ためいきの金曜日

ためいきの金曜日

金曜日になるといつも暗い気持ちになる。

彼には彼女が居て週末から月曜の朝まで彼女が彼の家に泊るからだ。
彼が私に向ける優しさと、同じ優しさを彼女にも向けていて。様々な事を想像すると心の中で黒い渦がぐるぐると周りだす。

私に向けられる笑顔、細くて長い指、暑い肌、目。

---私たちは平日にお互い何気なく飲みに行く、でも必ずどちらかの家に近いところで。
友達同士を装ってはいるがお互い確信犯であることは明白で。お互い罪だとは認識しつつも優しさと快楽の海に溺れてしまう。
私はとうとう息が出来なくなってしまい彼に助けを求めるが、彼はボートの上で彼女と居る。抱き合ってはいるが彼の仄暗い眼は私を見つめていた。

沈んでいく、深く。
遠ざかっていく、遥か。

息のつまるような週末を過ごし、そのまま月曜。火曜が過ぎていく。

---彼の腕に抱き抱え上げられ初めてそこで息を深く吸い込む。
彼の匂い、かすかなタバコと香水の匂い。

胸に香水をつけるのはズルいよ、嗅ぎたくなっちゃうじゃん。バカ。

彼は少し笑うと、ベッドに私を優しく倒して二人でまた罪を重ねる。

ためいきの金曜日

ためいきの金曜日

金曜日の夜、まっすぐ家に帰らず雨の吉祥寺で週末を過ごす女性。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-04-20

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