沖縄県久米島殺人事件
第1章
いつも通り午前3時に俺は目が覚める。歯を磨き、テレビを点ける。今日はルポライターの仕事の関係でどうしても行くと言って聞かない、付き合っている彼女の上杉すず香と沖縄県に行く予定だ。歯を磨き終えて嗽をする。その後、昨晩にしていた沖縄に行く準備の続きをする。3時50分に支度を終える。そしてテレビを消してすず香の家に向かう。家を出て玄関の鍵を閉め、家の駐車場にに止めてある6人乗りの愛車のヴェルファイアの鍵を開けてに乗り込む。エンジンをかけ、カーナビのテレビを点けて発進する。車で5分進んだところにすず香の家に着いた。中から荷物を沢山持ったすず香が出てくる。いつもの事だから気にしない。すず香が助手席に乗り込む。彼女と喋りながら空港に向かった。すず香は「ねぇ光秀君…」と俺を呼び掛ける。俺は一瞬、横目ですず香を見ると不安そうな顔をしてこっちを見ていた。そんなすず香に俺は「どうした?」と聞く。すず香は「あのね、沖縄で事件が起きたらしいの…凄い怖い…ね?やめよ?」と言う。俺は「大丈夫だよ!そのときは何とかなるって!で?その事件ってどんな事件なの?」と興味本意で聞く。赤信号でとまりハンドルを握ったまますず香を見て「殺人事件…」と言って下を向いてしまった。俺は「大丈夫だって!もう空港の近くまで来ちゃったからさっ!行こっ!」と言って前を向き、青に変わった信号を進む。すず香は「うん…」と言った。そしてすず香が前を向くのが気配で分かった。そしてYCATの横浜シティ・エア・ターミナルに着いた。車を近くの駐車場に止めて、俺は父親の浅見光彦に俺の愛車を昨日約束した通り取りに来るように電話する。親父が来る間に荷物を取り出す。そしてバスで来たという親父に車を預ける。そして親父を見送った後、俺達は飛行機で飛び立った。俺達はまだ知らなかった。このあと凄い事件が待ち受けていた事を。
久米島に着いた俺達はイーフビーチ近くの民宿ジュゴンでレンタカーを借りに行った。すると「浅見さんですか?よく来てくれました!ワタシは新垣という者です!」と女の叫ぶ声が後ろから聞こえる。俺とすず香は振り向き、俺は「そうですけど…」と言う。「やっぱりそうですか!貴方達のお母さんと知り合いでメールのやり取りで貴殿方を知っているんですよ!ワタシの家に止めてあげるから二人とも来なさい!」と言われて俺達はレンタカーを借りずに新垣さんについて行く事にした。新垣さんは少しふくよかな女性。俺は新垣さんに「うちの母とどういう関係なんですか?」と聞く。新垣さんは「ワタシは今66なのね?貴方のお父さんの1個下。貴方が生まれる4年前からの友達という関係。」と答える。彼女はは「へぇ…そうなんですね…」と間が抜けた感じて答える。新垣さんが「あなた達はどういう関係な訳?」と聞いてくる。俺は迷わず「カップルです。」と答える。彼女は「上杉すず香です。」と答える。新垣さんは「貴女が上杉さん!よろしくね!」とすず香と握手を交わす。しばらく歩いてついて行った後に新垣さんの自宅に着いた。新垣さんの自宅の外観は沖縄に来たぞ!という感じがする。「お邪魔します」とすず香と俺が言う。玄関を入ると真っ正面に沖縄らしい絵が飾ってある。その右側にあるドアから失礼だが少し太めで頭の寂しい男性が出てきた。男性が「可奈子、来たか?」という。新垣さんてカナコさんっていうんだ。カナコさんは「幸雄さん…はい…来ました…」と言う。カナコさんどうしたんだろう。ユキオさんの前だと話し方を急に変えて。カナコさんが目の前を通る。あれ?一瞬痣が見えたような…。もしかすると暴力?まずい!どうしよう。まぁ、このまま様子を見るか?いやいや…そんなわけには… でも…マジか…。どうしたらいいんだ?…何故暴力を?何の理由があるんだ?
「どうしたの?」
すず香の急なその言葉にビクッとリアクションを取ってしまった。俺はすず香の方を見て「………っ!ビックリした…」という。すず香も「私もビックリしたぁ…」と言った。まぁ凄いリアクションだったからムリは無いか…。すず香が続ける。
「大丈夫?お刺身にされてもまだ生きてる鯛みたいな顔をしてたよ?」
相変わらず例えが凄いな。
「そ…そんな顔してた?」
「してたよ。」
よし、すず香に話すか…
「すず香…」
「何?」
「驚くなよ…」
「うん…」
俺はすず香に耳元で痣の事だけを話す。すず香が「えっ」と驚きそうになった瞬間にしっと音を出さずに俺が自分の口元に人差し指を差し出す。すず香も口元に人差し指を差し出す。するとユキオさんが妙な作り笑顔で「どうぞぉ…」と言う。俺が小声で「キメェ~…」と言うとすず香がクイッと小さく肘で叩く。「さっ…行くよ!」とすず香が手首を引っ張る。俺は「おっ…おい!」と言ってしまった。すげぇ怖いけど行くしか無いか…。俺達はさっきユキオさんが出てきた扉の方へ入って行く。大広間の方へ向かう。すず香が「わー!まさに沖縄って感じだねぇ…」と嬉しそうに言う。俺はさっきの衝撃が凄すぎて言葉を失う。すず香が「ね?」という。俺は「おっ…おう…」と無関心な声が出てしまった。すず香が少し背伸びして「さっきの事?」と聞く。俺は「だってさ~」と小声で言う。すず香が「まぁねぇ…」と感心したように言う。
カナコさんが俺達に「ゆっくりしていってね」と言う。そんなこと言われてもなぁ…。痣の事が気になって仕方がない。俺達はカナコさんが敷いてくれた座布団の上に座る。すず香が小声で「ねぇ…聞いてみなよ」と言うから俺も小声で「えーっ!すず香が聞いてみなよ!」と返すと「えーっ!嫌だよぉ…。」と言う。カナコさんが「あんた達、どうした?そんなこそこそしてぇ!まったく仲がいいカップルな事だねぇ。」と言う。俺は勇気を出して聞いてみる。「カナコさん、その…首の…痣…どうしたのかなぁって…聞いちゃったりしてぇ!」と言った後に俺は笑う。カナコさんは「あんたらには関係ないよ!」と怒らせてしまった。すず香が「でっ…ですよねぇ…!もう!光秀君たらぁ!まったくもう!」と言って俺の腕を一発叩いて一瞬笑う。すず香が俺の腕をもって立ち上がらせ続ける。
「ジュ…ジュース買って来まぁ…す…ほら!光秀君行こう!」と俺の腕を引っ張る。
「ちょっ…ちょっと!」
こいつ何考えてるんだ?叩かれるかも知れないんだぞ?俺達は近くの自動販売機に行くふりをしながら外の壁から少し顔を出し覗く。俺は咄嗟に「おい!すず香!何の真似だ!」と言う。すず香は「シッ」と言う。俺は家の方を見て目線を新垣夫婦に向ける。暫く覗いたが何も起こらず、諦めて自動販売機に行った。行く途中にすず香が言う。
「光秀君…あの二人本当に大丈夫だよね?」
「確かになぁ…あの二人、心配だよなぁ…」
自動販売機が見えてきた。すず香が「あっ!あった!」と言って自動販売機の所へ走る。俺もそれに会わせて走る。自動販売機で「マブヤー乳性ウォーターだって!これを買お?」とすず香がウキウキで言う。「うん…」と俺は言う。でも…払うのは…俺だよな?…。まぁいいや…。俺はお金を自販機に入れる。そしてマブヤー乳性ウォーターを4本買って家に戻る。少し緊張して家に入るが何事もなかったように「ジュース買って来た?」とカナコさんが言う。すず香が「あれ?幸雄さんは?」と聞く。俺は縁側を見る。確かに見当たらない。カナコさんは「あっ…あの人なら散歩に出かけたよ…」と落ち着いた様子で言う。俺は植木の下をにある何かを包んだブルーシートを見つけて「カナコさん…すみません!あれ…何ですか?」と言いながらブルーシートを指差す。カナコさんは「あっ…あれ?植木を手入れしたからさ…」と言った。変わってる?疑問に思った俺は「どこら辺を?」と聞く。カナコさんは「どうだっていいだろ?そんな事…」と何故か少し呆れた様子で立ち上がってどっかに行こうとした。俺は「カナコさん…?まさか…ユキオさんを…殺してませんよね?」と振り返り縁側を背にしてカナコさんの方を見て言う。カナコさんは「そっ…そんな訳ないだろ…」と言って部屋を出ていってしまった。この日の夜8時に久米島町字謝名堂548-31にある居酒屋 海坊主に俺とすず香は来ていた。すず香が「可奈子さんの首に痣が合ったってどうしてだろう…」と迷ったように言う。俺達はずっと悩んでいると店員さんが「あの!」と叫ぶ。俺達は店員さんの方へ向き、すず香が「あっ…はい!」と言う。店員さんは「もうそろそろ頼んでくれませんか?」と頼む。俺は「すみません!じゃあビールで!」と頼む。すず香も「じゃあ私も!」と頼む。「分かりました!ビール2つ!」と店員さんが去っていく。すず香が話を戻す。
「で、私なりに考えたんだけどやっぱり幸雄さんが殴った…としか考えられないよね?」
「そうなんだよね…」
俺が答えた瞬間に「はい!ビールです!」と店員がビールを2つ持ってくる。店員さんが「他には!」と聞く。すず香が「大丈夫です!」と言う。店員さんが「貴方は?」と聞くので俺は「大丈夫です!」と言う。「分かりました!」と言って店内のどっかへ去っていった。またすず香が話を戻す。
「まさか他の人が殴ってるとは限らないし…」
「そうなんだよねぇ…」
「でも…借りに殴ってる人がいるとしたら?」
「あっ…いや…それはない。」
「どうして?」
「だってさ…俺達がカナコさんのうちに来た時さぁ…ユキオさんが来た瞬間にカナコさんの態度が急に変わらなかった?」
「あっ…確かに…」
すず香が一口目のビールを飲む。
「あれは絶体何かしらあるね。殴られたとか?」
俺が一口目のビールを飲む。
「やっぱりそうなるか…」
「あれはただの喧嘩じゃないね。」
「そうだよねぇ…。あとさ!植木を手入れしたっつってたろ?植木の下のブルーシート!あれさ…あれだけ膨らんでいるのに植木は前々変わっていなかった。やっぱりあれはユキオさんだよな?」
「へっ…変な事…いっ…言わないでよ!」
俺達二人はビールを飲み干す。
沖縄県久米島殺人事件