T L
ひとを望み
タイピングへ
繋がり
結び合い
ひとを知る
ひともいた
何でも聞こえてきた
わたしと似たはぐれたものを見つけようとした
朝起きて迎える一日の始まりで最初に彼や彼女が届いた手紙を見る。手紙と言ってもそれは郵便ポストに入った手紙ではない。電子端末から知らない誰か見たことも会ったこともない誰かから送られた手紙を示す通知だ。君は微笑する、誰かのユーモアに。それはまもなく出かける義務を励ます命綱。
リアルの冷淡がヴァーチャルの温かみを駆逐できない世界
yo ma re te
da i zi ni
hi ro wa re te
to u to ku
hi to ni na re ta
「き み に
で あ え た よ」
果たさなければならない一日の義務を未知の誰かが君だけのためにくれた伝言が潤いを満たす。他でもないこの世界で未知に沈んで見咎められない君のためにだ。思いやりは無償の慈しみで金銭で代替される慰撫とは違った。慈しみの純粋が救いの無垢の思いを証明する。義務の世界はそれを与えられるだろうか。
架空の人ではない
確かに
見えないあの人だけが
知ってくれた
きみと
かわらない
ぼくを しった
おなじさみしさねがいほしかったもの
知らない誰かが投じる詩や絵画の中に優しい君は彼らの動機の無為を知るだろう。その無為が君を優しくさせるのだから。誰かは拾って貰いたかった。優しい君のような人の無為な温かさと憐憫に。彼らもまた義務の世界で圧縮された誰かかもしれない。そうやって互いの負傷を切なく補い合っている。
数年経って思い出していた
一瞬のブロックで消したひとを
ここで
おなじだった
タップで出会う世界。ほんの微かな指の先端の動作が開く日常。嘲笑する何者かがそれは架空だと一蹴する。不安定な接続で繋がりあう感傷だと咎めようとする。それは君の孤独を補填するしがない物語だろうか。君の孤独の哀切さをむしろ不安に陥れるのか。でも確かに君を知ってくれた誰かがいた。
顔も知らない 言葉が
救った 顔
向こうに
生きた人間がいた
「狭い世界と笑うなら笑え」
TL
AM 3:01
恋をするかもしれない。毎日届けてくれる思いやりを欠かさない唯一人の彼に。それは一緒に公園を歩いたり顔と顔を寄せ合って唇を重ねる邂逅ではない。思いやりをくれる顔さえ知らない。そのロマンスは行く先がない。見通しのない恋。でも君は筋書きの皆無すら引き受けたいと願った魂と出会う。
読む文字で 笑いあって
危うい空気を告げずに
共に生きている
誰からも
拾われることさえも望まない心が流れていった
それは世界と日常のマテリアル、義務の日々が有り余る重量によって逃走させた君の懸命な求めが造った架空の幻影かもしれなかった。幻影を必要とした君が指の先端で描いた君自身だけのための寂しさを映したイメージ。イメージにいたのは君だけだったのか。彼や彼女は君が描いた幻影だったのか。
君 で も
僕 で も
なかった
意図のない
この世界は
見もせずに消した
真夜中の切実さが今夜も君を指の先端でかろうじて支えた優しい誰かを求めさせる。たとえ幻影でもだ。日常が引き戻す義務の世界の剥き出しが誰かと君を引き裂く。ついに声色の温度さえ確かめ合えなかった誰かの消失を君の切実は知る。魂の救命艇にいた物語の誰かと恐らく再び一生出会えない。
「見て」
「知られる」
「ひと」
・
・
・
・
・
・
・
生きることが
一途で懸命に追い求めたもの
僕はひとえに君が救われてほしいと希う。僕は君が作った幻影の物自体では決してない。君のタップが描いたストーリーでむしろ僕は生きたい。義務の世界が否定するタップの向こうの僕は君の朝や真夜中をの救済だけを義務の同時性から確かに願う。予め定められた離別を僕は静かに引き受けるだろう。
暗黙のうちに理解した誰かたちは
文字列で微笑んでいる
嫌悪さえ愛しい人をここで見つけた特別ではなかった夜
この切実なタップの僕もまた果てしない義務の現実が排他する見咎められない犠牲のほんの一部でしかなかった。唯一の君の人生からも排他される覚悟の怯えと共に僕は生きる。君への叫びは決して僕を救えない。僕はただ静かに消える。いつか君は思い出すかもしれない。君の架空として生きた僕を。
忘れられない
毎日
ここで
声が
身を
寄せ合って
互いに
消える
「いつか」を
語らないまま
語っていた
長い
ライン
さまよいながら
T L
TLはツイッターの“Time Line”の略称。
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