壁と男

壁と話す男がいた。
男は自分が壁と話していることにも気づかず、
独自の常識や、いかに自分が優れているかを壁に語り続けた。

しかし、いくら言葉を投げかけても、返ってくるのは自分の言葉の繰り返し。
我に返ったのか、むしろ我を忘れたのか、
男はとうとう自分が壁と話していることに気付いた。

辺りを見渡すと、人々の冷たい視線が壁と話す男に刺さった。
男は必死に弁解しようと試みたが、
もはや人と話しているのか、壁に言葉を投げかけているのか
分からなくなってしまった。

壁と男

壁と男

人はときに、壁となる。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-20

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