんは、
「そうか分かったよ、けど辛い時はいつでも言ってくれよ、その時は遠慮なんかするなよな~?それだけだ・・、
亜紀~ごめんな?そんなに落ち込まないでくれよ、靖も気にしてるしさ?だけど亜紀も無理な時は言ってくれよ、頼むからさ?」
って苦笑いしてた、
アンちゃんの少し無理して作る笑顔の優しさは、うちの気持ちを重くさせて、素直に笑顔にはなれそうにないけど、でもうちのこと
気遣ってくれるふたりの想いには、素直に応えたいって思う・・・、
「ごめんね?心配かけて、でもほんと無理はしないから、アンちゃん?帰って来た早々にごめんね?だから、改めてお帰り?」
って言ったら、アンちゃんは、
「ああ、ただいま?好かった~あ~ほっとしたらなんかお腹空いてきちゃったな~?ねえヒデさん、何か作らない?」
って聞かれたヒデさんは、
「相変わらずお前の食欲は、健在だな~?」って言うとアンちゃんは「だって、俺だからね?俺のお腹は素直なんですよ?・・」だって、
するとヒデさん、
「それ、素直っていうのか~?ま~確かにお前だからな~、違いない・・」って笑いながら言うと、アンちゃんは、
「そう言う事・・」って納得って顔して笑顔を見せてた、そしたら互いに顔を見合せて何故か笑い出してた・・。
でもいつまでもこの笑顔、絶やさないでいられたら、いつまででもこの関係でいられるようにって思う、それぞれの想いは違ってても
こんな二人の傍に居られるうちはやっぱり幸せものだって思う、偶然が引き合わせたこの繋がりは、うちの宝物だって思えるから・・。
翌日からアンちゃんは店に入った、うちも店に入る事を許して貰えた、それはアンちゃんのお陰かもしれない、ヒデさんはあまりいい
顔はしてはくれなかったけど、でもアンちゃんが、
「いいんじゃないの?みんなでやる方が無理も減るし、亜紀ちゃんだって部屋に閉じこもってばかりじゃ良くないよ・・」
って言われて、ヒデさんは、「そうだな・・」って納得してくれた・・。
こうして一周間が過ぎた頃、店にアンちゃんのお母さんが尋ねてきた、アンちゃんとは少し目鼻立ちが、似ているように思う、
突然のことでアンちゃんは戸惑ってるようだった・・、
お母さんが店に入って来たら、アンちゃんは慌てた様子で、お母さんの前に立つと「どうして此処に?何か有ったの?」って聞いてた、
するとお母さんは、
「元気そうだね~?驚いたよ、カナさんも一緒だなんて、お前は何も言ってくれないから、ちょっと顔を見たくなって寄ってみたのよ?
でも好かった元気そうで・・」って眼がしらを押さえてた、でもアンちゃんは、うつむいたまま動きが止まった・・、
「あの~、おばさん?カナです、お久しぶりです?ご無沙汰してました~」
って言うとおばちゃんは、
「あらカナちゃん?すっかりいい娘さんになって、カナちゃん結婚したそうね?幸せそうで好かったわ~息子の事、頼みますね?」
って言うと、アンちゃんが、
「辞めてくれよ!それより父さんは?」って少し怖い顔になってた、こんな怖い顔見たの、うちは初めてかもしれない・・、
するとおばちゃんは
「あ~父さんね~?相変わらずよ、お前が出てってから、たまに・・」って言葉を濁らせてうつむいてしまった・・、
すると、何か思い立ったようにおばちゃんは「靖~?少しでいいんだけど・・」って言いかけた時
アンちゃんはお母さんの言葉を遮って、
「母さん?悪いけど帰ってくれるかな、俺、仕事中なんだよ、また顔出すから、頼む・・」そう言ってお母さんに頭を下げた、
そんなアンちゃんの言葉に、お母さんは何も言わずに、店を出て行ってしまった・・。
それからのアンちゃんは、言葉を交わすこと無くて無心になって動いてた、何もないように見えてた、アンちゃんの家族・・・、
幸せそうに見えてたのに、なにがあったの、想えばうちは、アンちゃんの事何も知らない、なぜあの町に一人暮らしていたのかも、
アンちゃんは自分の事は何も話してくれることなかったから、いつだってうちのこと気にしてくれて・・、
そんな時ふいに、背中越しから声を掛けられて、驚いて振り向くと、お父さんが、
「カナ?どうしたんだい?」って顔を覗かせて、「ヒデさん~、こんにちわ~また寄らせて貰ったよ・・」
って言うと、ヒデさんは、
「あ~いらっしゃい~・・」って居間へと手招いてた、
うちは、気持ちが切り替えられずに、困惑してたら、お父さんに、
「どうしたカナ?なにか有ったのか?心配ごとなら、話してごらん?何でも聞いてあげるよ?」って言われて、ちょっと焦った、
「いえ、そんなんじゃ~?でも今日はお父さんどうしたの?こんな時間に珍しいでしょう?」って聞くと、
「ああ~、ちょっとカナに知らせておこうかと思ってね?実は、あれからお兄さんに逢いに行って来たんだよ、色々話しをして来た、
それでね~カナ?お兄さんは私の病院へ移る事を承諾してくれたよ、何も言わず逢いに行ったと気を悪くしないでほしいんだが、私は
どうしても出来る限りの事をしてやりたくてね?すまないカナ?だがお兄さんの事は私が責任を持って診させて貰うつもりだよ?
許してくれカナ?」って謝ってた、
こんな嬉しいこと無いのに・・、
「許すだなんてそんな~、お父さんありがとう?嬉しい、ほんとにありがとう~」って言ったら
お父さんは、
「そうか、そう言って貰えると私も嬉しいよ、それでカナ?お前の身体の方はどうかな?」って言われたら、
不意にうちはお兄ちゃんの顔が浮かんで・・、
「お父さん?あの、お兄ちゃんに、あたしの事は・・」って聞いたら、
お父さんは、
「あ~それは話してないよ、カナは嫌がるだろうと思ったからね、それに今の彼には自分の身体の事をまず大事にしてほしい、だから
その事には触れてはいないよ大丈夫だ・・!」て微笑んだ・・。
「ありがとうお父さん?あたしは大丈夫だから心配しないで?お兄ちゃんの事宜しくお願いします・・」
って言うと、お父さんは
「そんな改まった言い方は辞めてくれカナ!寂しくなるよ・・」って言われた、
なんだか嬉しくて、
「あっごめんなさい、それじゃ、頼みますねお父さん?」って言ったら、「はいよ・・!」って笑ってた・・。
その後、店が込みだしてきたらお父さんは、
「ヒデさん?邪魔したね~?また寄らせて貰うよ、それじゃ・・」って言うと手を振って帰って行った。
その後、やっと三人がくつろげる頃には、もうすっかり陽は沈んで街に明かりがともり始めてた・・、
アンちゃんはお母さんが来てから、ずっと口を閉ざしたままで、ヒデさんも黙り込んだまま店の洗い場に手を動かしてた、
どこか息がつまりそうなこの空気も、隣に坐ったままずっと何も言ってくれないアンちゃんがうちには耐えられそうにもなくて・・、
「アンちゃん?あたしね?ずっと逃げてた時、あたしはひとりぼっちだって思ってたのよ?それが当たり前なんだってずっと思ってた、
でもね~?あたし一人じゃ無かったんだよね?あたしはアンちゃんに、いっぱい元気貰って、勇気ずけて貰ってた、
あたしにはアンちゃんが居てくれてたんだよね~?だからあたし一人じゃ無かったってそう気づいたの?
お兄ちゃんに怒られて泣いてた時も一人で山に登って泣いてた時もアンちゃん、何時の間にか傍に居てくれて励ましてくれてたよね?
でもそんなアンちゃんのこと、あたしは何も知らなかったんだね?それにアンちゃんって、昔っから自分の事はあまり話したりなんて
しなかったもんね~?でもしょうがないのかな、あたしはアンちゃんに、何がしてあげられるのか分からない、だからこんなあたしじゃ
言えないのかもしれない、でも・・、でもね~?せめて忘れないでほしいの、アンちゃん?
アンちゃんは一人じゃないよ?これからも、この先もずっとアンちゃんの傍には、ヒデさんもあたしもいるから、だから、
ねえアンちゃん?もう一人じゃないよ?だから一人で苦しまないで?ああっごめん?あたし、なに言ってるのかな・・、ごめんね・・」
何言いだしてるんだろ、ただ、辛そうなアンちゃんを観たくなかった、ただそれだけだったのに、なんで此処まで話しちゃってるの、って
そう気づいたら、涙が溢れた、
「ごめんアンちゃん、あたし、どうかしちゃってたみたい、勝手なこと言ってるね、ほんとごめん・・」
って、何だか居たたまれなくて、その場から逃げだしたくなって立ち上がろうとしたら、いきなりアンちゃんに腕を掴まれた・・、
するとアンちゃんが
「亜紀ちゃん?ありがと、話すよ、だから・・・」って言った、うちは泣いてる自分が恥ずかしくて涙拭ってたら、
アンちゃんが、
「ごめん、泣かせちゃったみたいだね、でもありがと?嬉しいよ・・」
って言われてうちが留まると、アンちゃんは、
「俺が亜紀に話さないでいたのは、ただ俺が言えなかっただけだよ、だから亜紀だからなんかじゃないんだ、ただ俺が情けない
だけなんだよ、ごめんな?
妹が、まだ生きてた頃、父さんはいつも家に居なくてさ~?母さんは、妹の病院費を稼ぐために、毎日内職してたんだ、だから・・、
せめて妹の面倒は俺がって思ってみてた、けど学校に来た時だけは何も考えなくていられたよ、そんな時に亜紀たちと仲良くなって
楽しかったよほんと、サチとアヤはクラスの子達と変わらない二人だったけどさ~?カナはそんな二人とはちょっと違ったからな~?
だから・・、なんかほっとけなかったんだ?カナの事、それにカナは何時だって俺に元気くれてたからさ?
妹が死んだ時、俺、ほんと言うと死のうと思ったんだ、俺にとって妹は唯一俺の生甲斐みたいなもんだったからな、でもそん時に
ヒデさんに止められたんだ、ヒデさんとはそれが切っ掛けなんだけどさ?それ以来ヒデさんには色々世話になりっぱなしなんだ俺、
でもさ、現実にかえっみたら、母さんは妹が死んでから放心状態で、抜け殻みたいになってずっと家に籠るようになってたよ、だから俺
必死に働いたよ、元の母さんに戻ってほしくて・・、だから母さんが元気をとり戻してくれた時は、ほんと嬉しかった・・、けど・・、父さんは
他所に女の人作ってた、それを知った母さんは酒におぼれて、また逆戻りだ、せっかく積み上げてきた俺のやって来た事なんてさ~、
なんの意味も持たなかったよ、バカだよな~俺、こんなこと誰に言える事でもないからな?俺は、何がしたいんだかな?ごめん、
なんか俺、愚痴ってるよな?聞き流していいよ、ほんとごめん、でも亜紀の気持ちは、ほんと嬉しいよ、ありがと?」
そう言ってうつむいたアンちゃんの目から涙が零れ落ちたのを、うちは見た・・・、
「アンちゃん?言いたくなかったでしょう~ごめんね?ほんとは言いたくなかったよね?なのに話してくれてありがとう、でもあたしは、
聞けて良かったって思ってる、だってアンちゃんの苦しみ半分こ出来るでしょ?だからその半分はあたしが貰うね?そうすればアンちゃん
少しは楽にしてあげられるかなって思う、あたしに出来る事ってそれくらいしかないけど、でもね?でももう一人じゃないから、だから・・」
って言いかけた時、アンちゃんがまた泣いてた・・、
「ああっでもあたしの言う事ってなんか気休めにしかなんないよね?ごめん?勝手なこと言っちゃって、ほんとごめん・・」
って言ったらアンちゃんが、
「違うよ亜紀ちゃん?そんなことないよ、俺、嬉しいんだ、ほんとありがと?」って、やっとアンちゃんが笑ってくれた・・。
Ⅱ 十九章~大切なもの~
移りゆく季節は、春の香りを漂わせながら北風を追いやって心地いい風が吹いてた・・、
積み重ねてきたそれぞれの想いは、お互いの想いに寄り添い合えたら、いつしか心を癒して笑顔が溢れた・・。
そして二か月、いつもの変わらない朝、日差しとともに聞こえてきた雀の鳴き声にそっと窓を開けて雀の巣を覗いてみたら、そこに
二羽、子雀が寄り添って佇んでいるのが見えた、思わず叫びそうになったお帰りって言葉を咄嗟に口元を押さえて飲み込見込んで
(お帰り、雀さん?)って小声で声をかけた、
きっと暖かくなってきたお陰かもしれない、そう思いながら空見上げてたら青空の広がる空から、何処か春を感じさせる穏やかな風が、
吹いて、うちは窓際に腰をおろして頬杖ついて眺めた。
そんな時、ヒデさんが眼を覚まして
「おはよ~亜紀?いつもながら早いな亜紀は~?・・」って言いながら起き出してきた、
「ああっおはよう~?」って言うと、ヒデさん、「眠たのか~?」って聞かれて「眠たよ?ただ雀の声に起こされちゃったからね・・」
って言ったらヒデさんは「そっか、ならいいんだ・・」って笑った・・。
此処最近のヒデさんは、今まで以上にうちに気を遣い始めてた、嬉しいけど、でも少し心苦しいって思う、それがうちへの想いだって
分かってはいても、何処か遣りきれない、それでも店を開けると、アンちゃんのいつもの笑顔がうちに元気をくれる、だから今はせめて
深く考えないようにしてた。
それからひと月・・、店の切り盛りに忙しなくも何とか遣り過ごして、やっとお客も減りだしてきた時、、お父さんが店に顔を見せた・・、
「カナ~如何だ変わりは無いかな?ヒデさん、また来たよ?いつもの貰えるかな?」そう言ってテーブルに着いた、
ヒデさんが、
「ああ、いらっしゃい~、しばらくですね~?」
って言うと、お父さんは、
「ああ、そうだったかな?ああカナ?お兄さんだがね~昨日、私の病院に移って来たんだよ、これから色々検査をする事になるだろ、
とは言え、まだ来たばかりでお兄さんも心もとないだろうからね~、少し落ち着いた頃にでもふたりで顔を見せてやってくれないか?
ふたりの顔を見れば彼も少しは気も休まるだろうからね~、頼むよ」って笑って見せた、
するとヒデさんが、
「そうですか~それは好かった、近い内にカナと会いに行きますよ~・・」って言うとお父さんは、「ああ、そうしてくれ、よろしく頼むよ」
って言うと急にうちに向き直って、
「カナ~?後でゆっくり話したいと思うんだが、どうかな?」ってうちの顔を覗き込んだ、
「あっ分かった、それじゃ~後でねお父さん?」って言うとお父さんは、「そうか、好かった、ヒデさん悪いが、また後で寄らせて貰うよ」
って言うと、「それじゃ~ねカナ?後でまた来るよ、ヒデさん、御ちそうさん~・・」って出て行ってしまった・・、
帰ってくお父さんの後ろ姿を見送りながら、後で話そうって言ったお父さんの言葉に、想いを巡らせてたら、
デさんが、
「亜紀~どうした~?疲れたろ~?なんならお父さんが来るまで少し休んでな?此処はもう靖と二人でも大丈夫だからさ・・」
って言うとアンちゃんが、
「そうだよ、亜紀ちゃんそうしなよ?もう休んだほうがいい、ね?」
って言われて・・、
「ああっそうね、ありがとう、それじゃ~お言葉に甘えてそうさせて貰うね?」
って言ったら、ヒデさんが、
「あ~ゆっくり休んでていいからな?」って言われて、「ありがと・・」って返してうちは居間へ腰を下ろした・・、
横になる気にはなれなくて壁に背をして膝を抱えて顔を埋めて少しだけって眼を閉じた、でもいつの間にか眠りの中に引き込まれて・・、
するとお兄ちゃんが何か言いたげに必死に手を伸ばしてた、うちはその手を掴みたくてもがいた、でもなぜか離れて行くお兄ちゃんに、
うちは焦って「お兄ちゃん待って~」って叫んだ、そしたらお兄ちゃんの手も姿もうちの前から消えた・・、
その衝撃にうちは目が覚めた、気づくとヒデさんもアンちゃんも何時の間にかうちの隣に坐ってた、
するとアンちゃんが、
「如何した?なんか魘されてたけど、大丈夫か~?」ってうちの顔を覗いてきた・・、
「ああ、ちょっと嫌な夢見ちゃったみたい、でも大丈夫、それより二人ともどうしたの?店は~?」
って聞いたら、ヒデさんが、
「あ~今日はもう店終いにしたよ、その方が亜紀もゆっくり出来るだろ~?靖とも話して決めたんだ・・」って言った・・。
そんな時、店の方から声がして、ヒデさんが
「あ~俺が出るからいいよ・・」そう言って店にと出て行った、
しばらくしてお父さんが一緒に顔を見せて、
「疲れている処すまないね?すぐ済ませるよ」って言うとヒデさんは「気にしないでくださいよ?さあ~どうぞ?」
って中へと招いた、
お父さんは居間へと腰を下ろすと、ため息を漏らして、
「こうして居ると何だね~?私は、何処かほっとしてしまうんだが、そう思えるのもヒデさん?君のお陰だね、ほんと感謝しているよ、
ありがとう?」そう言って頭を下げた、
するとヒデさんは、
「よしてくださいよ~、俺は、礼を言われるようなことは何もしてませんよ・・」って少し戸惑ってた、
するとお父さんは、
「そんなことはないんだよ、君のお陰でカナに逢えたんだ、君は不思議な人だ、君ならカナを幸せにしてくれると思っているよ、勝手な
言い草かも知れんが、カナの事、宜しく頼むよ?私にできる事は何でも言ってくれ、出来る限りの事はするつもりでいるからね・・」
って言うと、お父さんはうちを見て、
「カナ?話しというのは、実はね?私はお兄さんと色々話しをして今までの経緯を聞かせて貰ってきたんだよ、お兄さんは自分んが
カナを追い込んでしまったと悔いて苦しんでるようだった、それでね~カナ?あのお母さんの事も聞かせて貰ったんだよ、それで
私はあのお母さんに逢って来たんだ、それと弟さんにもね、勝手をしたと怒るかもしれないが、私には、どうにも許せなくてね~、
弁護士をたてて話しをしてきた、これから先関わらないことを約束をして貰う為にね、だからカナ?もう脅えること無いんだよ?私の
した事は出過ぎた事かもしれないが、それでもカナの為なら、私はどんな事でもする、だからもう何も心配いらないよカナ?約束して
貰ったからね?お兄さんにもその事は伝えてきたよ・・」って言うと、
「それと、弟さんの事だが、彼はあの家に留まるそうだ、だがその訳は話しては貰えなかった、ただ彼からカナに伝えてほしいと伝言を
頼まれてね~?彼は自分の事は心配するなと、それからね~カナ?幸せになってくれとそう伝えてくれと言っていたよ・・、
いいお兄さん達ばかりだ・・、処でカナ?身体の方は大丈夫なのか?」
って急にうちのことに話しを振られて、慌てて涙を拭ったらふたりが笑って見てた・・、
「あたしの事は心配いらないの、大丈夫よ?でもお父さんありがとう~やっぱりあたしは幸せ者だよね?ほんとにありがと・・」
って涙が溢れたら、うちは言葉に詰まった・・、
するとお父さんは、
「そうか、カナが大丈夫ならそれでいい、お前が喜んでくれたら私はそれだけで十分だ、泣かないでくれ、私はカナの笑った顔が
見たいんだよ、カナは母さんに似て笑顔がいいからね?多分みんながそう思ってるいるんじゃないのかな?笑ってくれカナ?」
って言うとうちの顔を覗き込んでた、
するとヒデさんが、
「そうだよ?お兄さんも言ってたろ~?もう泣くなよ、な?」って後押しするように言われた、
でもすぐに笑うのは出来そうにないから涙を拭いて笑顔を作った、でもみんなの顔を見たら、また涙が零れた、
そしたらヒデさんに、
「亜紀の泣き虫はそう簡単には治まりそうにないかな?・・」って言ったらみんなが笑い出した。
お父さんは、
「ほんと、カナは静にそっくりだ・・」って笑って見せるとお父さんは、
「さて~私はそろそろ失礼するとしよう、どうも、長居をしてしまったようだ、遅くにすまなかったね~でも楽しませて貰ったよ
ありがとうヒデさん?これからも宜しく頼むよ、カナ、またね?それじゃ・・」そう言うと、お父さんは、手を振って帰って行った。
これで本当に終わったのかなってまだ少し気持の何処かに不安は残ってた、でも嬉しい、だから今は素直に受け止めたいと思う・・。
そんな時、いきなりヒデさんが、うちの顔を覗き込んできて、
「亜紀~好かったな?これでもうあの人に怯える事はないんだよ、ほんと好かったな~?」ってそう言って笑って見せた・、
するとアンちゃんが、
「亜紀ちゃん?これで山にも気がねせず行けるね?また一緒に登りに行こうよ?今度は気兼ねなしに泊りでさ?」
って言うとヒデさんが、
「そっか~それもいいかもな~行こうか?な~亜紀?」って言いだした、二人の展開の速さにうちは、ついていけなくて・・、
「どうして二人ともそう話しが、先に行っちゃうの~?あたし、ちょっとついていけないよ~・・」
って言ったら、アンちゃんに、
「それじゃ~亜紀ちゃんは、嫌なのか~?俺は楽しみが出来たって凄い喜んでたのにさ~・・」
って言うとヒデさん、
「そうだよ~、亜紀は嫌なのか~?」って聞いてきた、(あ~どうしてそうなちゃうのよ・・)って思いもしたけど、でも行きたくない
訳じゃない、だから返す言葉に詰まった、
するとヒデさんが、
「亜紀~?亜紀も本当は行きたいんだろ?正直俺も行きたいんだ?どうだ、靖の提案に乗ってまた行ってみないか?」って言った、
「ほんとは、あたしも行きたい、凄く嬉しい、でもね?ほんとに行けるのかなって、ちょっと自信がないのよね~・・」
って言うと、アンちゃんが、
「大丈夫!今度は俺もヒデさんも一緒だし、それにお父さんが言ってたろう~?心配ないってさ、だから大丈夫だよ亜紀ちゃん?」
そんなふうに言われてしまったら、頷くしかなくて、「分かった・・」って言ったら、アンちゃんが、「決ったね、ヒデさん?」
ってヒデさんの顔を覗き込んでた、するとヒデさんは「あ~決ったな?」で互いの手を叩き合って笑ってた、
こんなふうに話しが盛り上がるのもここ最近無かったように思えたら、嬉しそうなふたりに、これで良かったのかもって思い直した、
何時だってうちの為に無理してくれてるふたりの笑顔は、その笑顔を失いたくないなって、そう思えたから・・。
翌日、窓から射し込む陽ざしが眩しく感じた今朝、一番乗りでうちの方が早起きしたつもりでいたら、うちより先にアンちゃんの方が
一番乗りで起き出してた、
その後ヒデさんが起き出してきて、うちの顔を見ると、
「おはよう亜紀?眠れたか?」って聞かれて、「眠れたよ?」って言うと「そっか・・」って言ったらそのまま店へ降りて行った、
少し味気ない気もしたけど、でもこれがヒデさんなんだって言い聞かせてうちも店へと降りた、
アンちゃんはいつもと変わらない笑顔で、
「おはよう亜紀ちゃん?・・」って声掛けてきて、「おはようアンちゃん・・」
って言うと、アンちゃんが、
「あのさ~亜紀ちゃん?ヒデさんが今度休み取れるなら、山、行かないかな?別に泊りじゃなくていいんだ、駄目かな?」って聞いた、
いきなりのアンちゃんの話しに、うちは、アンちゃんの想いが、何処か違うところを見てるような気がした・・、
するとヒデさんが、
「靖~俺は別に何時でも構わないぞ~?靖から言ってくるのも滅多にない事だしな~?行こうよ、いいだろ~亜紀?」って言われて、
「ああっうん、もちろん、アンちゃん?また一緒に登ろうね?」
って言ったらアンちゃんは、
「ああ、ありがと?好かった~・・」って言うと、止まってた手を動かし始めた、
そんなアンちゃん見てたら、ふいにアンちゃんのお母さんの事思い出したそしたら少しだけアンちゃんの想いの先が見えた気がして、
それ以上には何も聞かない事にした・・。
それから一周間が過ぎた頃に、ヒデさんが、
「靖~?山に行くなら明日にでもどうだ~?まだその気あるなら行こうと思うんだけどさ~、亜紀は大丈夫か~?」
って言うとアンちゃんが、
「もちろんそのつもりだったから、ヒデさんがいいならぜひ・・」って笑みを浮かべてた、
「アンちゃんが大丈夫ならあたしは大丈夫、心配ないわよ・・」
って言うとヒデさんが
「そうか、なら明日行こうか?久しぶりにさ~、な?」って言われたら、お互い頷き合ってた・・。
そして翌朝、三人で向かった先は、うちとアンちゃんの故郷・・、駅に辿りついた時、ヒデさんはうちの顔を覗いて・・、
「亜紀~?まだ気になるか~?」って唐突に聞かれて、ちょっと戸惑った、
「ええっ?そうね大丈夫とは、まだ言えないけど、でも二人が居てくれるから・・、行こう?ヒデさん、アンちゃん・・」
って言ったら、アンちゃんが、
「そうだよ、行こう~?ヒデさん?」って笑って見せると、三人、歩き出した・・
そして裏山が見えてきた時、三人で手を繋いで山の奥まで、一声に走り出した、誰が決めた訳でもない、ただ頂上を目指して走り出した、
でも辿りついたら、うちは息が詰まった息苦しさに、思わずしゃがみ込んでしまった、ヒデさんが、
「亜紀~?どうした、苦しのか?走らせたの不味かったな、ごめんな・・」って言うと、うちを大木の下へと連れられてきてくれた、
うちは、大木に寄りかかりながら空を見上げた、澄んだ空気がうちの呼吸も楽にしてくれるようで思いっきり深呼吸してみた、
そして目を閉じてみた、そしたら草木の匂いと木の葉の揺れるざわめきが聞こえてきていつしか吸い込まれるようにいつしか眠ってた、
その時、耳元で誰かが呼んでいる声が聞こえてきて目が覚めた、ふと気づいたら二人が心配そうにうちを覗き込んでた・・・、
するとヒデさんが、
「亜紀、大丈夫か~?眼を覚まさないから心配したよ~?ほんと大丈夫か?」って言うと、
アンちゃんが、
「まだ苦しいのか~?悪い事しちゃったな~俺、ごめんな?」って謝った、
「あたしこそごめんね、心配掛けちゃったみたいで、でももう大丈夫だから、ありがと?それじゃ~」
って言いかけたら、ヒデさん、
「いいよ亜紀?亜紀は此処で休んでな?今日は辞めといた方がいい・・」ってなんだか怖い顔してた、
でもこんな事で休んでるなんてうちには考えられない・・、
「そんな~あたしはもう大丈夫よ~?」って言ったら、ヒデさん、「駄目だと言ったら駄目だ!」って言葉を荒げた、
どうしてそこまで、そう思ったらうちには、ヒデさんの気持ちが理解できなかった、
「どうしてそんなに、ムキニなるの~?最近のヒデさん可笑しいよ、あたしの事心配してくれるのは嬉しい、でもあたしは、そこまで
心配されるほど駄目なの?此処へ連れてきてくれたのは、ヒデさん、分かってて連れてきてくれたんじゃなかったの~?
ごめんアンちゃん、あたし少し考えたい、だから帰るね?
ヒデさんごめんね?あたし何も分かってなくて、それにあたしはヒデさんを苦しめるだけでしかなかったみたい、ごめんなさい・・」
うちは帰ろうと思った、だから二人の顔、見るのも辛かったから、そのまま顔も見ずに帰り道を歩き出した、
するとアンちゃんが、
「亜紀ちゃん~ちょっと待って~?ヒデさん?」って声を張り上げてた・・、でもうちは聞けなかった・・・。
駅に辿りついてから、うちはベンチに腰を降ろした、空を見上げたらもう、雲が張りだして、陽の光が、まばらに射し込んでた、
そんな空眺めてたら涙が零れた、ヒデさんの想いが分かるから、それだけに自分が負担になっているのが辛い、あんなに心配されたら
そんなにうちの身体はもう駄目なのかなって思えてくる、ほんとにそうなのかな、だからヒデさん・・、うちは心の中、自問してた・・、
そんな時、気づくと隣のベンチにアンちゃんのお母さんが坐ってた、どこか寂しげに坐るお母さんが愛しく思えて、声をかけた・・、
「あ、あの~おばちゃん?分かりますか~?アンちゃんの友達のカナですけど・・」
って言ったら、おばちゃんは
「あ~カナちゃん?うちの息子が色々世話になって~、息子はちゃんとやっているのかしら?迷惑掛けてない?」って聞いた、
アンちゃんの事心配しているんだって思った、
「あっ、それは大丈夫です、アンちゃん凄く良くやってくれますから、逆にあたしのほうがおっつかないくらいで・・、だからアンちゃん
が来てくれたお陰であたしの方がほんと助かってるんです、でもおばちゃん、どうして此処に?あっすみません、そんな事言ったら
あたしもそうでした・・・・・、
でもおばちゃんとこうして話すのなんて初めてですけどなんだか嬉しいです、自分のお母さんみたいな感じで、あっごめんなさい?
あたし何言ってるのか、ほんと失礼な事言ってすみません・・」ってうちは焦って頭を下げた、
するとおばちゃんは、
「そんな謝らなくていいのよ?あたしは嬉しいわ?娘が死んでからというもの身体にぽっかり穴が開いたみたいでね~?未だそれが
抜けきらないでいるのよ、でももうそんなこと息子には言えなくて・・、だからカナちゃんにそう思って貰えるなんてあたしは嬉しいのよ?
ありがと?っカナちゃん・・」って、少し涙ぐんでた・・・、
「あたし、お母さん知らなくて・・、だからおばちゃんがアンちゃんの事話しているの聞いてたら、あたしにもお母さんが居たら
こんなふうに話せるのかなって、なんだか初めてのように思えなくてつい、ごめんなさい?でもそんなふうに言って貰えて好かったです、
あの~おばちゃん?これ貰ってくれますか?あたしが作ったお守りなんですけど、きっとおばちゃんの事元気にしてくれると思います、
あたし、これを持ってるとお母さんはいないけど、でもいつも傍に居てくれる気がして元気貰ってるんです、あの・・、迷惑でなかったら
貰ってくれますか?あっあの、おばちゃん?」
って言ったら、突然うちの手を握った、うちは、いけない事したと思った、
「ごめんなさい、気を悪くさせて、ほんとにごめんなさい?あたしおばちゃんに・・」って言いかけたら、
「カナちゃん?違うの、違うのよ?あたしは嬉しいの、ありがと~カナちゃん?娘が生きてたらこんなふうにってつい思っちゃってね?
ありがとう、お守り喜んでいただくわね?・」って言ってくれた、うちは嬉しくて、
「貰ってくれて嬉しいです、あの、また此処で逢った時はこんなふうにお話しして貰えますか?おばちゃんが迷惑でない時でいいんです
あっごめんなさい、あたし勝手言ってますよね、すみません・・」って言ったら
「カナちゃん?こんなあたしでもいいの~?」って聞いた、
「おばちゃん、それじゃ~いいの?あたしとお話ししてくれるの~?ほんとおばちゃん?・・」って聞いたら
「それはあたしのほうが、聞いてるのよ~?・・」って言い合ってたら何だか可笑しくて、顔を見合せて笑い出してた、
そしたら、おばちゃんが、
「久しぶりに笑った気がするわ~、カナちゃんのお陰ね?知らない間に笑うのも忘れてたのね~、ほんとありがと・・」って言われた・・、
「あたしのほうこそ、ありがとうです・・」って言ったら、おばちゃんが、噴き出して「変だよ~その言い方?」って言われてしまった、
「あれ?可笑しかったかな~?」って慌てて口元を押さえたら、おばちゃんがまた噴き出して笑ってた、そしたら、うちもその笑いに
誘われて一緒になって笑ってた・・、それからは、おばちゃんとお喋りして笑いあって、うちは時間の過ぎるのも忘れた・・、
そんな時、おばちゃんが、
「さて、そろそろ帰らなきゃね、カナちゃん?ほんと楽しかった、ありがと?また会おうね、此処で?お守り大事にするからね?・・」
って言われて、少し寂しくなって、つい泣いてしまったら、
「どうしたのよう~?カナちゃんが泣いたら、おばちゃんまで泣けてきちゃうじゃない~」って言われて、うちが慌てて涙を拭いたら、
おばちゃんがクスッと笑って、
「また逢ってねカナちゃん?ほんとにありがと?じゃあね?・・」って手を振ってた・・、
うちは、おばちゃんの後ろ姿を見送りながら、胸元につけてたペンダントのお母さんの写真を開いてみた(お母さん・・、逢いたいな・・)
そう思ったら、また涙が溢れてきて、ペンダントをしまった・・。
そして自分が此処にいる理由を思い出したら、少しの間、気持ちの遣り場に坐り込んだまま動けなくて、また涙が零れおちそうになった、
だから空見上げて、思いっきり深呼吸して、気持ちを持ち直してから歩きだした、
その時、うちの前をヒデさんが歩いて来るのが見えた・・・。
Ⅱ 二十章~歯車~
うちが育ったこの町は、今も変わらないまま、色も変えず此処に在って、帰って来る度に、うちの心の奥に足跡を残してた・・、
帰える想いの先はまだ不安定なままで、いまだ見つけられずにいる自分の本当の古里に、いつか時が経てば見つけられるって今は
そう信じたい・・。
うちの育った、唯一うちの居場所が、今もこの町から見えるあの山は、確かに此処に在った事教えてくれるから、あの山が恋しくて、
うちの大好きなあの山が、全てを癒しに変えてくれるって知ってる、だから帰って来た・・。
アンちゃんのお母さんと別れて、駅の中に入りかけた時、ヒデさんが、うちの前に姿を見せた・・、
うちは、なにも言えなくて、このまま駅へと歩き出したら、その時ヒデさんに、腕を掴まれ引き留められた・、
「亜紀~?待ってくれよ、な~?少し話ししないか?頼む・・」って言われて、ベンチに腰掛けた、
うちは言葉なんて見つからなくて、何も言えないでいるのに、涙だけが溢れた、ヒデさんは、
「亜紀、悪かったな?俺、神経質になってたようだ、その所為で亜紀には余計な不安持たせちゃって、ほんとごめんな?だからさ亜紀?
亜紀がもう駄目だからとか、そんなんじゃないんだ、そんな事けしてないよ、信じてくれないか、な~?このとうりだ亜紀・・」
ってヒデさんが頭を下げた、そんなの・・、
「分かったから、だから謝らないでよ?苦しめてたのはあたしだから、ヒデさんが悪いんじゃないから、ただあたしは割れ物のような
存在で居るのが辛かっただけなの、ごめんなさい、わがままで・・」
って言ったらヒデさんは
「わかった、ありがとな?けど俺は我がままだとは思ってないよ、ほんと悪かったな?それでさ~亜紀~?許してくれるなら、山にさ~?
もう一度一緒に登ってくれないかな~?靖も待ってるんだ?なあ亜紀?駄目か~?」って聞いた、
「そんなこと、聞かなくても決ってるでしょ?だってその為に来たんだもん・・」ってニコって笑って見せたら、
ヒデさんが、うちに抱きついて、
「そっか好かった、ありがとな?けど亜紀~?さっき誰と話してたんだ?何処かで見た気がするんだけど、どしても思い出せなくてな~」
って言った、話すの迷ったけど、でも隠す事でもないから・・、
「あのね~アンちゃんのお母さん、偶然此処で会ったの・・」って言ったら、ヒデさんは驚いた顔して、
「ああ~そうだ~!そうだった、思い出したよ~、そう言えば見覚えがあるよ、ああそっか~・・」って一人興奮してた、
なんだかそんなヒデさんがうちには可笑しくて、堪えきれずに笑だしたら、急にヒデさん、
「なんだよ~亜紀~、俺は思い出してただけだろうが~、そんな笑う事か~?」って少し拗ねてた・・、
「あ~ごめんなさい、でも可笑しいんだもんヒデさんの驚きようはちょっとね~?あっごめんね?・・」って言ったら、
ヒデさん少し照れ笑いしながら、
「亜紀~?俺をからかってないか~?まったく~」って言ったと思ったら、いきなりうちは抱っこされた、恥ずかしくて、
「ええっなに~?辞めてよ恥ずかしいでしょ~?お願い下ろして、ねえヒデさん?笑ったのは謝るから、ね?お願い~?嫌だ~もう~」
って言ってたらヒデさんニコニコしながら
「もうすぐだよ?たまにはいいだろ?・・」とか言ってやっと下ろしてくれた処には何時から居たのか、そこにアンちゃんが待ってた・・、
するとヒデさんは、
「お~靖、待たせたな?・・」って言ったらアンちゃんはニッコと笑って、「それじゃ~行きますか~?」って言うと、
ふたりがまたいきなり、うちを持ち上げて歩き出した、
「もう~!二人してあたしの事、からかってるでしょう~?もう嫌い~」って叫んだ、
そしたらアンちゃんが、
「分かったよ?亜紀ちゃんが大好きだって事は分かってるよ・・」って笑った・・、
「そうじゃ無くて~ああ~もう~泣いちゃうからね~・・」って言ってたら、ヒデさんに「ほら、着いたよ?・・」って下ろされた、
その場所は、山の奥に入る入口に近い場所・・、
サチとヒデさんを置いて走り出して着いた場所、うちは目印にした木に触れてみた、あの時サチと手を繋いで駆けあがって来た場所・・、
今、サチはって思った、どんな時もうちの力になってくれてた、親友だって言ってくれたサチの事、この木の感触が思い出させた・・・。
その時、アンちゃんが、
「亜紀ちゃん?泣いてるの?ごめん、でも亜紀ちゃん疲れさせたくなくてさ~悪かったな?・・」って言われて、
うちは泣いてたんだって気づいたら、ちょっと焦った、
「あ~そんなんじゃないの、ごめんね?ちょっと思い出しちゃったから・・」
って言ったら、ヒデさんが、
「さっちゃんの事か~?亜紀がその気になったらでいいよ、さっちゃんのあとりえ、覗いてみよう~?な亜紀?・・」って言ってくれた・・、
嬉しかった、でもまだ、うちは心の準備ができてないから、素直には喜べなくて・・、
「ありがと?でもまだ、あたしは会いには行けそうにない、まだ気持ちの整理ついてなくて、ごめんね?・・」
って言ったら、ヒデさん、
「亜紀が謝る事じゃないさ、いいんだよ?さて、ここから先は、一緒に歩きますか~」
って言うと、アンちゃんは、
「それじゃ~亜紀ちゃん?行こうか?」って、うちの手を握りると、ヒデさんも、もう片方の手を握り締めて、「さあ行こう~・・」
って掛け声かけて歩き出した・・、
そして辿りついた森の中、大木の幹に三人が、一緒になって腰を下ろしてたら、なんだかその姿が、何処かコッケイに思えて、三人が顔を
見合せたら誰からともなく笑い出してた・・・。
大木の頂上を見上げて見たら、木の葉がざわめいて、揺れる小枝の隙間を陽の光の輝きまでが揺れてきらきら輝く星のようにも見えた、
うちは目を閉じて、深呼吸して目を開けた、ふと静けさに気づくと何時の間にか二人の姿が消えてた・・・、
少し不安になったけど、そのうちに姿を見せてくれるって、そう信じてじっと待ってた・・、
でも次第に辺りが暗くなり始めて、次第に不安になってきて
「ヒデさん~、アンちゃん~」って呼んでみた、でも誰も返事をしてくれなくて、怖くなって泣き出した・・、
そんな時、ふいに誰かに呼ばれた気がして、覆ってた手を放して顔をあげて見たら、いつ来たのか、アンちゃんとヒデさんが心配そうに
うちを覗き込んで見てた、訳が分からなくて、
「どうして居なくなるのよ~?一人にしないでよ、お願いだから~・・」って泣き出してしまったら、
ヒデさんが、
「何言ってるんだよ~?亜紀の傍にずっといただろう~?亜紀の方がどうかしちゃったのかと思ったよ~、な~靖~?・・」
って言うと、アンちゃんが、
「そうだよ~俺達、何処にも行かないよ~?亜紀ちゃんの方が目を覚まさなくて、こっちが心配しちゃったんだからな~?・・」
って言われて、うちは困惑してた・・・、
「それじゃ~あたし寝てたの、嘘?ああ、ごめんね?あたしは大丈夫よ、心配させてごめん・・」って謝った・・、
でも今のは何だったのかな、よく分からない、少し目を閉じてただけなのに、でも今は考えたくない、そう思ったら考えるのを辞めた、
その時、アンちゃんが、
「ほんと大丈夫か~?木には登れそう~?」って聞いた、「うん、ほんとに大丈夫よ、ごめんね?登ろうよ、ね?」
って笑ってみせたら、アンちゃんも少し笑顔になって、
「それじゃ~登ろうか?ね~ヒデさん?」って言うと、ヒデさん「そうだな?それじゃ行こう~・・」って言うと三人で登りだした・・、
ヒデさんはうちを気遣いながらうちを支えてくれた、アンちゃんはうちの手を時々引いてくれて、木の頂上に着いたら、
ヒデさんもアンちゃんも一緒になって、「やった~!・・」そう言って木の分け木に腰を下ろした・・、
三人が腰を下ろして坐ると、町を見下ろしたヒデさんが、
「いつ来ても此処からの眺めは最高だな~?・・」って満足げな顔して笑ってた、
そしたらアンちゃんは、
「俺は此処が、好きだよ・・」って言うと、うちを見てアンちゃんが「亜紀ちゃん?母さんと何話してたの?」って聞いた、
うちは、胸が痛くなるほどに驚いた、どうしてそれを知ってるのかなって、
「アンちゃん見てたの?ならどうして声掛けて・・、あっ偶然あそこのベンチで会ったから、お話ししてた、ごめんあたし勝手なことして
でも楽しかったよ?色んな事話してくれて・・、ごめんなさい・・」
するとアンちゃんは、
「亜紀ちゃん?別に俺怒ってる訳じゃないんだよ、その逆だ、俺、分かってて声掛けられなかったんだからさ、だから謝んないでくれよ、
でもあんなに笑ってる母さん、妹が生きてる時以来かな、俺の前であんな笑顔見せてくれたことなかったからさ、あんなに大笑いして・・、
俺正直驚いてるんだ?だからさ?ありがと、亜紀ちゃん?母さんに笑顔、戻してくれて、嬉しいよ・・」って言った・・、
あたしはなにも感謝される事なんてしてないのに、ありがとって言われた、うちが感謝したいのに、でも嬉しい・・、
「アンちゃん?あたしこそありがと・・」って言ったら、ヒデさんもアンちゃんもなんか笑顔になってた、
するとヒデさんが、
「来て好かったな~・・」って言ったらアンちゃんが、「ほんとよかった・・」って顔を見合せて笑ってた・・。
何時の間にか空には、太陽の光が輝きを増して、どこか町の景色が色ずいたようにも見えた、そんな町の何処からか優しい風が吹き抜けて
髪をかきあげたら、風は木の葉を揺らして騒がしくざわめいて、空に浮かんだ雲は、まるで時が止まってるかのように、そこに漂ってた・・、
そんな空の下、此処にこの木の上で、誰もが交す言葉を忘れてしまったかのように、ただ空を見上げて、佇んでた・・、
そんな時、沈黙を破るかのように、ヒデさんが、
「さあ~そろそろ降りるとするか~?」って言った、その言葉にアンちゃんが「あ~そうだね・・」ってうちの顔を覗き込んで・・、
うちが頷いて見せると、「よし、行こう~」ってヒデさんの声に、一緒に木を降りた・・。
一番乗りに木から降りたアンちゃんが、急にお腹を擦りだして、「なんかお腹空いて来ちゃったな~二人はお腹空かない?」って聞いた、
するとヒデさんは、
「まったく、お前のその底なしの腹には負けるよ、亜紀は~?」っていきなり聞かれて「あ~そうね、少し空いてきたかな・・」
って苦笑いしてしまったら、ヒデさんが、
「亜紀~?なにも靖に合わせる事無いんだからな~?」って言われた「あ~そんなんじゃないから・・」って言いかけたらアンちゃんが、
「ヒデさん~?そういう言い方ちょっと酷くない?ね~亜紀ちゃん!」、そう言って少しむくれてしまった、
そんなアンちゃんの顔が、なんだか無邪気な子供のように見えて、うちが噴き出してしまったら、ヒデさんまでが笑い出してた・・、
その笑いの中に、何時の間にかアンちゃんまで交じって笑い出した、
するとヒデさん、
「しょうがない、それじゃ~腹ごしらえするとしますか~?」って言うと、アンちゃんは満面の笑み浮かべて「やった~」だって・・。
日差しが傾きかける頃には、山を降りて帰りの道を歩き出した・・、
その途中、前を歩いて来る人に気づいたら、うちは足がすくんで声も出なくて立ち止った、するとうちに声をかけてきた・・、
「あれ~?カナ~?どうして此処にいるの~?あたしは、来るなって言ったよね~!」って声を張り上げた・・、
その時、ヒデさんが、
「あの誰ですか?ちょっと不仕付け過ぎませんか?」って言ったら、お母さんはヒデさんの言葉を無視してうちの前に立ちふさがると
いきなり殴りだした、止めに入ってくれたアンちゃんもヒデさんも、押さえるのに必死になって・・、
やっと押さえた時、お母さんは、
「親父が見つかったからって脅しにまで来て、この恩知らずが~!お前の兄さんはあたしが貰ってやったよ、お前の変わりにね~?
感謝するんだね~?」
って言うと急に笑い出した・・、
でもうちにはお母さんの言葉の意味を理解できなかった、ただ、怖くて、悲しくて、震えが止まらなくてうずくまった、
するとヒデさんが、
「いい加減にしてくださいよ?カナが貴方に何したって言うんですか~?もう貴方とは何の関係もないはずだ、いい加減カナに
まとわりつくのは辞めてもらえませんか~?」って言った、
するとお母さんは、
「あんた~、カナの何なんだよ?あんたには関係ないだろ~、まったく~離しなさいよ~!」って言うと掴まれた腕を振り払った・・、
ヒデさんは、押さえてた腕を振りおろしながら、
「関係ない訳無いだろ~俺はカナの亭主だよ、そこまでしてカナにまとわりつく理由は、一体何なんですか?教えてくださいよ~?」
って聞いた、
するとお母さんは、
「なに、結婚してたの、まあ驚いた、あたしゃね~腹が立つんだよ、この恩知らずにさ~あんたは知らないだろうけどね~?この子は・・」
って言いかけた時ヒデさんが、
「俺は全部知ってますよ、貴方の御主人にもお会いしました、ただ亡くなった事は後から知って残念ながら会えませんでしたけどね・・」
って言ったら、お母さんは口を閉ざしてしまった、
すると急にお母さんは、
「そう~、もういい・・」それだけ言うと、逃げるように帰って行った・・。
アンちゃんはずっとうちの傍から離れずに抱きしめてた、お母さんが帰っていくと、うちの顔を覗き込んで、
「亜紀ちゃん?もう大丈夫だ、何処か痛いとこない?」って聞いた、
うちは、何も考えられなくて、小刻みに震える身体を押さえきれずにいたら、アンちゃんが「ヒデさん?」って呼んだ・・、
ヒデさんは、
「亜紀~?少し休んでいこうか?な~?靖、いいかな?」って聞くとアンちゃんは、「当然だろ?行こうヒデさん・・」って言った、
でもうちは、体中が悲鳴を上げだしたら涙が零れた、それでも堪えきれなくてヒデさんの腕の中に顔を埋めて泣いた・・、
するとヒデさんが
「亜紀~?行こう~な?・・」って言われて、何度か来た旅館に宿を取った・・、
部屋に通されて、うちは窓際の柱に背を預けてうずくまった、何もかもがまだ終わってなかった、お母さんはうちが許せないって言った、
ずっとうちを怨んでたんだ、お兄ちゃんを貰ってやったって言ったあの言葉は、(教えてよ建兄ちゃん?うちはどう理解したらいいの・・)
そんなうちの傍に、アンちゃんとヒデさんが腰を下ろした、するとアンちゃんが、
「亜紀ちゃんごめんな?俺が来たいって言ったばっかりに、ごめん・・」って謝ってた、
そしたらヒデさんが、
「靖?お前の所為じゃないんだよ、気にするな?それを言うなら俺に責任があるんだよ、俺は何時かこんな日が来るような気はしてた、
あの時からな・・、だからお前が責任感じること無いんだよ、な~靖?・・」って言った、
アンちゃんは黙ったまま何も言わなかった、するとヒデさんはうちの手を握り締めて、
「亜紀~?落ち着いたか~?あの勢いには俺もさすがに驚かされた、痛かったろ?亜紀が怖がった気持ち分かったよ、辛いよな?
苦しいだろ?亜紀~泣いていいんだよ?苦しかったら苦しいって言ってくれ、な?頼りないって想われても、それでもさ~?俺は
亜紀のこと守るよ、乗り越えてくれ亜紀?それでまた笑顔見せてくれよ、な?亜紀の傍には靖もいるからさ?・・」
って言ったヒデさんの手には力がこもってた・・。
窓から見えてきた空は、もうすっかり暗闇に包まれてた・・、
うちは、ヒデさんの優しさに何も応える事出来なかった、自分の応えさえ見つからないままで・・・、
お母さんに言われた言葉の意味さえ見えてこない・・、うちがいなくなってしまえばお母さんは許してくれるの、憎しみは・・そう思うと、
遣りきれなくて、また溢れだした涙にうちは、堪えきれず立てた膝に顔を埋めて泣いた・・、
その時胸元から、零れおちたペンダントに気づいて、思わず握り締めた、(お母さん・・)本当のお母さん、でも・・、
あの人も、血は繋がらなくても、仮、だったとしても、唯一お母さんって呼んでた、そう思ってたのに、何がこんなふうにさせたのかな・・、
やっぱりうちの所為って思えてきたら、また泣いてた・・。
そんな時、ヒデさんに
「亜紀~食事がきたよ?一緒に食べよう~な?」ってうちの顔を覗いた・・、
でも泣き顔がもう限界で、顔をあげられなくて、うつむいたまま、「あっあたし、今は、あまりほしくないのごめんね?・・」
って言ったら、ヒデさん、
「亜紀が一緒じゃなきゃ、どんなの食べたって旨くないんだよ?な~?少しでも食べてさ~元気付けてくれよ、一緒に食べよ~、な?」
って言われてうちは手を引かれた、
仕方なくテーブルの前に坐ったら、アンちゃんが、
「亜紀ちゃん、食べよう~?俺、もうお腹ぺこぺこ、ね~?一緒に食べよう~」って言いながら、悲痛な声で唸ってた、
するとヒデさんが、
「まったく~お前は、食べる事になると、どうしてそう悲痛な声になるんだよ~、しょうがない奴だな~・・」
って言うとアンちゃんは、
「しょうがないだろ~、俺のお腹は正直に出来てるんだからさ~・・」って言いながら、もうつまみ食いをはじめてた・・、
それを見てたヒデさんは、呆れ顔でため息つきながら、
「亜紀~?こいつはどうでもいいよ、さあ、食べよう~な?」って言ったら、もう二人して食べだしてた・・。
その夜、独りの部屋を与えて貰って床についてはみたけど、眠れそうになくて壁に背をして膝を抱えた・・、
ヒデさんもアンちゃんも優しくしてくれるから、尚更辛くて、それでもうちは遣り場のない自分に何処か苛立ちを感じてた・・、
ヒデさんは言ってくれた、守ってやる、だから乗り越えてくれって、応えの見えない恐怖に怯えて暮らすのはもう、終わりにしたい、
ヒデさんもアンちゃんも、これ以上苦しませたくない、それでも、うちはふたりになにもできない、何も返す言葉が見つからない、
情けないって思う、ただお母さんに怯えてるだけ、ただもがいてるだけで、遣り場のない自分がこんなにも情けなくて歯がゆくて・・、
その時不意に目についた夜の空に、お母さんの本当の想いの先を思った、何がお母さんをそうさせるのかなって・・、
そしたら知りたいって思った、お母さんの思いの先を、そう思ったら、もう逃げるのは辞めようって、その想いだけが、募ってた・・、
こんなことで二人を苦しませる事も、こんな情けない自分で居る事も、もう終りにしなきゃいけないってそう思えた、
そしたらその思いはお母さんに会って確かめたい、そしたらうちの思いが決った、もう終りにしたい、だから・・・。
まだ夜も明けきらない朝に、うちは二人が眠る合い間をぬって旅館を脱け出した・・、
朝焼けに包まれた空は赤みを帯びて街は静まり返ってた、独り歩く朝の町は、初めてこの町から飛び出したあの日の事を思い出させた、
あの日もこんな朝だったように思う、でも、今のうちは独りじゃない、そう実感出来たら、何処か不安も和らいだ・・・。
ヒデさんには備え付けの紙に書置きを残してきた、きっと怒るかもしれないってそう思いながら、それでも二人の思いに応えられる
自分になりたいってそう思うから、きっといつもの笑顔で会えるって信じてる、だから・・、
ヒデさん、
いつもごめんね、ヒデさんの気持ち嬉しかった、ありがとう、
ヒデさんは頼りにならないなんて思ってないよ、ヒデさんの気持ちに応えたいっていつも思っってるの、
だから決めたの、もう終りにしなきゃいけないって、みんなに守られてるだけじゃいけないって思えたから、
ごめんなさい、黙って行く事、怒るって思ったけど、でもこれはあたしがしなきゃいけないって思えたから、
だからちょっと行ってきますね、戻って来た時には笑顔で会いたいと思います、
アンちゃん、ほんとにありがとう、
ヒデさん、愛してます それじゃ行ってきます・・。
きっと怒るだろうって思う、でも自分の気持ちに嘘は無い、もう終りにしたい、守られてるだけじゃ、いけないってそう思うから・・、
だから決めた、また殴られるかもしれない、またどんな罵声を浴びせられるかわからない、そう思うと、身体中の震えが増して、
逃げ出したくなる、だからもう、うちは考える事を辞めた、ただくじけてしまわないように、泣き出してしまわないように、
うちはペンダントを握り締めて何度も自分に言い聞かせながら、お母さんの元へ歩きだした・・・。
時の足跡 ~second story~17章~20章