罪
「好きな人が2人いるのはおかしいか?」
久しぶりに会った地元の幼馴染に聞く。
「いや、おかしくない!そこは男の本能だ!男らしい!!そもそも男ってのはだね…」
はじまった、こりゃ長いぞ。ここはいつもの居酒屋ひだまり。
僕は焼酎をちびちびやりながら彼の持論を聞く、自分のゲスな欲求をさも正論っぽく熱のある論調でまくしたてる彼の姿は潔くも有り見ていて気持ちいい。ただそのアドバイスはまったく参考にならない。
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僕には長く付き合っている彼女が居る。結婚を申し込みたいとも思っている。
でもそれとは別に、最近友達を越えた女の子もいる。
結婚前の気の迷い、本気じゃない遊び。友達以上恋人未満。
他人の手垢が付いた言葉では言い表せない、僕と彼女との間にはそんな空気が流れていた。
彼女は別れ際本当に寂しそうな顔をする。僕だって寂しい。でも僕と君は友達じゃないか。
そんな顔されたら戻れないところまで行ってしまいそうだ。
彼女は絶対に寂しいと言わない。
彼女を抱きしめた時もどこか赦されない、私はまだあなたの事を信頼したわけじゃない。とでも言うかのように体のどこかが固く。
その固い部分に何度も触れたが決して心が開かれるわけでもない。
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吉祥寺の入り組んだ路地にあるカフェで君が言った。
「コーヒーって好き、真っ暗なコーヒーにミルクを入れるの。そうすると白いミルクが沢山浮き上がってくるの、コーヒーはいいよね、いつでも自分を満たしてくれるミルクが居て」
浮き上がってきたミルク。僕は彼女を満たすことはできないかもしれない。
今日もまた僕のアパートで罪を重ねていく。
罪