my world

誰にだって「欲望」というものがあると思う。そんな欲望をだしすぎた小学生の物語。

僕は小学生。小学2年生だ。僕の学校は小さくて、全校生徒も200人くらいだった。でも、学校は楽しかった。あの日が来るまではね。

僕は学級に好きな子がいた。授業中や休み時間、ずっとその子を見ていた。髪が長くて、目がとてもきれいで、いつも見とれていた。家は近くで、何度か遊びに行った事もあった。2人きりの時間がとても楽しかった。その時は自分の能力には気づいていなかった。

ある日、休み時間にいつもと同じようにあの子を見つめていた。今日のあの子もいつもとかわらないあの子だった。
「あーケンジ、お前誰見てんだ?」
同じクラスの男の子だった。やんちゃで、ちょっとムカつくところもあったが、そんなに気にしなかった。
「おーい皆、ケンジが里奈ちゃんのことさっきからずっと見つめてるぞ!」
大きな声で叫ばれた。僕は何も言い返せなかった。自分でも、赤面していたのが分かった。
「顔赤いな~ケンジ。やっぱり里奈ちゃんのこと見てたのか。」
僕はとても腹が立った。あの子は廊下の方へと行ってしまった。僕は元からおとなしい性格だったので、自分の感情を表に出すことは無かった。でも、この時は違った。
「うっ…やめろよ…ケンジ!」
僕はあまりにも腹が立っていてそいつの首を思いっきりしめていた。僕は意識していないのに、小声で呟いていた。
「お前なんて…お前なんて…首が吹っ飛んで死ねばいい!」
そう呟いた瞬間だった。そいつの首が吹っ飛び、周りに血が飛び散っていた。そいつは完全に死んでいた。動いていなかった。僕はその場に立ったまま動けなくなってしまっていた。教室からは、「きゃー」「うえ!」「ケンジが殺したー!」などの声が聞こえた。5分くらいたっただろうか、先生が数人、駆け寄ってきた。
「皆廊下に出なさい!隣の4年生の教室で待っていなさい。」
「先生…どうしますか?」
だんだんと意識がはっきりしてきた。先生達は話しをしていた。他の皆はいなかった。教室は、血の海だった。目の前が真っ暗になった。

気づくと保健室のベットの上にいた。起き上がってみると着ている服が違った。自分の家のじゃない匂いがした。
「起きた?」
「うん。」
「こっちにおいで。」
僕はベットから降り、先生がいるところへ行った。隣の職員室から、何やら声が聞こえた。
「誰だろう…。」
「先生達よ。」
「先生…。」
「そう。先生。」
「何でだろう…お父さんとお母さんの声もする。」
そう言った瞬間だった。頭がズキンズキンと痛んだ。さっきの教室での出来事を思い出した。
「僕…何したの?」
意識がまた盲ろうとなった。
「ケンジくんはね…」
先生が言いかけたとき、職員室に繋がってる扉が開いた。
「ケン!」
お母さんだった。お母さんは僕に抱きついてきた。
「何であんな事…。」
お父さんも入ってきた。
「母さん、どきなさい。」
お母さんは僕を抱くのをやめて立ち上がった。
「僕…」
言葉を発する前にお父さんの手が僕の頬を叩いた。
「え…。」
すごく痛かった。そのときはっきりと分かった。僕はあいつを殺したんだ。
「待ってくださいお父さん!ケンジくんはまだ意識がはっきりしていません。今刺激を与えてしまうと、また気絶してしまうかもしれない!」
僕はそこから記憶がなかった。次は自分の家のベットの上で起きた。家には誰もいなかった。
「お母さん、いないの?おと…」
お父さんと言いかけた。何故かお父さんと言えなかった。僕はまた一生懸命に思い出した。僕は学校の保健室にいた。お母さんが僕に抱きついて、すごく安心した。お父さんもいて、ぼくにビンタした。僕は…僕は…
そのとき、痛い!何で僕だけ?元々悪いのはあいつだ!お父さんなんて嫌いだ!どこか言ってしまえ…!そう、そう願ったのだ。

ガチャッ家の入り口が開く音がした。お母さんだった。
「お母さん、お帰りなさい。」
「ケン…お父さんが…お父さんが…。」
僕はまさか!と思った。僕は自分でもびっくりするくらいの低い声で言葉を発した。まるで自分じゃないかのように。
「いなくなった。」
お母さんが目を見開き、こっちを見た。いや、睨んだようにも見えた。目が真っ赤だった。泣いていたのだと思った。
「お母さん…?」
「ケン!!何で知ってるの!?気絶してたはずなのに!?」
「分からないんだ…けど、何だか…。」
嘘をついた。
「…まさかね。いいわケンちゃん、今からご飯つくるから、台所でテレビ見てて。ケンちゃんの好きな番組があってるはずだから。」
「うん。」
夕飯は、僕の好きなハンバーグだった。とても美味しかった。僕は食べ終わってから、お風呂にも入らず、ベットへ入った。
「明日…皆になんて言われるだろう…。」
怖かった。
「どうしたらいいんだろう…学校行きたくないな…。」
僕はある事を思いついた。
「もしかして…。」
自分は人の首を飛ばす程力はない。しかし、あいつの首は飛んだ。自分が強く願った事は現実に起きている。この力を使えば…。
僕はとても悪い人間になっていた。僕はその夜、言葉に出しながら強く願った。
「明日はいつもの学校。あいつが死んだ事について誰も不思議には思わない。そして、あいつが死んだのは、交通事故が原因となる。教室の赤い血はりんごの絵を書いたとき、絵の具をこぼして拭き取れなかった物だ。それと…」
僕はこの世が自分の物になるようで楽しかった。自分の世界。素晴らしいと思った。
「それと里奈ちゃんが家に住む事になる。里奈ちゃんの家が火事になった。けど、奇跡的に服は少し持ち運ぶ事ができた。そして、家に里奈ちゃんと、里奈ちゃんのお母さんだけが泊まりにくる。僕と里奈ちゃんは明日、朝から仲良く手を繋ぎながら登校。僕と里奈ちゃんは隣同士。愛し合う。皆はそれが普通に見える…」
そう言い終えたとき、今までにないすごい頭痛に襲われた。僕は痛くて何も分からなくなった。目の前が真っ暗になった。
夜中に起きた。3時ごろだったか。時計が見えたのでわかった。家のインターホンが鳴った。僕は急いで玄関に行った。
「すみませーん。」
外から声が聞こえた。里奈ちゃんのお母さんの声だった。僕は「はーい」と言いながらドアを開けた。
「あ、ケンちゃんごめんね、起こしちゃった?」
「ううん、大丈夫。どうしたの?」
「お家がね…火事になっちゃって…ね。」
後ろから足音が聞こえた。
「ケンちゃん誰~?」
「里奈ちゃんのお母さん。家が火事だって。」
「はぁ!?」
お母さんが玄関に駆け寄ってきた。
「どうしたの!?」
「いや…ストーブからの引火とかなんかで…。」
「旦那さんは!?」
「お父さんね…助からなかった…。」
泣きながら里奈ちゃんは言った。お母さんが里奈ちゃんを抱きしめていた。
「辛かったね…。でも大丈夫。ケンちゃんもいるし。一緒に頑張って暮らそ?」
「うん…。」
僕はとっさに願った。里奈ちゃんのお父さん…生き返って!!
「ん?ケンちゃん、何か言った?」
何も起こらなかった。気絶もしなかったし、里奈ちゃんのお父さんも生き返ってこなかった。僕は知った。1度願った事は取り消せないのだと。
「ほら、ケンちゃん行くよ。」
「うん。」
「ケンちゃん…一緒に寝よ?」
「いいよ!」
そう言われた瞬間、里奈ちゃんのお父さんの事はすっかり忘れてしまった。すごく嬉しかった。里奈ちゃんと一緒に寝れる。僕は里奈ちゃんを自分の部屋に連れて行った。
「こっちだよ!」
「仲がいいわね。」
「ほんと。」
「これから迷惑かけるかもしれないけど、よろしく。」
「おう!こちらこそ!!」
僕と里奈ちゃんは一緒にベットに入った。
「ランドセルは?里奈ちゃんのあるの?」
「うん…けど、教科書は入ってる分だけ。明日、無い分ケンちゃん見せてくれる?」
「うんいいよ!」
「ありがとう。ケンちゃん好きだよ。」
里奈ちゃんが僕に抱きついてくれた。すごく嬉しかった。里奈ちゃんの体はとても暖かかった。里奈ちゃんは気持ち良さそうに寝ていた。ずっと見つめていた。いつものように。
「里奈ちゃん…。」
自分の物にしたかった。誰にも触れて欲しくない。僕だけの里奈ちゃん…僕は里奈ちゃんの唇にキスをした。長いキスだった。変な気持ちになった。僕は願いごとをした。
「僕が今口づけをした人間は僕だけの物。他の人間は誰も触れることすらできない。僕…だけの物。」
目の前が真っ暗になった。
部屋に母親2人が入った。
「可愛いね。」
「うん。2人とも天使みたい。」
「2人とも天使よ。」
「うん。私達も寝ましょう。」

翌日。お母さんに起こされておきた。カーテンがあけられて、日の光が入ってきた。とても暖かかった。里奈ちゃんはまだ眠っていた。
「里奈ちゃん、起きないと。学校だよ?」
「里奈ちゃん起こして下においで。ご飯作ってるから。」
「うん。」
すごく里奈ちゃんが可愛かった。好きで好きでたまらなかった。またキスをした。その後里奈ちゃんを連れて台所へ行った。
「おはよう。」
「おはようっ。」
いつもより明るかった。
「お、ケンちゃん今日は元気だなー。里奈は…調子悪いのか?」
「うん…ちょっと頭痛い。」
「おいで。」
里奈ちゃんのお母さんは里奈ちゃんのおでこの近くに手を当てていた。
「熱いね…。」
「ケンちゃんママ、熱計り貸してくんない?」
「うん、そこの薬箱に入ってるはず。」
「ありがとう。」
里奈ちゃんのお母さんは里奈ちゃんの脇に熱計りを挟ませて熱を計っていた。僕はずっと見ていた。
「里奈ちゃん大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。里奈は丈夫だから。」
ピピピピ熱を計り終えたようだった。
「38度か~。学校休むか?」
「うん…。」
「そんな~」
すごく嫌だった。
「ケンちゃんそんなこと言っても里奈ちゃんはケンちゃんの物じゃないんだから。」
僕の物…僕はハッとした。昨日触れないって願ったはずなのに…。
「何でさわれるの。里奈ちゃんに。」
「何言ってんだ?ケンちゃん。私は触ってないぞ?里奈には。」
思い返せばそうだった。里奈ちゃんのお母さんは1度も里奈ちゃんには触っていなかった。里奈ちゃんのお母さんは里奈ちゃんの服を脱がせていた。
「汗かいてるから着替えないと。」
僕は腹が立った。僕は里奈ちゃんに抱きつき、叫んだ。
「里奈ちゃんは僕の物だ!」
「ケン!」
お母さんにビンタされた。僕はご飯を食べてランドセルを持ち、玄関へと行った。するとお母さんが近づいてきて、
「ごめんねケンちゃん。」
「うん…僕もごめんなさい。」
お母さんは僕に抱きついた。
「もうあんな事言わないでね。」
「うん。分かった。」
お母さんに対して怒りは無かった。しかし、里奈ちゃんのお母さん対して怒りがあった。
僕は1人で学校へ行った。学校は近くだった。5分すればついていた。僕は教室に入った。教室が赤かった。皆、もう登校していて、おしゃべりをしていた。僕はいつもと変わらず、自分の席についた。後ろの黒板を見ると、時間割が書いてある。1時間目算数。ぼくは算数が嫌いだった。僕は思いついた。学校なんて…いらないや。僕はトイレに行った。願いごとをした。
「学校にいる自分以外の人間は消える。そして、里奈ちゃんのお母さんも。」
僕は気絶していた。僕が起きたのは丁度算数が始まる頃だった。僕は走って家へと向かった。帰る途中、校門の所に張り紙を貼った。「先に家に帰る」こうすれば、自分の子供は家に帰る途中でいなくなったと勘違いするだろう。字はきれいな方だったから、良かった。僕は家に帰った。お母さんは仕事でいなかった。台所へ行くと、テレビがついていた。里奈ちゃんが熱さまシートをおでこにつけながらテレビをみていた。
「あ、ケンちゃん。見てこれ。」
テレビで報道があっていた。
「全国の学校の子供と先生が消えました!」
「何でケンちゃんいなくなってないの?」
「わからない。皆消えちゃって、怖くて帰ってきた。」
また嘘をついた。
「あとね、お母さんも消えちゃった…。」
里奈ちゃんが指をさした先には流れっぱなしの水道があった。里奈ちゃんは完全に怯えていた。僕は思った。
「まだ里奈ちゃんは僕の物じゃない。」
「え?」
僕はまた願った。
「この世界で生きているのは僕と里奈ちゃんだけ。これが普通。僕と里奈ちゃんは死なない。20歳から年をとらなくなる。僕と里奈ちゃんは永遠に愛し合い、一緒に暮らす。僕らはお腹がすかなくなる。」
「そんな世界があったらいいね。」
里奈ちゃんは僕の方を見てにっこり笑った。この笑顔を見る事はもう2度とできなかった。
目の前が真っ暗になった。

僕は今いる世界にきて、初めて知ったことがあった。。人がいないと、ガスや電気、水道が使えない。僕らは川の水を飲んでいた。とても辛かった。もう願い事は効かなかった。里奈ちゃんは可愛かった。けど、髪はボサボサで、切る事ができなかったので、気持ち悪い位に伸びていた。僕は海を渡った。溺れても死なないので海底を歩いた。里奈ちゃんと会う事は無かった。僕は何度も包丁で胸を突き刺して死のうとした。でも、血がたくさん出て体がしおれても、死ななかった。けど、ものすごく痛かった。僕はある日日本らしき所へ帰ってきた。赤い塔があった。ツルがいっぱいからんでて、木みたいだった。僕は動けなくなった。赤い塔はツルにかこまれて、日に日に緑になっていった。何日たったかはわからない。緑の塔になった。僕は最後のお願いをした。声にはならなかった。

死なせて。

目の前が真っ暗になった。

my world

この小説には、矛盾している部分が1つだけあります。ケンちゃんの願い事を叶える力は完全ではありませんでした。自分が最も愛する1人の人間には意味が無いのです。だから、実は里奈ちゃんにはケンちゃんの願い事はきいていません。里奈ちゃんは全てをしっていました。
私も欲望たっぷりの人間です。
皆さんには、どんな欲望がありますか?

my world

ある小学生が願った事が現実で叶うという能力を持つ。その子は自分の欲望を願い事に託し、自分の願いを叶えていく。しかし、1度願った事は取り消せない事に気づく。しかし、願い事は止まらない。自分の欲にのまれてしまった小学生の物語です。

  • 小説
  • 短編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-08-04

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