光
あなたの大切なものは、ちゃんと心にしまってありますか?
あるところに、他人から「かわいそう」と言われ続ける人生を歩いていくひとりの男がいた。
その男は、幼少期をまるで闇のような場所で過ごしたとされていた。
しかし、男にはそれが当たり前であり、それしか知らなかった。
ある日、男の夢にひとつの大きな光が現れて、こう言った。
「人はどんな闇を歩こうとも、その闇の深さに応じた光の当たる道が用意される。そこを歩くことで知る、自分の中に眠る光を大切にしてほしい。」
男は、その夢をあっさり忘れて生きていった。
月日は流れ、男は社会の波に揉まれるように働く日々を過ごしていた。
しかし、それは類まれな人の縁が織り成す、輝く道。
笑顔あふれる楽しい日々に、たくさんの優しい仲間たち。
男は、夢に見た光景をすっかり手に入れていることすらも、忘れていた。
そんな道のりをテクテク歩いてきたにも関わらず、この男は何も考えていなかった。
そうして失ってきた大切なものは、ボトボトと男の歩いた道に落ちていった。
そこへ、ひとりの若者があとを辿るように歩き始めた。
キレイ好きなその若者は、道のりにテンテンと落ちている塊を拾っていくことにした。
両手では足らないと思った若者は、ポケットにしまっていった。
塊は、不思議と重さを感じさせなかった。
若者が拾い物をしながら歩き続けていると、道がふたつに分かれていた。
若者は立ち止まり、少し考えた。
「疲れたから、少し下り坂になっているこっちの道にしよう。」
若者は、下り坂で逆に足を取られ、コロコロと転がっていってしまった。
すると、壁にぶつかりそうになったところで、大きな大きなクッションが若者を助けてくれた。
若者は、不思議な柔らかさに感謝をした。
今度は、平坦な道が待っていた。
暗いなと思って歩き始めると、ポケットから煌々と光が出ていた。
ポケットから出してみたその光は、暗い道を照らすライトの役割を果たしてくれた。
光は少しずつ弱くなり、階段に気づかせてくれたところで、フッと消えてしまった。
「今度は階段か。」
若者は、階段を踏みしめた。
すると、階段は足元だけ光ってみせた。
その色は、綺麗な虹の色だった。
まるで、虹の架け橋を渡っているかのような感覚に、若者は笑顔でその階段を上り始めていた。
どれだけのぼってきたのだろう。
ふと、若者は下を見てみたくなった。
見てはいけない気がすると思いながら、自分の心に従って、そっと、なんとなくわかる下の方に目をやった。
そこには、高い山から転落し続けるひとりの男の姿があった。
若者がよく見てみると、その山は分かれ道で見た、別の道にそびえ立つ山にそっくりだった。
「きっと、あの男は山を登るために必要なものを揃えていなかった。」
若者は、どうすることもできないと、落ちていく男を見るのをやめた。
再び、虹色に光る階段を1段ずつのぼり続ける若者に、自身がいつか思い描いた景色が光と共に降り注ぐのは、少し先のこと。
若者のポケットには、拾い続けたゴミだったはずの塊が、今いくつもの光となってしまわれている。
おわり
光
私が傍から見ていて、思ったことを表してみました。
とても恵まれた環境、人生を歩いていながら、一瞬でそれを失う人。
かたや、コツコツと自分で道を綺麗にしながら歩いていく人。
他人の人生のゴミを拾うなんて、普通は嫌です。
けどそれが、ゴミであるという確証は書いている私にしかなく、塊として表してみました。
書いていくうちに、若者は、自分で塊を光にしたのです。
私がそうしたともとれますけどね笑
人生における転落は、辛いですね。